そういうわけでモチベが上がったので投稿です。
「……クソ疲れた。もう研究所見学とかぶっちして遊ぼうぜ?」
「何言ってるんですか先生。遊ぶのは勝手ですけど、今回はダメです。白金魔導研究所の方々に失礼でしょう?」
「……大丈夫ですか先生?お疲れなら、どこかで休んだ方が……」
「いや、流石に生徒より先にばてるのは俺の威厳とかいろいろあって無理だ。心配してくれてありがとよ」
既に威厳も減ったくれもないグレンが言っても、特に何も感じないシスティーナだった。
「……ねぇ、グレン」
「……あぁ?なんだリィエル?」
「……白金魔導研究所ってどんなところなの?」
「説明聞いてなかったのかよ……。行けば向こうで教えてくれるさ」
「……そう」
にしても、今までそんなこと欠片も興味を示さなかったリィエルが、そんな質問をするのは珍しい。
一体どういった心境の変化か。
そんな疑問を解消する前に、一同は目的地へと到着した。
「ようこそアルザーノ帝国魔術学院の皆様。私がこの白金魔導研究所の所長、バークス=ブラウモンです」
グレンはこの時、この人ポケ〇ン研究してそうだなと密かに思った。
「……えぇっと、アルザーノ帝国魔術学院、二年次生二組の担当魔術講師グレン=レーダスです。本日はうちのクラスの『遠征学修』へのご協力、真に感謝しています」
グレンが敬語を交えながらそんな風に言う。
「(なんかいつもと違くね?あんな好青年みたいな感じじゃないだろ)」
「(世間体を気にするのか。小物の鑑だな)」
そんな陰口を、グレンは聞かなかったことにして
「……生粋の研究方の魔術師であるバークスさんからしたら、ひよっこ共が所内をほっつき歩くなんて鬱陶しくて仕方ないでしょうが……、まあ、今日明日は我慢してください」
「いえいえ、私も日夜研究ばかりでは気が滅入りますからな。こうして未来を担う若者と触れ合うのも、良い刺激になりますからな。お疲れのところ大変でしょうが、ここまで来てくれた労いの代わりと言ってはなんですが……本日の見学は、
一瞬、グレンは話の内容を理解できなかった。
数秒時間をかけ、漸く復帰するグレン。
「……え、えぇぇぇぇえええ⁉しょ、所長自らご案内⁉ご自分の研究は⁉」
「構いませんよ。私の権限があれば、普段一般の方が立ち入らない区域にも入れますし……やはり若者には最高の一日を送ってもらい、この日が将来、この子達の糧になってくれるのなら、やはりこちらも相応のものを見せてあげたいものですから」
「ま、マジっすか。いやほんと、頭が上がりませんよ。ウチの奴らの為にそこまでしてくださり、本当にありがとうございます」
そうして、研究所見学が始まった。
「白金術……、白魔術と錬金術の複合術。この分野が主に扱うのは、生命そのもの。故に、新鮮なマナに満たされたこのような空間が、常に必要とされるのです」
それはいいが、せめて山奥はやめてほしかった。と、一人心の中で嘆くグレン。
「ここでは、複数の動植物を掛け合わせ、キメラを生み出す研究をしています」
バークスの言う通り、円筒の容器の中に、妙な形をした生物が多種多様に浮いていた。
「……やっべ。……あのバークスさん?」
「なんですか?」
「ここ、トイレってありますか?」
空気がまるで読めないグレンの発言に、バークス以外の全員がずっこける。
「もう!先生ったら!」
「はっはっは!お気になさらず。自然現象ですので。……手洗いはそこを出て右にありますよ」
「お、マジですか。あざ~っす!」
そうして、グレンはトイレに向かっていった。
「全く……。にしても、私、将来魔導考古学を専攻するつもりだったけど、ちょっと心が揺らいじゃうわね。ルミアはどう?」
「私は魔導官僚志望だから。それに、ここを見ていると、なんかちょっと……。人がこんな風に、
そのルミアの言葉に、システィーナがはっとなる。
「確かに……、これにのめり込みすぎると、外道魔術師へ堕ちていきそうね」
流石に暗くなり過ぎたのか、システィーナが話題を変えようとする。
「……でも「あの研究」はさすがにここでもやってなさそうね」
「……「あの研究」?」
「死者の蘇生。復活に関する研究よ。かつて帝国が大々的に立ち上げた『
「よく勉強していらっしゃる。学生さんからその言葉を聞けるとは」
二人の話に突然割り込んできたバークス。
「えぇっと……、授業では理論的に不可能だと聞きましたが……」
「その通り。今の所その理論を覆す魔術はございません。それ故にこの
そうして、バークスは告げた。
「――
「………………え」
その瞬間、すべての生徒が言葉を失った。無論、リィエルを含めて。
「……ふぅ。すっきりすっきり。……あれ?どうしたお前ら?固まって。……すんません、なんかあったんすかバークスさん?」
「……いえ、私にもサッパリ……」
「……一体何の話を?」
「えぇ。
一瞬、グレンが苦い顔をする。
「あぁ。あの研究ですか。確か、復活させたい人間の遺伝情報、「ジーン・コード」を基に錬成した肉体と、記憶情報を変換した「アストラル・コード」。そして、他者の霊魂に、初期化処理を施した「アルター・エーテル」。この三要素を合成し復活させるって言う」
「えぇ。流石は魔術学院の講師、とても分かりやすい説明です」
すると、システィーナが恐る恐ると言った表情で、グレンに質問する。
「あの、先生」
「どうした?」
「……
その言葉で、何故生徒たちの様子がおかしかったのか理解するグレン。
「計画の通称だろ?……あぁそういや、リィエルと同じ名前なのか。こんな偶然もあるもんだな」
いたって普通の調子でそう言うグレン。
その様子に、生徒たちは――
「……偶然?」
「……まぁ、普通そうだよね」
――徐々に落ち着きを取り戻していく。
「まぁそれで。要はコピーとコピーを掛け合わせて、コピー人間を造るってことだ」
「でも、それって復活って言えるんでしょうか?」
そのルミアの疑問に、バークスが答える。
「確かに復活とは言えませんな。寸分違わぬ姿形をしたものを造るにすぎないのですから」
「それにそこまで気にすることじゃねぇよ。なにしろ、この計画はとっくの昔に断念されてるんだからな」
「断念?」
「あぁ。理由としては主に二つ、ルーン言語では関数と式が構築できないという機能限界に加え、「アルター・エーテル」の作成に、
「……え、それって――」
つまり、一人を
「あぁ。だから、そう言った倫理的な問題の強さで、計画は凍結。当然の結末だろうがな。どんな理由があっても、許されることじゃない」
「ごもっともです。神ならぬ人間に、生ける者の取捨選択をする権利はない。
ですが、と。バークスは重ねて言う。
「あの天の智慧研究会が、この研究を盗み出し成功にこぎつけた。……という噂がありましてね」
「ありましたねそんな噂。都市伝説でも面白くないけど」
「……えっと」
いつもと違い、少し暗い雰囲気のグレンに困惑したシスティーナが、空気を変えようと別の質問する。
「あの……、これは単なる興味本位なんですけど、仮に先程の三要素を揃えられたとして、他に何が必要なんでしょうか?」
「ふむ。なるほど……、そうなると、必要になるのは……恐らく、「固有魔術」の類です。必要な固有魔術を持つ人物がいればあるいは」
その話で、さらに雰囲気が暗くなるグレン。
「(もうどうしたらいいの⁉)……で、でも。そんな人物が現れるのって、天文学的確率ですよね?」
「ごもっとも。いずれにせよ、この研究を成功させるには、不可能を可能にしてしまう何かが必要なのですよ」
そんな微妙な感じで、研究所見学は終了した。
「……ねぇ、グレン」
「……なんだよ?」
これから夜ご飯という時に、グレンに話しかけるリィエル。
「……
「だから言ってるだろ?お前と名前が同じなのは只の偶然。一切かかわりなんてありません!」
指でバッテンをして、リィエルの言葉を否定するグレン。
しかし
「嘘」
「……なんでそう言い切れるんだよ」
「だって、グレンがあんな風に話に割り込むんだもん。絶対何かある」
「そんな訳ないだろ。ほら、あいつら飯食いに行くぞ。苺タルト奢ってもらえよ」
「……分かった」
トボトボと、システィーナ達の後をついていこうとするリィエル。
「!……、」
グレンから姿が見えなくなったところで、リィエルは突如走りだす。
(嘘だ。グレンは嘘つきだ!)
彼女とてそこまでバカではない。グレンが自分に隠し事をしているのは知っている。
「……なんで、何も教えてくれないの……?」
そうこうしていると、昨日システィーナ達とともにいた海辺にやってきていた。
「……やっぱり、そうなの?……私が、偽物なの?」
涙を流しながら、そんなことを呟くリィエル。
彼女には、昔の記憶がない。正確には、所々が空白になっていて、抜け落ちている。もしかすると、それは自分の情報が正しくインストールされていないからでは?
それか、計画の副作用なのか。いずれにせよ、自分が、かつて居た誰かのコピーなのではないか。それでは、自分が生きている意味とは何なのか?本来、ここに居るべきだったのは、自分ではない別の誰かであるべきではないのか?
「……、」
コピーは許されないと、グレンは言った。
なら、なぜ自分を見逃すのか。計画にはたくさんの人間を犠牲にする。犠牲の上で生まれたかもしれない自分に、生きることは許されるのか?
そんな不安が、リィエルを押し潰す。分からない恐怖が、彼女の心を埋め尽くす。
だから――
「泣いているのかい?リィエル」
その男が来たのは
「誰⁉」
「ひどいな。
最悪のタイミングだったのだろう。
いつにも増してシリアスの雰囲気ですね。
っていうか、リィエルちゃん大丈夫かなこれ?原作よりメンタル強いけど、これは流石に……。