アズールレーン ─メイドインアビス─   作:志生野柱

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 メイアビ・ゲス外道要素思考中のワイ「これをこうしたら伏線に絡めれるな……あとこの要素はこうして……(IQ80)」
 アズレンプレイ中のワイ「( ゚∀゚)o彡゜おっぱい!おっぱい!(IQ3)」


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 島一つを融解させた砲撃を終え、ローンは停止していた。

 双眸は閉ざされ、静かな呼吸に胸が微かに上下する。だらりと下げられた腕と鎌首をもたげた艤装が不釣り合いな不気味さを纏っている。突けば倒れそうな儚さと、触れることを忌避させる死の気配を漂わせていた。

 

 依然として警報は止まっておらず、周囲に民間人は居ない。彼女を取り囲む人影は6つ。困り顔の加賀とツェッペリン、残る4人は黒衣に仮面を纏った『祈手(アンブラハンズ)』だ。

 

 「どういう状態なんだ?」

 

 頭を掻きながら加賀が尋ねる。祈手が一人、手にした端末を無言のまま示した。

 その態度に特に気を悪くした様子もなく、二人は端末を覗く。

 

 「艤装の放熱と本体の最適化、か。……まぁ、あの威力では無理もない」

 

 本来KAN-SENに搭載することを想定していない特級の火砲『火葬砲(インシネレーター)』は、発射すれば強烈な熱を放つ。島を融かす熱量はローン本体のセンサーに調整と再起動を必要とするだけの損傷を与え、艤装にはさらに放熱というプロセスを課す。しかし、ボンドルドが纏う『暁に至る天蓋』の稼働エネルギーを9割近く消費して漸く稼働するそれは、艤装の内部エネルギーを食い潰してしまった。

 

 故に自然放熱を待つ他なく、ローンは本体の調整に注力しているという状態らしい。

 

 「ふむ……海にでも漬けてみるか?」

 「熱応力を侮るな。艤装に深刻なダメージを負う可能性がある」

 「あぁ、冗談だ」

 

 致命的なものではないと知って緊張を弛緩させた二人とは裏腹に、焦ったような空気が祈手たちに伝播する。

 一人が本部へ向かい、残った3人が頭を寄せて端末を覗き込んでいた。

 

 「リュウ……因子……低……る」

 「限定回帰……いないと……か?」

 「そう……この……再起……ば──不味いな。……が始まった」

 

 仮面越しの声、それも自分たちに向けられたものでないそれを聞き取れず、二人は祈手たちに視線を向けた。

 それが不味かった。

 

 「!? な、なん──」

 

 祈手が一人、加賀の腕を引き胸に抱き留める。

 唐突に過ぎるアプローチに声を上げるが、すぐに驚愕に呑み込まれた。

 

 掲げられた片腕にダブルスレッジハンマーが突き刺さり、前腕部に関節が一つ増えている。防御者は祈手で、攻撃者は──本体の再起動を終えたローンだ。

 艤装は非顕現状態へ仕舞われ、格闘戦に特化した身軽そうな格好になっている。

 

 祈手がツェッペリンの方へ乱暴に加賀を突き飛ばし、その一挙動の代償に仮面を掴まれる。ローンの金属剥き出しの両手に力が込められ、仮面に罅が入る。抵抗を無視してそのまま腕を振り下ろし、逆に片膝が突き上げられ──頭部を血煙に変えて、祈手が斃れた。

 ミニ丈のスカートが翻り、眩いほど白い太腿が赤く汚れる。

 

 研究用とはいえローンの攻撃から誰かを庇うだけのポテンシャルがあった祈手がほとんど抵抗できず、しかも一瞬で殺された。

 

 『祈手』はボンドルドの研究助手であると同時に、人格バックアップの受容体──つまり、ボンドルドにとっては肉体の、命のストックのようなものである。

 レッドアクシズ陣営のKAN-SENにとっては、ボンドルドと同等程度に尊重すべき相手だ。間違っても殺していい相手ではない。

 

 「ローン!?」

 

 加賀が驚愕の声を漏らし、一歩だけ傍観者に近いツェッペリンが舌打ち混じりに艦載機を放つ。

 ローンは裏切ったか、少なくとも正常な状態にないことは明白だ。いきなり攻撃してきた辺り、対話は望めそうにない。

 

 であるならば。

 

 「殴ってでも止めるぞ。卿らは下がって──」

 

 戦闘機と爆撃機を従え、ツェッペリンが進み出る。

 しかし、庇うような立ち位置の彼女の横をすり抜けるようにローンが動く。身体を沈めた前傾姿勢。格闘戦で距離を詰める時に特有のもの。

 

 戦意や殺意を一片も見せず、ただ機械的に無感動に。表情の抜け落ちた目を赤く輝かせて、ローンが拳を引き絞る。

 狙いはまた祈手だ。当たり所にもよるが、戦闘特化でない個体なら一撃で殺せるだろう。

 

 祈手の左手が二本重ねられ、ローンの右拳を受け止める。

 一瞬の拮抗も無く、防御した腕ごと胴体が貫かれた。腕が引き抜かれると、小ぶりな拳には一致しない大穴からだくだくと血が零れる。

 

 右半身を血に染めて、尚も無感動にローンの視線が彷徨う。

 唯一残った祈手と、それを庇うように立ちはだかるツェッペリン。挟み込むような形で艦載機を発艦させた加賀。

 

 ツェッペリンの表情に焦りを、加賀の表情に慄きを見て取り──動く。

 

 スカートを翻し、アスファルトが陥没するほどの踏み込みを第一歩として切り返す。

 左回りで、一歩目は左足。弧を描いて右足が振り上げられ、スタンダードな上段の回し蹴りが繰り出される。KAN-SENの力と体捌きは、柔らかくしなやかな脚でコンクリートの壁を砕く。砲雷撃戦がメインの軍艦だからと、白兵戦を軽視してはいけない。

 

 狙いは当然、一人背後にいた加賀だ。

 

 片手を挙げ、頭部への直撃を避ける。

 防御というには余りに力不足な足掻きだが、馬力の差がある。腕は鈍い衝突音を立てるが、微かによろめく程度。

 

 ツェッペリンが隷下の戦闘機に攻撃命令を下すと、ローンは弾雨を避けて飛び退いた。

 

 「無事か?」

 「あぁ……結構痛いがな」

 

 痺れが残っているのか、加賀はしきりに腕を振っている。感覚を確かめるように何度か掌を開閉して、加賀も艦載機を展開した。

 

 「さて……やってくれるじゃないか、ローン!」

 

 暗雲じみた艦載機の群れが一斉に攻撃姿勢を取る。艤装さえあれば対空砲なり副砲なりで弾幕を張り、対抗することもできただろう。しかし、艤装は冷却を中断して非顕現状態へ押し込んだままだ。だからこそ、二人には殺さないようにと加減が求められる。

 機銃掃射が腕を飛ばし、脚を千切ればそれでいい。爆撃は過剰火力だが、直撃さえしなければいい。爆弾と銃弾の雨は、シグニットとの戦いで負った傷も癒えていないローンには十分な脅威になる。

 

 スキルで防ぐという選択肢を潰す、ローンをよく知っている二人が選んだ攻撃。

 

 ローンのスキル『全方位装甲』が生成する盾は、持続時間は15秒、生成数は4枚、その耐久限界値は──理論上∞。

 理論上、と但し書きが付くのは、シールドはどんな攻撃でも8回までしか受け切れないからだ。『火葬砲』の一発も、練度1駆逐艦の砲撃の一発も、同じ一発としてカウントする性質は、戦闘機の弾幕のような小威力が連続するタイプの攻撃との相性は悪い。

 

 狙いは必中。そもそも面攻撃だ、外すわけがない。

 そして当たれば、確実に相手を行動不能に至らしめるだけの威力がある。

 

 攻撃が殺到し、直撃する。

 衝突した弾丸が上げる小さな火花は爆弾の炎と煙に掻き消され、ローンの姿はスクリーンの向こうに消えた。

 

 煙を突き破ってくる様子はない。

 

 勝ちを確信してか、その場に残っていた祈手が振り返り、合図を出す。

 瓦礫や建物の陰から静かに、しかし続々と姿を現す祈手たちは、真っ先にこの場を離れた祈手が連れてきた医療要員だ。万が一ローンが致命傷を負った場合でも、ドックに放り込むまでの時間を稼ぐ役目を帯びている。

 

 祈手たちがぞろぞろと近づき──ツェッペリンが片手を挙げて止めた。

 

 「待て。……何かおかしい。加賀?」

 「あぁ、手応えが無かった」

 

 祈手たちに緊張が走る。幾つもの視線が向かう先で煙が晴れる。爆発によって熱されたアスファルトが陽炎を立ち昇らせ、神秘的な雰囲気を漂わせていた。

 

 そんな舞台装置を纏い、ローンは依然、立っていた。

 その身体に刻まれた傷は、全て見覚えのあるシグニット戦のもの。今の攻撃は完全に防御されたということだ。

 

 その防護を齎したであろう、ローンを包む半透明の球。イラストリアスの無敵化が付与する眉のような陽炎とは違う、しっかりとした存在感を放つ「球状の盾」。

 ローンのスキルではない。

 

 どこのどいつが介入してきたのかは知らないが、加賀とツェッペリンの本気ではない攻撃程度なら防げる相手だ。想定練度は70かそれ以上。

 ロイヤルやユニオンであれば相当上位に位置するKAN-SENのはず。二人が知らないはずはない。

 

 だがそんなことは問題ではない。

 どこのどいつが介入してきたにしろ──殺せばいいだけのこと。

 

 いま問題になるのは、その盾の耐久力だ。原則、盾系スキルには耐久力か耐久回数、或いは耐久時間のいずれかが設定されている。ぶち抜いてローンに攻撃を当てること自体はそう難しくない。しかし、盾をぶち抜くために高火力を用意して、ローンにまで致命傷を負わせてしまったら。

 人格バックアップがある以上、死にはしない。だが、それは暴走状態のままレッドアクシズ本部の内側に侵入されるということだ。

 

 起動装置が海岸ごと吹き飛ばされたせいで、この一帯には鏡面海域を展開できない。

 

 「全く、その通りだわ!」

 「面倒な!」

 

 加賀の独白に応じる言葉が、それより早く掛けられる。

 強烈な違和感をもたらすそれに、二人は覚えがあった。

 

 

 

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