ロクでなしに憑依した   作:山羊次郎

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 基本三話構成でお送りします。



大型コラボ・二話:中盤

 エルレイは受け取ったイチゴタルトを齧ると

 

エルレイ「って、ウマっ……!?……こほん」

 

 イチゴタルトの感想を言ってから、コホンと咳払いをした。

 

エルレイ「いったん、話を整理しよう」

 

フィール「ちゃんと向き合う事が出来たからね。天井代でタルトは差し引きだよ。グレン先生」

 

 壊したのはフィールだが、先生である以上責任は先生が持つものだろう。エルレイはそれを聞くと苦笑いしていた。

 

憑依グレン「いや待て!たかがタルト一個で天井代が賄えるか!くそぅ、また減給じゃねーか……不幸だ」 

 

 タルトを受け取りつつも、膝をついて、血の涙を流すグレン。

 

フィール「冗談ですよ。はい」

 

 切り分けたいちごタルトをグレン先生に渡すフィール。

 

憑依グレン「いや、もうタルトはいいよ。それより、お前、ナニモン?」 

 

 魔術学院の制服を着るフィールに、グレンが改めて問いかけた。

 

フィール「えっと……その、私はフィール。フィール=ウォルフォレンです。帝国宮廷魔導師団執行官No.0《愚者》として存在してます。グレン先生の跡継ぎみたいなものです」

 

 学院の制服を着てるのはルミアの護衛も兼ねているからだ。妙に話しにくい。同じじゃないし違えどグレン先生である事に変わり無いからもどかしい。

 それを聞くとこの場のエルレイを除く全員が反応していた。

 

ユウキ「帝国宮廷魔導師団特務分室の《愚者》……!?イヴ姉からは後釜は入ってないって聞いてたけど……」 

 

 ユウキはフィールの自己紹介に驚愕する。

 

憑依グレン「……俺の跡継ぎ?……こんなガキを雇うとか、軍の人手不足も深刻だなオイ」 

 

 グレンが呆れたように呟いた。

 

エルソー「…グレンの後継ぎ?そんな人いなかったよ?最近入ったの?」 

 

 いちごタルトを美味しいといわれてエルソーはどや顔で立っていたが、フィールの自己紹介に何か考え込む。

 

エルレイ「言っておくけど、この子、とっても優秀」

 

 エルレイは、まるで自分のことのように、ない胸を張った。

 

ユウキ「まぁ、ですよね……何か雰囲気と言うか持ってるものが違うなって感じはしますよ…」 

 

 エルレイの言葉を聞いてユウキはそう言った。

 

憑依グレン「……絶壁だなエルレイ」 

 

 グレンが胸を張ったエルレイを見て呟いた、その瞬間、教室の温度が数度下がった。

 

フィール「ガキって言わない方がいいですよ。それに、エルレイ先生はまだ希望があるんですよグレン先生。それに……」

 

 早撃ち(クイックドロウ)の体制になった瞬間、グレンの顔が強張った。この体制で抜かれたらフィールの方が速い。

 

フィール「ガキで女の子だからって甘く見ない方が身の為ですよ」

 

 グレンは冷や汗を掻いているようだ。

 エルレイ先生に燃料投下したようだ。

 

フィール「多分だけど……エルレイ先生もユウキくんもエルソーくんもグレン先生も私もみんな違う世界……並行世界と言えばいいのかな?そこから呼び寄せられた。私とエルレイ先生はこの現象を知ってるし」

 

エルレイ「…はっ、これだから胸にしか目がいかないものは困る実際問題胸の小さい人のほうがいいことばかりだよ胸が小さいほうが戦うとき邪魔にならないしうつ伏せに寝るのも苦じゃないし何より肩がこることもないそう胸の小さいことは誇るべきことなのだ決して──」

 

憑依グレン「……俺、大きい方が好きだわ」 

 

 もはや病気。どこまでも火に油を注ぎ続けるグレン。

 

エルレイ「《万象に希う・我が腕手に・剛毅なる刃を》」

 

 

 

 ドォォォォォン――ッ!!

 

 

 

 エルレイが詠唱した後、辺り一帯に紫電が走る。

 

 そして、次の瞬間。

 

 エルレイの手にかなり大きな大剣が生成された。

 これは、リィエル=レイフォードの十八番──十字架型の大剣(クロス・クレイモア)である。

 

エルレイ「ぶ っ 殺  す 」

 

憑依グレン「\(^o^)/」 

 

 その瞬間、グレンは脇目もふらず逃走した。

 

 

 

 そして、数十分後。

 全身傷だらけで、ボロボロのグレンと、どこかやり切った表情で、額の汗をぬぐうエルレイが戻ってきた。

 

憑依グレン「……不幸だ」 

 

エルレイ「男はこんなのしかいないの…うんざりだよまったく」

 

 エルレイは大きくため息をついた。

 

ユウキ「……流石にこのグレン先生がヤバすぎるだけだとは思いますけどね……女性の魅力は胸だけじゃないですし…」 

 

 ユウキはエルレイにそう言って宥める。

 

エルレイ「ほんと……いつの世界もイヴの弟だけだよ。私の安らぎ」

 

 そう言って、ユウキに苦笑いを見せた。

 

憑依グレン「……さて、ギャグ時空の力で復活してと。……いい加減、現状の把握がしたいのだが?」 

 

 場をかき乱していた張本人がなんか言ってる。

 

エルレイ「この野郎、もう一回ぼこってやろうか?」

 

 グレンのクソ野郎っぷりに、ぴくぴくと、額に青筋を浮かべるエルレイ。

 

ユウキ「エルレイさん落ち着いて……!そう言えば、フィール…だっけ?並行世界がどうたらって言ってたけどどういうことなのか教えてもらっても良いか?」 

 

 エルレイをどうどうと宥めながら、ユウキはフィールに質問する。

 

憑依グレン「お、おい。待てユウキ。それ以上言うな」 

 

 突如、ユウキとフィールの間に割り込んだグレンが、ユウキの肩を組み、小声で話す。

 

ユウキ「ちょ、何ですか、いきなり……」 

 

 いきなり肩を組まれて困惑するユウキ。

 

憑依グレン「(いいか、あのフィールとか言う奴はな、中二病という病を患っているんだ)」 

 

 グレンが、フィールに憐れむような視線を向けて、ユウキにそういう。

 

ユウキ「(はぁ……中二病、ですか……)」 

 

 ユウキはそう返す。グレンのような憐れむような視線ではなく、この子のどこら辺が?といった感じでユウキはフィールのことを見ていた。

 

憑依グレン「(いきなり並行世界だのと言われて、そんな簡単に信じられるか?無理だろ?つまり、あの子は自分の妄想の世界に囚われている=中二病患者。Q.E.D証明完了だ)」 

 

 グレンの熱弁を、ユウキは何言ってるんだこいつと言った表情で聞き流していた。

 

エルレイ「…………エッちゃん、助けて、憤りで死にそうイチゴタルトあげるから」

 

 エルレイは、なんとなくエルソーを膝にのせて、ため息をついた。

 

エルソー「…えっ…ありがとう」 

 

 今までエルレイの豹変ぶりにフリーズしていたエルソーは、膝に乗せられてようやく復活する。いちごタルトを受け取ってさながら小動物のようにハムハムと食べ始める。

 

ユウキ「(なるほど……)」 

 

 ユウキはグレンの証明を聞いて何言ってんの?と考えながら、フィールにもう一度質問をする。    

 

ユウキ「この人のことは置いておいて……フィールとエルレイさんが俺たちの置かれているこの状況に何か心当たりがあるってことで良いかな?」

 

憑依グレン「全く、中二病すら救おうとするとは、お前は何て優しい奴なんだ……!どこかのクソヒステリック女とは大違いだな。俺は感動した!」 

 

 どうやら、グレンはデリカシーという言葉を失っているようだ。誰か教えてあげて。

 

フィール「グレン先生は薄っすら心が読めるから後でお話しするとして、私とエルレイ先生はこの現象を知ってる」

 

 だが前回は手紙で呼び寄せられた。

 異能か魔術かは不明、解析が出来ない並行世界の転移。知ってる人が知らない。知らない人が存在する。

 

フィール「この場所を調べてみたけど、変な術式があちこちに組み込まれて結界と言うか学院時代が異界化してる。変化無いみたいだけど、グレン先生試しに窓を開けてみて」

 

 フィールがグレンに指示を出す。恐らくだが学院のドアは開ける事は出来ても『外』に通じる窓は……

 

憑依グレン「……ん?窓?……あれ、開かねぇぞ?……なんかの結界で覆われてるのか?ったく、誰だよこんな悪戯した奴」 

 

 グレンがどれだけ力を入れてもあかない窓に愚痴る。

 

エルレイ「……閉じ込められた…か」

 

 エルレイはそう言うとしゃがみこんで、床をトントンと叩き始めた。

 

エルレイ「……」

 

フィール「グレン先生、下がって」

 

 言われてグレンは窓から離れる。

 右手を窓に向けて、詠唱を始める。窓は手動では開かない。なら、魔術ならどうだ。

 

フィール「《吠えよ炎獅子》!」

 

 灼熱の衝撃が窓に激突する。

 しかし、窓は傷一つ付かない。ここが異界として区切られているなら、よほど強い干渉力じゃなければ出られないだろう。多分エルレイ先生でも無理だ。

 

ユウキ「あの威力の【ブレイズ・バースト】で傷一つつかない…か。こりゃ、まためんどくさそうなことになったな……」 

 

 フィールの放った【ブレイズ・バースト】を見てそう呟くユウキ。

 

憑依グレン「……セリカでもいたら楽勝だったかもな。……とりあえず、こいつを試してみるか」 

 

 グレンは懐から【イクスティンクション・レイ】の触媒を取り出し、呪文を唱えようとする。

 

エルレイ「待って」

 

 エルレイは、グレンを即座に止めた。

 

憑依グレン「……何だよエルレイ」 

 

 自身の腕をがっしりと掴むエルレイに、グレンは疑問を投げかける。

 

エルレイ「状況が把握できない、何が起こるかわからない。今後のため、消費量の多い術は、やめておいたほうがいい」

 

 そう言ってエルレイは、もう一度エルソーを膝に乗せた。

 

憑依グレン「……へいへい。そうでしたね。ったく、めんどくせぇ」 

 

 エルレイの言葉にも一理ある。そう思い、グレンは触媒を懐にしまった。

 

エルソー「ん……」 

 

 膝に乗せられたエルソーは今度は自然に受け入れて、また懐からいちごタルトを取り出してエルレイに手渡す。

 

エルレイ「ありがと、お食べ?」

 

 それを受け、一口食べてから、エルソーの口に返そうとし、

 

 ひょい、と。

 

 直前で上にあげる。

 

エルレイ「ろりかわいい、そうだね。そうしよう」

 

ユウキ「とりあえず、フィールが中二病じゃないことが分かったということで……どうしますか?この学院内を探索しますか?」 

 

 ユウキはエルレイにそう提案してみる。

 

憑依グレン「……フィールが中二病の可能性が無くなったわけじゃないが、それが一番だな。さっきはエルレイを巻くのに必死で、ロクに内部の確認をしてなかったしな」 

 

 いつの間にか真面目モードのグレンが、ユウキの提案に賛成する。

 

エルソー「?…学校探索がんばる」 

 

 エルソーもエルレイの膝から降りて学校探索に向けて気合を入れる。

 

フィール「探索には賛成なんだけど。……んー、どうしよう。5人で動くか二手に分かれるか。5人だと時間がかかるし、この異界に長時間居てもどうなるかわからない。けど、敵に襲われる可能性も無くは無いんだよねぇ」

 

 どうするか全員に聞いてみる。

 もし二手に分かれるなら、エルレイとエルソーは絶対くっつきそうだし、多分フィールはユウキと組むだろう。

 グレン先生と共闘は魔術を使う2人とは相性が悪いからエルレイ先生のところに行くだろう。

 

憑依グレン「いや、三つに分かれるぞ。エルレイとエルソー。フィールとユウキ。俺は一人で行く」 

 

 グレンが、突如そんなことを言った。

 

 

 

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