アズールレーン ─メイドインアビス─   作:志生野柱

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 いやー・・・思ったより難しいですね、ループもの。
 ループを意識しすぎると過剰描写になるし、その結果だけを描写すると今度は薄っぺらくなるし。上手い人のを参考にしようと色々漁っていた結果、自信喪失して遅くなりました(言い訳)


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 時間逆行能力。

 とても便利な力だ。何が原因でこの力が発現したのかなどどうでもいい。問題はどう使うかだ。

 今のところ、ダイドー以外の人間とKAN-SENの行動はすべて一致している。だからこそ、あのオミッターの一撃、不可避の速度で到達する防御不可の光を躱すことも可能だった。

 

 この力があれば、きっとオミッターを無傷で倒すこともできる。

 ボンドルドの役に立てる。ダイドー自身の、実力以上に。

 

 「ご主人様、ダイドーは頑張ります!」

 「それは頼もしい。ですが、二時間は安静ですよ。」

 

 

 ◇

 

 

 ツェッペリンとシュペーに砲弾を撃ち込む。勿論大したダメージはないだろうが、勢いを利用することは出来るはずだ。

 視界の端で驚きの表情を浮かべる二人の安否を確認し、ヒッパーを一瞥する。

 

 「・・・やるじゃない。」

 「恐縮です。」

 

 獰猛な笑みをそのままに、ヒッパーは一つ頷く。

 砲弾に押された二人の眼前を通り過ぎた光線と、挟み込むような二本の光。

 多少なりとも損害を与えていたはずの、予想外の一撃。それをダイドーが的確に回避させた、と、百戦錬磨の鉄血艦たちは理解していた。

 

 「今のが限界数だと仮定して動くのは危険です。倍の6本まで警戒して進みましょう。」

 「えぇ、そうね。」

 

 ティルピッツの同意を得て、ダイドーは海面を移動する。何周か前にティルピッツ自身が言ったことだ、同意は当然なのだが。

 知っている。この戦場のほぼ全てを、ダイドーは把握している。

 

 首を傾げれば砲弾が通り過ぎ、進路を変えれば元の軌道が光に呑み込まれる。

 

 優雅なまでに敵の動きに対応した──いや、未来を知っているかのような予測回避。殺気に反応する鉄血のKAN-SENたちの更に先を行くダイドーに、もはや友軍意識はなかった。

 ここまで近付けば、オミッターの狙いはダイドー一人に集中するからだ。

 

 「な、んなんだよ、テメェは!」

 

 遠く、吠えるオミッターの姿が見える。

 まだ攻撃してはいけない。この距離から撃っても効かないことは知っている。

 

 「・・・。」

 

 答えてはいけない。ここで呼吸を無駄に使うと、次の攻撃にコンマ数秒間に合わない。

 

 「───ッ!!」

 

 至近距離での攻撃を回避し、有効打にはなり得ない砲撃をぶつけて体勢を崩させる。

 苦し紛れのオミッターからの砲撃は躱し、もう一度。次の光が来るまで5秒ある。今のうちに装填しておきたいが、それは前回の死因になった攻撃だ。落ち着いて対処することにする。

 

 「・・・。」

 

 撃ってこない。

 前回の攻撃がダイドーの見せた隙をフラグとした受動的行動であったと知れただけで収穫だ。

 ここから先は未知の範囲だ。未来知が無くなった以上、練度70の身に出来ることは多くない。なるべく情報を集めて次に生かそう。

 

 「───テメェは、あたしの知ってるダイドーとは違うな。」

 「そうですか?」

 

 オミッターの正面に立つと、壁のような威圧感が襲ってくる。

 これが皆の言う「殺気」なら、読めるはずもない。面で襲ってくるそれから、どうやって攻撃の軌道を読むと言うのか。

 

 「あたしの知ってるダイドーはもっと、こう・・・弱っちい奴だったよ。テメェと同じくらいの練度だったけど。」

 「そうらしいですね。ご主人様に教えて頂きました、ロイヤルの私も練度70だと。」

 「鉄血のテメェは、何を見たらそうなるのやら。」

 

 オミッターの思い浮かべるものと、ダイドーの思い浮かべるものは違う。・・・いや、広い意味では同じか。

 ボンドルドの実験の果てに在る、凄まじいまでの強化か。

 自分で積み上げた、自分自身の骸が見せる未来知か。

 

 「死を。」

 「死か。」

 

 同時に応え、砲撃する。

 砲弾と光、先に到達するのは、当然ながらオミッターの一撃。

 

 確実に命中する距離で、確実に命中する軌道の砲弾。それもろともに、ダイドーの身体は枢機に還された。

 

 

 ◇

 

 

 「19時ジャスト、覚醒。予定通り。バイタル異常なし。・・・おめでとうございます、ダイドー。これで君も不死の艦隊(エインフェリア)の仲間入りです。」

 「ありがとうございます、ご主人様。不快感や倦怠感、その他自覚できる異常はありません。」

 「──それは良かった。ですが念のため、二時間は安静にしていてくださいね。」

 「はい。明日にでも出撃できるよう、休息を摂っておきます。」

 

 この会話は何度目だっただろうか。ギリギリ不自然にならず、かつボンドルドの時間をなるべく奪わないように物分かりよく受け答えする。

 物分かりが良すぎると心配されるし、情報漏洩を疑われることもある。一度は営巣送りになった。

 逆に質問などをしてしまうと、ボンドルドは答えてくれるが、時間を奪ってしまうことになる。心が折れそうなときだけ、と決めていた。

 

 「ふぅ・・・」

 

 目を閉じ、思索に耽る。

 この時間に外へ出るとボンドルドやビスマルクに連れ戻されるため、演習はできない。だが前回の反省点を洗い出し、今回の立ち回りを洗練するのにはちょうどいい時間として有効活用していた。

 

 「オミッターの前に立つ。やっと、ここまで来れた・・・」

 

 ここに至るまで50回以上も死んでいる。

 だがリセットされ練度の上昇が見込めない以上、ダイドーの攻撃ではオミッターに対する決定打にはならない。

 ダイドーに出来るのは、オミッターの一挙手一投足を知り、対処し、ツェッペリンたちが追いつくのを待つことだ。相手にとって最有力の脅威となり、しかし絶対に対処されない最強のデコイとして。

 

 「──失礼、ダイドー。言い忘れていました。」

 「あ、はい。何でしょうか、ご主人様。」

 

 ルーチンとなった会話をしたつもりだったが、抜けでもあっただろうか。

 同じ世界を何周もしていると、有用な過去の蓄積にばかり集中して、戦場で使えない現在を疎かにしてしまうことがある。それが死因になったことは未だないが、ボンドルドには失礼だ。

 伝えられるはずのない謝罪は胸の内に押し込め、扉を開けたボンドルドの仮面を見る。

 

 「明日には出撃してもらうことになります。」

 「──はい、ありがとうございます、ご主人様!」

 

 知っている。何処に行くか、誰と行くか、何故行くか。・・・どう死ぬか。知りすぎるほどに。

 だが、ボンドルドと話すのは好きだし、原動力にもなる。それに──もはやルーチンとして無意識下に置かれていたが、やはり必要とされるのはいいものだ。 

 

 ──ご主人様は、私を必要としてくれた。

 ──第二艦隊のみんなを、私は助けられる。

 

 願わくば、誰一人欠けることなく。その為になら、文字通り死んでもいい。

 

 

 

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