アズールレーン ─メイドインアビス─ 作:志生野柱
ふぁ、ファンアートというか挿絵的な何か貰っちゃった!
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11話、ボ卿が脱走した赤城と加賀に襲撃された直後ですね。素晴らしい・・・と聞こえてきました(自分で言ってる説もある)
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通常の青いものとは違う、赤いメンタルキューブ。
二人にとって──いや、アビスに属する者全てに否応なく過去を想起させるそれは、ボンドルドが長年探していたものでもある。
「存在偽証・・・非存在の模倣。やはりセイレーン側の技術でしたか。」
数年前。まだボンドルドが重桜陣営に属していたころの話だ。
セイレーンの上位個体、中層程度と目されるそれにすら苦戦していたころ。多大な犠牲を払って討伐した上位個体が、これと全く同じものを持っていた。
それを奪取したとき、それは独りでに展開され一人のKAN-SENが誕生した。
彼女の名はフリードリヒ・デア・グローセ。存在するはずのないKAN-SENであり、ボンドルドが目指すKAN-SENの終着点でもある。
その強さは空前と評され、複数の鏡面海域の単身踏破、ボンドルドに随行してのセイレーン前線拠点奪取も成し遂げた。その時に拿捕した拠点が今の『
だが『存在しないはずの存在』である彼女は、あるとき忽然と姿を消した。
埋め込んだバイタルモニターは依然として生存反応を送信し続けているが、位置情報などは一切不明だ。
ボンドルドは赤いメンタルキューブを手に取るが、何も起こらない。
ビスマルクが怪訝そうな顔になったのを見て、テスターは苦笑した。
「あれは特殊な例よ。完成寸前だったのを、貴方たちに奪われたから
それだけ言って、テスターは立ち上がる。
これ以上のヒントはないと行動で示し、ドアノブに手を掛ける。「あぁ、そうだった」と思い出したように振り返り、テスターはローテーブルを示す。
「その汎用メンタルユニットと架空キューブはレイからの
「・・・本当に、感謝の念に堪えません。レイにもそう伝えてください。」
ボンドルドは立ち上がってテスターを見送った。
◇
リュウコツ技術の根幹となるブラックボックス、淡く輝く青い箱状物質は、メンタルキューブと呼ばれている。
それらは一般には流通せず、KAN-SENにより収集されアビスが管理している。一部例外があるとすれば、計数外のメンタルキューブを多数所持している、つまり、収集時にアビスへ報告していないボンドルドくらいだ。
メンタルキューブはKAN-SENを建造──ドロップのように運任せでなく、艦種や強さを指向して入手するときに必須となる物資だ。また、その構成要素は殆どが不明。分かっているのは、それらの構成要素がKAN-SENの肉体や艤装のそれと同じということのみ。
故にその秘匿所持や密輸入は厳しく禁じられている。
ボンドルドには関係のない政治的な扱いはさておき、物理的な性質はボンドルドにとって興味深いものだった。
電気的・化学的に中性であり、常に摂氏20度前後になるという恒温性を持つ。耐圧性、剛性、硬度が極めて強靭であり、加工は困難とされる。
しかし、建造ドックに素材として装填された場合、独りでにKAN-SENを製造──創造と言っていいほど未知の、解析不能のプロセスで──する。
そしてメンタルユニットもまた、同様の性質を持っていた。
あらゆる解析・加工手段を受け付けず、KAN-SENへの導入方法も、安定した供給方法も不明。一応、ドロップ艦を数名、脳を重点的に解剖してみたが、それらしいものは発見できなかった。
テスターからメンタルユニットを受け取ってから3週間。これほどの期間、一歩の前進もないというのは、ボンドルドにとって初めての事だった。
ボンドルドの才能。ボンドルドの努力。KAN-SENたちが作り上げた環境。そのどれもが、人類側の最高峰。頼れるような先人は居らず、見通すこともできない闇の中を歩き続ける。
それは、何とも。
「──素晴らしい。」
元より、人類が踏み入れることすら拒んだ道。
同道も先導も不在で当然。その外道も、人類が行くと決めた正道も、遍く照らす黎明。
それこそがボンドルド。遮ることも逃げることも敵わぬ夜明けの光。
なればこそ、彼は賛美する。
その未知を、その障害を、尽きぬ興味と探求心故に称賛する。果ての見えぬ旅路ならば、障害は多いほど、起伏は激しいほど楽しめるというもの。
「次の生体を持ってきて頂けますか、ビスマルク。」
「分かったわ。次は何を?」
ボンドルドは心底楽しそうに、仮面の口元を押さえる。
「KAN-SENの精神構造を検証します。なるべく身体が強靭で、精神が脆い個体がいいですね。」