今日も夏は終わらない   作:だるまや

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なんとも小説を書くのは難しいorz


第2話

一四〇〇、泉は一人海軍の持つ、超高高度巡洋小型航空機で急ぎショートランド諸島へと向かっていた。

 

 話によると、通常の輸送機では新たに出現した空母型の敵に撃墜されてしまうため、現在では大気圏をかすめるほどの高度でなければ、航行することは不可能なのだそうだ。

 

 日本ははるばる横須賀から、大淀に急かされ説明も不十分ななか慌てて乗り込んだのがたった二時間前だが、いまだ提督としての実感はない。実際大淀から受けた説明はほとんど理解不能であり、しまいには指揮官として心得(マニュアル?)という分厚いA4冊子を強引に渡されると

 

 

 

「とりあえずそれを読んでいただければなんとかなります。頑張ってください!」

 

 

 

 と、心底腹立つような満面の笑みで送り出された。泉の気分としては、三時間程前の自分をぶっ飛ばしてやりたい気分である。もはや後悔の念しかない。

 

 だが、泉はもらった冊子に目を通しながらも、頭の中はひとつのことで一杯になっていた。

 

 その原因はあの時見た写真にあった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悠佳…!!なんで!!」

 

 

 

 大淀から渡された写真を見て、泉は思わず叫んでしまった。そこに写っていたのは紛れもなく楠悠佳その人だったからである。いや、よく見れば、長い髪を三つ編みにしていて、サイドは長く伸ばされているところを見る限り本人ではないのかもしれない。しかし泉が捨てていた希望を再び抱くには十分であった。自分がこんな状態に陥っているくらいだ。もしかすると、この子に楠が転生している可能性だって0ではないと考えたのだ。

 

 

 

「こ、この子は!?」

 

 

 

「まあ、人というか艦娘なんですが…」

 

 

 

「そんなんどっちでもいい!この子は一体誰なんだ!」

 

 

 

 泉が声を荒げてしまうと、大淀も少し驚きながらも書類に目を配り、よどみなく答えた。

 

 

 

「まあ、落ち着いてくださいよ。この子の名前は時雨といいます。白露型駆逐艦の二番艦ですね。最近佐世保で建造され、それからは内地で待機していましたが、今回の赴任によってこの子もショートランド泊地に配属になりました」

 

 

 

「時雨か…。じゃあこの子がおれの秘書艦になるってことなんだな?」

 

 

 

 名前こそ違うがまだ可能性はあるはずだと泉は考えた。最近建造されたというのも気になる。

 

 少し前のめりになりながらも泉は念を押した。

 

 

 

「その通りです。軍としては今のところ時雨しか配属できませんが、向こうには建造できる施設なども完備されているので、是非戦力の強化を図ってください」

 

 

 

 そう言うと、大淀は少しきまずそうにこう続けた。

 

 

 

「本来であれば、電か五月雨が秘書艦になる予定だったのですが…。急遽北方海域への哨戒任務が命じられてしまいまして、少し異例の事態なんです」

 

 

 

「そうなのか?」

 

 

 

「はい。時雨はまだ秘書艦としての経験もほとんどありませんし…。今回ばかりは、上層部の意図がわかりかねます」

 

 

 

 少し考え込みながら、そう伝えると泉はこのあと会うであろう時雨に、期待を寄せずにはいられなかった。

 

 

 

(マジか!まさかとは思うがやっぱり時雨って子は悠佳じゃねーか?てかここまで偶然が重なるとそれしかないだろ!)

 

 

 

 泉はそう結論づけると、早速時雨に会いたくなってしまい仕方がなかった。見ての通り単純な男である。

 

 

 

「そっか。まあ大体わかったよ。とりあえず俺はその時雨っていう子と力を合わせて頑張ればいいってことだろ?」

 

 

 

「ま、まあそういうことになりますかね?では早速ですけど、時間もないので着替えていただき、詳しいお話をしたいと思います」

 

 そう言うと二人は場所を移し、話を続けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てことは、ショートランドは南方方面が担当なのか…。にしたって最前線すぎるだろ…」

 

 

 

 泉も思っていた以上の激戦地区に放り込まれたことを実感し、頭を抱えてしまう。

 

 そもそも、現在の日本の状況は戦線を拡大しつつあるようで、冊子によればショートランド基地は、ラバウル基地よりさらに南に位置する、事実上の最前線ということらしい。軍上層部も一大攻勢の橋頭堡とするためにこの基地を作ったようで、設備も十分揃っており、その期待度がひしひしと伝わってきた。

 

 

 

「まあ、任務やすべきことはなんとなく書いてあるし、なんとかなるか」

 

 

 

 強引に自分を納得させると、気づけばもう航空機は着陸態勢に入っていた。

 

 強い振動と気圧差による耳の違和感は辛かったが、無事泉は基地に到着することができた。

 

 

 

 

 

「うわ…。あっつ。何度あるんだよ」

 

 

 

 照り返してくる太陽に泉は思わず不快感を表した。着ているのが第一種軍装なのもあるが、赤道に程近いこの島は、熱帯特有の湿気を空気に含んでおり、泉としては回れ右でクーラーの入った機内に早速戻りたくなった。

 

 しかしここまで来てそうも言ってられないため、遠路はるばるここまで自分を運んでくれた操縦士に礼を言うと、隣接している基地へと向かった。この基地には簡易的ではあるが飛行場も建設されており、かなりの敷地面積を誇っていることがわかる。

 

 泉は道なりに歩いていると、正面に基地の入口が見えてきた。が、それと同時に誰かが門の前に立って

 

 いるのがわかった。

 

 少しずつ近づいていくと、それが自分の秘書艦である時雨だとすぐにわかった。

 

 しかし泉はそれが分かった途端、我慢できず走り出してしまった。

 

 

 

「やあ、貴方が新しい提督かい?僕の名前は…」

 

 

 

「おい!!やっと会えたよ!悠佳か?!大丈夫だったか!?」

 

 

 

 そうまくし立てると、泉は時雨の肩を強くつかみ思いっきり揺らしまくった。泉の顔には焦りが見て取れるし、一方時雨の頭はブルンブルン振り回され、もはやグロッキーである。

 

 

 

「ちょ、待って待って!ストップストップ!?なんのことだい!?」

 

 

 

「待ってられるか!!なあどうなんだ!!悠佳なのか!?悠佳なんだろ!!」

 

 

 

「ち、違うよ!!僕は白露型駆逐艦、時雨!!だからストップ!」

 

 

 

「ぐは!!!」

 

 

 

 時雨はあまりの展開に、肩を掴んでいる犯人を黙らせるためつい鳩尾に頭突きしてしまった。流石に目の前の人物が提督なのはわかったが、こちらを見た途端に走り出しあまつさえ急に肩を掴まれたのでは挨拶すらままならない。

 

 時雨の一撃で我に返ったのか、泉は肩を離して目の前にいる人物の話に耳を傾けることにした。

 

 

 

「全く…。自己紹介もなく女の子の体に乱暴するのはどうかと思うよ?」

 

 

 

「す、すまん。てっきり悠佳だと思って、そうしたらいてもたってもいられなくて」

 

 

 

 泉は深々と謝罪すると、時雨は少し笑ってみせた。時雨自身悪い人物だとは思っていなかったので、話さえ聞いてもらえればどうとでもなる。

 

 

 

「まあいいさ。これから僕たちは共に戦う仲間なわけだしね。聞き忘れていたけど名前を教えてもらってもいいかな?」

 

 

 

「ああ…。俺の名前は泉俊介だ。さっきは急に驚かせて悪かった」

 

 

 

「そんなあやまらなくってもいいってば。ところでさっき言ってた悠佳って人は誰だい?すごく慌てていたようだけど」

 

 

 

 急に泉が襟をただし始めたため、時雨はその態度に苦笑しながらも一番気になっていたことを聞いてみた。あれだけ慌ててるのを見るに、相当何かあったのだろう。純粋に気になってしまった。

 

 一方泉は自分が抱えていた重要なことを聞こうと思っていた。もはや答えは出ているようなものだが、これを聞かずにはここに来た意味がないのだから。

 

 

 

「いや…。まあ話せば長くなるんだが…、そのまえにひとつ聞いてもいいか?」

 

 

 

「なんだい?」

 

 

 

 不思議そうに時雨が反応すると、泉は少し出す言葉に躊躇しながら

 

 

 

「君は、どこからか転生してきた記憶とかないか?てか俺のこと覚えていないか?」

 

 

 

 一見冗談でも言ってるのかと思ったが、泉の目を見る限りそこには真剣と、そして何か縋るような何かがあった。

 

 

 

「僕が覚えている限り、提督に会ったことはないと思うな。前の僕は軍艦だったわけだし」

 

 

 

「そうか…」

 

 

 

 泉は改めて自分が抱いていた希望が目の前で崩れていくのを感じ、思わず座り込んでしまった。確かにそんな虫のいい話があるわけがないとどこかでわかっていたつもりだったが、流石に二度も裏切られれば流石に堪える。

 

 その姿を見た時雨はなんだかいたたまれなかった。先程まで自分に掴みかかってきた勢いはなりを潜め、顔が青ざめつつあるし、なによりこれから支えあう相手が辛そうなのは時雨としても悲しいのだ。いったい何があったのだろうか?湧き出てくる質問を泉に聞いてみることにした。

 

 

 

「じゃあ僕の質問にも答えてもらっていいかな?その悠佳って人に何があったんだい?僕は提督がすごく辛そうに見えるけど、よかったら教えてもらえないかな?僕は提督を助けたい…」

 

 

 

 出来るだけ優しく、そっとなでるように聴くと、隣にしゃがみこみ泉の答えを待った。

 

 その時顔を上げた泉には、隣にいる人物が長い間、それこそ物心ついた頃から一緒だった楠にみえたのだ。もちろん違うとわかっているからこそ心が強く締め付けられたが、同時に楠ではない誰かが初めて自分を励ましているようにも感じた。

 

 その知らない暖かさを感じると、なぜか不思議と前を向ける気がした。ある意味今までそんな気持ちにさせてくれたのは紛れもなく、隣にいた時雨であることを改めて理解する。自分がこれまで孤独に怯え、楠に依存していた事と同時に。

 

 そして泉は心に決めた。この世界で生きることを。

 

 もちろん楠を諦めたわけではないしこれからも探し続ける。だが、同時に今、隣にいて自分を励ましてくれた、この小さな女の子を守るということを。自分のここでできることはそれぐらいしかないのだろう。

 

 だからこそそれに向かって前に進むことを決めた。

 

 泉はひとつ息を吐ききると、心配そうに見守る時雨の頭を撫でて少しわらって見せた。そう。ここには先程までいた馬鹿な自分はいない。そう思うと心が軽くなった。

 

 

 

「ああ、大丈夫だ。ありがとうな、時雨」

 

 

 

「あ、やっと僕の名前を呼んでくれたね」

 

 

 

 少しはにかみながら嬉しそうに答えると、泉はさらに大きく笑った。もうそこには時雨しかいなかった。

 

 

 

「そうか?俺はずっと名前で言ってたつもりだったがな。なんならちんちくりんってあだ名でもいいんだぜ?」

 

 

 

「馬鹿にしないでくれ。僕は毎日牛乳だって飲んでいるし…。そのうち提督の背だって超えてみせるさ」

 

 

 

 すねたように頬を膨らませている時雨を見るのが泉にはなぜかとても可笑しかった。

 

 

 

「ははは!そうかそうか。じゃあ牛乳は切らさないようにしないとな。」

 

 

 

 そう言うと泉は立ち上がり土埃を払うと時雨の方を向き手を差し伸べた。時雨もその手をつかみすっと立ち上がる。

 

 空は少しずつ赤みがかってきて、太陽も昼に見せていた暑さを少し和らげている。

 

 

 

「さて。時間も時間だし中へ入ろうぜ。といっても俺は基地の中なんて全く知らないがな」

 

 

 

「じゃあ僕が案内してあげるよ。今日中にある程度わからないと明日の仕事にも影響がでるしね」

 

 

 

 前を歩く時雨の後ろ姿を泉は少し見つめていた。その背中は小さく、でもとても頼もしかった。

 

 

 

「提督?早くしないと日が暮れるよ?」

 

 

 

「わかったわかった。時雨はせっかちなタイプか?」

 

 

 

「言いだしたのは提督じゃないか」

 

 

 

「それもそうだな。すまんすまん」

 

 

 

 振り返り不思議そうにコチラを見つめる時雨に、泉は謝りながら、背中を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 こうして二人の新たな生活の幕が開いたのだった。

 

 

 

 




次回からはもっといろんな子達が出ると思います!

感想お待ち知ってます!!
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