アズールレーン ─メイドインアビス─ 作:志生野柱
推奨戦力:練度120艦6隻以上
たぶんシナリオの根幹にかかわるイベントなので・・・二次創作するならやらないとね。ところで第二艦隊がまだ平均練度116ぐらいなんだがどうしたらいい?()
ちな主力が長門・大鳳・信濃 前衛が綾波改・涼月・雪風
なんか重桜パの編成案あったら教えてクレメンス! あと夕立はいません()
資料室に案内され“氷山要塞”に関する資料を読んでいたボンドルドは、背後に生じた気配に集中を解かれた。
「・・・話があるんだけど」
「私もです。ちょうど、これを読み終えたらお伺いしようと思っていました」
ボンドルドは読みかけの資料を机に戻すと、タシュケントの案内に従って指令室へと移った。
一切会話のなかった道中の重い空気をそのままに、タシュケントが司令官の席へと座る。ボンドルドは示された席を辞し、立ったままだ。
「・・・何しに来たのか教えて」
「先ほど申し上げた通りですよ。北連陣営への救援に──」
「嘘よ」
叫ぶでもなく、威圧するでもなく。ただ多量の諦観と絶望を湛えたその声は、二人きりの指令室に重く木霊した。
「タシュケントは脱走兵よ。その意味も末路も分かってるわ」
ボンドルドは何も答えない。それを肯定と取ったか、タシュケントは微かに涙を浮かべて無機質な仮面を見つめた。
「でも、お願い。同志たちには何もしないで」
タシュケントは知っている。その仮面に感情や表情を覆い隠す役割はない。泣き叫び、喚いて懇願して叩頭しても、その願いに合理性と意義を見出せない限り、ボンドルドは曲がらない。同情心や共感性というものを著しく欠いた社会不適合者──というわけではないのが恐ろしいところだ。
ボンドルドは他人の痛みに寄り添える男だ。他人を慈しみ、愛情を持つことのできる男だ。愛を知り、愛を与えられる男だ。
だが、同情こそすれど、絆され流されることは決してない。
だからその涙には一分の打算も演技も無く、ただ感情を押さえておくことが出来なかっただけの、己の未熟さの表れだった。
零れそうになる水滴を慌てて拭うタシュケントの頭に、そっと硬質なグローブが触れた。
「勿論です。彼女たちにも、君にも、こちらから手出しをする気はありません」
ぐりぐりと撫でられるがままに、タシュケントはI字に発光する仮面を見つめた。
「・・・本当に?」
「えぇ、本当です。今回の私たちの目的は、本当に君でも北連でもありません」
ほっと安堵の息を吐き、タシュケントはぐったりと背もたれに身体を預けた。
「じゃ、なんでもいいわ。好きにしなさい・・・」
タシュケント本来のだらりとした態度に懐かしさを覚えたか、ボンドルドは一度離した手をもう一度近付けた。
身体を強張らせつつも、頭頂部付近をぐりぐりと撫でるがままにされる。
「北方連合は良いところですね」
ボンドルドが不意に呟いた言葉に竦みそうになるが、無意味な嘘や社交辞令は好まない性格だ。
額面通りに受け取り、素っ気なくではあるが礼を返す。
「君たちの努力と献身が見て取れる場所です。私まで誇らしい気分になりますよ」
もごもごと口を動かすが、タシュケントが何かを言葉にすることは無かった。
ボンドルドもそれ以上は何も言わず、最後にタシュケントの頭を一撫でして立ち去っていった。
◇
全員が指令室に集まったとき、レッドアクシズ艦の様子は以前とは違っていた。
それぞれが思い思いの防寒具に身を包んでいるのだが、普段の露出度とは比べ物にならない厚着のせいか、別人のような気さえする。
ガングートやロシアの意見を参考に、戦艦や空母には必要のない機動力を切り捨てたらしい。確かにもこもこしていて動き辛そうだが、見ているだけで暖かそうではある。
「ではこれより、レッドアクシズ・北方連合による対セイレーン共同作戦を開始する。12隻による連合艦隊を組むが、実働には3人ごとの分隊で当たる。各自、要綱を読んでくれ」
そこで作戦立案段階ではまさか来るとは思われていなかった予定外の一人が挙手した。
「私はどうすれば? 自由行動というのであれば、それが一番有難くはありますが」
ボッチ卿ボンドルドが言うと、何人かが自分の分隊へ誘ったが、ボンドルドはそれをやんわりと断った。
「いえ、私は氷山要塞に入りたいので・・・『突撃槍』か『長直剣』がいいですね」
ボンドルドが希望したのは、氷山要塞内部への侵攻を担当する、主に軽量艦で構成される前衛分隊だ。
最先鋒を担う『突撃槍』。続き遊撃を担当する『長直剣』。誘いをかけた大鳳とグローセはそれぞれ長距離航空攻撃による突撃援護を担当する『投石台』と、会敵直後から遠距離砲撃による効力射を撃ち込む『破城槌』に属している。
「・・・いや、そもそも卿の武装は室内向きじゃないだろう?」
GJツェッペリン良く言った! と大鳳と翔鶴が僚艦にサムズアップを向ける。
ボンドルドが持つ武装の大半は装甲無視の一撃必殺、物質そのものを消滅させる光線兵器だ。『明星へ登る』はその枠ではないが、連射は効かない。
「それに、もしボウヤが斃れたらどうするの?」
氷山要塞が生成する鏡面海域の遮蔽強度は不明だが、仮に人格バックアップの量子通信をすら遮断された場合、そのボンドルドは情報を同期することが出来ず無駄死にとなる。
戦闘用ボディのボンドルドとはいえ、戦闘能力はレッドアクシズの最精鋭艦たちには一歩劣る。無茶して欲しくないと思うのは当然のことだ。
「・・・そうですね。では、なるべく内部構造を傷付けないようにお願いします」
ボンドルドが折れ、『突撃槍』に属すると同時に、強襲作戦全体の指揮を執るタシュケントに頭を下げる。
複雑そうな表情ながら了承したタシュケントは、気分を切り替えるようにスキットルを傾けた。
「ぷはっ・・・じゃあ、行くわよ。準備はいい? 艦隊、抜錨!」
◇
セイレーン共通意識空間。
いつも通り気だるげなオブザーバー・零を上座に据え、活動中の上位個体の殆どが一堂に会するその場所は、どこか浮足立った空気に満たされていた。
「100秒後、予定通りに連合艦隊が所定の座標へ到着するわ」
テスターの報告に頷くが、眠気とは別に、彼女は集中を欠いているように見えた。
「レイちゃん様、どうしたの?」
「オミッター、控えなさい」
気安い呼びかけに反応した上層個体の一人がオミッターを窘める。むぐ、と息を詰まらせたのは、その上位個体が下した命令がオミッター自身の意思とは関係なく、その舌と顎を固定したからだ。
「・・・オミッター、今回の主演は貴女でしょう。行きなさい」
「かはっ・・・わ、分かった。行ってきます」
慌ただしく出て行く背中を見送ると、レイは気だるげな溜息と共に大きなクッションに身体を埋めた。
お疲れのようね、というテスターの言には答えず、ゆっくりと目を閉じる。
二度、三度と深呼吸をしても、やはり彼女を煩わせる要素は脳裏にこびりついているようだった。
表情からは陰りが取れず、呼吸も重くなっている。
「・・・何か問題があるの? 今回用意した要塞は、前回の『前線基地』よりも数段良いモノだけど」
作戦要綱をぺらぺらと弄んでいたオブザーバーが興味なさげに尋ねる。
数分もの沈黙を経て、レイが紡ぎ出したのは
「彼にじゃない」
というごく僅かな答えだった。
「ではオミッターに? やはり、下層プログラムばかりでは彼らの進歩の助けにはならないのでは?」
「貴女たち上位プログラムの投入にはまだ早いわ。レッドアクシズは拮抗くらいできるでしょうけど、数が少なすぎるもの」
では何を悩んでいたのか。上層個体の一人がそう問いかけると、レイは苦々しく表情を歪めた。
「特異点・・・余燼勢力の反応が観測されたわ」