ロクでなしに憑依した   作:山羊次郎

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誠に勝手ですが前の三十二話を消させてもらいました。
理由としては、原作知識の復活って要らないよね?という結論に至ったためです。
実際あとあと原作知識が再び失われる展開になる予定があったのでマジ要らないじゃん、
となってので、改訂させていただきました


三十二話・改:改って付けたらなんか凄そうに見える

 遺跡探索へ向かうことが決定して、一週間がたった。

 とりあえず通常の授業を進める傍らに、スケジュール調整や必要物資の手配、ミーティングや野外活動における生存(サバイバル)術の指導など、色んなことをした。

 そして、準備期間はあっという間に過ぎていき――

 

「つっかれたぁ……」

 

 ――自宅のソファに身を投げ出し、乱れた服装を整えもせずだらけるグレン。

 部屋は様々な資料や非常事態に備えての魔道具など、多種多様なものが散らばっていた。

 

「おー、随分と頑張ってるじゃないか」

 

 すると、寝そべるグレンの脇に腰掛け、入れたての紅茶を啜るセリカが、淡い笑みを浮かべて話しかける。

 

「……何の用だよ」

「いやなに、本当に珍しいなと思ってさ。複製人形(コピー・ドール)は没収されたのに、それでも教師続けるために頑張ってるんだから」

 

 確かに、グレンは自分じゃ信用がないからとセリカの名前を使い、分割決済(ローン)複製人形(コピー・ドール)を購入しようとしたし、クビ回避の為の奮闘もそのためだった。

 しかし、報酬(コピー・ドール)が手元に入らないと分かった以上、教師を続けられなくなることは、ニート願望のあるグレンにとっては寧ろ僥倖だろう。

 少なくとも、セリカはそう思っていた。

 

「んー、なんつーかさ。ぶっちゃけこうやってダラダラしててもしょうがないだろ?」

「そのダラダラで一年を浪費した男が言ってもう説得力は皆無だがな」

「うっせ。充電期間だよ。明日から俺は本気出すんだよ。っていうか、お前もう怪我治ったのか?」

 

 先日までセリカは、体のあちこちに包帯を巻き、腕を三角巾で吊るなど、明らかに入院物の重傷を負っていたはずだ。

 だが、今の彼女には傷一つなく、その妖艶な肢体を惜しめなく晒していた。

 

「まぁな。治癒限界を抜けたんだ、あとは自分でどうにかできるさ」

「……そーかい」

「なんだ? 心配してるのか? 可愛い奴め」

「違ぇよ。お前がいなくなったら今後お前の名前使って買い物できねえだろーが」

「そこで平気で私の名を使おうとする辺り、何も成長してないなホント」

 

 セリカが呆れたようにため息をつき、グレンが二ヒヒと笑った。

 すると、手に持っていたカップを置き、改まってセリカが言った。

 

「……今回の『タウムの天文神殿』の調査なんだが……」

「ん?」

「私もついて言ってもいいか?」

「……は?」

 

 思わぬセリフが飛び出してきて、グレンが硬直する。

 

「……おいおい、どんだけ過保護なんだよ。あの神殿は難易度Fだぞ? 最低ランクだぞ? いくら俺でも余裕だって」

「……そうじゃない。……そうじゃなくてな……あそこには、何かがあると思うんだ」

「…………はぁ。まあ、今更一人や二人増えたところでどうってことねーし、ぶっちゃけお前の実力ならむしろ頭下げて頼むレベルだし? ま、心の広ーいグレン先生に感謝するんだな!」

「ハハッ、調子に乗るなよ? 私は別に、お前が勝手に私の名前を使ってることを、許したわけじゃないんだぞ?」

「すいませんでした」

 

 ゴゴゴと音が聞こえてきそうな漆黒のオーラを纏ったセリカを前に、グレンが神速で土下座をした。

 そんなこんなで、彼らの一日は過ぎていき……。

 

「フルハウスッ!」

「あらあら、残念。フォーカードです。また私の勝ちですね」

「いやおかしいだろ⁉」

 

 当日。

 いきなりセリカが付いてきた事に驚いて委縮していた生徒たちも、今ではすっかり打ち解けていた。

 学院の教授みたく堅物ではなく、気さくな性格のセリカとは打ち解けやすかったのだろう。

 そして馬車に乗り移動を開始した最中、グレンは生徒たちとポーカーを始めたのだが、見事に惨敗していた……テレサに。

 ポーカーには他にも、カッシュとギイブルなどの生徒が参加していたが、彼らもものの見事にテレサに搾り取られていた。

 さしものグレンも、カッシュたちには勝てるのだ。なにしろ、グレンは平気な顔でイカサマをしているから。むしろそれで負けたら恥ずかしい。

 

「ハハハハハッッ!」

 

 グレンの後ろでずっと彼の敗北を見て爆笑するセリカに、グレンの怒りボルテージがどんどん上がっていくが、ここで焦ってはいけないと落ち着く。

 ポーカーは心理戦。尤も、イカサマをしている時点で心理もクソもないのだが、当の本人はお構いなしだ。

 

(クソ、何で勝てないんだ⁉ 幾らなんでもおかしいだろ⁉ こうなったら……!)

「おやおや~? グレンはもう月が回ってないのかなぁ~?」

「うるっせぇセリカ! こっから巻き返すんだよ! 見てろ俺の超ファインプレー!」

 

 今度の勝負はグレンが親となったので、全員にカードを配る。勿論イカサマ付きだ。

 今回の手口は……、なんと、全員にフォーカードとフルハウス、フラッシュをそれぞれに配るというとんでもない手に出た。

 そして、グレンは自分の手元に来たストレートフラッシュのカードを見てニヤリと笑う。

 グレンは他のみんながそれぞれ、価値を確信した表情でコール、レイズしていく様を見て内心ほくそ笑んだ……その時。

 

「……あら?」

 

 テレサが突如、手を止めた。

 グレンが彼女に渡したのはフォーカード。普通に考えれば強い手だ。

 先程もそれで彼女は勝利を掴んでいるから、これを出せば迷わず彼女は山札からドローせず勝負に出ると思ったので、グレンは彼女にフォーカードを渡したのだが……。

 

「……、」

(ハァ⁉ 捨てた⁉ 全部捨てた⁉ 嘘だろおい!)

 

 一切の躊躇もなく手札を捨て、山札から新たに五枚のカードをめくるテレサに、冷や汗を滝のように流して戦々恐々とするグレン。

 もう完全に嫌な予感しかしないが、グレンには既に後がない。ここまでイカサマ尽くしで手を尽くして勝負から身を引くなど、あってはならないのだ。

 故に、グレンはレイズする。

 そして―――

 

「ふふふ。ロイヤルストレートフラッシュです」

「おかしいだろぉぉぉぉぉおおおおおおおおーーッ⁉」

「アハハハハッ!」

 

 またもや惨敗。

 背後で馬鹿笑いを上げるセリカが恨めしく思えてくるグレンだった。

 そんなこんなで、グレンたちがはしゃいでいると、目的地である『タウムの天文神殿』へと到着した。

 今にも死にそうな表情をしたグレンは、両頬をばちっ、と叩き、締まりを付ける。

 

「はぁ……よし、切り替えて切り替えて……お前ら、さっさと準備しろー。俺はそれまで休憩を……」

「《アンタも・ちゃんと・働け》ぇぇえええええええッッッ!」

「ギャァァァァアアアアアアッッッ!」

 

 システィーナの即興改変の【ゲイル・ブロウ】によって、突風が吹き荒れいつもの様に星にされるグレンなのだった。

 

 




因みに作者はポーカー初心者というかルールすら知りませんでした。
次から遺跡探索です。あと、セリカは御者じゃないので正規のルートで遺跡に向かってます。
なのでシャドウウルフは全カットです
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