早速、お話が動き始めます。
邂逅遭遇(1)
1
四月二〇日。大阪。
連合艦隊司令部が居を構える呉を出立し、舞原誉中佐は夜行列車に乗り込んでいた。行き先は東京である。連合艦隊司令長官・五十嵐茂大将から託されたことも含め、いくつかの要件を済ませるためだ。一週間の日程を予定している。
線路の継ぎ目に合わせて、規則正しくリズムを刻む三等車。少し硬めの座席に身を預けていた舞原は、ふと、向かいの席に目を向ける。
「ふふ、真っ暗で、何も見えませんね」
第一種軍装に身を包んだ御子が、そこには座っている。
五十嵐に東京出張を依頼された際、ひょっこりと御子が顔を出し、「でしたら私も連れて行ってください」と言い出した。そのまま、あれよあれよという間に、御子は東京行きの身支度を済ませてしまった。仕方なく、五十嵐は御子の東京行きを認め、道中の付き添いを舞原に命じたのだ。
――「横須賀へ用事があるのです。呉で忙しいあの子に代わって、届けるべきものがここに」
御子はそう言って、文字の書かれた札のようなものを見せた。その使い道は、舞原にはとんと想像がつかなかったが、ともかく彼女も用件があるのは理解した。東京から横須賀へ足を伸ばすのも、二日あれば足りるだろうという計算だ。
そんな経緯があって、舞原は御子と行動を共にしている。
暗闇が広がる車窓を、映り込んだ自身の姿越しに見つめる御子。先ほどから、彼女はずっとこの調子だ。特に何があるわけでもなく、夜に支配された風景が続くだけの車窓を、延々と眺めて微笑む。その意図が、舞原には掴めない。
(元より、掴みどころのない方だ)
横顔を窺いながら、自分の眉間に一筋皺が刻まれるのを感じた。白い睫毛も、金色の瞳も、透き通る表情も、彼女はいつだって柔らかだ。微笑みという表情があっても、それ以外の変化はない。感情というものが読み取れない。それが舞原の、御子への印象だった。
暖簾に腕押し、糠に釘。手応えのないその姿を捉えようというのが、誤りなのかもしれない。
「舞原中佐」
呼ばれてハッと我に返る。気づけば、御子は窓から顔を離し、舞原へと視線を向けていた。真昼の太陽を思わせる瞳が、やはり微笑んだ。
「お弁当をいただいても?」
「……ええ」
大阪の駅で買った弁当を取り出し、御子へ手渡す。それが楽しみであったというように、御子は早速弁当に箸を入れ、ご飯を頬張った。
「豊穣ですね。良いことです」
その言葉に頷いて、舞原もまた弁当を開く。春の旬が並んだ中身を、舞原は一つ一つ平らげていった。
四月二三日。横須賀。
東京での所用を終えた舞原と御子は、横須賀鎮守府を訪れていた。
横須賀周辺は、東京とはまた違った賑わいを見せている。祝勝ムード一色だった東京に対して、こちらはより現実的な騒がしさ、と言うべきか。そこにあるのは、軍港特有の、戦闘直後の慌ただしさだ。
連合艦隊司令部は一時的に呉鎮守府の庁舎に置かれているが、現旗艦である〔尾張〕は、この横須賀で「北太平洋沖海戦」(三月三一日から翌四月一日未明に生起した海戦の日本軍呼称)の傷を癒していた。二か月が予定される工事の音が、すでに船渠に響いている。この他にも、〔鈴谷〕と〔熊野〕など、数隻の艦が急ピッチで修復されていた。
同時に、戦闘に参加した各艦乗員への休暇も与えられている。横須賀の街へ繰り出す者も多く、どこの店でも水兵の姿が見えた。
次の戦闘への備えと、束の間の休息。その両方の喧騒が、横須賀を支配する。
〔尾張〕が入渠する乾ドックの前を通り過ぎ、喧騒に背を向けて、舞原と御子を乗せた内火艇は横須賀鎮守府の沖へと向かっていた。目指す艦はすでに目の前だ。錨を降ろし、昼下がりの海に佇むその艦を、舞原は目を眇めて見つめる。
航空母艦〔蒼龍〕。日本海軍の大・中型空母としては初めて、最初から空母として設計された艦だ。彼女と、準同型艦の〔飛龍〕が日本空母の設計を決定づけたと言っても過言ではなく、まもなく竣工予定の〔翔鶴〕型や、近く起工される大型空母も、〔蒼龍〕と〔飛龍〕の拡大改良型となっている。
第二航空戦隊――二航戦を構成する中型空母の舷梯へ、内火艇は近づいていく。舷門には、艦長と、艦娘と思しき人影が見えた。
「お世話になります」
「うむ、ご苦労」
甲板へ上がり、敬礼した舞原へ、艦長は短く答えた。それに合わせて、隣に控える艦娘も敬礼する。彼女はやや緊張した様子で、舞原と御子の顔を、交互に窺っていた。
「早速、案内をお願いします」
「飛行甲板でいいのだな」
「はい」
艦長は頷いて、先頭に立ち、飛行甲板への通路を案内してくれる。舷門のある最上甲板から、ラッタルを使って一段上の飛行甲板へ。空母特有の移動だ。
数分とせず、舞原たちは飛行甲板へ出た。
〔蒼龍〕の全長は二百二十七・五メートル、飛行甲板の長さは二百十六・九メートル。広大な全通甲板の、中央からやや艦首寄りの右舷に設けられた艦橋脇に立ち、舞原はぐるりと艦上を見回した。真っ新な飛行甲板には艦橋以外に何もなく、前縁から後縁まで見渡すことができる。〔尾張〕で見慣れた、城郭を思わせる艦上構造物群は、そこにはない。のっぺりとした全景は、従来の軍艦の価値観に照らし合わせれば、貧弱な印象すら受けた。
(能ある鷹は爪を隠す、と言うべきか)
空母という新艦種に属する〔蒼龍〕の真の実力は、この全通甲板の下に秘められている。
「さあ、参りましょう」
そう宣言して、御子はすたすたと歩き始めてしまう。まるでピクニックにでも行くように軽い足取りの彼女。その背には、布袋に包まれた細長いものが背負われていた。
残された三人は、慌てて御子の後を追う。微風の甲板上に、四人分の足音が響いた。
御子が最初に向かったのは、飛行甲板の前縁であった。風にふわりと髪をなびかせた御子は、懐から例の札を取り出す。何某かを呟き、彼女は札を甲板へと張り付けた。不思議なことに、札は甲板の一部となったかのように、風に吹かれても飛ぶことはなかった。
二枚目の札を取り出した御子は、同じような要領で、今度は前縁より二十メートルほど下がった位置に張り付ける。飛行甲板の正中線に引かれた白線の上に、札が置かれた。特に何かが起こることはなく、舞原たちはただじっと、御子の動きを見ていた。
三枚目の札を、二枚目よりもさらに二十メートルほど下がった位置に張り付けて、ようやく御子は、その微笑を舞原たちへ――正確には蒼龍へと向けた。
「蒼龍、これへ」
手招く御子へ、この艦の艦娘は、恐る恐る近づいていく。一方の御子は、微笑を崩すことなく、背中の物を降ろした。布袋の結び目を丁寧に解き、その中身を取り出す。
現れたのは一本の竹の棒。二メートルはあろうかという棒は、しなやかさと強かさを備えていた。
弓だ。弓道で用いられるような、和弓。弦が張られていないそれを、御子は蒼龍へ見せる。
「
詩でも吟じるように、御子はつらつらと語る。その意図がわからず、蒼龍はただただ困惑するばかりだ。宙を彷徨う彼女の手を、御子はそっと捕まえて、弓を――箭霊を託す。
「あの……私は、どうしたら、いいですか」
困惑のまま尋ねた蒼龍へ、御子が答える。
「使い方は、この艦と、この弓が知っている。貴女は迷わず、躊躇わず、弦を引きなさい」
全ての要件を済ませ、横須賀鎮守府を後にした舞原と御子は、夕闇迫る横須賀市街を歩いていた。目指すのは一軒の和菓子屋。御子たっての要望あってのことだ。
横須賀市街で、舞原が案内できるような和菓子屋は一軒だけだった。
「ごめんください」
「いらっしゃいませ――あら、舞原さん」
丁寧な文字で「ゆき」と書かれた暖簾をくぐると、すぐに懐かしい声がした。舞原を迎えてくれたのは、着物に割烹着姿の女性。〔吹雪〕が横須賀から呉へ転属になって以来だから、実に十年ぶりになるだろうか。そんな客の顔を覚えてくれていたのは、純粋に嬉しかった。
雪村はる、といったこの和菓子屋の娘は、十年前と変わらない笑顔を舞原へ向ける。変わっていたのは、彼女と自分の年齢だ。はるは、まだ幼さの残っていたあの頃より、随分と大人びて穏やかな印象を受けた。
「随分とお久しぶりです」
「ええ、ご無沙汰しています。――まさか、自分のことを覚えているとは、思わなかった」
「客商売は、記憶力が肝要です。それに――舞原さんのこと、忘れるはずもありません」
照れたように笑ったはるは、すぐに席へと案内してくれる。舞原は店外を振り返り、御子を引き入れる。彼女は物珍し気に、辺りを見回していた。
店内にいた客が、御子へ目を向けることはなかった。それもそのはずだ。目立って仕方のない白髪を、彼女はどうやってか黒へ染め直している。横須賀市街への道中、「この髪では目立ちますね」と言った途端、彼女の髪は黒へと変わっていた。
全くもって理屈はわからないが、ともかく今の御子は、制服も相まってただの海軍軍人にしか見えない。わざわざ彼女へ目を向ける人はいなかった。
ただ一人、はるだけが、目を真ん丸にして驚いている。
「あの、そちらの方は――」
はるの目が、舞原と御子の間をせわしなく行き来する。焦点の定まらない目と、お盆を強く抱きしめる腕が、彼女の焦りを物語っていた。
意を決したように、はるが舞原に尋ねる。
「舞原さんの、奥様、ですか……?」
ここ数年で一番の衝撃を、舞原はやっとの思いで堪えた。腹筋を鍛えていたことを、これほど感謝したこともない。
隣に立つ御子からも、ぱちくりという瞬きの音さえ聞こえてきた気がした。
やっとのことで呼吸を整え、舞原はかぶりを振る。
「いえ、違います。自分は、結婚は、まだ」
「――そ、そうなのですねっ」
ほっとしたような表情に見えたのは、気のせいであろうか。
事の次第を把握したらしい御子が、ニコニコとしたまま、舞原の方を見ている。その表情から意図的に視線を外す。普段とは別種の微笑であることは、何となく理解できた。
「す、すみません、妙なことをお聞きしてしまいました。さあ、お席の方へ、どうぞ」
案内を再開したはるに従って、向かい合わせの席へ座る。置かれたお品書きを開いている間に、はるがお茶を二人分、運んでくれた。
「ご注文がお決まりになった頃、お伺いしますね」
はるは笑って、ぱたぱたと厨房の方へ戻っていった。和服で器用に動くその姿が、懐かしい記憶を思い起こさせる。
「舞原中佐のご贔屓にしているお店だったのですね」
お品書きを楽しそうに眺めながら、御子はそう言って微笑んだ。十年ほど訪れていなかったとはいえ、否定する要素もなく、舞原は頷く。
「ええ。〔吹雪〕の水雷長をしていた頃、よくお世話になっていました」
ふと、「ゆき」との馴れ初めを思い返す。元々、「ゆき」のことを知ったきっかけは、この店にじゃじゃ馬艦娘衆が入り浸っているとの情報を聞きつけたからだ。その後には、吹雪が「お土産」と称して「ゆき」の餡蜜やくずきりを舞原へ渡してくるようになった。気づけば、舞原もすっかり、この店の虜になっていた。
月に一度程度、吹雪に強引に引っ張られて「ゆき」を訪れるのを、楽しみにしていたのは事実だ。記憶の中、餡蜜をつついたこの店は、いつも客の笑顔で溢れていた。また来たいと、来るたびに思わせてくれた。
開いたお品書きに、改めて目を通す。十年前から変わらない、懐かしいメニューと、最近加わったのだろう、見たこともないメニュー。それから、季節限定と銘打った、メニューまで。これだけあると、さすがに迷ってしまう。
「はるさん」
つい、机を片付けていたはるを、呼び止めてしまう。振り向いた彼女は、パッと明るく笑って、舞原の元へ駆け寄ってきた。二十代も後半だろうが、子犬を思わせるその所作は、どことなく女学生の雰囲気を残している。
「どうされましたか?」
「ああ、ええっと、おすすめなどありますか?どれもおいしそうで、迷ってしまって」
舞原の問いかけに、お安い御用です、とはるが胸を張る。彼女は、桜風味の餡蜜というのを勧めてくれた。
「では、私はそれにします」
「桜餡蜜ですね、かしこまりました」
舞原の注文を取って、はるはすぐに御子へ視線を移した。すでに注文を決めていたらしい御子は、アイスクリームの乗った餡蜜を頼んでいた。注文を取り終わったはるは、またぱたぱたと厨房へ戻っていく。
数分ほどで、二人分の餡蜜が運ばれてきた。舞原の桜餡蜜は陶器の器、御子のクリーム餡蜜はガラスの器。風情の違う二つの器に、黒蜜のかかったみつまめと餡子が並んでいる。
「どうぞごゆっくり」
笑ったはるに会釈をして、舞原は早速、スプーンを手に取った。十年前のあの味を、舌が憶えているのだろう。とても待ちきれない。
黒蜜が絡まった餡子をすくう。小豆色の塊は実に滑らかで、スプーンを抵抗なく受け入れた。一口分を口に含む。ほのかな桜の香りが、蜜と餡子の甘さと共に、口一杯に広がった。
あの時から変わらずにおいしい。いやむしろ、あの時以上ではないだろうか。
「甘くておいしい」
御子も微笑のまま餡子と寒天をすくっている。一口含むたびに頷く彼女からは、珍しく「おいしい」という感情が読み取れた気がした。
半分ほどをあっという間に食べたところへ、再びはるがやって来た。彼女はお茶を注いでくれるとともに、何かを差し出した。前に出されたのは、桜餅。塩漬けの葉が巻かれた一口大の餅が、皿の上にちょこんと乗っている。
「はるさん、これは?」
尋ねた舞原に、はるは片目を瞑り、人差し指を唇に当てた。
「おまけです。少し時季外れですけど、おいしいですよ」
小声でそう言ったはるの好意を、ありがたく受け取っておく。ふと窺った厨房では、この店の長男がぺこりと頭を下げていた。
「こちらもおいしいですね」
向かいでは、すでに御子が桜餅に食いついていた。その微笑に一点の曇りもない。
結局、餡蜜と桜餅を数分とせず平らげてしまった。汁粉以外の甘味は久しぶりだ。いくら食べても食べ足りない気さえする。
お茶で舌に残る蜜の甘さを流すのが、名残惜しかった。
「舞原さんは、今どちらの艦に乗っていらっしゃるのですか?」
海軍省への土産も一緒に会計している間、はるは遠慮がちに舞原へ尋ねて来た。特に隠す必要もなく、舞原は答える。
「連合艦隊の参謀をしております。今日は所用で、横須賀に」
「まあ、そうだったのですか。では、普段は呉に?」
「はい」
さすがは軍港の娘というべきか、連合艦隊司令部が呉にあるとすぐに理解していた。
「そうでしたか。……では、以前のように、通ってはいただけませんね」
釣銭と土産の菓子を差し出すはるが、寂しげに笑った。なんだか、無性に放っておけない気持ちになり、舞原は反射的に口を開く。
「常連とはいきませんが……これからも、贔屓にさせてください。東京や横須賀へ来た時は、必ず、こちらへ顔を出します」
言ってしまってから、我ながら安請け合いをしたものだと内心で反省する。今は戦時だ。そして、連合艦隊の参謀である自分に、自由な時間など許されていない。はるへの言葉は、口約束でしかないと、考えるまでもなくわかるはずだ。
「ありがとうございます。また、お待ちしています」
頬を赤らめて笑うはる。これは約束を違えるわけにはいかないと、舞原は固く決心した。
受け取った土産を提げて、御子と合流する。はるはというと、わざわざ暖簾から出て、見送ってくれた。丁度店仕舞いの時間だったようだ。
腕時計の時間を見る。横須賀から東京へ向かう汽車は、まだ残っていた。横須賀鎮守府に部屋を借りてもよかったが、できれば今日の内に東京へ戻りたい。
「戻りましょう、御子さん」
だが、呼びかけた御子から、反応はなかった。微笑から微塵も動かなかった表情が、とても硬いものに変わっている。貼り付けたような微笑がわずかに残る目を、彼女はただ一点へ向けていた。目線の先にいるのは、暖簾を仕舞いながらはにかむはる――ではなく、店頭で和菓子を買っている、一人の婦人。
「ありがとう」
穏やかな笑みと共に、店主から和菓子を受け取る婦人。流行りの洋服を着た彼女を、御子はやはり、じっと見つめていた。何かを見極めんとするように、金色の瞳は動かない。
こちらの視線に気づいたのか、婦人は首を傾げながらも、小さく会釈をする。購入したお菓子を大事そうに抱えながら、彼女は舞原たちの横を通り過ぎ、横須賀市街へ紛れようとした。
その、婦人の手を、御子が掴んで引き留めた。舞原の目にも止まらない速さであった。三十メートルほどを一っ飛びした御子を、舞原は慌てて追いかける。
「お待ちになってください」
御子の発した声には、これまでにない迫力――
「あの……何か?」
婦人が問いかけても、御子は一向にその手を離さない。むしろ、こちらまでぎりぎりという音が聞こえるほどに、力を強める。感情の読み取れなかった微笑みは消え失せ、殊更に険しい表情を見せていた。
「隠しても無駄です。ごまかせません」
いつの間にやら、御子の髪が白髪に戻っている。腰に届く長髪が白蛇のようにうねり、うごめく。目の前の婦人を、目一杯に警戒している。陽も沈もうというのに、御子の体は太陽の輝きを纏いつつあった。
次の瞬間、御子に手を掴まれた婦人の顔から、表情が消えた。否、正確に言えば、一つだけ表情らしきものが残っている。しかしそれは、例の、何の感情も内在させない微笑みだ。それは表情と呼ぶにはあまりにも平坦すぎる。
(なんだ、一体……!)
今更ながら、冷たい汗が背中を伝った。ここまで気づかなかったのが不思議なくらいだ。目の前の婦人からは、御子に負けないくらいの迫力が放たれている。
「――とても聡い子。ええ、本当に。顔を見るだけのつもりでしたのに」
婦人の表情に、本物の微笑みが混じる。笑っているのだ。彼女は、あの御子を見て、慈しむように笑っているのだ。その意味がわからず、舞原はただ、固唾を飲んで見守る他ない。
夕焼けの中で、婦人の髪もまた、白く染まっていった。それからいとも容易く御子の手を解き、踵を返す。
「話があるのでしょう。場所を変えましょうか」
この時はこんなに進みが早かったのに、なんで完成品が13万文字の大ボリュームになってるんですか…(震え)