ロクでなしに憑依した   作:山羊次郎

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 ゼロワンオマージュのタイトル。決して思いつかなかったわけじゃない。



二十一話:人の夢ってのはなぁ、検索すれば出てくるような、そんな簡単なもんじゃねぇんだよ!

 レオスが去っていった後を、呆然と見送るシスティーナとグレン。

 

「……やっちまったな」

「……やっちゃいましたね」

 

 二人とも、事の重大さに今更ながら気づいた。

 

「……どうする?」

「……どうしましょう?」

 

 レオス=クライトス。クライトス家の嫡男にして、魔術師としての階梯は第五階梯(クインデ)。ハーレイと同格、もしくはそれ以上ということだ。

 

「決闘の内容は当然向こうが決めるから、自分の得意分野で攻めてくるはず……やばいな」

「どうするんですか⁉」

「いやだって、そもそもお前だって乗り気だったじゃん」

「い、いやあれは……その、ああいえばレオスも諦めてくれるかな~って」

「ま、こうなった以上仕方ねぇ。なるようになるさ。それに、考えてみればこれはチャンス!お前の婿になれば働かなくて済む!ここは逆玉狙い」

「!……、《死ね》ェェェェェェえええええええ!!!」

「ギャアああああああ!!私は鳥よォォォォォオオオオオオオオオオ!!!」

 

 またしても、システィーナに吹き飛ばされていくグレンであった。

 そして、場所は変わって二年次生二組の教室。

 

「と、いうわけで!俺が白猫とくっついて見事逆玉に乗り、無職引きこもり生活をゲットするために、今からお前らに『魔導兵団戦』の特別授業を行う!」

「「「ふざけんなぁぁぁぁあああああああああああ!!!」」」

 

 生徒たちの叫び声が、教室中に響き渡る。無論、そうなることは分かっていたので、グレンはあらかじめ教室に防音の結界を貼っておいたが。

 

 魔導兵団戦。魔術師による戦争。その模擬戦ともいえる授業。

 レオスは決闘の内容に、魔術教師としての手腕で勝負するといい、この内容を提示してきた。

 グレンはこれを一切文句を言わず受けた。相手が提示した条件で勝利したほうが、むしろこっちの気も晴れるってものだ。

 

「先生が売った喧嘩だろーが!」

「俺たちを巻き込むんじゃねぇ!」

「死ね!苦しんで死ね!俺たちの非モテの苦しみを味あわされて死ね!」

「うっせーな。しょーがねーだろ。あの野郎が、魔術講師としての手腕で勝負するって言ってんだしよ」

「それこっちに全く勝機がないのでは?」

 

 突如、ギイブルが口を挟む。

 

「前の魔術競技祭は、個々の尖った分野を活かし、勝利を収めました。けど、今回は違う。魔導兵団戦は、クラスの生徒を兵士に見立てた模擬戦。それぞれが持つ特技も、これではいかせないものも多いです。どう考えても戦力不足、勝ち目が見えませんよ?」

「だから特訓するんだろうが。それに、別に戦える必要はないし、今このクラスでまともに戦力になるやつなんていねぇよ。強いて言うなら、このクラスで一番使えないのはお前みたいな奴だぞギイブル」

「な……ッ!」

 

 ギイブルはクラスで二番目の成績を誇る。そんな彼を使えないという先生の言葉の意味を理解できず、全員が首を傾げる。

 

「さーて、じゃあ、授業の時間だ。なーに、悪いようにはしねぇよ」

 

 グレンは教卓に手を突き、不敵に笑って授業を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜のフェジテの賑やかな繁華街を抜け、誰もいない路地裏を一人歩くグレン。

 しばらくすると、ひっそりと隠れるように据えられた、場末のバーが現れ、その中へ入っていく。

 この店は客に対して徹底した秘密厳守・非干渉を貫くことが売りの店で、密談・密会に使うような店だ。

 

「また派手に動いてるようだな。惚れてもない女を賭けて勝負などゲスの極みだ」

「そうだよ!少しはシスティーナちゃんに申し訳ないとか思わないの?」

「いいじゃねぇか。勝てば働かなくていいんだぞ?」

「もう、グレン君ったら……」

 

 そこにいたのはアルベルトとセラ。ここで三人は近況の報告をしあっていた。

 グレンは注文した酒を飲みながら、カウンターに肘をつき、頬杖をついて話している。

 

「……それで?なんで接触した?このタイミングで。俺結構忙しいんだけどな」

「……『天使の塵(エンジェルダスト)』が、この街に持ち込まれてると言う情報を得た」

「は……?」

 

 グレンが一瞬、アルベルトの言葉を理解できず、目が点となる。

 

「いや、何言ってんだ?『天使の塵(エンジェルダスト)』は一年前のあの事件ですべて抹消されただろうが。無論、その製法もな。あれはもう、二度と生み出せない。完全な失伝魔術(ロストミスティック)なんだぞ?」

「うん。確かに、グレン君の言う通り。唯一その複雑怪奇な製法を頭の中で把握している彼は……もう」

「……どうなってんだ?」

 

天使の塵(エンジェルダスト)』。

 投与された人間は確実に廃人と化し、もう二度と元には戻らない上、定期的に『天使の塵(エンジェル・ダスト)』を投与されなければ、たちどころに凄まじい禁断症状と共に肉体が崩壊し、死に至る。

 投与を続けてもいずれ末期中毒症状で死に至る、最悪の魔薬(ドラッグ)である。

 

「……面倒なことになったな」

「ダメだよグレン君」

 

 ふと、何気なしに呟いたグレンに、まるで予め釘をさすようにそんなことを言うセラ。

 

「……何がだよ」

「調査の協力はダメ。元々、これはグレン君に危ないから気を付けてねって言う連絡なんだから」

「……はぁ。分かってるよ。それに、もう二度とあんなのと関わるのも御免だしな」

「うん。それでよし。これは私たちに任せて、グレン君は自分の仕事を頑張ってね?」

「ふん。尤も、道化を演じている今のお前では……そんな事は夢のまた夢だろうがな……」

「うっせぇ」

 

 ぐっ、と。一気に酒を飲み干すグレン。

 

「……夢、か」

 

 唐突に、アルベルトが呟いた。

 

「なんだよ急に」

「そう言えば、あの女、《太陽(・・)》も、夢に向かって進んでいたな」

「その話はするな」

 

 瞬間、グレンがアルベルトに高圧的に言う。

 

「……フィーベルも、セラも、《太陽》……お前の後輩、アリアも――」

「黙れ」

「グレン君……」

 

 グレンは重い足取りでバーを出ていく。

 そんな後姿を黙って見送るセラ。

 

「ふん。やはり、フィーベルの姿勢を、奴に重ねていたか」

「もう、言いすぎだよ。アルベルト君も」

 

 アルベルトはその言葉を無視し、酒を飲む。

 そして、セラはかつての軍時代を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいじゃねぇか。そういう夢。故郷に帰りたい、か」

「笑わないの?そんなの絶対無理だって、叶うはずないって」

 

 どこかの場所で、グレンがセラに言った。

 

「これまで誰も為し得なかっただけだ。だから、証明してやればいい。お前がその第一号になって、不可能な事なんてないんだって」

「……グレン君は何かないの?自分の夢」

「夢、ね」

 

 グレンが星空を見上げながら答える。

 

「あったら多分、こんなところには来なかっただろうさ」

「それって……どういう……?」

「さぁな。ま、頑張れよ。お前の人生の道筋は、お前にだけしか決められねぇ。他人の意見なんか気にしてる暇なんかないぞ?」

「……うん。頑張る」

 

 決して、グレンは否定しなかった。

 セラの夢。かつて他国の侵略によって奪われた、自身の故郷を取り戻すという目的を。そのために帝国軍に力を貸していることを。

 

「……でも、こんな仕事だし、私もいつか」

「心配すんな。お前のしぶとさなら、そう簡単に死にはしねぇよ」

「もう!そこは「俺が守る」くらい言ってよ!」

「なんで俺がそこまでしてお前を守らなきゃ……ちょ、痛て、叩くな!」

 

 二人がそんな風に戯れていると

 

「あーっ!先輩、また他の女と遊んでるんっスか―⁉」

 

 黒い髪の、どこか子猫を連想させる少女が、結んだポニーテールを揺らしながら駆け寄っていった。

 

「……黒猫」

 

 グレンが、うんざりした様子で、その少女の事をそう呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして数日後。決戦当日。

 昼食を済ませた後今回の魔導兵団戦演習に参加する生徒たち。

 

「魔導兵団戦とはその名の通り、魔導士による集団戦闘である。生徒諸君は、指揮官である講師の指揮に従って進軍。学生用の呪文を軍用魔術とみなし、戦死と判断された生徒は戦場から退場する。指揮官がどこへどのタイミングで、どれだけの戦力を送るかが戦局の鍵となるだろう。演習時間は三時間。敵の本拠地を制圧、もしくは指揮官である担任講師を倒せば勝利だ」

 

 瞬間、パチパチパチと。拍手が送られた。グレンだ。

 

「いやー懇切ご丁寧な解説どうもですハリケーン先輩」

「ハーレイだ!ハーレイ=アストレイ!いい加減覚えろ!……全く、崇高なる学院の授業を、女子生徒を賭けた決闘に使うなど、恥を知れグレン=レーダス」

「いやー耳が痛いですねー」

 

 ハーレイが怒るも、グレンはまるで堪えた様子はない。そんな様子にハーレイは嘆息しつつ、レオスに目を向ける。

 

「レオス先生、期待してますぞ。この最低男に一泡吹かせてやってください」

 

 最低男とは直球な。

 レオスはハーレイの言葉にうなずき、システィーナのもとに行く。

 

「システィーナ。私を気に掛ける必要はありません。存分に戦って下さい」

 

 システィーナの手を取り、安心させるように笑いかけるレオス。その洗礼された紳士的な動作に、女子生徒たちは心を奪われていた。

 

「よーしお前ら!俺が逆玉に乗れるよう力を貸してくれよな!」

(((俺達やっぱ負けた方がいいんじゃないか?)))

 

 グレンは生徒たちからどんどん呆れられていた。

 

「で~、システィーナ。本当に勝った方と結婚する気ですの?」

 

 ウェンディがシスティーナの肘をぐいぐいと押し、揶揄うように言う。

 

「け、結婚⁉すすすするわけないじゃない!私まだやらなきゃいけないこと沢山あるし!あの二人が勝手に盛り上がってるだけよ!」

 

 口ではそういって誤魔化すシスティーナ。

 

(でも、もしかしたら、先生私の事、本気で……)

 

 グレンにはここまでする理由がない以上、やっぱりそう言うことなのではと思ってしまう。

 そんなシスティーナの脳裏には、普段の三十パーセントは美化されたグレンが、レオスを殴り倒し、いつの間にかウエディングドレスを着たシスティーナに結婚指輪を渡していて――

 

「だァァァァァァァああああああ!!!」

 

 そんな妄想を破り捨てて絶叫するシスティーナ。その姿にギョッとする二組一同。

 

「何馬鹿な事考えてんのよ!何で私があんな奴とぉぉぉぉぉおおおおおお―――ッ!」

「システィーナなんか変。顔が赤くなったり、怒ったり叫んだり……病気?」

「……うん。ある意味そうかもね」

「じゃあ、医者に見せないと」

「やめといたほうが良いよ。この病気、お医者さんじゃ治せないと思うし」

「?」

 

 システィーナの様子を、苦笑いで見るルミアと、わけがわからないよとばかりに首を傾げるリィエル。

 

《それでは、二組対四組による魔導兵団戦、いよいよ開戦です!》

 

 そうして、戦いの火ぶたが切って落とされた。

 

 




 突然の新オリキャラの登場に驚きを隠せない作者。(なんでだよ!)
 オリキャラタグも追加しておきますね。
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