ヤンデレ胡蝶   作:ヤンデレ大好き丸

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頭空っぽにして読んでください(懇願)









第一話 胡蝶姉妹の愛が重い

「わざわざ機能回復訓練をつけていただき有り難うございました!」

 

「構わんよ、今の俺に出来ることはこれぐらいだからな。若い連中を支えられるっていうのなら喜んでやる」

 

「そう言っていただけると励みになります!では失礼いたします!」

 

 

 桜散り行くこの季節。この蝶屋敷にも春が訪れ、庭には美しい桜が咲き誇っていた。この『必勝』と名付けられたこの木の下で花見と洒落込みたいが、あいにく今はやるべきことがあった。

 

 数週間前、任務で大怪我を負った隊員たちが蝶屋敷に運ばれて来たのである。治療は上手くいってある程度の傷が癒え、今日から機能回復訓練を受けると耳にした俺はあの姉妹から逃げる口実として彼らに付き合った。

 

 彼らとの機能回復訓練は夢のような時間だった。あの二人に縛られていないという事実が確かな幸福感を与えてくれていたのである。

 

 しかし、訓練が終わってしまえば彼女たちの所へ戻らなければならない。だがそれは地獄へ向かうことを意味する。

 

 となると、今すぐここから逃げ出す必要がある。今なら監視の目も少ない。これはかつてない好機だ。脱走するのであれば今日この日をおいて他にない。

 

 地を踏む脚に渾身の力を入れて屋敷を塀を飛び越える。あとは逃走するだけだ。そもそも全力で走り出せば自分に追い付く者など存在しないのだ。もっと早くこうしてればよかった。

 

 

「さらばだ、蝶屋敷。もう此処に戻って来ることもあるまい」

 

 

 以前からずっと口にしたかった言葉を出した瞬間、瞳から涙が零れ落ちる。これは悲し涙ではなく嬉し涙だ。自分を縛る牢獄からようやく抜け出せるのだ。これほど嬉しいことはない。

 

 あともう少しであの姉妹が持つセンサーの効果範囲外に出れる。彼女たちが言うには愛の力で俺がどこにいるのか、どういう状態なのか第六感で分かるらしい。正直言って意味が分からないがそういうことなのだそうだ。

 

 だから既に蝶屋敷から脱走したことはバレているだろう。だが奴らが感知できない距離まで離せば、もう俺を追ってくることは不可能だ。よってこの勝負ーーーー、俺のか

 

 

 

 

 

 

 

「水流くん、蝶屋敷から抜け出して何やってるの?」

 

「は?」

 

 

 ウッソだろお前www

 え、いや待って。なんで俺の脚を追い越すどころか先回りしてんの?

 こちとら現役の時は敏捷性を売りにして鬼を狩ってたんですけど(諦め)

 

 

「その通りです。私たちというものがありながら逃げ出すなんて無礼ですよ」

 

 

 飯食うときだろうが、風呂入るときだろうが、寝るときだろうが、いつ何時であろうと手足に縄をくくって束縛してる君たちの方が無礼だと思うのだが。

 

 俺にもプライバシーというものがあるんですよ。あっ、大正時代にプライバシーもクソもねえのか。ちくしょー、生まれるのがあと1世紀遅ければなぁ!!

 

 

「待ってくれ。これには深い訳があってだな」

 

「聴きましょう」

 

 

 おっ、今日は随分と物分かりがいいな。これなら上手く説得して逃げれるかも……!

 

 

「実は祖父さんから呼び出されたんだ。最近になって新しい弟子をとったらしくてな。ほら俺ってもう現役を引退したからさ!こっちに戻って一緒に暮らさないかっていう手紙が!!」

 

「そんなものは来てません」

 

「え、来てたよ?」

 

「来てないと言ったら来てません」

 

 

 えっ、俺ちゃんと日本語話してるよね?

 ここまで意思疎通が図れないとなるとさすがにあちら側の方たちの脳がイッちゃってるよね?

 

 いや待て。あいつらは話の主導権を無理やり持っていこうとしてるんだ。俺が混乱している間に蝶屋敷に連れ戻そうって腹だな。

 けけけけ、事がそう簡単に運べると思うなよ!

 

 

「いやちゃんと俺宛に手紙が来てたぞ。次代の剣士を育成するのを手伝ってくれって書いてたし」

 

「その後に来たもう一通の手紙は?」

 

「ん?」

 

「もう一通の手紙は読んだのか、と聞いているのです」

 

 

 やべえ、読んでねえ……だがしかし!

 ここで読んでないと言おうものなら俺は確実にあの牢獄に閉じ込められる!それは許容できない!であれば誤魔化して乗り切るしかねえ!!

 

 

「もちろん読んださ!義勇がちゃんと俺の後を継いで柱になったことに対する喜びとか綴ってあっ「そんなことは書いてませんでしたよ?」さいですか」

 

 

 んー、無理!そもそもこの二人を説得しようとするのがナンセンスだったわ!

 

 

「でも待ってくれ、そしたら二通目の手紙にはなんて書いてあったんだ?」

 

「私たちが口で伝えるよりも実物を読んだ方が早いと思うのでこれをどうぞ」

 

 

 

 おっ、二通目の手紙か。えっと、なになに?

 

 

 拝啓 鱗滝水流殿

 

 季節が移り変わり、新たな命が芽吹く春が訪れましたがいかがお過ごしでしょうか。私の方では鬼殺の剣士になりたいという少年が義勇の紹介で狭霧山にやって来ました。

 

 身内が鬼により殺され、生き残った妹は鬼に変貌はしているものの強靭な精神力で人喰いの衝動を抑えているようです。

 このまま順当に行けば彼、竈門炭治郎は鬼殺隊の一員となるでしょう。ですが鬼殺隊の剣士が鬼を連れているという事実は今後、様々な波紋を呼ぶことになるのはまず間違いない。

 

 そうなる前にお館様に手紙を送り、手を打っておきました。彼が鬼となった妹である禰豆子を連れている理由から何から何まで伝えています。そして手紙の最後にはもし仮に禰豆子が人に襲い掛かった場合、竈門炭治郎を始めとする鱗滝左近次、鱗滝水流、冨岡義勇が切腹をしてお詫び致す所存であると書き記しておきました。よろしくお願い致します。

 

敬具 鱗滝左近次

 

 

P.S.

 カナエとしのぶと結婚したんだって? 何も報されなくてお爺ちゃん、とても悲しいです。炭治郎は私が育て上げるので三人仲睦まじく暮らして下さい。早くひ孫の顔が見たいです。

 

 

 

 このヤンデレ姉妹、先に手を打ってやがったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 なんかさらっと切腹する決意表明までされてるけどそんなのは問題じゃねえ!

 

 

「あのー、カナエさんにしのぶさん?」

 

「「はい、なんでしょう?」」

 

「俺たちって結婚してないよね?」

 

「えっ、姉さん。私たちは水流さんと結婚してますよね?」

 

「うん、私たちは水流くんと結婚してるわ」

 

 

 どうやら二人の脳内では既に俺と結婚をした仲らしい。おかしいな、俺たちは婚姻どころか恋人にすらなってないのに。

 

 

「左近次様も私たちなら、とお認めになられたのですし私たちは結婚しています。それで宜しいですね?」

 

「あっ、はい」

 

 

 心の中でありとあらゆる感情が蓋をされ、喜怒哀楽全てが消え去る。もう俺はこの二人から逃れられない運命にあるようだ。

 

 

「じゃあ一緒に帰ってくれるよね、水流くん?」

 

「ウン。カエロウヨ、カナエサン」

 

 右を見れば胡蝶カナエが。

 

「じゃあ三人で仲良く手を繋いで帰りましょう?」

 

「ソウダネ、シノブチャン」

 

 

 左を見れば胡蝶しのぶががっつりと俺の腕にしがみついている。いや、もはやこれはしがみついているというよりも同化しようとしている。

 

 こいつらは俺の身体の一部になりたいと狂言を撒き散らしたりする悲しきモンスターだ。見てくれこそは良いものの、この二人の愛は俺には重すぎる。このまま流されてしまえば、俺はいつまで経っても解放されないだろう。やっぱり逃げるなら今しか

 

 

「「もう逃がさないからね?」」

 

「やっぱやだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 この物語はヤンデレな胡蝶姉妹と大正時代に鱗滝左近次の孫として転生してしまった男のクソみたいなお話である。

 

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