今日も夏は終わらない   作:だるまや

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やっと話が動きます笑


第3話

基地の中を軽く一回りしたところで、二人は食堂へと向かうため廊下を歩いていた。現代社会には珍しい木造の基地だが、新築ということもあり弓なりはせず、木の心地よい香りが泉の鼻をくすぐってくる。

 

なんでも火災等が起きた場合、鉄筋よりも木造の方が強度も下がらずメリットが多いのだとか。ソースはもちろん隣にいる時雨だ。

 

 

 

「提督、時間も時間だしそろそろ晩御飯にしない?」

 

 

 

隣を歩く時雨が提案したのを聞き、泉は自分が朝からなにも食べていないことに初めて気づいた。

 

 

 

「ああ、もうそんな時間か。確かにそろそろ飯にするか」

 

 

 

窓を見れば、外はもう夜の帳が降り始めていた。海からも涼しい風が吹いてきたため体感的にも過ごしやすくなってきたようだ。

 

 

 

「ところで、ご飯は誰が作るんだ?」

 

 

 

「妖精さんに頼めば作ってもらえるよ。場合によっては自分たちで作ることもあるけどね」

 

 

 

「また妖精さんか…。この基地ほんとに大丈夫か?」

 

 

 

泉はその言葉を聞いて、先ほど見た光景を思いだし苦笑いせずにはいられなかったのだった。

 

 

 

それは基地をふたりで回っているときまで遡ることになる。

 

 

 

泉は時雨の案内を受けながら基地をゆっくりと回っていた。

 

門をくぐって正面には大きな二階建ての建物が見え、右には艦娘の傷を癒すために必要なドックと海が遠くだが確認出来た。

 

 

 

「今目の前に見えるのが、提督の司令室や食堂がある総合棟だよ。ここからは見えないけど裏には僕たちの武器などを作る工廠があるし、うん、設備は揃ってるね」

 

 

 

時雨はてきぱきと案内をこなしながらもこの基地の設備の豊富さが少し嬉しかった。やはり設備が十分であれば自分の力も発揮できるというものだし、自分たちが期待されていることがひしひしと伝わってくる。とても光栄だし、改めて頑張ろうという気持ちになれた。

 

しかし一方ここで泉はひとつ違和感を覚えた。

 

 

 

「なあ、時雨。この基地には誰もいないのか?」

 

 

 

そう、基地から全く人の声や作業音が聞こえないのである。基地内にはほとんど音という音がしていないため、ただただ海から波がさざなむ音だけがこだましている。まるで廃園になった遊園地のようで若干気味が悪い。少しずつ外が暗くなっているのも雰囲気を醸し出している。

 

怪訝そうに聴くと、時雨は一瞬不思議そうな顔をしたが、質問の意味を理解すると納得したように泉に答えた。確かに彼らを紹介するのを忘れていたし、提督がそう思うのも無理はない。

 

 

 

「ああ、紹介が遅れてたね。ちょっと待って…。おーい!!みんな出ておいでー!!!」

 

 

 

「うお!?なんだなんだ?!」

 

 

 

時雨が急に大きな声で誰かを呼ぶと、いろんなところから小さな生き物(妖精さん)がたくさん出てきた。どうやら初めて見る人物のためこっそりついてきてたようだ。草むらからも急に出てきたため、泉は何が出てきたのかとビビってしまった。こう見えてお化けの類は大の苦手である。

 

妖精さんたちは時雨の足元に急いで整列すると、びしっと綺麗な敬礼をしてみせた。見た感じ50人ほどいるがこれでも一部らしい。見る限り指揮系統はかなり統率されているようである。

 

 

 

「提督。この子達がこの基地を支えてくれている妖精さんたちだよ」

 

 

 

「え?これがか?思ってたのとなんか違うな」

 

 

 

思わず正直な感想を口に出すと妖精さんは口々に文句を言い始めた。流石に初対面の人物にそんなことを置いわれれば妖精といえどもカチンとくる。

 

 

 

「シグレ、コノヒトハダレデス?」「シツレイナコトヲイウヤツデス」「オトトイキヤガレデス!」

 

 

 

初回から泉は随分と信頼を失ってしまったようだ。

 

 

 

「まあまあ…。みんなこれから一緒に頑張ろうよ」

 

 

 

困ったように笑いながら時雨が言うと、妖精さんたちは顔を見合わせて相談し始めた。どうやら時雨にはだいぶ心を開いているようで、素直に耳を貸している。

 

 

 

「シグレモコウイッテルデス?」「シカタナイノデユルシテヤルデス」「カンシャシロデス!」

 

 

 

(なんだこいつら?てか口悪くね?)

 

 

 

泉はまた口に出てきた感想を慌てて飲み込むと、軽く自己紹介し時雨から妖精さんの役割を聞いた。

 

なんでも妖精さんによって担当も決まっているらしく、作業服を着ていたり、ヘルメットをかぶっているものは工廠担当、軍服のようなものを着ているのは実戦担当といった具合だ。実戦担当では航空機に乗ったり、射撃などを担当するそうだ。

 

 

 

「こんなちっちゃいのに、なんでもできるのか!そりゃすごいな」

 

 

 

「チッチャイトイワレタデス?」「ヤカマシイデス」「ヒトコトヨケイナノデス!」

 

 

 

泉が心底感心していると、妖精さんは聞き捨てならなかったようでまたぶーぶー言い始めた。どうもあまり相性が良くないようである。

 

そのやりとりを見ながら時雨は笑っていると、ふと思い出したように泉に提案した。

 

 

 

「そうだ提督。ちょうどいいから妖精さんに頼んで建造してみようよ?ちょうどそういう任務があったはずだし」

 

 

 

「そうだっけか?どれ…。あ、ホントだ。よく知ってるな」

 

 

 

泉はカバンに入れていた任務書を見直すと、確かに「工廠ニオイテ資材ヲ活用シ、新シイ艦娘ヲ建造サレタシ」とちゃんと書かれていた。

 

それを確認すると、時雨は少し胸を張って自慢げだった。

 

 

 

「一応僕は提督の秘書艦だからね。それぐらいのこと把握しているのは当たり前さ」

 

 

 

「そうかそうか。ちっちゃいのに時雨はえらいなー」

 

 

 

若干時雨の態度にイラっときたのか泉はぐしゃぐしゃと頭を撫でた。別に特段の理由があってイラついたわけではないが、ちっちゃいのに威張られるのは非常に癪に障る。

 

 

 

「や、やめてよ。いたいじゃないか。流石の僕でも怒るときは怒るよ?」

 

 

 

「わかったわかった。話を戻そうぜ?建造は妖精さんに任せればいいのか?」

 

 

 

「話を脱線させているのはどっちだい…。まあ、そういうことになるね。今のところ建造ドックは二つあるけどどうする?」

 

 

 

「まあ、資材には余裕があるし二隻建造しよう。戦力はあったほうがいいだろうし、なによりお前一人じゃ淋しいだろ?」

 

 

 

「ま、まあそうだね…。ありがとう…」

 

 

 

泉がさも当然のように提案すると、時雨は顔を赤くしてしまった。最も泉は全く気づいていないのだが。

 

 

 

「ところで、妖精さんにはいくら資材を渡せばいいんだ?てかどうやって作るんだよ?」

 

 

 

「あ…、ああ!作り方は僕も知らないんだ。なぜかこの子達が絶対おしえてくれないんだよ。でもちゃんと資材さえ渡せばちゃんと作ってくれるよ?僕が保証する!」

 

 

 

やっと自分たちの話題になったのか、さっきまで各々時間を潰していた妖精さんが再び集まり始めた。妖精だって空気は読めるのだ。

 

 

 

「なに慌ててんだ…?まあそういうことならわかったよ。で、渡す量はどれくらいだ?」

 

 

 

「うーん、最初だし妖精さんに任せてみるのはどうかな?もちろん資材はあんまり多く使えないけど」

 

 

 

「まあ、よくわからんけどそうするか」

 

 

 

「決まりだね。じゃあ妖精さん。お願いできるかな?」

 

 

 

「「「リョーカイナノデス」」」」

 

 

 

そう言うと妖精さんは各々持ち場へ戻っていった。てくてく歩いてく姿は確かに愛嬌がある。

 

 

 

「どんな奴が来るんだろうな?」

 

 

 

「そこに関しては妖精さんの気分次第だからね。僕にもわからないけど楽しみにまとうよ」

 

 

 

「だな。次はどこに行くんだ?」

 

 

 

「じゃあ次は入渠ドックに行こう。僕たちが傷を治すためのところなんだけど、実は中は温泉なんだ」

 

 

 

「へー、そりゃ珍しいな。俺も入れるのか?」

 

 

 

「て、提督は入れないよ!!当たり前じゃないか!!」

 

 

 

大声を出してスタスタと言ってしまう不思議そうに泉は思いながらそのあとをついって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして二人は無駄話をしつつも、食堂に着いていた。

 

総合棟にあるこの食堂は艦娘たちも利用するため非常に中は広く、泉の通っていた大学の食堂に似ている。二人は真ん中に陣取ると食券販売機へと向かった。よくあるフードコートのような造りで、いわゆるセルフサービスというやつだ。奥には妖精さんたちが後片付けをしていた。

 

 

 

「どれどれメニューは…?てカレーしかねーじゃん」

 

 

 

「海軍といえばカレーだからね。他に食べたかったら前もって言っておくといいよ」

 

 

 

時雨はそう言うと妖精さんに食券を渡し、カレーを既に受け取っていた。泉もそれに倣うと、三角巾を可愛く巻いた妖精さんが、協力してカレーをよそってくれていた。泉は軽く感謝を述べると、席へ戻り急いで食べることにした。カレーは熱いほうがいいというのは泉のポリシーの一つである。

 

お互いいただきますを言い食べ始めると、徐々に話は泉の話題になった。

 

 

 

「でも提督はほんとにこの世界の人じゃないのかい?僕も最初はなんの冗談かと思ったよ…」

 

 

 

時雨も案内の途中に当然そんなことを言われたので、からかっているのかと思った。だが話を聞くにつれてそれが本当だということが泉の必死さから痛いほど伝わっていた。

 

 

 

「俺もこれが夢ならどんだけいいことかとおもうよ。気づいたら訳も分からずお前の提督だからな。正直俺も実感がない」

 

 

 

「そうか…。その、悠佳って人もいつか会えるといいね」

 

 

 

「そうだな。でもまあ、ここに来たのも何かの縁てやつだろうし、あいつを探しがてら頑張ってみるさ」

 

 

 

そう言いながら泉は明るく笑ったが、時雨は少し不安になってしまった。この人の中に果たして自分は大切なものとして存在しているのだろうか?もちろん恋愛感情とは全く違うが、楠について楽しそうに語る泉を見ると、なぜかとても切なかった。自分の存在が認められないからか、それとも単純に戦いで勝てないと思ったからなのか、頭の中ではいろんな思いが渦巻いていく。それを抱えたままでいるのはただただ苦しかった。

 

 

 

「て、提督は…。僕の提督になるのは…嫌かな?」

 

 

 

時雨は思わず聞いてしまい後悔した。内心何を言っているのか自分でも意味がわからなかったし、なにより恥ずかしい自分の皿にはもうほとんどカレーは入っていなかったが、ついスプーンでご飯の粒をつつかずにいられなかった。だが泉はそんなことに全く気付かず、不思議に思いながらも時雨の答えにはっきりと答えた。

 

 

 

「いや、俺はそんなことないぞ?確かに未だ慣れないことも多いが、新鮮だと思えばそれまでだし。なにより時雨が秘書艦のおかげでなんとかなりそうだしな」

 

 

 

そう笑ってみせると、時雨のもやもやは一瞬で晴れた。自分でも単純だとは思うが、その言葉を聞いただけでつい笑みがこぼれてしまいそうだった。

 

 

 

「そうか…!ならいいんだ。変なことを聞いてごめんね」

 

 

 

「いや、別にいいけどな。そういえば建造が完了するのがもうそろそろか?」

 

 

 

時計の針を見ると、もう八時半を過ぎていた。

 

 

 

「うん。もう工廠に行けば会えるんじゃないかな?」

 

 

 

「じゃあ、とっとと片付けてお迎えにでも行くか。待たせるのは若干気が引けるしな」

 

 

 

 

 

そう言うと急いで食器を片付け、二人はまだ見ぬ仲間を出迎えるため工廠へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時雨はやっぱり仲間が増えるのは嬉しいか?」

 

 

 

「そうだね。やっぱりみんなに会えるのはすごく楽しみだよ」

 

 

 

時雨はやはり自分の仲間が増えるのが嬉しいようで、向かう足取りもどこか軽い。泉も早足で追いつきながら歩き、とうとう二人は工廠に到着した。

 

大きな鉄の扉がそびえ立つその建物は、なかなか頑丈にできており、足元を見ると妖精さんが並んでいた。どうやら泉たちを待っていたらしい。

 

 

 

「じゃあ、みんな。連れてきてもらえるかな?」

 

 

 

挨拶もほどほどに時雨がそう伝えると、妖精さんたちは頷き、何処かへ行ってしまった。

 

 

 

「あれ?あいつらどこに行ったんだ?」

 

 

 

「多分呼びに行ったんじゃないかな?」

 

 

 

「そうか。なんか緊張してきた…」

 

 

 

「僕もだよ。どんな子が来るのかな…」

 

 

 

二人共興味半分、不安半分といった表情でまだ見ぬ仲間を待っていた。すると、目の前にある扉がゆっくりと開いた。どうやらもうすぐそこにいるようだ。

 

そして開いた先にいたのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ!あんたが提督か?よろしくな!」

 

 

 

「こんにちは!提督さん、よろしくね!

 

 

 

 

 

 

 

ヤンキーとわんこだった。




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