アズールレーン ─メイドインアビス─   作:志生野柱

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 いつも感想・評価ありがとうございます!

 よほど核心に迫る質問とかでなければ答えるので、感想もお気軽にどうぞ!

 あとDOAコラボキャラが非常にえっちでよい。アズレンはほんとそういうところある。


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 「そんなことは不可能です、どうかご再考ください!」

 

 無機質な白色で統一された部屋には、多種多様な研究機材と資料が詰め込まれていた。

 もはや乱雑なまでに配置されてはいるが、その並び方を見ればそれらが使いやすい、或いは見つけやすいように工夫されていることが分かる。

 

 機密保持の為に極限まで防音加工のされた部屋には、その悲鳴は響かない。しかし、目の前のデスクに掛ける人物に向けるには十分な声量だ。

 

 左右色違いの瞳は、一様に不機嫌そうな光を湛えて声の主を見返す。

 人間以上の存在であるKAN-SENの、その中でも特に異質な存在が放つ威圧感に、その研究員は一歩後退した。

 

 「可能か不可能か、そんな議論は無意味だと何度言えば分かる?」

 

 青い左目を細め、金色の右目が開かれる。顔全体で「馬鹿なのか」と問うようなその表情に耐えるが、舌鋒は緩まない。

 

 「可能なんだよ。そう結論され、実証され、証明過程まで示されてなお、君たちは“不可能です”の一点張りだ」

 

 こつ、こつ、と不機嫌さを表すように机を叩く。

 彼女──鉄血仕様型アークロイヤルが志願し、新に任じられた椅子は、『指令室』直下の極秘研究施設の長だ。旧鉄血陣営支配域であった『前線基地(イドフロント)』をそのまま転用したそこは、今は『研究室』と呼ばれている。

 

 「しかし──」

 

 言い募ろうとする研究員を、片手を上げて制止する。

 

 「非人道的だと、そう言いたいのだろう?」

 「ッ、その通りです! KAN-SENの頭蓋を開き、精神を固定化して摘出するなど、あまりにも──」

 「残酷だな。悍ましく、非人道的な──あぁ、まさしく人道を踏み外した外道の如き所業だ。・・・それで? どこが、どのように不可能なんだ? 実現可能性に差し障る要素は?」

 

 今度こそ完全に、研究員は押し黙る。それは理知的に論破されたことによる沈黙ではなく、むしろ理解できないものに際した本能的恐怖に由来する沈黙だ。

 畳みかけるように、アークロイヤルは言葉を紡ぐ。

 

 「我々は──ロイヤル陣営は遅れている。劣っている。何故だ? 豊富な人材を持ち、広大な支配域を持ち、何故、セイレーンやレッドアクシズに劣る?」

 「それは・・・彼らの技術が、我々より優れているからです」

 

 研究員が口にしたのは紛れもない事実であり、同時に、ロイヤル陣営の殆どが認めようとしないものだった。

 それを認めるだけの度量と、それを見抜くだけの眼を持っているからこそ、彼は『研究室』に所属しているのだろう。そして、それはアークロイヤルが求める答えでもあった。もしここで「自力で劣る彼らが勝る点は、ただ外法を採り入れる度胸だけ」といった()()()()答えを口にしていたら、彼は馘首になっていた。

 

 「その通りだ。セイレーンの技術力は凄まじい。リュウコツ技術の深淵に手を伸ばすだけの力を持つ黎明卿もまた、そうだ。・・・そして今、我々はそれを手にしようとしている。遥か先を行く彼らに追い縋るための一歩を、いま踏み出そうとしている」

 「ですが──その一歩は、間違いなく道を外れる一歩です」

 

 歯を食いしばり、文字通り絞り出したその言葉は、しかしアークロイヤルの決意を変える力を持たなかった。

 

 「当然だろう。人道の外を往く彼らの、遠い背中に手を届かせるための一歩なのだから。──分かったら、速やかに実験を開始しろ。これは命令だ」

 「・・・了解しました。失礼します」

 

 「・・・・・・はぁ」

 

 研究員が退室し、完全に扉が閉じるのを待って吐き出された溜息は、どんな意図があってのものか。

 カウンセリング紛いのことをしている自分に向けた嘆きか、現状に追い立てられてなお人道に拘泥する“人間”への呆れか。或いは──庇護すべき人間に人道を捨てさせる、自分への怒りか。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 この鏡面海域によって完全に隔離された島に居るはずのないローンは、楽し気に道を歩き、時に崩壊したビルや店に踏み入り、探索を満喫していた。

 上空から走査する偵察機にとって、屋根の下に入るというのは確かに有効な遮蔽になる。だが、まさか本当にそんな手段で、赤城と大鳳の索敵を掻い潜ったと言うのか。しかも、何ら気負うことなく、むしろ観光客のような安穏さで。

 

 「何なの、あの子・・・」

 

 赤城の嘆息に混じる苛立ちは、そんな相手すら見落とした自分自身の未熟に向けてか。

 ローンは確実にこちらの位置を見つけ、寄り道しつつも向かってきている。いま確実に敵対しているのはグローセだけだが、ローンは無視できる相手では無いし、何よりその意図がまるで読めないのが不安を煽る。

 

 「大鳳、グローセの捜索を任せるわ」

 「・・・了解ですわ」

 

 大鳳にとって、赤城はいろいろと気に喰わない相手だ。何を勝手に、と言い募りたい。しかし、口論をする暇があるのなら一刻も早くグローセを見つけ、有利な位置にリポジションしたいのも確か。いくら重桜の建築物が偏執的なまでに頑強とはいえ、戦艦の砲撃には耐えられまい。

 

 数分、無言が続く。

 赤城は時折建物を物色して視界から消えるローンを懸命に追跡し、大鳳は何処にいるのかも定かではないグローセを探して。

 ふと、声が上がった。

 

 「・・・え?」

 「・・・感嘆符ではなく、報告を頂けます?」

 

 嫌味混じりではあるが、大鳳の言も間違いなく正論だ。

 相手は全KAN-SENの頂点に君臨する最極の一。一瞬の遅れ、一分の隙でも見せれば、そこから食い破られるだろう。・・・まぁ、隙など無くても食い散らかすだけの強さがあるからこそ、彼女はああまで指揮官の信頼を得ているのだろうが。

 

 苛立ちつつ、赤城は走査の目を止めることなく言葉を紡ぐ。

 

 「ローンを見失ったわ。恐らく、地下施設に入ったと思われるけど・・・」

 

 詳細は定かではない。もしかしたらビルを物色中に気の惹かれるものでも見つけて道草を食っているか、或いは抜け道のような物を見つけて移動しているかもしれない。

 面倒なことになった、と、二人が顔を見合わせて嘆息したときだった。

 

 ゲリラ役、つまり狩られる人間の役であり、レーダーを含む感知機能を極限まで絞っていた二人にも分かるほど近くに、KAN-SENの反応が出現した。

 

 「ッ!?」

 

 咄嗟に艦載機を展開しようにも、ここは室内だ。反応がグローセであれローンであれ、戦うには些か以上に不利な位置である。

 防御能力に秀でた大鳳が先んじて建物の壁を蹴り破り、装甲甲板を盾に周囲を確保する。島が放棄されてから数年といったところだろうが、瓦礫が巻き上げる砂塵は視界を妨げるに十分な濃さだった。

 

 しかし、崩れた壁を飛び出し、艦載機の発艦に際して邪魔なものが無くなった室外であれば。空母にとっての目は全ての艦載機だ。鳥瞰視点を得た二人は、砂塵の中で煩わしそうに顔の周りを扇ぐ人影を見つけていた。

 

 「ローン・・・貴女、何をしているの?」

 

 こめかみを押さえつつ、赤城が問いかける。出現こそ唐突だったが戦意の感じられないその様子に、二人は半ば呆れすら感じていた。

 

 「いえ、実は──お二人に加勢しようと思いまして」

 

 「「・・・は?」」

 

 シンクロした言葉に、心底嫌そうに互いの顔を見る二人。それを愉快そうに一瞥して、ローンは言葉を続けた。

 

 「これ、指揮官の新しい発明──確か、専属契約(リストリクター)でしたか? その対象に誰を選ぶか、というお話でしたよね?」

 

 またライバル出現か、と、二人は複雑な心境だった。

 確かに、ボンドルドは魅力的(二人主観)だし、その魅力が伝わるのは仕方ない。愛する人の素晴らしさが多くに受け入れられるということは、妻(二人主観)にとっても喜ばしいことだ。だが、その地位を勝ち取るには文字通り力が必要だし、ここにきて推定グローセの8割程度には強いとされる相手が追加と言うのは、少し厳しいものがある。

 まぁ愛と言うのは障害が大きく多いほど燃え上がるものではあるが。

 

 そんな二人の内心を知らないまま、ローンは穏やかな微笑を浮かべて続ける。

 

 「肉体面・装備面では頭打ちになってしまったKAN-SENの、その強さをさらに底上げするための精神面での強化アプローチ。それって、つまり──もっと強くなれる、ということですよね?」

 

 穏やかな微笑が陶然としたものに変わり、二人の呆れ顔は「うわぁ・・・」とでも言いたげなものにシフトした。

 

 「・・・まぁ、そういうことなら──」

 

 赤城が半端に言葉を紡ぎ。言い切る前に、艶やかなる死の宣告が齎された。

 

 

 「見いつけた。さぁ、憎悪、恐怖、絶望の奏でを──!!」

 

 

 最強のKAN-SENの一撃が着弾と共に砂塵を巻き上げ、爆炎は狼煙となり、戦端は開かれた。

 

 

 

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