ロクでなしに憑依した   作:山羊次郎

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十一話:転入生が凄いのはテンプレ

「《雷精の紫電よ》!」

 

 システィーナの凛とした声が、広場に響く。

 

「お、やるな白猫。この距離で6発全弾命中は普通にすげーぞ」

 

 黒魔術の実戦授業。といっても、【ショック・ボルト】を用意した的を持つ魔導人形に遠距離から当てるものだ。

 

「と…当然です!」

 

 まぁ、こいつの才覚からすればそれもそうだな。

 

「次はお前の番だリィエル」

 

 丁度いい。軍時代でこいつが黒魔術使ったところを見た事なかったし……あ。

 久し振りに原作知識思い出したが、こいつ普通の魔術が極端に苦手だったんだっけ?

 

「《雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ》」

 

 その予想通り、リィエルの放った紫電は明後日の方向へ飛んでいった。

 その後、何発か撃つが、すべて外れ

 

「……ん、どうしたリィエル。不満そうだな」

「これって【ショック・ボルト】じゃないと駄目なの?」

「別にそういうわけじゃねぇが」

「つまり呪文自体は何でもあり?」

「軍用はダメだぞ。どうせ使えねぇだろうが」

「《万象に希う・我が腕に・剛毅なる刃を》」

 

 ……え?

 

「ちょ!お前何を――」

「いぃぃぃぃぃいいいいいいいいいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!」

 

 凄まじい叫びとともに、作り出した大剣を魔導人形に向かってぶん投げる。

 

「6分の6(ドヤァ)」

「ふざけんなこのおバカ!お前がぶっ壊した魔導人形は俺が弁償しなきゃなんねぇんだぞ⁉」

(((そこじゃねぇよ)))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、余りのインパクトの強さに

 

(完全に危ない奴ってなっちまったなぁ…)

 

 まぁ、間違ってはいないが。しかし、護衛と言う任務である以上、孤立するのは避けてほしい。

 

「ねぇリィエル。お昼ご飯どうするの?」

「必要ない。私は3日間食べなくても平気」

 

 アホかアイツは!三日間何も食べない学生なんているわけねェだろ!

 

「でもちゃんと食べないとお仕事にも差し障っちゃうよ」

「……一理ある。でも、何を食べたらいいか分からない。今回の任務、携帯食料が支給されなかった」

 

 何言ってんのあいつ?そんなの支給されるわけないじゃん。……まさか、あのクソ不味い携帯食料しか食ったことなかったの?

 

「じゃあ私たち一緒に行こ?」

「……うん」

 

 ルミア、お前がいてくれてよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、ルミアとリィエル、おまけで白猫が一緒に食堂に向かい

 

「それにしてみる?それとも私と一緒のにしてみる?」

 

 リィエルはガラスケースの中の苺タルトを見つめている。

 

「いちごタルトの方がいいみたいね」

「……ん」

 

 いや、それデザートだぞ。昼食に食うもんじゃねぇだろ。

 そして、リィエルは大量に苺タルトを注文し、最初こそ恐る恐るだったが、一口齧ったとたんリスのように食らい始めた。

 

「どう?おいしい?」

「……ん」

「よかった!システィも大好物なんだよ!」

 

 へぇ~、あいつ昼は質素のもんしか食わないから知らなかったぜ。

 

「欲しいの?分けてあげる」

 

 そういって、リィエルが苺タルトを分けようとして、その手が止まる。

 

「い…いいわよ。全部食べて」

「本当?」

 

 あ、今一瞬、リィエルが笑った気がした。

 

「もうリィエルったら…クリーム付いてる」

「……ありがとう」

 

 この様子なら、気にする必要もないな。

 そう思い、咄嗟にその場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なかなか変わった子のようだな」

 

 場所は学院の図書館。セリカと二人っきりだ。

 

「まぁな。これを機会にまっとうな人間関係を学んでくれりゃいいんだがな」

「それを教えてやるのが教師の仕事じゃないか?」

「はぁ~。めんどくせぇが、今度の遠征学習でリィエル自身が何か掴んでくれれば……或いは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 重苦しい空気がその一室を満たしていた。

 壁に背を預けたアルベルトは、ベッドに横たわっている少女と、側で彼女を見守るグレンを見て鼻を鳴らす。

 

「……ふん、また随分と厄介なモノを拾ってきたものだな、グレン。その女は、天の智慧研究会が『□□=□計画』で□□させた例の□□人間だろう? ……馬鹿な事をしたものだ」

 

 アルベルトが非難の目をグレンに向ける。

 

「うっせぇなぁ。どうしようが俺の勝手だろうが。それに、□□□の頼みなんだしよ」

「お前がその頼みを聞く義理はない筈だが?」

「だからって放っておくほど情を捨てたわけじゃねぇよ。それに、お前はこいつが何かされる前に死なせておくべきだとでも言うのか?」

「全く、相手が女なら見境が無くなるその性格、いい加減治してもらいたいものだ」

「誰が見境無くなるだこの野郎!」

 

 アルベルトが道端のゴミを見るような眼でグレンを見る。

 事実、グレンは基本的に女性は救う。それがどんな困難な状況であろうとも。そのせいか、百回中九十九回は負ける勝負でも、女が絡めば残り一回を最初に引く男などと不名誉なあだ名で呼ばれている。

 男の場合?……聞かないほうが良いぞ。

 

「お、眠り姫様がようやくお目覚めだ。おい、アルベルト。説教は後にしてくれ」

「ちっ……好きにしろ。今度という今度こそ、俺はお前に愛想が尽きた」

「アルちゃんに愛想つかされた回数が十回を越えたぞ。次の目標は二十回……分かった、悪かったよ。だから俺の眉間に当ててる左指を降ろしてくんない?」

「……ふん」

 

 付き合ってられないとアルベルトは静かに部屋から出る。

 残されたのはグレンと少女の二人だけだ。

 

「……はぁ、一体いつになったらこの戦いの日々も終われるのやら。……まぁでも、強くならないといけないのは事実だしなぁ」

「……」

 

 少女は神妙な顔で呟くグレンをじっと見つめている。

 

「……あ、え~っと。……初めましてだな」

「貴方は……私を、助けてくれたの……?」

「……まぁ、ある意味助けたな」

「……腕輪は?」

「ん?あぁ、あれか。あれは……お前を助けてる時に落としちまったんだ」

「……そう」

 

 その腕輪は、少女が自分の兄と繋がりを感じられるものだった。

 目の前の男は……、兄とどことなく似ている気がしたが、気のせいだったようだ。兄はこんな間抜け顔ではない。

 

「おい、今なんか失礼なこと考えなかったか?」

「……」

「無言は汚いぞ。……俺は、グレンって言うんだ。お前は?」

「私は……私の、名前は……リィエル……。リィエル=レイフォード…」

「そうか。よろしくな」

「……ん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、リィエルが使った錬金術の術式をみんなに公開しているリィエル。

 だが、その内容に半数以上の生徒は理解が及ばずにいた。

 

「で、こうなって……ここの元素配列式をマルキオス演算展開して……こう……で、こうやって算出した火素(フラメア)水素(アクエス)土素(ソイレ)気素(エアル)霊素(エテリオ)根源(オリジン)属性値の各戻り値を……こっちに……こんな感じで根源素オリジンを再配列していって……物質を再構築……」

 

 システィーナや、座学が優秀なセシルなども、リィエルの説明を受けて表情が驚愕に染まっていた。

 

「……わかった?」

「おう、全くわからん」

「同じく……」

「す、凄すぎる……」

「なんて事……こんな術式、誰が作ったのよ……」

 

 まぁ、普通はそういう反応なんだよな。

 

「恐れ入ったよ……どうやってウーツ鋼の大剣をあんな高速で錬成してたか不思議だったけど……魔術言語ルーンの仕様に存在するバグすら利用していたなんて……」

「リィエル、あなたいつもこんな事やってるの? こんなの一歩間違ったら脳内演算処理がオーバーフローして、廃人確定よ?」

「そうなの? 全然知らなかった」

 

 彼女の言っていることは間違っていない。実際、外道魔術師の中にはこれを使い廃人となり、掃除屋(スイーパー)となった者のほうが多い。

 この魔術を【隠す爪(ハイドウン・クロウ)】と言う。

 

「はぁ……みんな、真似しちゃダメよ。この術式使いこなすには、錬金術に対する圧倒的な天賦のセンスがいるから。ここまでくると、もうこれ、リィエルの固有魔術(オリジナル)みたいなものよ」

「出来るかよこんなの……」

 

 すると、唯一離れた所で眺めていたギイブルが荒々しく席を立つ。

 

「おい、ギイブル……どうしたんだよ、突然?」

「……帰る。君達もそんな風に遊んでる暇があったら、帰って魔術の勉強に励むべきじゃないのか?」

「はぁ? お前、そんな言い方はねえだろ」

「……ふん」

 

 カッシュの言葉も無視して教室を出て行こうとするが、何時の間にいたのか、リィエルがギイブルの制服を掴んで止める。

 

「……これ。落とした」

「ッ!」

 

 リィエルが羽ペンを差し出すとギイブルは顔に慍色を浮かべてぶん取ると、そのまま大股で教室を出ていった。

 

「何だよあいつ?」

「仕方ないよ。ギイブル、錬金術には絶対の自信があったから。それこそ、システィにも負けないって自信があったから」

 

 そりゃそうだ。みんながみんな、リィエルを受け入れるわけじゃない。こればっかりは時間の問題だな。

 

「……ま、何とかなるだろ」

 

 

 

 

 

 

 




 と、言うわけで、リィエルとの出会いもかきました。

 グレン先生は『正義の魔法使い』ではない。ただ、いずれ訪れる危機に立ち向かうため、戦う。

 なんて、シリアスに言ってみましたが、そんなに重く捉えなくても大丈夫ですよ。
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