憑依グレン「孫?なんで急に孫の話が出てくるんだよ」
グレンはセリカが言ったという言葉に更に困惑した。
フィール「……………」
確かにセリカ伯母さんならこの異界も辻褄が合うが、全員がここにいるのってもしかしなくても自分のせい?
ミアル「……なるほど」
ロクサス「は?今ので何がわかるし」
ミアル「さあね?」
クスクスと笑うミアルは
ミアル(だめじゃない、ちゃんと会ってあげなきゃ)
こっそりとフィールに囁いた。
憑依グレン「?、動機に関しては意味不明だが、質の悪いことしやがって。一回ド突き回してやろうか?」
グレンがポキポキと拳を鳴らし、額に青筋を浮かべる。
ロクサス「不本意だが、同意だグレン=レーダス」
ポキポキと。ロクサスも指を鳴らす。
フィール「(会いますよ。別世界でもセリカ伯母さんに変わりはないし……でも……)普通、別の世界の住人引っ張り出してまでやるかアルフォネア教授」
フィールはため息をついた。
ミアル「セリカさんならやりかねない…でしょ?」
ミアルもため息をついた。
憑依グレン「ねぇロクサス君。あの二人さっきから何話してるの?あれが女子会ってやつ?」
ロクサス「…多分違うと思うぞ」
フィール「……だからってガチャガチャみたいに当たりが引くまで並行世界から人を引っ張り出しますか全く……」
憑依グレン「まぁとりあえず、セリカにはあとで話を聞くとして、他に何か言ってなかったのかあいつは?ここから出る方法とか」
珍しく真面なことを言ったグレン。普段からその調子でいればなぁ。
ロクサス「とりあえず、このクソ人形を一定数集めれば良いらしいが、それ以上は聞いてねぇ」
ロクサスはセリカの奇天烈な行動に呆れ果てているようだ。
憑依グレン「ふーん。自分の人形を作るとか、ナルシストかよ」
グレンが先の戦闘で地面に落ちたままになっていた人形を拾い上げて呟く。
フィール「いやもしかしたらシスティやルミアさんの人形もあるかも……」
可能性がなくもないからフィールは微妙な顔をしていた。
憑依グレン「……ってことは、ワンチャン俺の人形も……」
グレンは自分そっくりに作られる人形を想像し、吐き気を催した。
フィール「探しましょう。出来るだけ早く」
逆にフィールの人形もあるかもと考えたら何故か恥ずかしくなってきた。
黒歴史になる前に黒魔術で葬る事を計画に、フィール達は次の教室を歩き始めようとしたその時
prrrrr!!
突然、フィールの通信魔導器が鳴り響く。
『戦車、エルレイから愚者フィールへ。今回の主犯が判明。予想以上にアホなことな状況だと発覚、どうぞ』
フィール「こちらフィール。えっと、エルレイの……友達?宿敵?のミアルさんとロクサスさんと合流、事情を聞いたところ此方も犯人が分かりました」
まさか自分のせいで巻き込んだなんて申し訳ないが……
『とりあえずその二人を殺してください話はそれからです』
息継ぎなしのマジトーンである。
フィール「却下です。とりあえず一旦合流しましょう。ミアルさん達とか人形の事とか説明したいので、最初の教室に全員集合しましょう」
色々話す事もあるし、やる事が増えた以上、全員に事情を把握した方がいいだろう。
『了解。情報整理しよう。何だったら合流して胸を貸してあげよっか?』
クスクスとエルレイは笑った。
憑依グレン「で、取り敢えずセリカを締める方法を百通りほど考えたわけだが、何か意見はあるかロクサス君?」
ロクサス「普通の方法じゃ生ぬるい、ここは男をあつめてマワそうぜ」
フィール「やめなさい。作品がR指定になっちゃうじゃない」
憑依グレン「そもそもこんなところに俺たち以外の男がいるわけないだろバカちん」
ロクサス「ちっ。それもそうか」
ミアル「ていうか、未成年がいる前でそういう話は駄目でしょ?」
ミアルは二人の無神経な会話に呆れた。
フィール「とりあえず行きましょう。ミアルさん達もそれでいいですか?妙な真似しなければ何もしませんし」
フィールは一応確認を取るが、ミアルよりも後ろのロクサスの方がヤバい。
何がヤバいかって、
人間に対する嫌悪感も感じ取れるし、別行動より監視した方がいいのも事実だ。
ミアル「妙な真似って…。わたし何かフィールちゃんにしたっけ?」
ロクサス「どうせ、『敵ではない証拠を見せてやらァ!』とか言ってこいつの目の前で死のうとしたんだろ?知らんけど」
憑依グレン「なになに?何の話?」
グレンが聞いていなかったのか、三人に質問する。
まるで娘の話を聞きたがる父親のようだ。
フィール「命を冒涜する行為は嫌い。もう……分かるよね?」
あの頃を知ってるなら変わらない。
ミアルは一度、フィールとエルザの前で死のうとした。《愚者》であった時代でもそれだけは見逃せなかった。
故に言葉はもう要らない。
通じ合っているなら、もう同じ事を二度繰り返さないフィールの覚悟でもあるからだ。
憑依グレン「……怒られてるぞミアル」
ミアル「誰かの為なら自分の命は惜しくない」
ミアルはそう言うとクスリと笑った。
ミアル「『私の本名』を知ってる貴女なら…、私がそう言う人間だって知ってるでしょ?」
その言葉を聞いてフィールはため息をつく。
分かってる、私の知ってる空の巫女もそういう人間だって分かっているから、否定しきる事は出来ない。その自己犠牲にフィールは救われてしまったから。
フィール「………面倒な女だね。貴女は」
ミアル「ふふっ…、褒め言葉と受け取っておくね?」
『さ っ さ と こ い !!!』
ブツッ!
ツー…ツー…ツー…
憑依グレン「……キレてなかった?」
フィール「……嫉妬?」
ロクサス「…わっかんね」
ミアル「あ、あははは…」
フィール達は最初の教室に向かった。
フィール「………」
フィールは無言のままミアル達の前を歩く。その隣にグレンが並んで歩き出す
憑依グレン「よっ」
グレンは彼女の横に並び立ち、足並みをそろえる。
憑依グレン「あの二人のせいですっかり忘れてたぜ。お前の個別指導」
フィール「……
フィールは胸を抑えてグレンから若干距離を取る。
憑依グレン「……はぁ。結局、なんでそんなに余裕がないんだお前」
フィールの態度に呆れつつも、本題を切り出す。
フィール「………先生には、分かりませんよ。ましてや、先生は私の知るグレン=レーダスじゃない」
フィールにとって、グレンは守るべき存在で死なせたくない人間なのだろう。フィール=レーダスは明かさない。
けれど、フィール=ウォルフォレンは嘘で偽って重ねて誤魔化して、その幸せが壊れないようにしている。フィールは世界のバグみたいな存在だ。消える世界、剪定される歴史からやってきた異端者だ。
その気になれば、フィールと言う存在が居るだけで世界を壊しかねない。そう言う人間なのだ。
壊したくないのだ。
戻りたくないと思えてしまうくらい、辛いのだ。いずれ別れは来る。短い命で守りたいものを守ったらフィールは恐らく消えるより辛い現実が待っているのだろう。そう言う対価を払ってこの世界に来たのだ。
憑依グレン「……らしいな。どうやら、俺が思ってたより、お前が抱える事情は深刻らしい」
そう言って、グレンは何度目かのため息をついた。
憑依グレン「じゃあ、お前に言えることは一つだけだな。……いいか?一度しか言わないぞ。グレン先生の有難ーいお言葉だからな」
グレンはいつもの調子になりつつも、フィールに伝えるべきことを伝える。
憑依グレン「……頑張れよ」
そう言って、フィールの頭に手を置く。
憑依グレン「お前はきっと、誰にも出来ないような、凄いことが出来るはずだ。俺はそう思う。だから、やりたいようにやれ。……でも、辛いんだったら、偶には、誰かに吐き出せばいい。なんなら、俺が受け止めてやる」
フィールを真っすぐ見据えて、彼女を応援するグレン。
彼女が何をしようとしているのか分からない。どんな思いでいるのかなんて想像もつかない。だから、今やれることは、彼女の歩みを、《愚者》の歩みを止めぬことだけだ。
フィール「……!」
先生はそれ以上何も聞かなかった。
ただ、それはお母さんと同じ、優しい手つきだった。
フィール「……はい」
ただ胸が暖かくなる。
それだけで、ただ救われるものがあったから。
絶対に死なせない。
元の世界も、この人も、私のお父さんでなくても、グレン=レーダスは、大切な人に変わりないのだから。
――何か為すものとは、歩み続ける愚者である。
たとえ、それが正しい道でなくとも、信じ続ければ、その思いは、きっと報われる。
――何か為すものとは、歩み続ける愚者である。
たとえ、それが正しい道でなくとも、信じ続ければ、その思いは、きっと報われる。
~byグレン=レーダス。
憑依グレン「えっ、アニメでセリカが言ってる?うそ~ん」