今日も夏は終わらない   作:だるまや

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戦闘描写全然分かんねえ\(^ω^)/


第4話

 〇九〇〇。時雨はいつものように提督を起こしていた。朝が弱い泉は自分で起きることはほとんどなく、時雨が起こすのが日課になりつつある。

 

 

 

「提督…。朝だよ。もう起きなきゃ」

 

 

 

「なんだよ…まだ寝かせろよ…」

 

 

 

「もう…。一昨日もそう言って、本部からのお客さんを待たせたじゃないか。早くしないと摩耶を呼ぶよ?」

 

 

 

「あいつめんどくさいんだから呼ぶなよ…。わかった起きる起きる」

 

 

 

 時雨がゆさゆさと揺らしてくるため、泉は仕方なく布団から出た。ちなみに前回起きなかった場合、摩耶が乗り込み泉の首を締め上げるというエキセントリックな起こされ方をしたので、もうそんな事態はゴメンである。

 

 今日で摩耶と夕立が来て一週間が経つ。まあ、摩耶とは常に些細なことで喧嘩が起きるし、夕立はすぐ構って欲しくて仕事の邪魔をするため毎回泉はへとへとになっているが、これといって大した出来事もなく日々を過ごしていた。泉自身も少しずつ仕事を理解し始め、ようやく基地としても機能し始めている。

 

 

 

「じゃあ僕は先に執務室へ行ってるから、早く来てね。任務もまたたくさん来てるみたいだし」

 

 

 

「へえへえ。急いでいけばいいんだろ…。ふあぁ…」

 

 

 

 

 

 泉が着替えて執務室へ入ると、既に三人は揃っていて、各々好きにくつろいでいた。摩耶はソファに座り、鼻歌を歌いながら自分の艤装を磨いているし、夕立はこの前教えた紙飛行機を量産しながら部屋をちらかしている。もともとこの部屋がそこそこ広いため、四人が揃っても狭く感じることがない。

 

 

 

「よう提督。今日も起きるのおせーな。俺なんか七時に起きたぜ!」」

 

 

 

 摩耶の少し上からの態度が泉にはムカついたようだ。

 

 

 

「ああ。お前みたいにババアじゃねえから規則的な生活ができねえんだよ」

 

 

 

「あぁ!?誰がババアだって!?ぶっ飛ばされてーか!?」

 

 

 

「朝からキャンキャンうるさいな。だってお前艦歴で言ったら80超えてるババアじゃん」

 

 

 

「な…!」

 

 

 

「大体そんなに体力余ってんならこのクソ暑い中コートでも着てランニングでもしてこいよ。それならいくらお前でも脱水症状で静かになるだろ?」

 

 

 

「提督…!この摩耶様を怒らせちまったようだな!!」

 

 

 

 もはや一触即発の険悪な雰囲気を見た時雨が、ため息を付きながらも止めに入る。大体いつもこのパターンで時雨が止めないと、摩耶が先に手を出しそうで提督の命が危ない。

 

 

 

「二人共そこまでにしなよ。ほら、提督が今のは良くないんだから謝るべきだと僕は思うよ?」

 

 

 

「だってよ提督!謝るってんならこの摩耶様の大きな器に免じて許してやってもいいんだぜ?」

 

 

 

 勝ち誇ったようなドヤ顔が喧嘩に拍車をかける。

 

 

 

「誰が謝るかこのヤンキーが。お前のお猪口みたいな器じゃ溢れちまうから遠慮するわ」

 

 

 

「あ!?やんのか!?」

 

 

 

「提督さん。飛行機あんまり飛ばないっぽい?直して直して〜」

 

 

 

「だめだこりゃ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 喧嘩もひと段落したところで時雨は提督に今日の任務を伝えていた。それを聞いてほかの二人も集まってくる。

 

 

 

「提督。今日は出撃任務が来てるよ」

 

 

 

「三日前に出撃したのにまた来たのか。今度はどこに出撃だ?」

 

 

 

「えーっとね、南西諸島沖だよ。最近敵の前衛部隊が多数補足されてるみたいだね」

 

 

 

 それを聞いて気になったようでほかの二人も集まってくる。

 

 

 

「敵の編成はどんな感じっぽい?」

 

 

 

「敵は五隻のようだね。軽巡、雷巡、駆逐艦で編成されているらしいよ」

 

 

 

「ふーん。まあこの摩耶様なら軽く蹴散らしてやるぜ!!」

 

 

 

 重巡に摩耶としては火力で押せるのが嬉しいのか、自慢げに胸を張っていた。

 

 

 

「そんなこと言ってまた前みたいに油断して被弾すんなよ?お前の修理代高くつくんだからな?」

 

 

 

 前回の基地海域では最後の最後に敵の魚雷を受けて小破になってしまったため、摩耶としても痛いところを突かれてしまった。ほかのふたりは無傷だったため余計に恥ずかしい。

 

 

 

「わ、わかってるって。提督しつこい」

 

 

 

「ならいいけどな。時雨、出撃の時間はどうする?」

 

 

 

「早く出撃したいっぽい?」

 

 

 

「じゃあ、一二〇〇でどうかな?それなら夕方までには主力部隊と会敵出来ると思う」

 

 

 

「そうするか。じゃあ一一三〇に港集合でいいか?」

 

 

 

「りょーかいだぜ!!」

 

 

 

「じゃあそれまで解散。俺はねるから時間になったら起こして」

 

 

 

「いい加減仕事しろや!!」

 

 

 

 摩耶にひっぱたかれ、渋々泉は机にある山のような書類を片付けることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ザザザ…。提督?時雨だよ。無線はきこえてるかな?」

 

 

 

「ああ、よく聞こえてるよ。そっちの方はどうだ?さっきの敵の戦闘で何か問題ないか?」

 

 

 

「僕たちは大丈夫。天気もいいし、これなら索敵の心配のなさそうだよ」

 

 

 

「それならいい。じゃあそのまま進路を東にとってくれ。一時間もすれば敵の艦隊が視認できるはずだ」

 

 

 

「了解。じゃあまた後でね」

 

 

 

 そう言って切れた無線のヘッドフォンを外すと、泉は一人肘を付きながら執務室でぼーっと座っていた。

 

 そもそも艦娘と深海棲艦はあの姿のまま砲雷戦を行うため、提督はその危険性から随伴することができない。そもそも向こうの攻撃は既存の艦船ではあっという間に轟沈してしまうため、ついていく手段がないのだ。

 

 

 

「まああの三人なら大丈夫か…」

 

 

 

 そう呟くと不安を消すように残っていた仕事を片付けることにした。

 

 

 

 

 

 その頃時雨たちは、一路東へまっすぐと向かっていた。途中駆逐艦のはぐれ艦隊と戦闘になったが、反撃を受けずに無傷で撃破できたため、上々といった立ち上がりだ。

 

 

 

「しっかし提督のやつ朝からむかつくぜ。よりによってババアなんてよ」

 

 

 

 必然的に海にいるのは三人だけなので、敵に遭遇する危険がなければこうした無駄話をすることも多い。最近の摩耶の話題は提督の話ばかりだ。

 

 

 

「夕立もおばあちゃんっぽい?それは嫌かも〜」

 

 

 

「ま、まあ提督は朝が弱いからね。ホントはそんなこと思ってないと思うから大目に見てあげようよ」

 

 

 

 時雨がそう言って二人をなだめていると、摩耶は時雨が提督をかばっているのが気に入らなかったらしく少し意地悪をしようと考えた。

 

 

 

「へえ〜、そいえば時雨はよく提督のことをかばうよな?なんかあるのか?」

 

 

 

「な、なんかってなにさ」

 

 

 

「いや、俺たちがここに来るまでに提督と何かあったんじゃねーかなって思うんだよ俺は」

 

 

 

「な、何もあるわけないじゃないか!からかうのはやめてよ」

 

 

 

 ニヤニヤしながら聞いてくる摩耶に、時雨は少し図星を突かれて慌てて否定した。

 

 

 

 確かに提督はいつも仕事をサボるし、子供扱いしてくると時雨も思っていた。でもそれだけの印象にとどまらなかったのは、食堂で見せたあの目だと思う。自分は知らない相手だけど、あの時その人を思い浮かべた目は優しそうで、必死で、少しかっこよかったと思う。それがもし自分に向けられたら、幸せなのかなとも思っていたのだ。

 

 しかしそんな乙女なことを言ってしまえば、目の前の人物に何を言われるかわかったものではない。この気持ちは誰にも話したくないのだ。

 

 

 

「あれ〜?その反応は怪しいな?この摩耶様におしえろよ、誰にも言わねえからさ!」

 

 

 

「だから、なんでもないって!てか摩耶のその喋り方おばさんみたいだよ?」

 

 

 

「な、なに…。お前までそういうこと言うのかよ!!!やめろよ、全く!!」

 

 

 

 思わぬカウンターをくらい摩耶が突っ込んでいると、観測をしてくれていた妖精さんが大きな声で叫んだ。

 

 

 

「ワレ、テキカンミユ!!!カズ五!!サンジノホウコウ、キョリ四〇〇〇〇!!」

 

 

 

「きやがったか!!!時雨、陣形はどうする!?」

 

 

 

 戦闘になった場合、基本的な判断は旗艦が下すためここは時雨に任されることになる。

 

 

 

「単縦陣で行こう。うまくいけばT字陣形に持っていけるはずだよ。僕を先頭に!摩耶は殿をお願い!妖精さん!提督に無線をつなぐ準備を!!」

 

 

 

 万が一戦況が不利になれば、その都度撤退は提督自身が行うのだ。慢心が一番恐ろしいと学んでいるからこそ準備を怠るわけにはいかない。

 

 

 

「リョーカイ!!」

 

 

 

「わかったぜ!!!夕立!怖いなら、あたしの後ろに隠れてな!」

 

 

 

「陣形の意味ないっぽい?」

 

 

 

「細けぇことはいいんだよ!!それ!いくぜ!!」

 

 

 

 早急に陣形を整えながら少しずつ距離を詰めていくと、さらに妖精さんが敵を判別していく。

 

 

 

「テキノヘンセイ!!ヘキュウ1!ホキュウ1!イキュウ3トミユ!!キョリ三〇〇〇〇!!!」

 

 

 

「報告の通りだね。軽巡の射程距離ならまだ打ってこないはず。問題は敵がこちらに気づいているかだけど…」

 

 

 

「二五〇〇〇まで距離が詰まれば、俺の射程には入るけど、一発打っておくか?」

 

 

 

「いや、この距離で陣形すら取らないのは流石に変だよ。もし気づいていないなら先制攻撃ができるはず。ゆっくり近づいて、確実に倒そう。僕は先頭を狙うよ」

 

 

 

「わかった!!じゃあ俺はどん尻をねらうぜ!!夕立はどうすんだ?」

 

 

 

「ん〜、選り取りみどりっぽい?夕立は真ん中を狙う!」

 

 

 

「決まりだね。じゃあ一五〇〇〇になったら砲撃を開始しよう。それまでは最大戦速で距離を詰めつつ、接近。いいね?」

 

 

 

「「りょーかい!」」

 

 

 

 作戦会議を終えると時雨たちは急ぎ敵艦隊へと近づいた。空気がひりひりする独特な空気を目、耳、肌で感じながらその距離を詰めていく。そして徐々にはっきりと見えてきた深海棲艦は、およそ人とも呼べぬ奇怪な形をしており、海に漂うその姿はただただ気持ち悪かった。

 

 あと少し。そう思いながら射撃準備に入る妖精さんとコンタクトを取りながら、後ろの二人にも合図を送る。二人共も頷き、準備は完了したことがわかった。

 

 そしてその時は来た。

 

 

 

「見付けたよ」

 

 

 

 その言葉と同時に時雨の主砲が勢いよく火を噴くと、それを見た二人も示し合わせたように敵めがけて砲撃を開始した。やはり敵は全く気づいていなかったようで、慌てて回避運動を取り始めるがもうすでに遅かった。先頭のヘ級に時雨の攻撃が直撃することで、陣形を崩れお互い衝突しないようにするのが精一杯といった感じだ。摩耶の攻撃もど真ん中に命中し、あっという間にイ級は海の中へと消えていく。

 

 

 

「よっしゃあ!!初弾で命中したぜ!」

 

 

 

 しかし相手とて的ではない。態勢を崩しながらも主砲を打ち始める。そこにあるのは明確な殺意であり、その見えない圧力が自分の体を刺してくるのを時雨は実感していた。どんどん近づく距離はまるで刀で斬り合っているような感覚に似ている。

 

 

 

 そんなことを考えていると、夕立は至近弾を受けていた。たまたまのまぐれ当たりではあるが波は大きく揺れ、バランスを崩しそうになるなか夕立はギリギリ躱していく。駆逐艦にとって一発の直撃は死すら意味してしまうのだ。紙一重の差が生死を分けていく。

 

 

 

「ふにゃぁ!?」

 

 

 

「!?夕立大丈夫?」

 

 

 

「ま、まだまだ余裕っぽい!それよりも敵を殲滅しなきゃ!」

 

 

 

 必死に躱しつつ正確な射撃を行う夕立のセンスは、大戦時の活躍そのままだと時雨は改めて目を見張った。砲弾は弧を描いて吸い込まれるように敵に命中し、へ級も続いて轟沈していく。

 

 今のところ状況はこちらが有利とはいえ、攻撃をまともに食らえば一瞬で立場は逆転してしまう。そのくらい戦いは危うい天秤の上にある。残りの三隻を早めに決着をつけなければ、そう時雨は考えるとすぐさま後ろの二人に大きな声で伝えた。

 

 

 

「このまま魚雷を発射しよう!!砲撃で包囲しつつ、偏差雷撃で相手にとどめを刺す!!」

 

 

 

「じゃあ、反転しつつ雷撃開始だ!!行くぜ!!」

 

 

 

「素敵なパーティーしましょ!!」

 

 

 

 三人の砲撃と魚雷の準備を感じ負けをさとった敵艦隊は、撤退しようと猛スピードをだす。背中を向けつつ必死に当たらぬ砲撃を撃つ彼らは、まさに敗者のそれであった。

 

 

 

「おそいぜ!!!」

 

 

 

 発射された魚雷はどんどんスピードをあげ、敵を猛追していく。回避は不可能だと思った敵は最後の望みで海中にある魚雷を主砲で破壊しようとするが、すぐに大きな水柱がたったかと思うとそのまま三つの深海棲艦が海の藻屑へその姿を変えた。勝利を確信した瞬間だった。

 

「よし。これで一安心かな。」

 

時雨は安堵の表情を浮かべ急ぎ提督へ勝利の連絡をするために無線を取ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、今日の作戦はかんぺきだったな!!俺も今日は無傷で帰れるぜ!!」

 

 

 

 三人は無事戦闘を終えると、基地へ向かって進路をとっていた。よっぽど勝利が嬉しかったのだろう、摩耶が嬉しそうに笑う。

 

 

 

「夕立も頑張ったっぽい?提督さんに褒めてもらわなきゃ!」

 

 

 

「二人共ありがとう。今日は助かったよ」

 

 

 

「何水臭いこと言ってんだ!この調子でいけばそうそう負けることなんかないぜ!!なんてったってこの摩耶様がついてるんだからな!!!」

 

 

 

「ははは…。そうかもね。てかちょっと痛いかな…」

 

 

 

 バシバシと肩を叩かれ、時雨は苦笑いしつつも気分は晴れやかだった。こうやってこれからも無事にみんなで帰ることができたらどんなにいいことか。その幸福感は何にも代え難い。

 

 

 

「でも、油断は禁物っぽい?敵がいたら危ないよ?」

 

 

 

「大丈夫だって!!!ここの海域にはもう敵なんかいねえよ!」

 

 

 

 夕立の不安を一蹴していたその直後、それは起きた。

 

 

 

「ワ、ワレテキカンミユ!!!テキハイッセキナレド、カンシュフメイ!!ロクジノホウコウ、キョリ一〇〇〇〇!!」

 

 

 

「げ!!マジかよ!!そんな近くに!?」

 

 

 

「かなりヤバイっぽい!?」

 

 

 

 摩耶と夕立が妖精さんの声を聞いて慌てる中、時雨は焦っていた。

 

 

 

(僕たちはさっきの戦闘で弾薬と燃料を消費している…。ここで殲滅できればいいが、応援を出されてしまえば勝てる見込みは低い!)

 

 

 

「時雨!どうする!?にげるか?」

 

 

 

 どうするべきか時雨は迷っていた。艦隊を指揮するものとしてミスは許されない。だからこそその迷いは致命的な時間のロスだった。

 

 

 

「テキサラニセッキン!!!サイダイセンソクデツッコンデクル!!!」

 

 

 

「間に合わない?!うそだろ!?」

 

 

 

 摩耶がそう叫ぶなか、時雨は背後から敵の砲撃を予測し、思わず目をつぶってしまった。本来であれば一番やってはいけない行為だったが、突然のことに体が動かなかったのだ。しかしいつまでたってもそれは来ない。目を開けて振り返ると、そこには深海棲艦ではない、ある人物が見えてきた。それはまさかの人物であり、時雨自身も衝撃を受けてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クマ?時雨じゃないかクマ!!久しぶりクマ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこにはクマがいた。

 

 

 

 




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