ロクでなしに憑依した   作:山羊次郎

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 という訳で第六章。


 ……どういうこと?


遺跡探索編
三十一話:クビの報告は一か月前にするもの


 ある日。グレンは学院長室に呼び出されていた。

 

「グレン君、君クビね」

「…………………………………えっ」

 

 対面するリック学院長が、真顔でグレンにそう言った。

 

「……え、ちょ、待っ、はっ、はぁぁぁぁぁああああああああ――ッ⁉⁉⁉ どういうことですか学院長ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお――ッッ⁉⁉」

「うん、落ち着いて」

 

 グレンがものすごい勢いでリックの肩を揺らして絶叫する。

 

「俺クビになあるようなことは…………た、多分、やって……なぃ、です」

「どうしてそこで自信が無くなっていくのかは、あえて触れないでおこう。……すまんの、先の言葉には少し語弊がある」

「語弊?」

 

 グレンがリックに質問すると

 

「うむ。正確には、このままではクビになるよ、だ」

「……どういうことっすか?」

「全く、お前という奴は」

 

 すると、今までずっと黙っていたセリカが口を挟んだ。

 体中包帯や湿布だらけで、とても痛々しい。どうやら、また地下迷宮で無茶をやったようだ。

 

「グレン、お前、あの魔術論文はなんだ?」

「……は? 魔術論文? あれならちゃんと提出しましたよ俺」

 

 確かに、グレンはちゃんと魔術論文を提出した。魔術論文は、教師を続ける上で、絶対に提出しなければならない、自分の魔術師としての成果だ。

 当然、提出しなければクビになるし、契約書にもそう書いてある。なので、ちゃんと書いて提出した。

 ……したのだが

 

「《ふざけんな・この・馬鹿野郎》ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!」

「ギャアああああああああああああああ―――ッッッ!!!」

 

 セリカの巻き起こした爆風が、グレンを黒焦げにしつつ吹き飛ばす。

 

「ちょ、死ぬ! 今のはやばかった‼」

「うるさい! なんだあの論文は‼ なにが『蛇の生態』だ‼ ふざけてんのか、自由研究じゃないんだぞッッ‼‼」

 

 そう。めんどくさがったグレンは、あろうことか既に知られている蛇の生態を記録し、ある程度纏めて論文として提出したのだ。

 当然、そんなものが通るはずもなく、

 

「危うく本当にクビになるところでの。取りあえずグレン君、君減給だから」

「嘘だそんなことー⁉」

 

 次々減っていく給料に、頭を抱えて叫ぶグレン。

 

「とにかく、もう一度論文を再提出しないと、お前はクビだ!」

「……そう言う訳なんじゃ」

「なるほど、どうやら、俺の論文は、今の魔術世界にはまだ早すぎたようだな」

「遅れてるの次元を超えてるんだよ。もう一度吹き飛ばされたいのか?」

 

 セリカが額に青筋を浮かべて、グレンに向けて左手をかざす。

 

「ひっ、ひぇぇぇぇぇ――ッッ!!! ……と、とにかく、このままじゃやばいから、どうにかしろってことですよね⁉」

「う、うむ。そうじゃ」

「因みに、論文の提出期限はとっくに過ぎてるからな」

「えっ」

 

 グレンは論文を、提出期限ギリギリに提出した。

 当然やり直しの時間などなかったし、そもそもそんな暇すらなかった。

 

「どどど、どうしたらいいっスか⁉」

「落ち着きたまえ。幸い、セリカ君を通せば、遅れていても提出は出来るし、内容次第ではクビも免れる」

「助けてママァぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!」

「どわぁぁぁあああ⁉⁉⁉ こらっ、抱き着くな! 包帯が取れるだろ! 後どさくさに紛れてどこ触ってんだ‼」

 

 散々セリカを堪能した後、ボコボコになりながらも再び学院長の前に立ったグレン。

 

「……ま、冗談はこの辺にして。マジで何とかなりませんかね学院長」

「……その質問は、論文のネタがないから、どうにかしてほしい、ということかね?」

「はい。俺、もう少しだけ教師続けたいんです。……このままじゃこっそり買った複製人形(コピー・ドール)代が――」

「おい、今なんつった」

「あっ」

 

 セリカがかつてないほど恐ろしい顔でグレンを睨む。その瞳が赤く輝き、背後に黒いオーラまで見え始めた。

 その後の展開は割愛する。

 

「さて、話を戻すがグレン君。……君は、本当に悪運が強いの」

「こんな時だけだよ全く……。まさか私の名を使って複製人形(コピー・ドール)なんてものを購入するなんて……とりあえず人形は没収だ」

「そ、そんなぁ……ん? というか学院長」

 

 その二人の言葉を聞き、何故か真っ黒こげになっていたグレンが復活してリックに詰め寄る。

 

「先ほどの言葉は、一体どういう……⁉」

「グレン君、『タウムの天文神殿』を知っているかね?」

 

『タウムの天文神殿』とは、アルザーノ大陸に存在する古代遺跡の一つ。

 なんでも、その『タウムの天文神殿』には、とある魔術師によって古代の時空間転移魔術が存在していると言う説が浮かび上がっていたらしい。

 しかし、その古代遺跡は散々調べつくされたので、そんなものはあるはずがないのだが、その説を提唱した者の名が、『レドルフ=フィーベル』。つまり、システィーナの祖父なのだ。

 レドルフは、第六階梯の魔術師で、近代魔術にも多大の功績を残している。故に、そんな魔術師が出した説を無視するわけにはいかないのだ。

 だが、神殿自体は調べつくされているので、わざわざそんなところに時間をかけていくのは面倒だ、という理由で、今まで放置されていた。

 

「だが、君が行けば、他の魔術師たちも助かるし、君もクビを免れることが出来る」

「なるほど。Win-Winってやつか。……けど、遺跡探索には第三階梯以上の魔術師を雇わなきゃならないしなぁ」

「すまんのぉ。今回は調査予算が降りんからの」

「それもこれも全部こいつの怠慢だ。ザマァ見ろ」

(くそっ、セリカの野郎……! 他人事だと思いやがって……!)

 

 遺跡探索には難易度があり、基本的にはそう言った探索では、第三階梯以上の魔術師で固められる。

 そして、第三階梯以上の魔術師を雇う場合、金銭問題が発生する。そして、予算は下りない。つまり、グレンは自腹で調査員を雇わなければならないのだが……、

 

(……いや、待てよ。別に雇う必要はなくないか?)

 

 この『タウムの天文神殿』だが、この遺跡は、難易度が最低ランクで、学院の授業の演習でも使われない。

 所謂、雑魚遺跡なのだ。ぶっちゃけ、一年次生でも十分問題なく対処できる。

 

(だったら……、俺の生徒たちを言い包めて、なんとかして連れて行こうそうしよう。それなら金銭問題は最小限に抑えられる!)

 

 なにしろ、今のグレンには持ち合わせがない。給料日は来週であり、前回の給料は、ジャティスとの戦いですべて使い切ってしまった。

 因みに、流石に今回は事が事なので、セリカも次の給料日までは食費免除を許してくれた。それ以外は自分持ちだが。

 

「……分かりました。遺跡探索、俺が引き受けます!」

「うむ。任せたぞグレン君」

 

 そう言って、グレンは学院長室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言う訳で、俺のクビを回避するために、お前らの中から遺跡探索の参加者を募ろうと思う!やりたい奴は手を上げ――」

「「「舐めてんのかぁぁぁぁぁああああああ―――ッッッ!!!!」」」

 

 あっけらかんと言ったグレンに、二組の生徒が絶叫するは。

 

「どういうことだよ⁉ アンタ教師の自覚あるのか⁉ なんだよ『蛇の生態』って!」

「全くですわ! 魔術講師の風上にも置けませんの‼」

「うるっせぇなー。他に題材がなかったんだからしょうがねーだろ」

 

 まぁ、例え今回成功したとしても、今後も同じような状況になるとは限らないのだが。

 そのことに気づかないグレンは、実に暢気だ。

 

「まっ、そう言う訳だ。誰か遺跡探索行きたい奴いるかー? ぶっちゃけ、お前らの歳で遺跡探索ってのは、後々いい経験になるはずだぞー」

 

 棒読みでそう言うグレン。どうやら丸め込む気も無くなったようだ。

 

「くそっ、それでも言ってることが正論なのが腹立つ!」

「……全く、相変わらずですね。……しかし、野外の遺跡調査への参加経験は、実戦経験と同じく経歴にハクが付くのも事実。……いいでしょう、先生の進退など大して興味はありませんが、参加してあげますよ」

「……嫌味満点だが、意外だな。まさか一発目がお前だなんて」

 

 いやいやながらも言うギイブルに、グレンが驚きの目を向ける。

 彼の性格からして、本来ならそんな面倒は無視するものだとグレンは思っていた。なにしろ、将来有利になると言っても、『タウムの天文神殿』は最下級の遺跡。ハクが付くというがそこまでだ。

 しかし、ギイブルが優秀なのも事実。グレンは細かい事情など無視し、目の前のチャンスに縋りつく。

 

「じゃあよろしくなギイブル。さて、他にやりたい奴!」

「あっ、先生! 私も協力させてください! もちろんリィエルも、ね?」

「? グレンがクビになるのは悪い事なの? なら行くけど」

 

 ルミアが元気よく手を上げてくれてグレンも嬉しく思うが、リィエルの一言で気分がどん底に落とされた。

 言外に、お前はクビになって当然だろと言われているようなものなのだ。流石のグレンでも傷つく。それが妹分の言葉であるなら尚更。

 

「ちょ、何てこと言うの⁉ ダメだよリィエル⁉」

「?」

「……まっ、まあいい。頼りにしてるぜお前ら?」

「は、はい! ねぇ、リィエル、最近ちょっと口が悪いよ? 一体誰にそんな事教わって――」

 

 リィエルの辛辣な言葉を咎めようとするルミア。しかし、当の本人はなぜ怒られているのか理解できないようだ。

 その後もメンバーを募るグレン。

 

「他にやりたい奴はー?」

「あっ! 先生! 俺も行きます! 遺跡探索とか、そう言う冒険憧れてたんです! なあセシル、お前も行こうぜ⁉」

「そうだね。古代の遺跡は将来、学者を目指す身としても興味があるし。……先生、僕らも参加してもよろしいですか?」

「遊びに行くんじゃねえんだが……良いに決まってるだろ。他には?」

 

 そして、テレサとリンが更に参加表明する。

 

「さて、と。……これ以上はちょっと面倒見切れないな……あと一人行きたい奴ー?」

 

 ビクンッ、と。一瞬、システィーナの肩が震えたことに、グレンは気づかない。

 そして、誰も手を上げなくなったのを確認したグレンは、

 

「……いない、か。……しゃーねー。これで締め切りに――」

「まっ、待ってください!」

 

 集計を終えようとしたグレンに、待ったを掛けたものが一人。システィーナだ。

 

「……わ、私も……行きます」

 

 何故かその声はとてもか細く、顔が真っ赤。緊張しているのかと思ったグレンだが、彼女がこの程度の事でしり込みする性格ではないことを思い出し、その考えを振り払う。

 

「遅くね?」

「……えっ?」

 

 グレンがジト目で呟いた言葉を聞き、システィーナが疑問を浮かべる。

 

「いや、お前魔導考古学目指すくせになんで一発目で参加表明しないんだよ。やる気あんのか?」

「えっ、あっ、いや……」

「ま、お前が参加は最初っから視野に入れてたし、別にいいけどさ」

 

 嘘ではない。魔導考古学がグレンの専門外である以上、誰か相談役が必要だった。システィーナはドハマりするのだ。

 

「……………、」

「なんだよ固まって。……ハッ⁉ さては論文の事で説教を……⁉ ち、違う聞いてくれ! あれには本当に海より深い事情が――‼」

 

 呆然と固まるシスティーナに何故か聞いてもいない言い訳をぺらぺらと捲し立てるグレン。

 それはまるで、浮気現場に直面した妻と、それを誤解だと言い張る夫のようだった……と、それを眺めていた生徒たちは語った。

 

 

 




実はこの章でグレンのある秘密を明らかにします。
正直後付け設定ですのでどっかで詰まったらすみません。

追記:上の説明は無視してください。全部なかったことにします

Re:路線変更する?

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  • 両方やれ。甘えるな
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