歌姫に拾われた俺がアスタリスクで生活をするのはまちがっているだろうか。   作:リコルト

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ようやく王竜星武祭編・ヴァルダ編のしっくり来るストーリーが組めました……バンバン作っていくぞぉ


孤毒の魔女(エレンシューキガル)の決断

 

 

『……急に連絡を寄越すと思ったら、かなり息が上がってるじゃない。あなたのそんな姿初めて見たわ』

 

「黙れ。今はそんな話を貴様とするつもりはない」

 

 通信のウィンドウ越しで、応援を求めるヴァルダの様子にオーフェリアは淡々と思ったことを口にする。だが、応援を求める身でありながら、ヴァルダはその他人事のような彼女の指摘に苛立ちの顔を見せていた。

 

 それ程までにヴァルダにとって、ここまで名も知らぬ星脈世代に追い詰められたことは初めてであり、屈辱的であったのだろう。だが、屈辱的な経験ではありながら、仲間に頼ることを判断した辺りは、まだ賢明な判断ができているとは言える。

 

『残念だけど……あなたには私に命令する権限は無いわ。私が従うのは悪辣の王(タイラント)のみ。他にお願いをすれば?』

 

「あの()は星武祭中、こちら側に手を貸すことはできない。残るは悪辣の王(タイラント)とお前だけだ。貴様の契約主と私は同盟を結んでいる関係だろう。貴様が手を貸さない理由にはならない」

 

『はぁ……そうだったわね。だけど、あなたは尾行されていると知りながら、悪辣の王(タイラント)の忠告を無視した身。それを理解しておいた方が良いわよ』

 

 しかし、オーフェリアはヴァルダを助けることに多少拒絶的な姿勢を見せる。だが、その意志の半分はオーフェリアによるものではない。彼女の背後にいる悪辣の王(タイラント)の意志によるものである。彼の性格からしても、忠告した奴の不手際の始末に関わりたくないのだろう。

 

 

 

「オーフェリア……仲間割れしてるのか?」

 

「そうみたいだね……」

 

 そんな仲間割れをする様子を眺めていた八幡とシルヴィアは小さな声で会話をしつつも、オーフェリアとヴァルダの動向に静かに警戒。

 

 煌式武装を構え続けながら、敵から目を逸らさずにいつでも迎撃できる体勢を整えていた。

 

 今は参戦する様子はないが、オーフェリアが敵に回るだけで戦況は大きく変わってしまう。八幡とシルヴィアはその事の重大さをよく理解していた。

 

 

 

『ちなみに、あなた程の実力者をそこまで追い詰めた人物って一体誰かしら?』

 

「それは私の目の前にいる奴等だ」

 

 

 仲間割れの末、オーフェリアはヴァルダを追い詰めた人物に興味を抱き、どんな人物なのかをヴァルダに問う。そこで、ヴァルダはウィンドウ表示を操作し、八幡達の姿がオーフェリアに見えるようにするのだった。

 

 

『………………!!』

 

 

 オーフェリアは先程まで淡々としていた様子を崩し、少し驚いた表情を見せる。言葉にまでその驚きの様子は現れなかったもの、彼女にとってはここ数ヶ月で一番の驚きであった。

 

 なぜなら、画面の先にいたのは、つい先日知り合った心を許せる存在である八幡と王竜星武祭の決勝で戦うシルヴィア。

 

 その二人がヴァルダをここまで追い詰めたという事実は、ヴァルダの実力を同盟相手として知るオーフェリアにとって大きな衝撃を与えるものだった。

 

(……ヴァルダは並以上の星脈世代でも苦戦する筈。それを追い詰めたのは間違いない……八幡ね)

 

 シルヴィアのボロボロな様子、八幡のまだ余裕がある八幡の表情、そして知っていた八幡の能力。画面越しではあるが、冷静な分析をオーフェリアは行い、ヴァルダを追い詰めた一番の要因が八幡であることを確信する。

 

「どうした、孤毒の魔女(エレンシューキガル)?」

 

『いえ………何でもないわ』

 

 ヴァルダに内心を悟られないように、普段見せない僅かな動揺を何とか隠すが、オーフェリアは彼等の敵になることを、内心深く悩んでいた。

 

 

(どうして……どうしてこうなってしまうの)

 

 

 二人はオーフェリアの数少ない心が許せる存在。そんな二人を自分の手で滅ぼす。これ程までに無慈悲かつ残酷な運命はないだろう。

 

 本当は自身の手で、二人を殺したくない……

 

 しかし、そんなオーフェリアの意思を彼女の所有者とヴァルダとの同盟関係が生んだ抗えない運命が鎖のように縛る。抗えば、契約破棄として彼女の故郷である孤児院に悪辣の王(タイラント)の魔の手が迫るのは確実だ。

 

 

 迫られる決断に、葛藤するオーフェリア。

 

 

 

 そんな時、ある人物が声を上げる。

 

 

 

「オーフェリア、聞こえているよな?」

 

『……………!!(八幡……)』

 

 声の主は煌式武装を構え続ける八幡。警戒は続けているものの、その声質に恐怖といった感情は含まれておらず、友に呼びかける明るいものであった。その呼びかけにオーフェリアはピクッと反応を示す。

 

「お前がヴァルダと仲間に近い関係だというのは理解した。俺も初めて聞いたからな……けど、俺やシルヴィもお前とは戦いたいとは思っていない」

 

 それは戦力差という分析的な面の話ではない。

 

 八幡とシルヴィア、そしてオーフェリアが互いを知る仲でという気持ちが込められた八幡の強い友情的な面からの強い訴えであった。

 

「お前の事情も俺達は十分に理解している。だが、もし悩んでいるなら、()()だけは聞いてくれ。後はオーフェリアの意志に任せる」

 

 そう言って、八幡は息を整え、その言葉を紡ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァルダは俺達が絶対に倒す

 

 

 

 

 

…………………………

 

 

………………………………………………………

 

 

……………………………………………………………………………

 

 

 

 

「ふふふっ……ふはははははははははっ!!」

 

 八幡のそのたった短い一言をヴァルダ・ヴァオスは高らかに笑い続ける。だが、その嘲笑を八幡は咎めもせず、静かに聞き入れていた。

 

「確かにお前は強く、同時に私にとって相性が非常に悪い。だが、孤毒の魔女(エレンシューキガル)がいれば、この盤面を全て覆すことができる!」

 

 ヴァルダが言うように、オーフェリアは逆転を容易に可能とするアスタリスク最強の存在。純粋な星辰力だけを見ても、質・量は群を抜いているだろう。

 

 だからこそ、ヴァルダは安堵していた。そんな存在が少なくとも敵ではないということに。そして、その力を契約上、味方として貸してくれることに。

 

 

「お前が孤毒の魔女(エレンシューキガル)とどういった関係か知らないが、お前の一言は届かない!孤毒の魔女(エレンシューキガル)……奴等を殺せ」

 

 

 そう言って、ヴァルダは八幡とシルヴィアの二人を指差し、殺意を込めた命令を下す。

 

 

 それに対し、オーフェリアは………

 

 

「……分かった。()()でそこに着くわ」

 

 

 その命令に肯定的な意見をサッと述べるのみ。

 

 同時に、彼女との通信は途切れてしまうのだが、ヴァルダはすでに勝ち誇った様子で拳を構え、八幡達と改めて対峙するのだった。

 

 

「三分後に尽きる命か……私が定めた運命だが、二人には同情しよう」

 

 

 

………………………………

 

 

 

………………………………………………………

 

 

 

 

………………………………………………………………………

 

 

八幡side

 

 

 

 ()()か…………成る程な。

 

 

「シルヴィ、()()以内でヴァルダを絶対に倒すぞ」

 

「……うん。でも、八幡君の言葉……オーフェリアさんに届かなかったのかな?」

 

「さぁな……まぁ、俺達が三分後も生きていれば、その答えは見えてくるんじゃないか」

 

 

 そう言って、俺は煌式武装ヴァルハラと純星煌式武装黄昏の夢幻剣(トワイライト・ファンタジア)を構えて、戦う準備をする。

 

 

 

 ………()()ねぇ。シルヴィアも俺も残りの星辰力は普段の四割ぐらいといったところか。相手が三分という短期戦を望むなら、俺も()()を使うしかない。三分なら、ギリギリ保ってくれるだろう。

 

 

「シルヴィ、俺が奴の隙を作る。その隙を狙ってシルヴィは西園寺さんの煌式武装で奴の核に一撃を入れろ。今の俺が使える最後の切り札を使う」

 

「切り札って……まさか()()っ!?星露からは聞いてるけど、大丈夫なの?」

 

「任せろ、三分ならいけるさ」

 

 

 そう言い残して、シルヴィの横で俺は黄昏の夢幻剣(トワイライト・ファンタジア)を強く床に突き付ける。そして、残りの星辰力を使う勢いで、自身の星辰力を周囲へと充満させていく。

 

 これで、俺の能力が100%通じる領域は確保した。

 

 シルヴィやヴァルダも領域内にいる。

 

 後はこいつの出番だ。

 

 

「夢幻の彼方より顕現せよ!()()()()()っ!!」

 

 

 その瞬間、黄昏の夢幻剣(トワイライト・ファンタジア)の黄色い装飾は一気に黒くなり、全てが黒い一つの黒剣が完成する。

 

 

 だが、変化はそれだけではない。

 

 

 俺の後ろに、黄昏の夢幻剣(トワイライト・ファンタジア)の能力で顕現させた黒衣のマントと黒衣の鎧、そして鴉のような黒い羽を纏った3m程の人の形をした存在が姿を見せる。

 

 

 

 

星霊(アニマ)顕現……これが最後の切り札だ」

 

 

 

 

 

 




次回で星霊(アニマ)の解説入ります
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