アズールレーン ─メイドインアビス─   作:志生野柱

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 むみぃ~(デアラの新作ゲームでボロ泣きした顔) って感じだったので遅れました。


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 所属が『アビス』から『レッドアクシズ』に変わっても、ボンドルドのやることは変わらない。

 それすなわち、研究と開発(R&D)

 

 鉄血陣営は機械工学や電子技術の面では世界屈指のクオリティを誇る陣営だった。そして重桜もまた、単なるコピー品ですらオリジナル以上のクオリティに仕上げる、偏執的なまでの職人気質で有名な陣営だ。

 違う部分も勿論ある。鉄血陣営の持つ技術が「科学技術」だとすれば、重桜の持つ技術は「非科学的技術」。重桜はワダツミの神秘や桜の加護といった、既存の科学の範疇を逸脱したブラックボックスであるリュウコツ技術、その中でも特に不可解な精神や非存在分野に長けていた。

 

 だからだろうか。

 KAN-SENの艤装と身体を弄りつくし、あらゆる技術を以てKAN-SENを強化してきたボンドルドが、()()に気付いたのは。

 

 所詮は兵器であるKAN-SENに与えられた、思考プログラムに生じたある種バグのようなモノ。

 時に判断を高速化し、時には遅延させ。精度を落とし、短絡的で非合理的な思考を齎し。愚かしく、悲しく、愉快で、美しい。

 兵器であるKAN-SENに不要なはずの感情の中で、最も不要で最も大切な──

 

 「愛です。愛ですよ、ビスマルク。君たちKAN-SENは、我々人間と同じように、極めて非合理的で、それゆえに美しき深い精神的な繋がり──愛によって、その力を最大以上に発揮できるのです」

 

 心底嬉しそうに熱を込めて語るボンドルドとは別の意味で、ビスマルクの心中は穏やかでは無かった。

 

 ボンドルドが重桜を本拠としてからまだ数週間といったところだが、環境の違いなど関係ないと示すように新技術を開発したのは素晴らしい。それはビスマルクとしても頭が下がるし、一層の敬意を抱こう。

 だが、その内容と時期が問題だった。

 

 ボンドルドが新たに開発した技術は、KAN-SENの精神にその根幹を置くものだった。

 KAN-SENの精神を媒介に能力強化を齎す、いわば精神感応型能力補助装置。小型化には成功しても体内移殖(インプラント)には出来なかったがゆえに指輪型に落ち着いた装置の形状から、それは“エンゲージリング”と呼ばれていた。

 

 以前に、ボンドルドはカートリッジの作動条件を特定の精神ステータス──信頼度とでも言うべき数値の多寡であると発見していた。境界となる数値は約90。

 今回の精神感応型能力補助装置の作動条件は、その信頼度の上限値である100。

 

 極限まで高められた信頼と親愛を要し、指輪型装置(エンゲージリング)という特徴的なデバイスを用いるその強化方法は、人類の慣習になぞらえて言うのなら。

 

 「結婚(Ehe)・・・?」

 

 ビスマルクの呟きは、興奮状態のボンドルドには届かない。

 

 ほぼ全員が練度120に至り、強化因子の摂取による能力値強化も終えたレッドアクシズにとって、強さは停滞するばかり。今後ますます苛烈になるだろうセイレーンの攻勢に抗うためには、一層の強化が必要だ。

 もう頭打ちともいえる肉体面ではなく、未だ未解明の部分が多い精神面からのアプローチは、ボンドルドらしい合理性だ。

 

 雌性か雄性かという区別の無意味な兵器であるKAN-SENだが、精神性だけを見るなら紛れもなく女性であり、結婚への憧れが無い訳ではない。

 レッドアクシズに属するKAN-SENたちも、ボンドルドと結ばれるというのであれば、その士気高揚効果は絶大だろう。ただ──

 

 「専属契約(リストリクター)とでも名付けましょうか。差し当たり、君とグローセ、大鳳と赤城辺りに導入しましょう」

 

 ここにきて、その合理性が仇となる。

 確かに数値的な戦力強化という一面を見れば、複数のKAN-SENに導入するのは当然だろう。

 だが士気高揚という面を見れば、誰か一人に絞った場合の方がどう考えても倍率が上がる。

 

 誰か一人。・・・まぁ順当に考えるなら、鉄血陣営の総旗艦であり、ボンドルド自身の副官でもあるビスマルク自身が──

 

 「ボウヤ、ちょっといいかしら? 明日の演習のことなのだけど・・・あら?」

 

 あっ、と、ビスマルクがそう漏らすのも無理はない。世界最高戦力であるフリードリヒ・デア・グローセといえば、ボンドルドの執務室にノックもなく入れる特権階級者だ。ボンドルドの信頼も篤く、ボンドルドに向ける情愛も深い。かなりの強敵だ。・・・あ、いや、勿論戦力的な意味で、と、誰に向けるでもない弁解を内心で垂れ流すビスマルク。

 

 悶々としたものを抱えるビスマルクに不思議そうな一瞥を向け、グローセは机に置かれていた指輪型デバイス、“エンゲージリング”試作一号機に目を留めた。

 

 「──あぁ、ごめんなさい。出直すわね、ボウヤ」

 

 白金とダイヤモンドのシンプルなデザイン──本質的には兵装なので装飾など一片も必要ないのだが、ボンドルドに言わせれば「ロマン」らしい──の指輪と、どこか興奮した様子のボンドルド。向き合い、動揺した様子のビスマルク。なるほど、完璧に近いシチュエーションではある。

 

 「いえ、ちょうどいいところに来てくれました。グローセにも、是非聞いて頂きたい」

 

 グローセの慈しむような視線が一転、怪訝そうなものに変わった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 「なるほど、ね」

 

 一を見れば百を予測出来るグローセにとって、ボンドルドの展望通りにことを進めた場合どうなるかなど、予測するまでもないことだった。というか、一を聞いて十を知る()()のビスマルクでも予想に難くない。

 

 「悪いことは言わないわ、ボウヤ。出来るだけ早く、その装置の形状を変えなさい」

 

 確かにそれなら、否応なく結婚を想起することはないだろう。

 そんなビスマルクの微かな落胆と大きな安堵を他所に、グローセが微かに顔を引きつらせて続ける。

 

 「私は──明石の身柄を押さえましょうか。尤も、もう()()()かもしれないけれど」

 

 あっ、と。再びビスマルクが漏らす。

 鉄血陣営と重桜陣営の、ボンドルドにとって最も大きな違いは、彼女──ボンドルドのような一点ものの開発ではなく、量産と販売であれば無類の才能を発揮する、明石の存在だろう。

 

 「そうですね。形状を変えるのであれば、明石に頼んだ指輪の量産も中止ですから」

 

 ボンドルドの言葉で背筋が凍ったのは、もしかしたら初めてかもしれない。

 バタン、と、礼儀も何もなく、ただ動揺と恐怖を伝える騒がしさで扉が開かれた。

 

 「し、指揮官。助けてほしいにゃ・・・!」

 

 顔を蒼白にして駆け込んできたのは、今まさに話題に上った明石だった。

 

 

 

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