アズールレーン ─メイドインアビス─   作:志生野柱

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 感想と評価を読んでいる瞬間が、一番生を実感する! ので、今後とも感想、評価お待ちしております。

 いつも感想くれる探窟家・指揮官兄貴姉貴たちには超感謝してるよ! モチベとか着想とか笑いとかいっぱい貰ってるよ!

 評価してくれた探窟家・指揮官兄貴姉貴たちにも超超感謝してるよ! 赤いバーを見るだけでもう・・・感謝やな!

 おもんな、と思ってもそっとお気に入りを外すだけで低評価せずに立ち去ってくれた思いやりある探窟家・指揮官兄貴姉貴たち・・・人の鑑やで。

 そしてアズールレーンとメイドインアビス、両方あるいは片方にまだ触れていない兄貴姉貴たち・・・アズールレーンは3周年キャンペーン中で、メイドインアビスはそろそろボ卿の活躍する劇場版のBDが出るよ!(ダイマ) 原作漫画版なら3巻~5巻がボ卿の活躍するシーンだよ!(ダイマ)


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 KAN-SENの攻撃が人間相手にどれだけの威力を齎すのか、実体験として知っている者は、実はそれほど多くない。

 「人を守るもの」であるKAN-SENという兵器が、人に対してその力を振るったことは──公式記録上は──ない。だが、考えずとも分かることだ。軍艦の持つ破壊力は、時に大地を引き裂くことすらある。人体など、障子紙ほどの抵抗もなく木っ端微塵に出来るだろう。狙って攻撃しなければ、巻き込んだとしても気付くことすらない。

 それが、人間とKAN-SENの間にある、絶対的な力の差だった。

 

 そう、この時までは信じていた。

 

 砲弾と魚雷と爆弾と銃弾。人体どころか戦艦でも沈む量の火力が集中し、黒衣が爆炎に消える。熱量が海面を撫で、大きな水柱が上がった。

 雨となって降り注ぐ海水が、立ち昇る炎と煙を沈める。張り付く髪を乱暴に払い、アークロイヤルは漂う煙に目を凝らした。

 

 「・・・やったか?」

 

 その言葉に反応したように、ぱち、ぱち、と、緩やかな拍手が響いた。

 

 幾人かが驚愕に震え、幾人かがアークロイヤルに恨めし気な視線を向ける。

 

 「素晴らしい連携でした。以前の私であれば、きっと倒せていたでしょう」

 

 薄れた煙と黒衣を隔てる、陽炎のような幕。アークロイヤルにも見覚えのあるそれは、特に前衛艦隊の面々と、イラストリアスに大きな動揺を齎した。

 数人のKAN-SENの「裏切りか」という猜疑とイラストリアス自身が抱いた「誤発動か」という疑念は、アークロイヤルの叫びが拭い去る。

 

 「今のは・・・あの時と同じ? やはり、KAN-SENのスキルを!?」

 「イラストリアス姉様の『装甲空母』? ・・・でも、あれは前衛艦隊のKAN-SENにしか効果が無いんじゃ?」

 「まさか、黎明卿・・・貴方は──いや、在り得ない! ヒトがKAN-SENになるなど、あるはずがない!」

 

 自分や味方への疑念が晴れれば、残るのは敵への畏怖だ。イラストリアスのスキルは限定的な無敵化であり、それが味方であれば心強いが、敵になれば面倒なのは演習で散々思い知っている。

 完全に煙が晴れ、降り注ぐ海水も止んだ。

 

 「えぇ、その通りです。私は今でも人ですよ」

 

 ふざけるな、と叫ばなかったのは意地に依るものだ。一体どこの世界の人間が、12隻の軍艦からなる連合艦隊による一斉攻撃を受け、無傷で居られると言うのか。ファンタジーの世界に帰れと言いたくなる。

 

 かちゃり、という装填音が再び鳴る。しかし、今度はそれだけではなかった。

 空気圧による排出音と、何かが海面に落ちる水音。ゆっくりと振り向いたボンドルドの視線は仮面によって伺い知れないが、アークロイヤルは慈愛と労いを感じ取った。

 

 「お疲れさまでした、イラストリアス」

 

 ゆっくりと沈んでいく箱状の物体は、湯気を上げて排熱している背中の機械から今まさに排出されたものか。

 その正体を知っているのは、厳重な緘口令の内側に居た二人。過去に前線基地でそれを発見したキュラソーから直に聞いたカーリューと、ウォースパイト激発の理由を尋ね、答えを得たアークロイヤルのみ。

 

 「・・・?」

 

 怪訝そうに首を傾げるイラストリアスには、絶対にそれの正体を教えてはいけないな、と、アークロイヤルは秘かに決意する。

 同時に──眼前で彼女を使い捨てたボンドルドを、絶対に許してはいけない、とも。

 

 実際にはスキルカートリッジは一回きりの使い捨てではなく、一定回数での使い捨てなのだが、それを知ったところでアークロイヤルの決意は変わらないだろう。

 

 「素晴らしい」

 

 睨み付けられたはずのボンドルドが発したのは、心からの称賛だった。

 素晴らしい、なんと素晴らしいと繰り返す身体は、どう見ても歓喜と感動に震えている。そこに嘲りや挑発の気配は微塵もなく、男は確かに、アークロイヤルの決意を讃えていた。

 

 「素晴らしい友情、素晴らしい絆です。なんと美しいことか」

 

 それが心からの誉め言葉であると理解してもなお、アークロイヤルの心に浮かぶのは嫌悪感と憎悪だけだ。

 隷下の艦載機に再度の一斉攻撃を命じる。いまイラストリアスを捨てた以上、無敵化などという反則じみた防御は無いと信じて。

 驚愕から立ち直れたのは、特に練度の高い数隻のみ。それでも直撃すれば、人体など跡形も残らない火力になる。

 

 「各位、再度全力攻撃!」

 「じっとして──え?」

 

 フォーミダブルのスキルは、あらゆる行動に必要な速度を奪う。

 攻撃の起点であり切り札でもあるそれを再行使しようとして──その上体が切り裂かれた。

 ボンドルドの肘付近から伸びる、光の線。その輝きは、ロイヤル陣営にとっては未だ討伐回数が一桁しかない最上位の難敵、ピュリファイアーの主砲に酷似していた。

 

 「枢機に還す光(スパラグモス)

 

 フォーミダブルの身体が碧い粒子へと変わり、焼き切れて爆発する空気に吹き散らされる。

 だが──皮肉にも、その光景はアークロイヤルたちロイヤル陣営の高練度艦にとって、慣れることは無くとも知っているものだ。損耗数の少ない重桜や鉄血のKAN-SENよりも、ユニオンやロイヤルのような量の戦力に任せた海域攻略をしてきた陣営の方が、仲間の死を乗り越えて戦った経験は豊富だ。

 

 動揺は一瞬。スキルによる行動阻害は無いが、その一手は自ら回避に使う時間を浪費した。

 その代償は、仲間の命の対価と共に贖わせる。

 

 「沈め、黎明!」

 

 激情と共に叩き付けられる、砲弾と魚雷。先ほどより火力量は落ちるが、それでも人が通るような隙間は無い。

 再度、爆炎がスクリーンとなり──それが晴れるより先に、アークロイヤルが命じる。

 

 「総員、次弾装填次第攻撃を続行せよ!」

 「──いい判断ですね」

 「ッ!?」

 

 穏やかながら、歓喜と称賛を含んだ声。

 それは、アークロイヤルの背後から響いた。

 

 黒衣を汚すこともなく立っていた長身に、ほぼ全方位から攻撃が殺到する。

 

 背中の機械が駆動音を上げたかと思えば、スパークを散らしてその姿が掻き消えた。

 

 「今のは、エルドリッジの・・・?」

 

 ユニオンの駆逐艦エルドリッジは、未だ不明瞭な部分の多いKAN-SENの中でも、特に異能と言うべき力を持っている。超高電圧高電流は、レーダーからの隠匿のみならず、物体の浮遊や瞬間移動を可能とする。初撃で見せた超高速移動も、これを見せられれば納得だ。

 

 「『レインボープラン』ですか。黒くてすばしっこいとは、本当に害虫のような方ですね」

 

 驚異的な能力ではある。

 だが、それも初見ではない。ロイヤル陣営とユニオン陣営は友好関係だ。陣営間演習では何度も見たし、そう長い距離を移動できないのも、移動前と移動後の位置にスパークが生じるのも既知の範囲。

 シェフィールドの照準は、既に出現位置に合わせられていた。

 

 「素晴らしい、仲間を失っても冷静さを欠かないのですね」

 

 しかし、単騎による砲撃は点攻撃だ。一定以上の密度が無ければ面攻撃の隙間さえ縫う蛇のような相手には、たとえ予測射撃であろうと意味を為さない。

 シェフィールドの初撃と、続く断続的な攻撃を軟体動物の動きで避けながら、ボンドルドは拍手する。

 

 「本当に、本当に素晴らしい。仲間を失おうと、その骸に縋るのではなく仇討ちを以て魂の安寧を願う。それも、これほどまでに力まず自然に。素晴らしい練度、素晴らしい絆、素晴らしい愛慕です」

 「嬉しくないな!」

 

 再び『枢機に還す光』を起動しようと腕に手を伸ばしたのを見て、させまいと距離を詰める。

 基礎レベルの近接格闘術とはいえKAN-SENの膂力であれば殺人術だが、相手の馬力や耐久力もKAN-SEN並み。一方的な蹂躙どころか技量を競い合うことになるが、それでも即死の威力を持つ光剣と斬り結ぶよりはずっとマシだ。

 

 「判断は悪くありません。ですが──」

 

 二度、三度と攻撃をいなされ、技量の違いを察した時だった。

 ボンドルドが腕を引く。それは肘がこちらを向かないことを示すが、それは、死線上から逸れたということにはならなかった。

 アークロイヤルがこれまでに感じた死の気配で、最も恐ろしかったものと同質の──オミッターのそれと同じものを感じる。

 

 オミッターは、セイレーンの上位個体でも屈指の強者だ。交戦経験──いや、交戦などと言う大層なものではなく、一方的な蹂躙と敗走だった──があるのは、その敗残兵であるアークロイヤルとイラストリアスのみ。

 だが、その死神の鎌の気配と鋭利さは、この場の全員に伝わった。

 

 「アークロイヤルっ!」

 

 その叫びは誰のものか。極限の集中と絶望が齎した鈍重な時間で、それを測るなど無駄なことはしない。

 ボンドルドが向けた掌、その中心部に開いた空虚な砲口から逸れることだけを考え──衝撃が走る。

 

 頭が吹き飛んだわけでも、胴体に穴が開いたわけでもない。

 ただ、横腹を強く圧されて──気付けば、死線上には自分ではなく、押し退ける姿勢のカーリューが晒されていた。

 

 黒紫の装甲に似合わず、掌の砲口から漏れる光は太陽のように暖かだった。

 

 「『火葬砲(インシネレーター)』」

 

 溢れ出た極光が、死線諸共にカーリューを呑み込んだ。

 

 

 

 

 

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