ロクでなしに憑依した   作:山羊次郎

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 久々投稿です。


十二話:旅行に行こう

「よっしお前ら!テンション上げてくぞーーー!」

「「「おーーーーーー!」」」

 

 グレンの掛け声で、クラスの、特に男子が追随する。

 彼らは最初、遠征学習に乗り気ではなかったが、グレンの説得でやる気を上げていった。因みにその内容は、掻い摘んで言うと、リゾートだの水着だの女子のレベルは高いだの、お察しである。

 

「担任を筆頭に男子って馬鹿ね」

 

 そんな男子に、女子は冷ややかな視線を向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢ちゃん達。かわいいから特別にこの骨董品とかどうだい?」

 

 行先である、白金魔導研究所があるサイネリア島行きの船を待っている女子生徒に、怪しい爺さんが骨董品を売りつけていた。

 しかし、そこにグレンが割り込んだ。

 

「そういう怪しいもんうちの生徒に売りつけないで貰えますかね。ほらお前らも、さっさと戻る」

「「「は~い」」」

「怪しいとは心外だな。こちとらアルザーノ帝国御用達の一品なんだがね!」

「相変わらず演技力だけは異次元だな。もう役者で食ってけよ”アルベルト”」

 

 グレンがそう言うと、アルベルトはパッと服を脱ぎ捨て変装を解く。

 

「……お前がいるってことは、リィエルは餌ってわけか」

「あぁ、本命の護衛は俺だ。これは軍の中でもわずかなものしか知らない極秘任務だ」

「なるほどな。いやでもよかった。まさかリィエルを護衛にするとか、いよいよ軍も頭がイカれたのかと思ったぞ。……それで、お前の口ぶりじゃ、俺にバレるのは不味いんじゃねぇの?なんで俺に接触したんだ?」

「リィエルに気を付けろ。あの女は危険だ」

「……」

「お前も分かっているだろう」

「昔の事、と言い切れないのが悲しいな。……分かった、お前がそういうってことは、なんかあるんだな?」

「……」

 

 アルベルトは何も答えないが、その沈黙が答えだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがサイネリア島……」

「いやっほう!海だ!太陽だ!水着女子だぁぁぁああああ!」

「「「おおおおおおお!!!」」」

「先生!せっかくの雰囲気をぶち壊さないでくれません⁉」

 

 島についてからと言うもの、グレンたちははしゃぎ放題であった。全く大人げない。

 と、言うわけで、皆さんお待ちかね。

 

「やっほーー!システィもリィエルも早くおいでよ!」

 

 水着タイムだ。女子たちもそれぞれ水着を着て海ではしゃいでいる。

 

「夜までは自由時間だ!好きなだけ遊んで来い!」

「「「はい!ありがとうございます!!!」」」

 

 すると、グレンの視界に木陰で本を読むギイブルの姿が映った。

 

「お前は相変わらずだねぇ。もう少し楽に生きろよ」

「余計なお世話です。僕らは遊びに来たのではないのですから」

「……え、そうなの?」

「……」

 

 完全にお遊び旅行と考えてたグレンの言葉に、青筋を浮かべるギイブル。だが、それを言ったところで聞かないのは既に分かっているため何も言わないのであった。

 

「先生!どうです?」

「滅茶苦茶似合ってるぜ、すげーかわいい」

「ありがとうございます!」

 

 ルミアが水着がどうか聞いてきたのでとりあえず褒めておくグレン。

 

「白猫。お前もなかなかセンスいいじゃねーか。眼福眼福!」

「……そんなにジロジロ見ないでよ」

 

 すると、リィエルが

 

「グレン、ルミアたちを舐め回すように見てた。切ってもいい?」

「おい!誤解を招きそうな発言はやめろ!」

 

 相変わらずリィエルに嫌われてるグレンであった。

 

「それで、お前ら向こうで遊んでたんじゃないのか?」

「ビーチバレーしようって話になって……」

「先生もどうです?」

「……ビーチバレーか。……よし、心優しいグレン先生だ。一緒に遊んでやるとしよう!行くぞギイブル!」

「……は?え、ちょ、なんで僕までぇぇぇええええ⁉」

 

 

 

 

 そして、グレンに連れられたギイブルも、ビーチバレーを行い。

 

「えい」

「ぎゃあああああああ!テメェ、ここぞとばかりに俺に殺意向けてやがるな!」

 

 リィエルがスパイクを打つと、砂浜に大穴が開く。最早隕石の落下である。

 

「ギイブル!作戦はあるか⁉」

「当たり前です!」

「よし、行くぞぉぉぉぉおおおお!」

 

 最初は乗り気ではなかったギイブルも、今ではすっかり熱くなってる。やはり魔術師、勝負ごとに負けるのは許せないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大広間で食事を終えて、全員が風呂に入り終わり、今はもう就寝の時間。闇夜に潜みながら人に見つからないように移動する男子達。一部の男子を除いて

 

「……これより作戦を開始する」

 

 中庭の茂みでカッシュが宣言した。

 

「回廊は流石に使えない……誰かに見つかる可能性が高すぎる」

 

 カッシュの後ろに控えたロッドやカイなど他数名の男子生徒がコクコクと頷く。お前らはスパイか何かか?

 

「よって、我々は裏手の雑木林から回り込み、木をよじ登って窓から侵入しなければならない。ルートや部屋割りは既に調査済みだから安心しろ」

「い、いつの間に……」

「さ、流石カッシュ、抜かりないぜ……」

 

 その執念はもはや並のものではなかった。

 

「……あれ?もうそろそろ来てると思ったんだがな……」

「(なっ、先生だと⁉)」

「(馬鹿な⁉先生がこの時間を巡回するはず……)」

「俺がアイツらならこの時間に忍び込もうとするはずなんだがな……」

「(……そうか、先生だからこそ俺たちの動きを察知できたのか)」

「(だが、今回は俺たちが上手だぜ。俺たちはなんとしてでも楽園(エデン)に行くんだ!)」

「……ま、あいつらもそれなりに常識があったってことか。疑ったのが、教師として恥ずかしいぜ」

「「「…………」」」

 

 グレンがつぶやいた一言で、男子の動きが止まる。

 

「そうだよな、いくらなんでもここまでするはずないってのに、俺ってばバカだなぁ」

「(おい、どうする?なんかどんどん先生の中で俺たちの株が上がってるぞ)」

「(先生……なんだかんだで俺たちの事信じてくれてたんだな)」

「(それなのに、俺たちは……!)」

「(カッシュ……っ!俺たち)」

「(皆まで言うな、俺たちは先生の信用裏切ることなんてできない。それに、ここを逃しても、俺たちには女子の水着姿と言うもう一つの楽園(エデン)があるじゃないか)」

「(そうだな、先生の信用を失ってでも行くほどじゃないよな)」

「(そうだな、戻ろうか)」

 

 男子たちは納得し、引き上げようとすると

 

「馬鹿め!お前らがここに居ることなんぞ最初っからお見通しなんだよ!簡単にほだされやがって!食らえ!《雷精よ・紫電の衝撃以て・打ち倒せ》!」

 

 不意打ちでグレンに【ショック・ボルト】を浴びせられる。

 

「「ぎゃあぁぁぁああああ!」」

「汚ねぇぞ先生!俺たちの感動を返せよ!」

「はっはっは!貴様らを信用などするものか!寧ろ警戒しとるは戯け!お前らに侵入されたら俺の給料がいよいよ死ぬのでな。さぁ、部屋に送り返してやる!」

「クソ!なんて大人げないんだ!」

「そうだ、この人はそういう人だった!」

「お前らやっちまえ!先生は三節詠唱しかできないんだ!囲め囲め!」

「袋叩きだ!」

「「「死ねぇぇぇぇぇええええ!!!」」」

「かかってこいやぁぁあああああああ!!」

 

 そして、この世で最も残念な戦いが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんと男って馬鹿ばっか」

 

 そして、そんな様子をシスティーナは冷ややかな目で見ていた。

 

「……」

「どうかしたリィエル?」

「グレン、楽しそう」

「そう?学院ではいつもあんな感じよ」

「知ってる、昔と何にも変わらない」

 

 すると、リィエルが少し表情を暗くして

 

「いつも、私の傍で笑ってくれたのに」

「……リィエル?」

 

 リィエルの表情は読みづらく、何を考えてるか分からない。

 でも、この時は、システィーナには、ずっと一緒だった親がいきなりいなくなって寂しくなっているように見えた。

 

「みなさーん!カードゲームをやりますわよ。リィエル、もちろんあなたもご一緒に!」

 

 グレンが居たら、貴様、デュエリストか⁉とか言っていただろう。誰にも伝わらないだろうが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旅館の部屋にて、グレンは自身の傷を治療していた。

 

「あ~死ぬかと思った。あいつら加減ってもんを知らねぇのかよ、俺は三流魔術師だぞ」

 

 自分より年下の生徒を不意打ちし、その後も生徒を盾にしたりと外道な行動を繰り返した男の言うセリフではない。

 

「……ん?」

 

 すると、ルミアと白猫、リィエルの三人が海辺のやってきた。普段なら注意をするとこだが、アルベルトに言われた言葉が引っかかり、様子を窺ってしまう。

 

「……杞憂だったのか?」

 

 しかし、三人は何かを喋ったと、水遊びを始めた。どう見ても年頃の女の子でしかない。……だが

 

「……油断はできねぇ、か」

 

 取りあえず部屋に戻るか。そう思い、グレンはそっとその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どかぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああん

 

 そんな音とともに、グレンは目を覚ました。

 

「なんだなんだ⁉何の音だおい!」

「……わたし」

 

 声のほうを向くと、リィエルが佇んでいた。

 

「わたし、じゃねぇ!何やってんだお前!扉が粉々じゃねぇか!」

「呼んだけど、グレン出てこなかったから」

「だからって蹴破るはないだろ」

 

 また減給か。そう思い、グレンは泣きそうになるが、咄嗟にこらえる。

 

「ルミアたちは?」

「寝てる」

「お前護衛だろ、何やってんだよ」

「分かってる。だけど……グレンに会いたかったから」

「?」

 

 リィエルがこんなことを言うのは珍しい。今まで軽く殺意すら感じさせたリィエルが、小動物のように大人しい。

 

「まぁいい。さっさと部屋に戻るぞ」

「……ねぇ、何でいなくなったの?」

「知ってるだろ?俺がバカやっただけだよ」

「じゃあ、どうして戻ってこないの?」

「それは……」

「私は……、兄さんの望みを叶えるために戦う。だから、グレンにも一緒にいてほしい」

「……別に戦う必要はないだろ」

「……どうして?」

「お前の兄貴は、お前に生きてほしかっただけだ。戦ってほしかった訳じゃない」

 

 グレンがそういってリィエルを諭そうとする。

 

「……やっぱり、分からない。どうしたらいいの?」

「……」

「私は、兄さんを守るために生きたかった。でも、兄さんはいなくて、もう何のために生きてるのか分からなかった」

「……」

「グレンは、兄さんが生きてほしいって言ってたって言った。だから、私は死なない為に戦ってきた」

「……」

「なのに……、今戦うのをやめたら、私は……っ」

「リィエル、生きるってのは、なにも戦って生き残ることじゃない」

「でも!……私は、それしか知らない」

 

 分かっている。そういう生き方しか教えられなかったのは、すべてグレンとアルベルトが、リィエルの本当の事情を隠したせいだ。

 でも、だからこそ

 

「大丈夫だ」

「……?」

「俺は教師だからな、お前の知らないことだって教えてやる」

「……ホント?」

「あぁ、安心しろ」

「……うん」

 

 ……よかった。納得してくれたみたいだ。流石に軍から外すというのは難しい、俺やセリカやアルベルトが頑張っても、軍の人材不足は圧倒的に過ぎる。

 だが、いつか必ず、リィエルが本当の幸せを掴めるようになってほしい。

 グレンは柄にもなく、そんなことを思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 リィエルがグレンを殺そうとするのは反抗期みたいなものです。ヤンデレではありません。

 そして反抗期を越えたリィエルがどうなるのか?それは誰にも分からない。

 
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