歌姫に拾われた俺がアスタリスクで生活をするのはまちがっているだろうか。   作:リコルト

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いつのまにかお気に入り数が300越え!?マジかと思い、食べていたシュークリームを落とした作者です笑。本当にありがとうございます!

それでは本編をどうぞ!


能力検査と覚醒

 

 

「あら、新宮君。待っていたわよ。昨日の体調不良はもう大丈夫かしら?」

 

「はい、もうすっかり大丈夫です」

 

 翌日の朝、俺は先日の待ち合わせ通りにペトラさんが指定した学園内のある場所へと赴いていた。その場所はまるで研究所を思わせるような色々な多くの機械が設置され、今日の俺みたいに魔術師や魔女の能力の検査や純星煌式武装と呼ばれるものの検査をする場所だとか。

 

「そう言えば、八幡君。私が先日渡した服を着てくれたようね。サイズは大丈夫そうかしら?」

 

 そう言って、ペトラさんは俺が今着ている服に目を向けて訊ねる。昨日は動きやすい服でランニングをし、そのまま体調不良でこの服を着る機会が無かったが、今日は理事長であるペトラさんにも会うという事で初めて彼女から貰った服に袖を通したのだ。あまり経験の無い黒いスーツだったが、サイズもぴったりで鏡を見てもマネージャーとしてあまり違和感の無い姿だ。黒い革靴も靴擦れは全くしない程俺にフィットしている。

 

「全然大丈夫です。ペトラさんが言っていたようにかなり動きやすいですね」

 

「うふふ、それは良かったわ」

 

 研究室みたいな場所で検査をする機械の準備をペトラさんとお話をしながら待っていると、見慣れた紫髪の少女も部屋に入ってくる。 

 

「やぁ、八幡君。気分はどうかな?」

 

「一日寝たら、もうすっかり大丈夫そうだ。それに何故だか知らないが、身体がいつもより動きやすい。シルヴィには迷惑をかけたな」

 

「気にしないで。八幡君の体調が良くなるのが一番だから。それと八幡君の言ってた界龍の人に関しても私とペトラさんが無事処理したから大丈夫だよ」

 

 それを聞いて俺はホッと一安心する。シルヴィに迷惑をかけた件とアスタリスク来て早々に他学園の生徒と無断に接触した二つの件についてだ。特に後者は二人に険しい形相で説明をもとめられたが、何事もなく解決して良かった。

 

 それにしても、あの女児は何者だったのだろうか?アスタリスクの事情に詳しいシルヴィとペトラさんなら何か知っているかもしれないが、無事終わった事を掘り下げてまた問題を起こすのは当事者として嫌だから黙っておこう。あの女児も近い内に会おうみたいな事を言っていたから、もし会えたその時に名前でも聞くとしよう。

 

「お三方、検査の準備が終わりました。ささ、新宮様はこちらの椅子に」

 

「え、あ、はい。分かりました」

 

 昨日襲ってきた女児について考えていると、白衣を着た高齢の女性が話しかけてきた。どうやら、検査の準備が完了したらしく、俺は彼女の指示通り指定された椅子に座った。

 

 座ると、同じく白衣を着た研究員らしき者達に顔や首や手などに電極を貼られる。話を聞くと、俺の場合は五感を変化させる能力だから、こうして脳波などを検査するのが手っ取り早いとか。

 

 

「さて、新宮様。早速、検査を始めますね。ゆっくりと星辰力を込めてください」

 

 

……………………

 

 

 

……………………………………

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

「理事長、結果が出ました」

 

 検査が終わり、一人の研究員が検査の結果を写し出した紙をペトラさんに渡す。

 

「やはり………各神経に星辰力による影響があったようですね。新宮君、貴方はやはり自身の五感を変異させる力を持つ魔術師のようですね」

 

「なるほど、そうですか」

 

 検査から解放された俺は身体に貼り付けられた電極を外しながらペトラさんの言葉に頷く。こうして、俺の昔からの悩みだった五感の変化は魔術師の力であることが確定した。これなら、しっかりトレーニングをすれば自由に操れるようになるとか。

 

「待って!今度は私も検査をして頂戴!」

 

「えっ………?」

 

 突然待ったをかけたシルヴィの言葉に思わず電極を外す俺の手が止まる。俺だけじゃない。唐突な彼女の提案にペトラさんや他の研究員も俺みたいに驚きを隠せない様子であった。

 

「シルヴィ。貴女はすでに自分の能力が分かっているでしょ。どうして検査をするの?」

 

「良いから良いから!あっ!八幡君、検査中私の手に君の星辰力を流してくれるかな?」

 

「えっ、わ、分かった………」

 

 ペトラさんの疑問を余所に、シルヴィは先程の俺みたいに電極を着けていく。俺としても彼女が検査をする意味が全然分からないが、ひとまず彼女に言われた事をしよう。

 

 うわっ、シルヴィの手やわらかっ。めっちゃ綺麗だし、美容にかなり気を遣っているのがよく分かる。というか、同い年の女子の手を握るって何だか恥ずかしいな。

 

 

「うん?八幡君、顔赤いけど大丈夫?」

 

 

「え、だ、大丈夫……だ。は、始めても良いぞ」

 

 

 俺がそう言うと、シルヴィは早速検査をする研究員に検査を始めて良いよと指示を出す。検査が始まると同時に俺は星辰力をシルヴィに注ぎこむ。

 

 

 すると………

 

 

「えっ!?こ、これはっ!?」

 

 

 検査をしていた研究員が声をあげ、

 

 

「わっ!すごい!遠くの物まで綺麗に見えるよ!」

 

 

 シルヴィがジェットコースターで興奮するような様子で周りを見渡し始める。

 

「新宮君!君はそのまま続けて!」

 

「は、はい!」

 

 この二人の反応にペトラさんや検査に協力していた研究員は一斉に星辰力の動きを見る機械へと駆け寄る。俺はペトラさんにこのままシルヴィの手を握ってなさいと言われたけど、何があったのだろう?

 

「こ、これは……!?」

 

「はい、八幡君の星辰力がシルヴィアさんの五感、現在は視覚に影響を与えています。八幡君の能力は自身、そして相手の五感変化です!」

 

 

……………………………

 

 

 

………………………………………………

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

「えっ?接触した相手の五感変化?」

 

「そう。八幡君には自身の五感を変化させる能力の他にも相手の五感も変化させる能力を持ってるんだって。といっても、五感の変化は八幡君の星辰力によるものだから変化させたい相手に一度八幡君に触れさせるか、星辰力による攻撃を与える必要があるけどね。簡単に言えば、魔術師の設置型能力に近いかな?」

 

 無事に検査が終わり、俺はシルヴィから新たに分かった俺の能力について説明を受けていた。その隣ではペトラさんもそれに耳を傾けている。

 

 まさか、俺にはそんな力があったとはな。自分の星辰力を相手に付着させるために一度は接触等をする必要はあるが、相手の五感を変化させられるなんて自分が恐ろしい。だって、ムカついた相手の五感を簡単に弄れるんでしょ。失明とか難聴とか何でも出来るやん。俺は絶対そんな廃人大量生産みたいな事はしないけど。

 

「けど、自身の五感の変化は今までにもあったが、いきなり他人が失明したりするような出来事は周りで起こった覚えは無いぞ?」

 

 もちろん、やった覚えも無いけど。

 

「恐らく、昨日の出来事が原因だね。八幡君の話では見知らぬ人に星辰力の流れを刺激するツボを押されたらしいけど。実際、八幡君の星辰力はアスタリスクに来る前より全然多いよ。さっき、八幡君が身体がいつもより動くと言ってたのもそれのせいだね。今なら、八幡君も星脈世代と変わらない身体能力を簡単に引き出せると思うよ」

 

「………マジか」

 

 昨日は見知らぬ女児によって本当に散々な思いをしたが、あの槍が刺さったような激痛がするツボ押しはまさか本物だったとはな。体調が戻ってからやけに身体が軽かったのもそのせいだったのか。

 

「やけに新宮君の能力について詳しいじゃない。誰にその情報を聞いたのかしら?」

 

「誰って一人しかいないでしょ、万有天羅だよ。昨日の夜に連絡して、その時に八幡君の能力について詳しく聞いたんだ」

 

「まったく……勝手なことを」

 

「あの、万有天羅とは……?」

 

 二人の会話に置いていかれた俺は二人の会話内で飛び交う『万有天羅』という言葉について二人に訊ねた。何かの名前なのは分かるんだが……。

 

「あっ、そっか。八幡君はまだ知らないんだね。各学園で序列入りした人にはその人の特徴に合った二つ名が与えられるんだ。私には戦律の魔女(シグルドリーヴァ)っていう二つ名があるのは知ってるよね?」

 

「ああ、まぁな。ということは万有天羅も?」

 

「そう、それもアスタリスクの中で数ある二つ名の一つなんだけど万有天羅は特殊でね」

 

「特殊?」

 

「万有天羅っていうのは二つ名でも異質な継承される二つ名なんだ。そして、その二つ名にはアスタリスク最強の意味が込められているんだ。アスタリスクにいる星脈世代でもその名前を聞くだけで、大抵の人は怖いと思うぐらい。それに万有天羅はあまり表舞台にも出てないから、一部では都市伝説になるぐらい謎の存在なんだ」

 

 へぇー、アスタリスクにはそんな化け物もいるんだな。表舞台に出てこない最強の人物とかやはり仙人みたいな男とかなんだろうな。

 

「あれ……でも、何でそんな存在が俺の能力の話に出てくるんだ?見知らぬ女児には会ったが、その万有天羅っていうのには会った覚えは無いぞ」

 

「あー、最初の時はやっぱり誤解しちゃうよね。八幡君……驚かないで欲しいんだけど昨日出会ったその子が万有天羅なんだ」

 

「えっ……?」

 

 それを聞いて、俺は思わずフリーズしてしまう。

 

「えっ、昨日に俺にいきなり手刀飛ばしてきて、変なツボを押してきたあの女児が万有天羅?」

 

「うん。正確に言えば、界龍序列一位兼生徒会長で、三代目万有天羅、それが昨日八幡君が出会った女児の正体、范星露だよ」

 

「…………嘘やん」

 

 アスタリスクに来て、俺そんなヤバい人に接触してたのかよ!?いきなり手刀飛ばすあたりすでに十分ヤバいけど。というか、さっきの俺の仙人みたいな万有天羅のイメージを返してくれ。口調は確かに仙人ぽかったけどさ!

 

「えっ……でも、一応他学園の生徒会長だよね?どうしてそんな人物が俺の元に?」

 

「星露はかなりの実力者や将来性が望める生徒に他学園であれ、興味本位で接触するから。私も未だに何回か彼女に弟子にならないか勧誘を受けてるけど、稽古を星露が直々につけてくれるってなかなか無い事だね。八幡君は星露に気に入られたんだよ」

 

 うわー、マジか。あの女児……いや、万有天羅の稽古とか昨日のより絶対にヤバそうじゃん。身体とか一部持ってかれるとかしないよね?

 

 シルヴィから突き付けられる怒涛の衝撃事実ラッシュに遠くを見るように白くなっていると、今まで黙っていたペトラさんが手をパンパンと叩く。

 

「万有天羅の話はもうその辺にしておきましょう。新宮君の稽古の話は現在検討中ですので。こちらから何もしてこなければ、彼女も接触はしてこないでしょう。今は新宮君の今後の話をしましょう」

 

 おっ、どうやら万有天羅の稽古の話は内密に検討中らしい。急に来週から稽古をしようという話が無くなったため、心の奥で思わずホッとしてしまう。

 

「どうやら、新宮君は私が想像している以上のポテンシャルを持っているのが今日判明しました。貴方ならシルヴィのマネージャーはもちろん、ボディーガードとしても十分な力を発揮できるでしょう」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「ですが、新宮君には星脈世代としての戦闘経験が圧倒的に不足しています。そこで、手が空いたベネトナーシュの一人に新宮君の指導をお願いしようと思います。よろしいですね?」

 

「はい、分かりました」

 

 へぇ、まさか戦闘の指導をしてくれるのか。ベネトナーシュの人物といっていたが、一体誰になるんだろうな。ペトラさんの口調からしてもかなり信用しているような口ぶりだったし。

 

「それとシルヴィにお願いがあります。明日、新宮君の煌式武装の買い物に付き合って頂けませんか?新宮君の恩師の友人が経営する店があるのですが、再開発エリアの最寄りにあるそうなんです。昨日みたいな出来事があると、大変ですから」

 

「分かったよ!ペトラさん!」

 

 

 明日は戦闘で使う武器の買い物か。どんな武器が良いかよく分からないし、シルヴィに来て頂けるのは非常に助かる。昨日の悲劇みたいな出来事も起こらないだろうし。

 

 

 

 





次回は八幡の煌式武装の話ですね!
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