ロクでなしに憑依した   作:山羊次郎

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九話:優しい嘘も世の中にはある

「そんな、知らない人に、いきなり優勝してくれって言われても…」

 

 システィーナの反応は当然のことだろう。

 だが

 

「お願い。信じて」

 

 そういって、リィエルがシスティーナの手を握る。

 

「!……、貴女は…」

 

 その瞬間、何かを察したシスティーナがアルベルトのほうを見て

 

「分かったわ、クラスの指揮をお願いしますアルベルトさん」

「「システィーナ⁉」」

「大丈夫なの?この人たち…」

「誰が指揮を執ろうが、私たちのやることは変わらないでしょ。一組を倒してみんなで優勝するんだから!」

「そりゃそうだけど…」

「それに先生がいない時に私達が負けたら……」

 

 

 

 

『ブハハハハハ!お前らって本当に駄目駄目だよなぁ!俺が居ないと何にも出来ないんだから!ごめんね~途中で僕が抜けちゃったせいで負けちゃって~』

 

 

 

「言いそう…」

「ウザいですわとてつもなくウザいですわ!」

「あのバカ講師にそんなこと言われるのは断じて我慢ならないね」

 

 他の生徒もどんどんグレンへのヘイトを高めていき

 

「クソッ!やるよ、やってやる!これ以上先生にデカい顔させられるかよ!」

 

 この時、アルベルトが一瞬複雑そうな顔をしたのは内緒だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……確かに、グレン=レーダスとルミア=ティンジェルはいないようですが、しかし」

 

 どこかの場所で、メイド服に身を包む女性が言葉を紡ぐ。

 

「なぜ帝国宮廷魔導士団が、魔術競技祭に?」

「なんでだと思う?」

「……」

 

 突如声を掛けられ、その方を振り向くと

 

「……帝国宮廷魔導士団特務分室、執行官NO・3《女帝》のセラ=シルヴァース。……まさか私の存在をもう嗅ぎつけるとは」

「まさか、貴女が下手人だったとはね。女王陛下側近の侍女、エレノア=シャーレット」

 

 名前を呼ばれたエレノアは、怪しく微笑む。

 

「しかし、お一人でよろしかったのでしょうか?あなたの仲間はあんなところで遊んでいらっしゃいますが?」

「問題ないわ。ここで貴女を捕えればね。……《さぁ・始めましょう》」

 

 その瞬間、セラの周囲に風が巻き起こる。

 

「……なるほど、これは一筋縄ではいかないようですね」

 

 瞬間、とてつもない爆音が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、どうやら本当にグレン=レーダスはいないようだな。奴さえいなければ2組など烏合の衆」

 

 ハーレイはこの発言が既にグレンを認めていることに気づいていない。

 そして、変身の競技が始まった。

 

《1組セタ選手、見事な竜に変身!9点、9点、10点、9点!合計37点!》

「や…やっぱり無理だよ~…」

「どうした?」

 

 目の前の竜の迫力に押され、諦めかけていたリンに声を掛けたのは、アルベルトだった。

 アルベルトはリンの手元にある本を見て

 

「イメージトレーニングは随分積んだようだな。なら大丈夫だ。お前はお前が思っている以上に優秀だからな。気楽にやれ。どうせお祭りだ。失敗してお前を責めるような奴はいないし、仮にいても、俺がそいつを鉄拳制裁してやる」

 

 その、どこかで聞いたことがあるセリフに、リンは落ち着きを取り戻していく。

 

「……はい、やってみます!」

「……あぁ」

 

 そして、リンは会場に向かい

 

(先生、見ててください!)

「《刮目せよ・我が幻想の戯曲・演者は我なり》」

 

 その瞬間、リンの体が光り

 

《天使様だ!聖画から飛び出て来たラ=ティリカ様が降臨した~!》

 

 その余りの完成度に、審査は満点となった。

 完全に勢いを取り戻した二組。

 

《続くグランツィアも大逆転!》

 

 グランツィアも条件起動式の術式を起動しておき、見事に嵌った一組に勝利。

 

《そしてなんと2組、首位の1組に追い付いた!今年の魔術競技祭、勝負の行方は最終種目・決闘戦に委ねられました!》

 

 決闘戦が始まった。まぁ、色々カットし、決勝戦。

 

《2組中堅・ギイブル選手、先方カッシュ君の負けを取り返し1対1に戻した!》

 

 カッシュも瞬殺されたとかそういうわけではない。むしろあと一歩のところまで粘ったが、惜しくも敗退だったのだ。

 

《勝負はいよいよ大将戦!1組ハインケル選手と2組システィーナ選手!》

「僕が盛り上げてやったんだ。無駄にしてほしくはないね」

「……あとは任せたっていうところでしょ?」

「ハハハ!」

 

 ギイブルの物言いに、システィーナが呆れカッシュが笑う。

 すると、アルベルトが突如として言った。

 

「見事優勝できたら、お前らに好きなだけ飲み食いさせてやる!グレンはそう言っていた。期待してるぞ」

 

 本人がいないところで言われたら、泣いて叫ぶだろう。だが、今回はその限りではない。

 

「期待、していてください」

 

 システィーナはアルベルトに対して不敵に笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ……。追い詰めたぞ!」

 

 王室親衛隊は、ルミア=ティンジェルを抱きかかえるグレン=レーダスを路地裏の突き当りまで追い詰めた。

 

「止まれ!さもなくばまとめて消し炭にする!」

 

 はったりではない。彼らにとっては、ルミア=ティンジェルが死にさえすれば方法は問われない。

 しかし、グレン=レーダスは抵抗を諦めていないようだ。

 

「警告はしたぞ!《紅蓮の獅子よ・憤怒のままに・吼え狂え》!」

 

 親衛隊が、黒魔【ブレイズ・バースト】を唱える。

 

「「「ぐぁぁあああ!」」」

 

 その瞬間、すさまじい蒸気が発生し、辺りを煙でくらませる。

 

「い、いないぞ!」

「なんだ、一体何が起こった⁉」

 

 誰もがその状況を理解できていない中、彼らを率いている隊長だけは、事態を把握していた。

 いや、把握していたからこそ、信じられないでいた。

 

(今の一瞬、奴らは路地裏の壁を変形させ、自分たちの盾にした。その後、その壁を水に変換し、そこに飛んできた火球と水を接触させ、水蒸気爆発を引き起こした!)

 

 錬金術を使えば、不可能ではない。だが、錬金術には錬成スピードと言うものがある。より精度が高く、複雑になるほど、錬成スピードは落ちていく。

 

(だが、今の錬成スピードはどう考えても普通じゃない!いくら学院の魔術講師と言っても、こんなことが可能なのか?)

 

 しかし、彼らは追わなければならない。すべては、女王陛下の為(・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

「追うぞ!奴らは向こうだ!」

 

 自らの疑問をかき消し、グレン=レーダスを追うことに集中する親衛隊。

 決着の時は、着実に近づいている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「《拒み阻めよ・嵐の壁よ・その下肢に安らぎを》!」

 

 決勝戦、追い込まれかけたシスティーナが切り札として放った黒魔改【ストーム・ウォール】がハインケルを襲う。

 

「なっ!これは……まさか、即興改変⁉」

「遅い!《大いなる風よ》!」

 

 隙のできたハインケルに、【ゲイル・ブロウ】を叩き込むシスティーナ。

 すさまじい風の鉄槌にハインケルはたまらず場外に叩きだされた。

 

《決まったー!システィーナ選手の【ゲイル・ブロウ】がハインケル選手を場外に吹き飛ばした!》

 

 その光景に唖然とするハーレイ。

 

《優勝は2組!あの2組が優勝だ!》

 

 あの二組と言ういい方は、少し失礼だと思う。

 まぁ、それは置いといて。この時、他の場所はと言うと

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふ、どうやら、これ以上はお付き合いできそうにありませんね。……《爆》!」

「なッ!……逃がした、か」

 

 セラはエレノアを逃がしてしまい

 

 

 

 

 

 

 

「追い詰めたぞ!もう逃げ場はない、観念するんだな」

 

 グレン=レーダスたちは親衛隊に追い詰められ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《それでは表彰式を行います!》

 

 二組は表彰式が行われていた。

 女王陛下の前にやってきたのは、二組の担当講師グレン=レーダス……ではなく。

 

「アルベルト?それにリィエル?」

 

 アリシア女王が首をかしげる。

 

「今年の魔術競技祭で優勝したクラスの代表と担任講師は、女王陛下から直接勲章を賜る栄誉を得る。……コノシュンカンヲマッテイタンダー 」

 

 そんな風にふざけた口調で言うアルベルトたちの姿が、徐々に揺らいでいく。

 そして、歪みが晴れた時現れたのは

 

「なっ!グレン=レーダス⁉お前達は逃走中のはず!」

「途中で仲間と入れ替わったのさ。【セルフ・イリュージョン】でな。すり替えておいたのさ!ってな。……あんた、部下の教育がたんねぇんじゃねえの?ま、そういうわけで、形勢逆転だな」

「ええい!賊を捕え――」

「《すっこんでろ》」

 

 親衛隊の到着より早くセリカが断絶結界を貼る。

 

「おうおう、随分豪勢だな。まさか、音声まで遮断してくれるとは。珍しく気が利くじゃん」

「くっ!裏切ったのかセリカ殿⁉」

 

 俺の言葉に、セリカがにやりと笑う。

 

「さて、もう大丈夫でございまするよ陛下。これ以上の暴挙を辞めるよう、親衛隊に勅命を」

「それでは…ならんのだ!」

「……何?」

「事が終われば、私がすべての責を負って自害する。だが陛下だけはなんとしてもお守りしなければならん!そして陛下にも御身のためには、あらゆるものを犠牲にしていただかねばならんのだ!……時間がありません。民の為に陛下、どうかご決断を…」

 

 おいおい、なんか雲行きが怪しくなってきたんだけど。

 

「おいセリカ、どうなってやがる。女王陛下のとこに来れば全部解決するんじゃないのかよ」

 

 しかし、セリカはそれに答えず、合点がいったとばかりにゼーロスが声を上げる。

 

「そうか!セリカ殿は裏切ってなどいなかった!なにせ、こうして賊の逃げ道を塞いだのだからな!陛下、ご決断を!」

 

 そういって、催促される陛下。

 

「……おい、何とか言えよセリカ」

「……」

 

 その時、最初にセリカと話した時の事を思い出した、

 

『グレン、私は何もできないし、何も言えない』

 

 ……まだ、終わってないってことか。

 

「……勅命です。その娘を、ルミア=ティンジェルを討ち果たしなさい」

 

 ……最悪だ。逃げ道がないんだからな。

 

「その娘は私にとって存在してはならない、いなければよかった、愛したことなど一度もなかった。その子を産んでしまった我が身の過ち、悔やむに悔やみきれません」

「ちょ!あんた一体何言って――」

「それが…あなたの本音だったのですか…」

「…………………………えぇ」

「!……、」

 

 その言葉は、はっきりとルミアを傷つけた。

 

「おいルミア、あんな戯言を信じるんじゃ――」

「さて、勅命も下った。形勢逆転だぞ、魔術講師」

 

 そういって、ゼーロスは腰にある二本の剣を抜く。

 

「くそっ!」

 

 俺が拳闘の構えを取り、応戦しようとすると

 

「!……、いや、無理だな」

「ほう、今の動きは、帝国式軍隊格闘術。相当の使い手のようだが、それでは私には届かんぞ」

 

 だろうよ。今一瞬、三十通りくらいの死を幻視したもん。

 

(……考えろ。全部がおかしかったんだ。だがなぜこんなタイミングであんな嘘を…本当にルミアを殺すつもりなら殺せと言えばいいはず…本当のことを言えない理由がある?)

 

 それだけではない。途中でセラから報告があったが、下手人は侍女のエレノア=シャーロットだったそうだ。あいつが謀反を企てた理由はどうでもいい。

 問題は、一体何をしたらここまでこいつらを操れるんだ?セリカですら、エレノアの策に嵌ったというのか?

 一体何が、こいつらをそこまでさせるんだ?

 

(……ルミアの奴、相当傷ついてるな)

 

 実の母から言われたんだ。無理もない。ルミアは胸元のロケットペンダントを握りしめ……ペンダント?

 

(そういや、今日はペンダントはつけてないんだな)

 

 いつも肌身離さず付けていたペンダントではなく、今まで見た事もないネックレスだ。

 ……いや、待てよ。

 

(陛下があのロケットペンダントの中身が知られるのは危険だと分かっている。今日に限ってつけていないのも不思議ではない。だが、外すならともかく別のモノを付けたりするのか?)

 

 陛下がわざわざそんなことをすると思えない。誰かがあのネックレスを付けるよう促したのだろう。

 だとすると、陛下の身だしなみに口出しできる人間は誰だ?

 そして、そいつは今何をしている?

 

「……陛下、そのネックレスとっても綺麗ですね」

 

 その瞬間、全員がそれぞれ違う反応を示した。

 ルミアが困惑し、ゼーロスが顔を険しくし、セリカと陛下が笑った。……なるほどな。

 

「そうでしょう?私の一番のお気に入りです」

「でも肩こりませんそれ?ただでさえ胸が大きいのに、そんな大きな宝石付いたネックレスじゃ、肩こりますよ?」

「ふふ、グレン。私へのセクハラは重罪ですよ?それで宮廷魔導士をやめさせられたのを忘れたのですか?」

 

 一瞬、陛下が立場とかそういうのを全部を置いて、氷の微笑を向けてきた。死を感じた。

 

「ひゃい!す、すみません……。まぁそれは置いといて、やっぱり外したほうが良いんじゃありません?」

「駄目ですよ。これ外したくありませんから」

「なーるほどなるほど。……よかったな、ルミア」

「……え?」

「やっぱお前のおふくろさんは、お前の事愛してくれてるよ」

 

 ルミアにそういって、俺は陛下のもとに歩いていく。

 

「とまれ!」

「退いてくれ。俺なら陛下のネックレスを外せるんだ」

「!……、世迷言を!」

「ま、そういう反応だよな。気づくのが遅すぎたぜ」

 

 俺はゼーロスと対峙する。

 だが

 

「貰った!」

「チッ!」

 

 ゼーロスの神速の突きが、俺の左手を穿つ。そのスピードは、目で追うのがやっとの凄まじいものだった。だが、時間は稼げた。

 俺は咄嗟に【愚者の世界】を起動。それに合わせ、陛下がゼーロスに見えるようにネックレスを投げ捨てた。

 

「陛下⁉一体何を――」

 

 その行動に動揺するゼーロス。

 

「正義の鉄拳!」

 

 そんな決定的な隙を見せたゼーロスに、俺は渾身の蹴り(・ ・)を叩き込んだ。

 

「ぐはっ!」

「痛ぇぇぇええええええええ!どんな体してんだあんた!蹴ったこっちのほうが痛いじゃねぇか!……まぁ、アンタもただじゃすまないだろうがな」

「私の事などいい。無論貴様もな。それより、陛下は⁉」

「私は無事ですよ、ゼーロス」

「なっ!」

 

 ふと、ペンダントを見ると、黒い瘴気を発した後、粉々に砕けた。

 

「やっぱ条件起動式の呪殺具だったか。外したら装着者を殺す。一定時間で殺す。呪いの情報をばらしても殺す。つまり殺すネックレス。徹底しすぎだろ、絶対陛下殺すマンかよ」

 

 グランツィアに条件起動式を二組に使わせなきゃ、気づかなかったわ。

 

「散々使い古された古典的な手段だ。解呪条件はルミアの殺害、だろ?こういうのは条件を厳しくするほど強力だしな」

「よくやったぞグレン。今回は七割ダメかと思ったが」

「それは俺のセリフだ馬鹿野郎。見ろ、左手に穴が開いたじゃねえか」

「あとで私が治してやるよ。今は、魔術が使えないしな」

 

 本当に、【愚者の世界】での魔術封じが厳しすぎるわ。もう講師やめようかな?明らかに一介の講師の仕事量じゃないよね?

 

「なぜ呪いが発現しなかった…」

 

 ……復活早すぎんだろこの爺さん。

 

「ほれ、こいつだよ」

「愚者の…アルカナ?」

「自身を中心とした一定効果領域内の魔術起動の完全封殺。……呪いも魔術に違いない。なら、こいつは有効なのさ。……改めて、お初にお目にかかる。……”元”帝国宮廷魔導士団特務分室、執行官NO・0《愚者》のグレン=レーダスだ」

 

 俺が名乗ると、ゼーロスが驚いたような表情で

 

「何⁉貴公があの、陛下のスカートの中に滑り込み、不敬罪でクビになった《愚者》なのか⁉」

「その話やめてくれない?俺の黒歴史なんだけど」

 

 まぁ、クビで済んだだけマシなんだけどな。

 ……あれ、今回の事件ってゼーロスの独断なんだよな。なら、こいつが居ないほうがもっと穏便に済んだじゃね?

 セリカが俺に陛下の目の前で【愚者の世界】を使えって言えば済む話じゃん。

 

「陛下、気づくのが遅くなってすいません。そのせいで、陛下にあんなくだらない嘘をつかせてしまい」

「……え、嘘?」

 

 ルミアが呆けたように陛下を見た、その瞬間

 

「ごめんなさいエルミアナ!あなたを…また傷付けてしまって…」

 

 陛下がルミアに抱き着き、涙を流して謝っていた。

 

「……お母さん…」

 

 まぁ、偶にはこういうのもありだろ。

 

「ところで先生、お母さんにセクハラしてクビになったってどういうことですか?」

 

 ルミアが陛下そっくりの氷の微笑を向けてくる。少し死を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真っ暗な路地裏で、メイド服に身を包む女性が歩いていた。

 

「迂闊でした。グレン=レーダス、まさか呪殺具の力を封じるとは」

 

 そんな彼女を囲うように、三人の人影が姿を現す。

 それを見た女性は、そっとため息をついた。

 

「俺達に与えられた任務は二つあった。一つは最近過激な動向が目立つ王室親衛隊の監視。もう一つは女王陛下側近の内偵調査。……尤も、こちらはセラが既に終えてくれたがな」

「今度は逃がさないよ」

「……ん、切る」

「切るな。……天の智慧研究会の魔術師、エレノア=シャーレット。元王女を殺そうとした理由、聞かせてもらうぞ」

 

 撤退しようとするエレノア=シャーレットを、アルベルトたちが囲む。

 

「……帝国もボンクラばかりではないようですね。……禁忌経典(アカシックレコード)、そのための王女とでも言っておきましょう」

 

 その瞬間、彼女の足元に魔法陣が展開される。リィエルが切りかかったが、既にエレノアの姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、ここまでが事のあらましだ」

「サンキュー。にしても、またか(・ ・ ・)

「あぁ、禁忌経典(アカシックレコード)だ」

 

 アルベルトに事のあらましを聞き、グレンは考察する。

 実はこの言葉、今回聞くのが初めてではない。今までも天の智慧研究会のメンバーが何度も口にしてきた言葉だ。

 その正体は、原作でさえ知らないと言われているほど謎の多いもの。

 

「戻って早急に対策を練らねばならん。お前も気を付けろ」

「じゃあねグレン君!」

「今度こそ決着をつける」

「おう……、ってしねぇよ!何どさくさに紛れて変な約束取り付けてんだ!」

 

 セラの言葉に合わせるようにリィエルがとんでもない約束を取り付けようとする。

 

「ったく、悪知恵つけやがって」

「先生!」

「お、ルミア。もういいのか?」

「はい!……それよりも、先生がお母さんにセクハラした話を詳しく」

「やめてくれない?なんでわざわざ掘り返すの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、俺たちは打ち上げ会場へと向かっている。なんか賞状がどうとか言われたが完全に偶然なので勘弁してほしい。

 ……え、陛下へのセクハラ?

 違うんだ、あれは事故だったんだ。本当に偶然だったんだ。故意にやってたらマジで死刑だから。

 

「色々『お母さん』と話せてすっきりしました。全部先生のおかげです」

「俺は何にもやってねぇよ。結局、お前と一緒に行くって約束も破っちまったしな」

「いいんですよ。それよりも、先生どうしてわかったんですか?お母さんが嘘をついてるって…」

「……ん?あぁそれ?え~っと、大体三年前くらいだったっけ?お前が誘拐された日に、陛下に頼まれたんだ」

 

 そう三年前のあの日、女王陛下直々に呼び出され、何事かと思ったら

 

『お願いですグレン……。私が、こんなことお願いできる立場ではないのはわかっています。でも、あなたしかいないのです!どうかあの子を……エルミアナを助けてください!』

 

 流石に驚いた。

 エルミアナ王女が生きていたのもそうだが、まさか陛下が泣いてお願いしてくるとは思わなかった。

 

「まぁ、そういうわけだ」

「そうだったんですか。……じゃあ、覚えてるんですよね?初めて会った時の事」

「あの時は確か、ルミアが散々俺の事を馬鹿にしてきたな」

「そ、それは昔の事ですし。……でも、どうして今回も助けてくれたんですか?

 

 何を聞いてくるんだこいつは?

 

「俺がお前の教師だからに決まってるだろ?」

「……そうですか」

「まぁ、今回は報酬も上手いしな!なにせ先輩の三か月分の給料に加え、特別賞与だ!ウハウハだぜ!」

「ふふ、おめでとうございます先生」

「今回ばっかりはアイツらにも感謝しねぇとな」

 

 そういって、指定されていた店の扉を開くと

 

『先生待ってました!』

 

 ……え?

 

「随分遅かったじゃないのよ~」

 

 そういって白猫が抱き着いてくる。

 

「ちょ、おい!お前は他の奴より貧相なんだからそういうのはいいんだよ!」

 

 しかし、俺のセクハラ発言を無視して、子どものように抱き着くのをやめない白猫。

 

「ど…どうしたのシスティ⁉」

「先生またルミアのこと助けてくれたんでしょ~?見直しちゃった~」

「知らねぇよ!お前口が酒臭いから来るんじゃねぇ!」

 

 すると、ルミアの足元に空になったボトルが見つかった。それも何本も。

 

「……あの、先生、これ」

「……ちょっとまって、それ確か、結構高い酒じゃなかったっけ?」

「はい、しかも、これ一本だけじゃないみたいです」

 

 血の気が引いていくのを感じる。

 すると、店長らしき人が俺に震えながら会計書を見せてくる。

 

「……特別賞与と給料3か月分が一晩でお星さまに…」

 

 なんだこの「こち亀」みたいなオチは⁉

 

「畜生ォォォォォオオオオオオオオ!!!」

 

 

 

 

 

 

 




 なんだこの「こち亀」みたいなオチは⁉

 はい、と言うわけで魔術競技祭編終了です
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