ロクでなしに憑依した   作:山羊次郎

15 / 44

 モチベが上がってるおかげでまたしても投稿です。

 最近シリアスが多いですね。もっと平和な感じにしたいのになぁ……。


十四話:裏切りはいつも唐突に

「嘘……、兄さんは死んで……。どうして⁉」

 

 ただでさえ混乱しているのに、これ以上分からないことを増やされたリィエルは、今までにないほど動揺していた。

 

「確かに、僕はあの日、組織の者の手にかかった。でも、その時の君は動転して気付かなかったんだろうね。僕にまだ息があったってことを」

「!……、ダメ。私は……偽物だから」

「?何を言っているんだい?君は他の誰でもない、僕の妹、リィエルだろう?」

「……ぁ…」

 

 分からない。何が起きているのか分からない。

 けれど――

 

「リィエル。僕を助けてくれ。二年前君は亡命に成功し、自由を手にすることができた。だけど、僕は今でも組織の奴隷だ」

 

 ――目の前にいるのは、自分の生きる意味だ。

 

「……でも、助けるってどうすればいいの……?」

「ルミア=ティンジェルだ」

「……ぇ」

 

 その瞬間、リィエルの呼吸が止まった。

 

「今組織が動かしてる計画には、彼女が必要なんだ。そして、成功にはグレンという魔術講師が邪魔だ」

「……ぁ…ぇ」

「組織は僕にチャンスをくれたんだ。この計画を成功させれば、僕は自由になれるんだ」

 

 この時、リィエルはグレンの言葉を思い出していた。

 

『いいか?お前の兄貴は、お前に生きてほしいて願った。だから、絶対に死ぬなよ?……な~に、俺だって守ってやるよ。まぁ、お前には必要ないかもしれんが』

「リィエル。君は僕を守ってくれるんじゃなかったのかい?」

 

 だが、一瞬でその記憶が片隅へと消えていく。

 

「それともまた僕を見捨てるつもりなのかい?」

「!……、あ、……あぁぁぁぁ」

「リィエル!そいつから離れろ!」

 

 突如、そんな二人の間に、割り込む影が一つ。グレンだ。

 

「貴様、グレン=レーダス⁉」

「へぇ。よく知ってんな。俺も天の智慧研究会の間じゃすっかり有名人みたいだぜ」

「なッ⁉違、僕は……っ!」

「どっちにしろ、テメェが家の生徒に近づいたのは事案だぜ。生徒に手を出されちゃ黙ってるわけにはいかねぇ。まずはタコ殴りにして、引ん剝いて奴らの紋章があるか確認してやる。なかったらそれまでだ」

「あ、あぁぁ……。り、リィエル……?」

 

 恐怖が顔にこびり付いた男が、最後の希望に縋るようにリィエルを見る。

 

「はっ!こいつに何を期待してるかは知らねぇが無駄なこった。リィエル、こいつを……あん?お前どっかで――」

 

 懐からアルカナを引き抜こうとしたグレンが、違和感を感じその手を止める。

 その瞬間――

 

 

 ザクッッッ!!!

 

 

 ――という音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え」

 

 グレンは恐る恐る、自分の胸を見る。そこには、巨大な剣(・ ・ ・ ・)が突き立てられていた。

 振り返ると、まるで人形のような表情をしたリィエルが、無言で剣を突き立てていた。

 

「今までありがとう。さよなら」

 

 一切の感情を感じさせない声で、決定的な別れを告げるリィエル。

 

「……な……、んで?」

「私は、兄さんの為に生きる。それが私の、生きる意味」

「……は?」

 

 そのまま、リィエルはグレンを剣ごと海に放り投げた。

 

「ガはっ!」

 

 空中で剣が胸から抜けたが、この様子では死ぬのは確実だろう。

 

「よくやってくれた、リィエル」

「……うん」

 

 そして、ふたりはどこかへ消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リィエルに海に投げ捨てられたグレン。

 だが、彼は諦めていなかった。

 

(危なかった。【愚者の世界】を起動してたらマジでやばかった!)

 

 水中に入った時点で、水中で呪文を唱える技法を知るグレンは、咄嗟に治癒魔術を唱えていた。

 その後、呼吸補助の魔術を唱え、他にも体温調節の魔術を唱え、水中である程度過ごせる環境を整える。

 

(にしても、面倒な展開になったな。まさか、兄貴とは)

 

 すぐに地上に出れば、あの二人がいるかもしれない。男の方はどうとでもなるが、リィエルは話が別だ。

 万全な状態でも勝てるか分からないのに、今向かっても自殺行為だ。

 

(……地上を確認するか)

 

 ゆっくりと、海上に向かって泳いでいくグレン。

 

「……誰もいないな」

 

 僅かに顔を出し、外の状況を確認するが、浜辺には人っ子一人いなかった。

 

「……ふぅ、ビショビショだぞこん畜生。リィエルはあとで説教だな」

 

 だが、ここでグレンが止まる。

 

「……奴らの目的は……いや、明白か」

 

 恐らく、ルミアだろうと、見当をつける。天の智慧研究会はルミアを狙っている。今回もその作戦の一部というわけか。

 

「グレン!」

「アルベルト?何やってんだこんなところで?」

 

 突如現れ、グレンに話しかけるアルベルト。

 

「……生きてはいるようだな」

「まぁな。危うく死にかけたが、こんな状況は初めてじゃねぇし」

「……あぁ、そうだったな。相変わらず貴様はしぶとい。心配して損したぞ」

「そりゃ悪かったな。それで?ここからどうする?」

「まずはその傷の手当てが先だろう」

 

 アルベルトはグレンの血まみれの胸元を見てそう言う。

 

「アルちゃんのエッチ」

「……、」

「待って!無言で指を向けるな!悪かったから!」

 

 相変わらずの凸凹っぷりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある程度傷を治療した二人。一度装備を整えるため、グレンたちのクラスが泊まる宿に向かっていた。

 道中で自身に何が起こったかを説明するグレン。

 

「こっちはこんな感じだ。そっちは?」

「軍の諜報部から、白金魔導研究所関連の資金の流れに、違和感があるという調査報告書が上がって来た。それを徹底的に洗った所、所長と連中の繋がりが浮き彫りになった」

「……相変わらず腐ってるな。以前俺と接触した時にそのことを伝えなかったのも、リィエルどころか、ルミアすら撒き餌にする気満々だったってことじゃねぇか」

「あぁ。リィエルに関しては、俺も何度も人員を変更するよう申請した」

「軍の上層部がそんな申請通すはずがない。それもこれも、リィエルの素性をひた隠しにしてきた俺たちの責任だ」

 

 リィエル=レイフォード。Project: Revive Life(プロジェクト:リバイブライフ)の世界初の成功例。

 そのことを明かせば、彼女がモルモットになるのは明白。だからこそ、二人はリィエルの事を誰にも伝えず、秘密にしてきた。

 リィエル自身も、精神が不安定な状況でそんなことを告げれば、パニックを起こすのは必然。

 ここ最近は些か成長していたとはいえ、まだ生まれて間もない少女。だが、それが通じない世界に身を置かせたのは自分たちの責任だ。

 

「だが、ルミアを巻き込むのは違うだろ!そもそも、女王陛下がそんな命令を許すはずが……まさか」

「そのまさかだ」

「ふざけんな!軍の独断だってのか⁉実の母親に何の話も通さねぇとか、良心をどこに失くしてきやがった!」

「こんな命令を下す軍の上層部も、それに黙って従う俺もクズだ。否定はしない。だが、こうなった以上、俺は容赦しない。リィエルが行く手を阻むなら、俺は奴を排除する」

 

 しかし、そこで待ったをかけるグレン。

 

「ダメだ。リィエルを殺すわけにはいかねぇ。そもそも、アイツは騙されてるんだ。誤解を解けば――」

「兄が現れたと言ったな。今更お前の言葉が耳に届くと思うのか?」

「俺の言葉が届かなくても、奴が本物の兄貴じゃない(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)っつう動かぬ証拠を突きつけりゃあいいだろ!とにかく、何が何でもリィエルを連れ戻す。異論は認めねぇ」

「貴様も分かっていただろう?リィエルは徐々に、自身の正体に勘付き始めていたことに」

「分かってる。だが、伝えるのはまだ早いと思った」

「だからこそだろう」

 

 つまり、と。言葉を続けるアルベルト。

 

「お前が何も話さないことへの不信感が、遠回しに今回の裏切りに繋がったのではないのか?」

「……確かに、そうかもしれねぇ。信頼は築き上げるより失うことの方が簡単だしな。……けど、それでも俺は、リィエルを救うぞ。俺は、あいつの教師(・ ・ ・ ・ ・ ・)だからな。あいつにも、戦うこと以外の生き方を教えるって、約束しちまったしよ」

 

 後頭部を掻きながらそういうグレン。

 

「……貴様は何も変わらんな。本当に……。ここが王女の部屋か?」

「あぁ。だが、流石にリィエルがもう来てるかもな。あいつらがここに居ないのを祈るばかり――」

 

 二人は扉を開けると

 

「……ぇ、せん……せい?」

 

 涙で顔をぐしゃぐしゃにしたシスティーナが、血まみれの部屋で座り込んでいた。

 

 

 

 





 人工呼吸?何のことでしょうか?(すっ呆け)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。