ロクでなしに憑依した   作:山羊次郎

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二話:テロリストが学校を襲撃するのはテンプレ

 更衣室で凄惨な暴行事件が起き、錬金術の授業は中止。

 しかし、その後の授業も生徒たちには好評だった。尤も、本人が人を馬鹿にする態度をとるため本人そのものの人気は壊滅的だが。

 

「にゅっふっふ!だから私は知ってたんだよねぇ!アイツはやればできる子だって!」

「授業は大人気。今では立ち見の生徒まで出てるとか!いやー、流石はセリカ殿が連れてきた魔術師ですな!」

「そりゃあ私が一から仕込んだ自慢の弟子だからねぇ!」

 

 ここは学院長室。そこでセリカがこの学院の学院長であるリックに大人げない弟子自慢をかましていた。

 しかし、彼女が舞い上がるのも理解できないわけではない。元々、グレンの更生の為に学院に来させたのに、まさかそこで大人気になるとは夢にも思わなかったのだろう。

 グレンの授業は生徒どころからか、教師ですら舌を巻くものだ。当然、それを快く思わないものもいるが。

 

(おのれグレン=レーダス!たかが第三階梯の魔術師が私より優秀だと⁉ありえん!今に見ていろ!いずれはこの学院から……!)

 

 グレン反対派の筆頭であるハーレイはそう思うが、全くの取り越し苦労である。

 彼は非常勤、いずれはこの学院を去るのだ。本人が正式に講師にならない限り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、グレンの授業。

 

「お前らは一般的な『汎用魔術』に対して、個々の魔術師にオンリーワンな『固有魔術(オリジナル)』を神聖視しているが、実は固有魔術を作るなんて大したことねーんだ。やろうと思えば、三流の俺にだって出来る。じゃあ何が大変なのか?それは、緻密に完成された汎用魔術を何らかの形で超えなきゃならないというこの一点に尽きる。じゃねーと使う意味ねーからな。下手な魔術じゃ、既にある者の劣化コピーにしかならない」

 

 こうして講義を行いながら、彼はクラスの様子を見て愕然としていた。

 ……なんか、人数多くね?

 しかし、それを表に出すわけにはいかない。なので、努めて考えないようにしている。

 そして、授業も終わり夕方、屋上にやってきた。

 

「……疲れるわ」

 

 やっぱり引き籠りたい。

 

「……まぁ」

 

 嫌いじゃないか。こういうのも。

 

「おーおー夕日に向かって黄昏ちゃって。青春しているねぇ」

「……何の用だよセリカ」

「最近、お前は変わったと思ってな。前は死んで一か月たった魚みたいな目をしていた」

「どういう意味だコラ」

「今は死んで一週間たった魚の目をしている」

「結局死んでんのかよ!」

 

 ったく。……。

 

「……悪かったよ、心配かけて」

「……誰だお前?」

「ど突くぞ」

 

 セリカが未知の生物を見るような眼で見てくる。

 

「……ごほん。さて、私は明日から魔術学会だが、お前のクラスは前任のヒューイがいなくなって授業が遅れてるから補修だったな。休みでみんないないからって、女子生徒に変な悪戯するなよ?」

「しねぇよ!っていうか、お前みたいな女見慣れたら、そこらの女に興味なんて持てねぇよ」

「ほう。お前は私をそんな目で見てたのか?この変態め~」

 

 そういって、セリカは俺に抱き着き背中に胸を押し付けてくる。

 

「もう少し強めに抱き着いてくれ」

「死ね」

「ぎゃぁあああああ!」

 

 首を絞められました。

 

「あ、いたいた!先生!」

「おん?」

「システィが先生に聞きたいことがって……」

「ちょ!それは言わない約束じゃ!」

「なーるほどなるほど!しょうがねえなぁ!このグレン=レーダス大先生様が憐れな生徒にご教授してやんよ」

「だからアンタには聞きたくなかったのよ!」

 

 はっはっは!そう照れんなっての!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日

 

「遅刻遅刻~!」

 

 食パンを口に咥えながら女子高生の如く走る。そして、十字路に差し掛かった時

 

「……あん?」

 

 何かがおかしいことに気づいた。すぐに食パンを飲み込み、状況を確認する。

 

「……なんで人っ子一人いないんだ?」

 

 そうして辺りを探っていると、人払いの結界が張られていることに気づく。

 

「……悪戯、にしては質が悪いな。……ナニモンだ?そこにいんのは分かってんぞ」

 

 俺はとある一角を見てそう尋ねる。

 すると、その場所が一瞬歪み、人が現れる。奴が下手人か。今のは光を屈折させて姿を見え失くしたのか。

 

「やりますねぇ。即席の人払いの結界でしたがいやはや、三流の魔術師にしては中々鋭いじゃありませんか」

「どこのどちらさんで?生憎、俺は忙しいんで、手短に済ませてほしいんだが?」

「その必要はありませんよ。あなたの行き先はあの世へ変更されたのですから!」

 

 男が左手を出す。そこには短剣に蛇が絡みつくような紋章があった。

 それを見た瞬間、俺はとっさに懐の『愚者のアルカナ』を取り出す。

 

「《穢れよ・爛れよ・朽ち果てよ》!」

 

 男が三節詠唱で呪文を唱える。

 

「……あ?」

 

 しかし、その魔術は発動しなかった。

 

「なっ!?いったいどうなって……くそっ、もう一度!《穢れよ――」

「急いでるっつってんだよ!」

「げぶぅっ!」

 

 目の前の男を渾身の力でぶん殴る。男は撃たれ弱いのかそれでダウンした。

 

「ったく、まさか『天の智慧研究会』が来るなんて……いや違うな。確か……」

 

 グレンの脳裏に、長く忘れていた原作知識、その一部が蘇ってくる。

 

「……とりあえず、こいつの持ち物チェックと拘束を」

 

 魔術で眠りを深くし、魔術を使えなくした後、ロープを作り出し亀甲縛りにする。

 もちろん全裸に向いた。そういう趣味はないぞ。股間に『極小』と書いた紙を貼り付けたら完了だ。

 

「……出てきたのは、このよくわかんないもんだけか」

 

 ……それにしても

 

「まさか、【愚者の世界】をまた使うことになるとはな」

 

 俺は先ほど使った愚者のアルカナを取り出す。固有魔術(オリジナル)【愚者の世界】、アルカナのカードに変換した魔術式を読み取ることで、自信を中心とした一定効果領域内における魔術起動の完全封殺。

 かつて魔導士時代に猛威を振るった魔術だ。弱点としては自分も魔術を封じられるくらいだ。

 

「ペネトレイターは自宅。となると」

 

 今から取りに戻る時間はない。

 

「……帝国宮廷魔導士団に連絡……無理だろうな。セリカ……魔術学会だ。だが転送方陣で……破壊されてるだろうし」

 

 ……不幸だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私がルミアです」

 

 ルミアが突如、名乗りを上げる。

 今彼女たちは、謎のテロリストに襲撃を受けていた。その者たちは、ルミアを探しているという。出来る限り時間を稼ごうとしたシスティーナが殺されそうになり、彼女は意を決して名乗りを上げた。

 

「君がルミアちゃんなんだ。うん。実は知ってた。ルミアちゃんが名乗り出るまで関係ない奴を殺すゲームしてたんだ」

「ッ!」

 

 ルミアが目の前の男の所業に怒りをあらわにする。だが、彼女には何もできない。彼女に出来ることは、信じて待つことだけだ。

 

「駄目よルミア…」

「大丈夫。きっとグレン先生がみんなを助けてくれるから」

 

 しかし、そんな彼女の希望を断つように、チンピラのような男が言った。

 

「その先生なら、俺たちの仲間がぶっ殺したよ」

「ッ!」

 

 しかし、彼女の眼はいまだにグレンの無事を信じていた。

 そして、その男はやってきた。

 

「人を勝手に殺すんじゃねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学院にやってきて、もう色々めんどくさくなったグレンはさっさと乗り込むことにした。そして、とりあえず生徒の無事の確認のため、自クラスに向かっていたのだが

 

「……あ?なんだお前?」

「なんだかんだと聞かれたら!答えてあげるが世の情け!」

「……うぜぇよ、お前」

 

 すると、チンピラみたいな男はこちらに左手の人差し指を向け

 

「ダメ!先生逃げて!そいつは……!」

「もう遅せぇよ。《ズドン》」

 

 そういって、彼の指から魔術が――

 

「……は?」

「……何をしている?」

「いや、何で……、どうなってやがる⁉《ズドン》――《ズドン》!」

「無駄だ」

 

 俺は『愚者のアルカナ』を見せつけながら言う。

 

「なんだそれ?愚者の……アルカナ?」

「自身を中心とした、一定効果領域内の魔術起動の完全封殺。それが俺の固有魔術【愚者の世界】だ」

「こ、固有魔術だと!テメェ、その域に至ってるってのか⁉レイクの兄貴!」

「ダメだ。こちらも魔術を起動できない」

 

 チンピラのような男が、少し焦るように声を出す。

 しかし、レイクと呼ばれた男は努めて冷静だ。

 

「落ち着けジン。その魔術にも弱点はある」

「ほう」

 

 冷静なレイクの言葉に余裕たっぷりに答える。

 

「弱点?なんだそりゃ?」

「この男は、自身を中心とした一定効果領域内の魔術起動を封殺と言った。つまり、自分自身も魔術の効果を受けるということだ」

「よく分かったな?」

「……それはつまり、あいつも魔術を使えねぇってことか。……ハハハ!なんだそりゃ!魔術師が魔術を封じるとか、何考えてんだよ!」

 

 ジンと呼ばれた男が腹を抱えて笑う。

 

「お前何しに来たんだよ!とっとと――」

 

 ジンの言葉は続かなかった。俺が殴りつけたからだ。顔面を殴りつけ、足を払い態勢を崩させ、壁に投げる。

 

「なッ!帝国式軍隊格闘術だと⁉アレンジが加わっているが、相当の使い手!貴様一体⁉」

 

 そこで初めてレイクが声を荒げる。

 

「グレン=レーダス。非常勤講師だ」

「グレンだと⁉まさか!キャレルが破れたってのか⁉」

 

 立ち上がりながらあり得ないといった様子で叫ぶジン。

 

「ありえねぇ…魔術師の分際で肉弾戦を挑む野郎に……!」

「そんなに魔術以外で倒されたくないのか?だったら仕方ねぇ。しっかり魔術で倒してやるよ。食らいな!これが俺の必殺の超魔術、魔法の鉄拳・ハイパーエキセントリックウルトラグレートギガエクストリームもっかいハイパーすごいパーンチ!」

「ぐはぁ!」

 

 俺はジンに向かって、キック(・ ・ ・)をする。

 

「なげぇし……キックだろう、が!」

「そこらへんが何となく必殺」

 

 意味が分かんねえよ。

 ルミア以外のその場の全員がそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

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