ロクでなしに憑依した   作:山羊次郎

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 ついに発売されましたロクアカ17巻!
 早速呼んだけどジャティスの行動にはビビった。
 っていうか、あれは誰でもビビると思う。



十七話:反抗期を抜けた先に

「……どうしてProject:Revive Life(プロジェクト:リヴァイブライフ)が……ッ⁉」

 

 あり得ない。なぜならそれの完成には、「リィエルの兄」の力が必要だった。

 

「あぁ。術式は『アイツ』の固有魔術(オリジナル)同然になっていたから、もう不可能だと思った。……だが!このルミアとかいう部品があれば!俺はもういくらでもリィエルを作り出せるんだ!」

 

 グレンは三人のリィエルを観察する。

 

(……普段からリィエルは感情が希薄だが……これは)

「ふっ、今回のリィエルは完璧だぞ!」

「何……?」

 

 グレンの考えていることを見抜いたのか、突如そんなことを言うライネル。

 

「なにしろ、余計な人格や感情は念入りに削除した!後から記憶調整なんて面倒なことはせず、リィエルの凄まじい戦闘能力だけを受け継いだ、俺の思い通りに動く、俺だけの操り人形だ!」

 

 どこまでも腐ってやがるな。と、グレンは内心毒づくも

 

「……隙がねぇ」

 

 やはりリィエル。どれだけ感情がなくても、滲み出るオーラが隠せていない。

 

「やれ!そいつらを始末しろ!」

 

 ライネルが三人のリィエルに命令を下した瞬間。

 

「早い……ッ⁉」

「……ぁ」

 

 二体のリィエルがグレンのもとに、残り一体がリィエル……ややこしい。

 

「おらぁ!」

 

 二人のリィエルBとリィエルCを振り切り、リィエルAのもとに向かったリィエルDをぶっ飛ばすグレン。

 

「なぜ私なんか守るの……?私には何もないのに……」

「ンなことあっかよ。何もなかったらこの俺様が守るなんて素晴らしいことするわけねぇだろ」

 

 三人のリィエルが、グレンへと切りかかる。それを何とか捌ききるグレン。

 

(……捌ける?なんで?さっきまでリィエルA一人相手にすんのに苦戦してたのに?)

 

 そして、そんなことを考える余裕すらある。これはどういうことか?

 

(……あぁ、そう言うことか。考えてみればそうだよな)

「私は……人形なのに」

「鏡持って来い。今ここに居るリィエル三姉妹と自分の顔を見比べてみろ」

 

 大剣を白刃取りで掴み、投げ、体重移動を使いリィエルをどこまでもさばききるグレン。

 その行動で、一度も三人のリィエルを傷つけてはいない。そんなことをする余裕がある。

 

「……私はいくらでも作れる。量産できる」

「じゃああれか?お前は俺が量産出来るようになったら、今の俺はいらねぇってことか?」

「!……、そんなこと……ッ!」

「そういうことだ」

 

 同じ顔?同じ人間?何度でも作れる?だからどうした?

 

「お前は!世界でたった一人しかいねぇんだよ!」

「そうだよリィエル!また一緒に、海を見よう?」

「……でも」

 

 見たい。そうしていたい。

 しかし、リィエルは悩み続ける。それが正しいのか、分からない。

 それだけではない(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

「でも私、グレンにもひどいことして……、システィーナにも……!」

 

 きっともう、彼女は許してくれない。

 そんな思いが、リィエルを蝕む。

 

「じゃ後で謝るんだな。アイツは意外と優しいとこもあるから、案外あっさりと許してくれると思うぞ」

 

 そのたびに、グレンがフォローを入れる。

 

「……分からない。私に……生きる意味なんてあるの?」

 

 ……それでも、リィエルは立ち上がらない。

 

「……はぁ、っていうかさぁ」

「?」

「お前、いつまでそんな風に考えてる訳?」

「は……?」

 

 ポカンと、リィエルの表情が固まる。

 

「お前みたいなバカがいくら考えたって、哲学者だって投げ出すような難問解けるわけねぇだろうが」

「……、」

「今は分からなくてもいい。ただ、いつかそれを見つけるために……そのために、今は……ッ⁉」

 

 余裕が生まれて油断したのか、グレンが所々を切り刻まれた。

 しかし、それでもグレンは言葉を続けた。

 

「……今は、……ただ、自分が大切だと思う何かのために生きろ」

「……、」

「そしたら、いつかは……見つかるだろうさ。生きる意味ってやつも」

「!……、」

 

 ボロボロになりながらも、リィエルを背に庇いながら立ち上がるグレン。

 

「止めを刺せ!」

 

 そんな姿に勝利を確信したのか、ライネルがリィエルたちに指示を出す。

 その命令を受けて、三人のリィエルはグレンへと突撃した。

 

 

 その瞬間、ドゴォォォォン!!という音とともに、三人のリィエルが吹き飛ばされる(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 

「……は?」

 

 ライネルはその光景を、理解できないでいた。

 

「……ごめん。許して、私の妹達」

 

 いつの間にか立ち上がっていたリィエルが、三人のリィエルを吹き飛ばしていたのだ。

 

「……ば、馬鹿な……ッ!」

 

 リィエルたちは起き上がってこない。どうやら、気絶しているらしい。

 ようやく脳の理解が追い付いたライネルが、怒号を上げる。

 

「……馬鹿なッ!馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なッッ!!!!馬鹿なァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!」

「なんだよ?何に驚いてんだ?」

「三体だぞ⁉三体もリィエルを作ったんだぞ⁉それが、こんなあっさり……しかも、殺さず無力化だと……ッ⁉」

 

 殺すことよりも、殺さずに無力化するというのは遥かに難しい。

 それを理解しているからこその、あの叫びなのだろう。

 

「別に不思議でもないだろ?」

「不思議とかそういう次元じゃない!あり得ないだろう常識的に考えて!」

「んなこたぁねぇよ。答えは至って単純なんだからな」

「何……ッ⁉」

 

 Project:Revive Life(プロジェクト:リヴァイブライフ)には、三つの要素が必要不可欠だ。

「ジーン・コード」「アストラル・コード」「アルター・エーテル」。これらの要素を揃え、さらにルミアを加えることで、ライネルは計画を完成させた。

 だが、ルミア以外の情報(データ)はどこから来た?……特に「アストラル・コード」は?そして、それにあわせる肉体は?

 

「要は、情報(データ)が古かった。リィエルの成長をまるで考えていなかった、テメェのミスだ」

「……あ、あり得ない……!たかが道具が……成長だと……⁉」

「まだ言うのか。この成長は……こいつが人間である、何よりの証だろうが!」

 

 そのグレンの叫びに、リィエルがビクンと、肩を震わせる。

 

「ふ、ふざけるな!《猛き雷帝よ・極光の閃槍以て・刺し穿て》!……なッ⁉」

 

 怒りに任せ【ライトニング・ピアス】を唱えようとしたライネルだが、魔術は起動しなかった。

 

「残念だったな。【愚者の世界】。……敵の得意技くらい予習しとくんだったな」

「あ……、あぁぁぁぁあああ……」

 

 ライネルの顔が恐怖に歪む。最早打つ手のない、詰み。それを悟っているからだろう。

 

「まぁ安心しな。リィエルが頑張って自分の妹(・ ・ ・ ・)を殺さず止めるって言う凄いことしたんだし、ここで俺が殺しちゃかっこ悪いからな」

「ぁぁぁ……」

「それに『アイツ』との約束もあるし、殺すのは勘弁してやる」

 

 グレンの言葉が耳に入っていないのか、ライネルは壊れた蓄音機のように言葉を発し続けるだけだ。

 

「とはいえ、落とし前は付けさせてもらうぜ。……俺の生徒に手ぇ出してんじゃねぇ!このクソ野郎!」

「ガフッ!」

 

 グレンの右ストレートが、ライネルの顔面に突き刺さった。

 ボールのように回転しながら、地面に倒れ伏し、白目をむいて気絶したライネル。

 

「……終わったか……あれ?」

 

 グレンは倒れ伏す三人のリィエル(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)を見ながら思った。

 

(事後処理……どうしよう?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かくして、ルミア誘拐事件は終わった。バークスは何か知らん間にアルベルトが()ってた。二人の駆け引きとかは原作読め。

 どうやら、システィーナ達の部屋を見た他の生徒は心配していたようだが、大して追及するでもなく、そのままいつもの日常へ戻っていった。

 システィーナとリィエルも、ひと悶着あったものの、すぐに仲直り出来たようだ。

 

(まったく、只のガキどもじゃなかったってわけか)

 

 きっと、聞きたいことは山ほどあるだろう。それでも、いつもの日常が帰ってきた。今はそれで満足する。それが出来る。それが、どれだけ凄いことか。

 

「……えい」

「「「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!」」」

 

 グレンは、リィエルの殺人スパイクに沈む男子たちを見てそう思った。

 遠征学習は中止。原因はバークス=ブラウモンの突然の失踪。さらに、突如現れた帝国宮廷魔導士団(あやしいしゅうだん)による調査。本来なら、すぐにでも帰らなければならない。

 しかし、諸々の事情で手続きが遅れており、一日だけ自由な時間が得られた。なので、こうしてビーチバレーをしているのだが

 

「それでグレン。あの量産リィエルはどうする気だ?」

「……とりあえず、昔の知り合いに預けるつもりだ」

「知り合い?」

 

 生徒たちから離れた場所で、グレンとアルベルトが話している。

 

「あぁ。オーウェルって言ってな」

「オーウェル=シュウザ―教授か?」

「あれ?知ってるの?」

「奇抜な発想をする魔導工学教授と聞いている」

 

 奇抜な発想……あながち間違いではないか。

 

「にしてもグレン、これがお前の守りたかったものか?」

「ま、これより悪い結末よりはマシだったな」

 

 ふっ、と笑い、アルベルトは踵を返した。

 

「もう行くのか?」

「あぁ。貴様と違い、俺は忙しいのでな」

「お仕事頑張ってねー」

 

 アルベルトはそのまま無言で去っていった。

 

「……さて、そろそろ寝るかね」

「……グレン」

「うおっ⁉脅かすなよお前!」

 

 眠りに入ろうとした時、いつの間にか接近していたリィエルが、グレンの名を呼んでいた。

 

「なんか用か?」

「……一つ、聞いていい?」

「何をだ?」

「……兄さんの名前」

 

 あぁ。と、グレンは思い出したように声を漏らす。

 

「あの時も、皆兄さんの名前を呼ばなかったから、分からなかった」

「……そうだなぁ。……、」

「?」

「……一応確認しとくぞ」

 

 リィエルは兄の記憶がない。それは恐らく、記憶を封印されているのだろう。

 キーワード封印というものがあり、一定の文字を設定し、それに関連する記憶を纏めて封印することが出来る。

 そして、リィエルの場合は、「兄の名」。今それを言えば、リィエルの封印された記憶が蘇ってくるだろう。

 

「それでも、大丈夫か?」

 

 改めて、試すようにグレンが聞く。

 

「……ん」

「……そうか。……いいか、お前の兄貴の名前はな――」

 

 そうして、グレンは告げた。

 リィエルの兄、稀代の錬金術師の名を。

 

 

 




 え、なんでシオンの名前を出さないのか?
 ……なんていうか、出すタイミングを失ったというか……多分、大体の読者は知ってると思うし、別にいいよね?
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