アズールレーン ─メイドインアビス─   作:志生野柱

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 絵の練習するか! と決意して数時間。

 この話が出来上がっていました。


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 かつて、架空艦フリードリヒ・デア・グローセは神であった。

 

 武神の如き強さを誇っていたという比喩も含むが、重桜では実際に彼女を神体とする宗教が興ったこともある。

 

 あらゆるKAN-SENにとって、彼女は仰ぎ見ることすら叶わない別存在だった。

 あらゆる人間にとって、彼女は理解できないKAN-SENという存在の中でも一際濃い闇の中にいた。

 

 人類には理解を放棄した安心と信仰を。KAN-SENには尊敬と畏怖を齎して、彼女は遥かな視座に在った。

 KAN-SENの身にありながら、やはり通常のKAN-SENとは違う存在なのだろう。それほどの隔絶を前に、彼女は何ら情動を起こさなかった。守護者としてでも尖兵としてでもなく、ただ単なる超越者として、微かな落胆だけを抱いていた。

 

 幾多のKAN-SENがその強さに憧れ、挑み、挫折し、諦めて頽れる。

 幾多の人間がその強さに恐怖し、挑み、挫折し、諦めて頽れる。

 

 KAN-SENは強さを求め、人間は未知を恐れて、そしてすぐに挑むことを諦め、彼女の影に生きることを選択した。

 

 しかし彼女は、そんな人間を見限らなかった。

 いや──端から、そんな人間は眼中になかったと言った方が正しい。

 

 彼女が見るのは、常に先導者の背中だった。

 

 黎明は──夜明けの光は、太陽が姿を現すより早くに訪れるのだ。

 黎明(先導者)にとって、太陽とは己を導く者でも守るものでもなく、ただ己の後に付き従うものだ。

 

 人類を覆う夜の帳を厭い、何よりそれを解き明かすことを願い、自ら黎明となり太陽を導き──否、KAN-SEN(太陽)を従え、碧き航路を守護する者。

 

 何より強烈な憧れを宿した、子供のような瞳の輝きを、グローセが忘れたことは無い。

 

 

 

 羨望を、憎悪を、嫉妬を、畏敬を。そして何より強烈な憧憬を宿したローンの瞳に、グローセは半ば魅入られていた。

 

 まぁ尤も──

 

 「舐めるなッ!」

 

 その慈しむような目は、どうしようもなくローンの怒りを逆撫でするのだが。

 

 架空艦に特有の特殊改装、対セイレーン特化改修の施された艤装であれば、セイレーン技術の組み込まれた半生体艤装を使うグローセにも有意なダメージは見込めるはず。

 しかし、それはグローセの攻撃が、ローンに対して特攻を持つということでもある。ただでさえ、ほぼ必殺の威力を持つというのにだ。

 

 ぎちり、と、ローンの怒りを汲んだように、半生体艤装が軋みを上げる。

 呼応するように、グローセの双頭の艤装が威嚇するように唸った。

 

 大口を開けた艤装の、その開口部。各々が装備する最大口径の主砲が収められている箇所を互いに指向するその姿勢は、正面からの撃ち合いという、KAN-SEN同士の戦闘ではまず起こり得ない状況を示す。

 

 KAN-SEN同士の戦闘の趨勢を決めるのは、練度と装備が8割だと言われている。

 仮に練度50の戦艦が全力の砲撃を不意討ちで命中させたとして、相手が練度100の戦艦であれば、難なく耐えた上で反撃を貰い、逆に沈められるというのが定石だ。

 

 ローンとグローセは、共に最適装備を最大まで強化し、さらに練度120──成長限界に至る。

 ならば残りの2割──戦術が物を言う。有利な位置を取り、弱点への有効打を着実に積み重ねることが、ローンに残された唯一の勝利への道筋。そのはずだ。

 

 しかし、ローンは転進すらせず、正面からグローセと──島を削ることすら可能な戦艦を相手に、正面から撃ち合おうとしている。至近弾の一発で小破、直撃すれば一撃で戦闘不能に陥らせるだけの攻撃が可能な相手と、だ。

 ローンは確かに戦闘狂だが、愚かな女ではない。

 勝てない相手であれば戦術を、仲間との連携を用いるだけの分別はある。

 

 異常と言えば異常な行動に首を傾げるのは、次波の発艦タイミングを見計らっていた空母の二人のみ。

 

 グローセは観察する。考察する。

 無数に浮かぶ仮説の中から、明確に否定されるものを排除していく。そして残る、『在り得ないと思われる』仮説を拾い上げ。

 

 「そう。じゃあ、テストをしましょうか!」

 

 嗤った。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ボンドルドの持つ武装は多岐に渡る。

 

 海面を走り、ホバー移動や跳躍も可能にする脚部ユニット。銃弾や刃物のみならず、KAN-SENやセイレーンの攻撃にすら耐える全身装甲。KAN-SEN級の力と速さをもたらす駆動機構とジェネレーターに、それらを過つことなく制御するプロセッサー。それらで全身を覆う強化外骨格『暁に至る天蓋』。

 

 敵、味方、環境の全てを観測し分析する情報制御端末。仮面状のそれは、影響を及ぼす対象を任意に選択し攻撃できる最上の随意攻撃武装『明星へ登る』を組み込んでいる。

 

 両腕部、肘方向に中射程の光剣を発生させる『枢機に還す光』は、触れたものを斥力によって切断するのではなく、分子結合すら崩壊させるほどの熱によって消滅させる“分解兵器”だ。

 

 両掌と足裏に開いた砲口は、枢機の光と同系の長距離火砲『火葬砲』のものだ。両腕のものよりも射程と口径、そして威力に優れたそれは、イラストリアスのスキルによる装甲すら一撃で貫通する威力を持つ。

 

 ボンドルドの武装でどれが一番危険なものか。その問いには、レッドアクシズに所属するKAN-SENが異口同音に主張するだろう。

 「それは火葬砲だ」と。

 

 オミッターの主砲をベースとするそれには、弾速という概念が殆ど無い。

 それは、光だ。発射から着弾まで、ほぼ全ての遮蔽と環境を無視してノーラグノータイム。光だからと言って安直に鏡やガラスのように屈折を盾にすれば、副産物である熱がまずそれを蒸発させ、続く消滅の光が敵対者を呑み込むだろう。光すら呑み込むブラックホールでもなければ、盾にはならない。

 

 それほど強力な武装だ。

 常に艦隊単位で行動するKAN-SENに導入するには、誤射や暴発が危険すぎる。

 それ以前に、そもそもセイレーンの素材はごく一部がKAN-SENに導入できるのみで、主砲をそのまま転用するということは出来なかった。実験用の機材として運用しているように、艤装に組み込まずとも稼働はする。しかし、軍事基地のように恵まれたエネルギー環境が前提だ。KAN-SENや暁に至る天蓋のような超級のジェネレーターでも無ければ、実験室の外ではまともに稼働しない。

 

 ところで、悪魔の証明、という問題がある。

 極端に端折って言えば、何かが「ない」「できない」ことを証明することは難しい、という問題だ。

 証拠の不在は、不在の証拠ではない。

 

 

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 ◇

 

 

 

 軋むような駆動音は、ローンの艤装から。

 微かに驚いたような吐息は、グローセから。

 

 ローンが従える単頭だが大型の半生体艤装が大口を開け、内部を覗かせた。

 

 「なっ・・・!?」

 

 驚愕の声は全く同時に、赤城と大鳳から漏れた。

 

 光が溢れ出る。それは太陽のように暖かい色をして、そして。

 

 

 どうしようもなく死の匂いを漂わせていた。

 

 

 

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