アズールレーン ─メイドインアビス─   作:志生野柱

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 サイレンススズカつんよ……
 ガチャピン様が降臨あそばされた! 皆心してお出迎えしろ!
 ガスおじは死んだ、もういない。あと音バグがクソ

 って感じでした。生きてるよ。


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 存在する非存在、世界で二例しか確認されていない机上存在である架空艦の二人が睨み合う。

 満身創痍の重巡洋艦ローンと、ユニオンからの強行軍を経て疲労の一つも見えない戦艦フリードリヒ・デア・グローセ。戦闘センスこそ互角だが、グローセにはその先見に加え、三年間の継戦と殲滅という実績を伴う経験がある。

 

 単純な『強さ』を比較するのなら、グローセが有利。

 武装の『強さ』を比較するのなら、ローンが有利。

 総じて互角と言える二人だが、損耗の差でグローセに軍配が上がるだろう。そう安堵の息を漏らした空母の二人が、はっと空を見上げる。

 

 「対空レーダーに感アリ……?」

 「……磁場の異常か?」

 

 二人がレーダーを確認し、訝し気に空を見上げる。

 レーダーに灯る光点は、現存するあらゆる艦載機──否、ガンシップを含めたあらゆる飛行体を含めてもなお、その全てを凌駕する大きさだった。

 二人が同時に不具合を起こす確率よりは、重桜陣営の防衛機構として張り巡らされた様々な装置が干渉し、磁場の異常を引き起こしている可能性の方が大きい。

 

 暗雲立ち込める空に機影は無く。そのさらに上空──

 

 ──暗雲を突き破り、()()が出現する。

 

 セイレーンの無人量産型艦、双胴型空母Queen。

 

 全長は海域を封鎖できるほどで、その巨躯に見合うだけの装甲を有している。

 

 現存するどの艦艇より巨大で、重く、硬い船。それが──何故、空から降ってくる!?

 

 「──!」

 

 流石のグローセも予想外だったのか、焦ったように腕を振る。

 後退せよ、とのハンドサインを受けて、加賀とツェッペリンが振り返ることもなく移動を開始した。もともと速力の低い空母であり、ツェッペリンは小脇に抱えた祈手のせいで走り辛そう──重さは問題にならない──だったが、Queenはサイズゆえ落下が遅い。直撃は確実に避けられるだろうし、爆発の範囲からも何とか出られそうだ。

 

 地盤程度容易く貫くだろう、超大質量のバンカーバスター。避難シェルターにも被害が及ぶかもしれないが、そんなことはどうでもいいとばかり、グローセの視線はローンへと固定されていた。

 

 ローンもまた、無表情のまま空を見上げている。赤い輝きを灯す双眸が細められ、背部で艤装が展開される。

 加賀かツェッペリンか、祈手が一人でもいれば、きっと驚愕の声を漏らしただろう。

 

 彼女の艤装は鋼鉄の蛇。背負うように展開される一匹のそれは、今は『火葬砲』の負荷によって膨大な熱とセンサー類のエラーを溜め込んでおり、まともに機能しないはず。

 それが──今や、グローセと同じような双頭型に変化している。

 

 グローセが舌打ちを漏らす。宛先はローンではなく背後の海だ。

 

 この状況を好機と見たか、セイレーンの艦隊が展開されている。空母Queenの質量投射攻撃も彼女の──先頭に見えるピュリファイヤーのものだろう。

 だが、意思を持たない無人艦やエグゼキューターシリーズは省いて、高度な人格を保有する上位個体たちが停止していた。

 

 機能停止ではなく、思考停止。

 想定外の事態と、それに伴う状況報告と命令更新を共有意識空間で行う一瞬の停止だ。

 

 遠く、ローンが火葬砲で溶かした島よりもさらに遠く。

 グローセをして言い知れぬ感覚を齎す色の光が見える。その中核にあるのが一本の桜であると、重桜の民であれば誰でも知っている。

 

 「成程。祝福、ね……」

 

 ローンの艤装、その砲口から光が漏れる。

 どういう訳か、一問しか導入していなかったはずの火葬砲が、今や双頭の蛇、その二つの顎に据えられている。

 

 一瞬だった。

 発射された光はQueenを十字に切り裂き、そのさらに上空で雲を斬り飛ばした。続く大気の燃焼はQueenの燃料や弾薬にも引火し──大爆発を引き起こした。

 

 地下のシェルターにすら振動が伝わっただろう圧力と熱のなか、グローセは動かない。爆風から逃げ切ることはできないし、そのまま立っていれば残骸が直撃することもないと見て分かったからだ。

 

 流石にセイレーン技術由来の爆発だ。グローセもローンも無事では済むまいが、この手の上空での爆発は、爆心地ほど爆風の威力が弱い。爆心地から下手に離れると、純粋な爆風と地表で反射した爆風が合算されたものを浴びることになる。

 

 頭部を庇い、姿勢を低く取る。

 最も懸念された『ローンが爆風をものともせず突撃してくる』という未来は訪れなかった。

 

 爆炎が収まり、舞い上がった砂塵が再び地に落ちる。徐々にクリアになっていく視界に、双頭の艤装を背負った人影は映らない。

 

 舌打ちの一つでも漏らしそうなほどに表情を歪め、グローセは背後の海を睨み付けた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 「おぉ、怖い怖い。そんなに怒らないでよ」

 

 数キロ離れた海上で、ピュリファイヤーはおどけるように肩を竦めた。

 

 「あのままじゃ完全な回帰には至れなかった。偏向回帰は暴走にも例えられる、手の付けようがない代物だ。殺さなかっただけ有情だと思って欲しいよね?」

 

 ピュリファイヤーが話しかけているのは、独立した自我を持たないエグゼキューターシリーズの一個体だ。

 当然、返事を期待してのものではない。

 

 「ピュリファイヤー、即座の出頭と報告を命じます」

 

 だから、その無表情な個体からそんな命令が飛んできたとは思わず、きょろきょろと周囲を見回す。

 そんなピュリファイヤーでも、後頭部がぺちりと叩かれれば現実逃避も終わる。

 

 「あー……これ、もしかして監視端末?」

 

 ピュリファイヤーのセキュリティ・クリアランスでは名前や配備地域を知ることは出来ないが、上層上位個体の一人が監視の役割と権限を持っているとされていた。

 下位クリアランスの個体は、基本的に上位の命令には逆らえない。今まで割とやりたい放題やってきて、多少叱られる程度で済んでいたが……ちょっと不味いかもしれない。

 

 「ピュリファイヤー?」

 

 名を呼ぶ程度の催促ですら、下層下位個体には重圧だ。慌てて意識のチャンネルを変えた。

 

 「了解、了解。──共有意識空間へ接続。自律航行モード・防衛」

 

 ピュリファイヤーの視界が切り替わる。

 重桜の綺麗な海と、立ち昇る火柱はそこにはない。無機質な暗闇は、ピュリファイヤーのセキュリティクリアランスでは視認が許されていないオブジェクトが処理段階でマスキングされているからだ。

 

 姿が見えるのはオブザーバー・零とテスターの二人だけだが、他にも数人分の気配がある。

 

 「……っ」

 

 口は動く。だが声が出せない。

 軽口の一つでも言おうとしたが、発声が封じられ、しかも──そんな気分でも無くなった。

 

 行動権限の書き換え、思考のマスキング。

 どうやら、相当上位の個体まで出張ってきたらしい。

 

 レイの瞳が無感動なのはいつものことだが、普段の報告はもっと気楽な感じだったし、怒られるときでも行動や思考に制限はかけられなかった。

 それほど逼迫した──[思考および推察は当該個体のセキュリティクリアランスには認可されていません]

 

 疑似人格プログラムさえ停止され、ピュリファイヤーにはエグゼキューターシリーズと同等の機能しか残っていない。

 回想と報告。最低限必要な機能だけを残し、権限の殆どを停止された残骸に、レイが命令を下す。

 

 「ピュリファイヤー、報告を」

 

 発声が許可され、ピュリファイヤーの口が開く。

 声そのものは以前と変わらないはずだが、疑似人格を停止したおよそ感情と言うものの籠らないものでは、別人のような印象を受ける。

 

 「Upload>memory_report;time(00,99)」

 

 記憶が共有されるが、幾人かが下層個体ゆえの質の悪さに辟易する。

 センサーの質も、処理システムの質も、記憶保持領域の質も、何もかもが違うのだ。使っているディスプレイの解像度が大きく落ちたようなものと解釈すれば、そう間違いではない。

 

 「ミズホの神秘、揺籃の大樹か。ローンの帰路を修正するとはな」

 

 映像越しに、言い表すことのできない色をした光を放つ桜を眺める。

 可笑しそうな声色と同じ、愉快そうな光を湛えた双眸が笑みの形に細められる。

 

 「重桜陣営は此度もアレを使いこなせないか。()()黎明卿はどうするつもりだろうな?」

 「彼の思考を読もうなんて無駄なことよ。私たちは計画に従うだけ」

 

 眠たそうに応えて、レイが沈黙していたピュリファイヤーに一瞥を投げる。

 凍結されていた権限やプログラムが解除され、息を吹き返したように荒く肩を上下させていた。

 

 「クッソ……もう二度と報告になんて来ないぞ」

 

 絶対命令権を持つ上層プログラム相手に意味のない悪態を吐き、ピュリファイヤーは共有意識空間から抜けた。

 

 「そうそう、テスターにローンのMIAを報告させようと思うのだけど?」

 「ロイヤル陣営に? ……承認するわ」

 「ありがとう、レイ」

 

 

 

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