モチベが上がってるおかげでまたしても投稿です。
最近シリアスが多いですね。もっと平和な感じにしたいのになぁ……。
「嘘……、兄さんは死んで……。どうして⁉」
ただでさえ混乱しているのに、これ以上分からないことを増やされたリィエルは、今までにないほど動揺していた。
「確かに、僕はあの日、組織の者の手にかかった。でも、その時の君は動転して気付かなかったんだろうね。僕にまだ息があったってことを」
「!……、ダメ。私は……偽物だから」
「?何を言っているんだい?君は他の誰でもない、僕の妹、リィエルだろう?」
「……ぁ…」
分からない。何が起きているのか分からない。
けれど――
「リィエル。僕を助けてくれ。二年前君は亡命に成功し、自由を手にすることができた。だけど、僕は今でも組織の奴隷だ」
――目の前にいるのは、自分の生きる意味だ。
「……でも、助けるってどうすればいいの……?」
「ルミア=ティンジェルだ」
「……ぇ」
その瞬間、リィエルの呼吸が止まった。
「今組織が動かしてる計画には、彼女が必要なんだ。そして、成功にはグレンという魔術講師が邪魔だ」
「……ぁ…ぇ」
「組織は僕にチャンスをくれたんだ。この計画を成功させれば、僕は自由になれるんだ」
この時、リィエルはグレンの言葉を思い出していた。
『いいか?お前の兄貴は、お前に生きてほしいて願った。だから、絶対に死ぬなよ?……な~に、俺だって守ってやるよ。まぁ、お前には必要ないかもしれんが』
「リィエル。君は僕を守ってくれるんじゃなかったのかい?」
だが、一瞬でその記憶が片隅へと消えていく。
「それともまた僕を見捨てるつもりなのかい?」
「!……、あ、……あぁぁぁぁ」
「リィエル!そいつから離れろ!」
突如、そんな二人の間に、割り込む影が一つ。グレンだ。
「貴様、グレン=レーダス⁉」
「へぇ。よく知ってんな。俺も天の智慧研究会の間じゃすっかり有名人みたいだぜ」
「なッ⁉違、僕は……っ!」
「どっちにしろ、テメェが家の生徒に近づいたのは事案だぜ。生徒に手を出されちゃ黙ってるわけにはいかねぇ。まずはタコ殴りにして、引ん剝いて奴らの紋章があるか確認してやる。なかったらそれまでだ」
「あ、あぁぁ……。り、リィエル……?」
恐怖が顔にこびり付いた男が、最後の希望に縋るようにリィエルを見る。
「はっ!こいつに何を期待してるかは知らねぇが無駄なこった。リィエル、こいつを……あん?お前どっかで――」
懐からアルカナを引き抜こうとしたグレンが、違和感を感じその手を止める。
その瞬間――
ザクッッッ!!!
――という音が響いた。
「……え」
グレンは恐る恐る、自分の胸を見る。そこには、
振り返ると、まるで人形のような表情をしたリィエルが、無言で剣を突き立てていた。
「今までありがとう。さよなら」
一切の感情を感じさせない声で、決定的な別れを告げるリィエル。
「……な……、んで?」
「私は、兄さんの為に生きる。それが私の、生きる意味」
「……は?」
そのまま、リィエルはグレンを剣ごと海に放り投げた。
「ガはっ!」
空中で剣が胸から抜けたが、この様子では死ぬのは確実だろう。
「よくやってくれた、リィエル」
「……うん」
そして、ふたりはどこかへ消えた。
リィエルに海に投げ捨てられたグレン。
だが、彼は諦めていなかった。
(危なかった。【愚者の世界】を起動してたらマジでやばかった!)
水中に入った時点で、水中で呪文を唱える技法を知るグレンは、咄嗟に治癒魔術を唱えていた。
その後、呼吸補助の魔術を唱え、他にも体温調節の魔術を唱え、水中である程度過ごせる環境を整える。
(にしても、面倒な展開になったな。まさか、兄貴とは)
すぐに地上に出れば、あの二人がいるかもしれない。男の方はどうとでもなるが、リィエルは話が別だ。
万全な状態でも勝てるか分からないのに、今向かっても自殺行為だ。
(……地上を確認するか)
ゆっくりと、海上に向かって泳いでいくグレン。
「……誰もいないな」
僅かに顔を出し、外の状況を確認するが、浜辺には人っ子一人いなかった。
「……ふぅ、ビショビショだぞこん畜生。リィエルはあとで説教だな」
だが、ここでグレンが止まる。
「……奴らの目的は……いや、明白か」
恐らく、ルミアだろうと、見当をつける。天の智慧研究会はルミアを狙っている。今回もその作戦の一部というわけか。
「グレン!」
「アルベルト?何やってんだこんなところで?」
突如現れ、グレンに話しかけるアルベルト。
「……生きてはいるようだな」
「まぁな。危うく死にかけたが、こんな状況は初めてじゃねぇし」
「……あぁ、そうだったな。相変わらず貴様はしぶとい。心配して損したぞ」
「そりゃ悪かったな。それで?ここからどうする?」
「まずはその傷の手当てが先だろう」
アルベルトはグレンの血まみれの胸元を見てそう言う。
「アルちゃんのエッチ」
「……、」
「待って!無言で指を向けるな!悪かったから!」
相変わらずの凸凹っぷりであった。
ある程度傷を治療した二人。一度装備を整えるため、グレンたちのクラスが泊まる宿に向かっていた。
道中で自身に何が起こったかを説明するグレン。
「こっちはこんな感じだ。そっちは?」
「軍の諜報部から、白金魔導研究所関連の資金の流れに、違和感があるという調査報告書が上がって来た。それを徹底的に洗った所、所長と連中の繋がりが浮き彫りになった」
「……相変わらず腐ってるな。以前俺と接触した時にそのことを伝えなかったのも、リィエルどころか、ルミアすら撒き餌にする気満々だったってことじゃねぇか」
「あぁ。リィエルに関しては、俺も何度も人員を変更するよう申請した」
「軍の上層部がそんな申請通すはずがない。それもこれも、リィエルの素性をひた隠しにしてきた俺たちの責任だ」
リィエル=レイフォード。
そのことを明かせば、彼女がモルモットになるのは明白。だからこそ、二人はリィエルの事を誰にも伝えず、秘密にしてきた。
リィエル自身も、精神が不安定な状況でそんなことを告げれば、パニックを起こすのは必然。
ここ最近は些か成長していたとはいえ、まだ生まれて間もない少女。だが、それが通じない世界に身を置かせたのは自分たちの責任だ。
「だが、ルミアを巻き込むのは違うだろ!そもそも、女王陛下がそんな命令を許すはずが……まさか」
「そのまさかだ」
「ふざけんな!軍の独断だってのか⁉実の母親に何の話も通さねぇとか、良心をどこに失くしてきやがった!」
「こんな命令を下す軍の上層部も、それに黙って従う俺もクズだ。否定はしない。だが、こうなった以上、俺は容赦しない。リィエルが行く手を阻むなら、俺は奴を排除する」
しかし、そこで待ったをかけるグレン。
「ダメだ。リィエルを殺すわけにはいかねぇ。そもそも、アイツは騙されてるんだ。誤解を解けば――」
「兄が現れたと言ったな。今更お前の言葉が耳に届くと思うのか?」
「俺の言葉が届かなくても、
「貴様も分かっていただろう?リィエルは徐々に、自身の正体に勘付き始めていたことに」
「分かってる。だが、伝えるのはまだ早いと思った」
「だからこそだろう」
つまり、と。言葉を続けるアルベルト。
「お前が何も話さないことへの不信感が、遠回しに今回の裏切りに繋がったのではないのか?」
「……確かに、そうかもしれねぇ。信頼は築き上げるより失うことの方が簡単だしな。……けど、それでも俺は、リィエルを救うぞ。俺は、
後頭部を掻きながらそういうグレン。
「……貴様は何も変わらんな。本当に……。ここが王女の部屋か?」
「あぁ。だが、流石にリィエルがもう来てるかもな。あいつらがここに居ないのを祈るばかり――」
二人は扉を開けると
「……ぇ、せん……せい?」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしたシスティーナが、血まみれの部屋で座り込んでいた。
人工呼吸?何のことでしょうか?(すっ呆け)