ロクでなしに憑依した   作:山羊次郎

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明けましておめでとうございます!
新年ということでちょっと書き方変えます。
気分屋ですみません……


三十三話:幽霊じゃない、名無しだ(?)

 

 翌日。

 我らグレン大先生御一行は『タウムの天文神殿』へと足を踏み入れた。

 神殿の壁には『霊素皮膜処理《エテリオ・コーティング》』というあらゆる物理的、魔術的破壊を無効化する古代魔術(エインシャント)が施されているので、リィエルには外で先に剣を錬成させた。

 神殿内部には外の光が届かないので、【トーチ・ライト】の明かりを灯す。

 そんな俺たちは、神殿の住人にて熱い歓迎を受けていた。

 

『『キエエエエエエエエエエエエエエ―――ッッッ‼‼‼』』

「嫌ぁぁぁぁアアアアアアア‼‼」

「ちょ、邪魔です先生! 何やってるんですか早くこっちに‼」

 

 古代遺跡には狂霊などの霊的存在が多い。

 そして、それらの存在には三属性魔術が効きにくいのだ。有効なのはもっと直接的な魔力攻撃。

 勿論、俺には使えない。いや、使えるけど威力はクソなだけだ。

 速足で神殿の奥に向かおうとしていたら、バッタリ狂霊に鉢合わせてしまったので、【ウェポン・エンチャント】拳を覆い迎え撃ったが、パンチは飛んで躱された。

 攻撃が届かないとどうしようもないので、無様に泣き叫びながら俺は逃げ惑っているという訳だ。

 

「まったく……《魔弾よ(アインツ)》《続く第二射(ツヴァイ)》《更なる第三射(ドライ)》‼‼‼」

 

 システィーナの放った黒魔【マジック・バレット】の連唱(ラピッド・ファイア)により、俺の後ろの狂霊が滅する。

 それを境に、狂乱が始まった。

 

「あわわわわ……! え、えぇっと……ま、《魔弾よ――」

「や、やべぇって……!」

 

 突然の事態にシスティーナ以外の生徒は動揺してまともに呪文を唱えられずにいる。

 クソッ、ここは俺が……!

 

「待て待て待て。お前は出るなよグレン」

「なっ、セリカお前……!」

 

 咄嗟に前に出ようとした俺を、セリカが肩を掴んで止めた。

 

「過保護になるな。見ていろ、お前の生徒を」

「ンなこと言ったって……えっ」

 

 再び戦況を見ると、目を逸らす前とは一変していた。

 

「うぉぉぉッ! 《我は射手・原初の力よ――」

 

 システィーナの奮闘に勇気を灯したのか、怯えていた生徒も冷静に各々の判断で魔術を行使していた。

 魔術は精神状態でも左右される。狂霊を打ち倒せるほどには、冷静になっているということだろう。

 

「いいいいいいいいいいいいいいやああああああああああああああああ――――ッッッ‼‼‼」

 

 脳筋娘ことリィエルさんが【ウェポン・エンチャント】を付与した大剣で狂霊を滅多切りにし、さらに奥からやってくる群れに突貫する。

 アイツ完全に俺の上位互換だな……。

 

「ほらな。心配することなんかないって」

「あ、ちょ、カッシュおい撃ち漏らしが……おっ、いいぞリン、ナイスフォローだ!」

「……はぁ……」

 

 何故かセリカが呆れたようなため息をついているが関係ない。

 というか、こいつら危なっかしすぎてハラハラする。こんな体験もう要らない。

 もし今後同じようなことがあっても生徒は使わないでおこう。俺は密かにそう思った。

 

「……ふぅ、とりあえず片付いたか」

「過保護すぎるのも考え物だぞ、グレン」

「いやでもあいつ等危なっかしいし……って⁉」

 

 ようやく一息つけると思ったら、奥からまたしても団体様がお出まししてきた。

 生徒たちは自信がついているのか、誰が多く撃ち落とせるか競おうとしている……だが、あの数は不味い。

 少なくとも無傷では終われないだろう。

 

「ふむ。そろそろ行くとするか」

 

 すると、背後で控えていたセリカがそう言って生徒たちの前に出た。

 そして次の瞬間、セリカの指パッチンとともに彼女の周囲に大量の魔力弾が発生し、奥の狂霊を殲滅した。

 あまりにもあっさりとフルボッコにするので、システィーナは呆れ、他の生徒は唖然としていた。

 

 閑話休題。

 

 そんなこんなで、俺達は奥へと進んでいた。

 偶に狂霊が湧くが、生徒たちは怯えるどころかむしろ好戦的に倒していくので徐々に不安は消えていった。

 だが、明らかにこれはFランクの古代遺跡の難易度ではない。恐らく、今まで誰も探索をしてこなかったから、逆に狂霊が湧きやすくなったのだろう。

 今回の大掃除で数は減るだろうが、少なくとも危険度は幾らか上がるだろう。どうでもいいけど。

 

「おっ、確かこの辺りが目的地……だよな?」

「はい、そうです……このまま進めば第一祭儀場です」

「……よし。俺が先に中を確認する。セリカ、こいつら頼むぞ」

「ほぅ、生徒の為に体を張るとは……存外、様になってるじゃないか」

「うっせ、ほっとけ」

 

 悪態をつきながら、俺は第一祭儀場へと足を踏み入れる。

 ドーム状の高い天井を持つ大部屋だ。壁と床、天井には占星術でいうホロスコープにも似た奇妙な文様が彫り込まれており、横道や白道、太陽や月、惑星、星々などを意味する意匠や石像が散見される。

 ……学者っぽい感じで感想述べてみたけど、似合わねえな。

 部屋の中央にある石を複雑に積んで組まれている奇妙な祭壇を見る。正確には、その頂点にある、双子の天使向かい合って絡み合うような石造を。

 

「天空の双生児(タウム)ねぇ……大昔の連中の考えはイマイチわかんねぇな」

 

 天空の双生児は空の象徴だ。つまり、彼らは空を恐れ敬っていたということになる。

 確かに、空と言うのは人間にとってはある種の天敵だろう。だが、それほどまでに恐れることだろうか。

 

「とりあえず、部屋を確認っと」

 

 目的を思い出し、俺は大部屋を見て回る。

 特に危険な罠があるわけでもない。狂霊も沸いているという訳ではない。

 この部屋は安全だ。それを確認し、俺は外に出ようと――

 

「……あり得ない……」

 

 ぼそりと呟き、肩越しに振り返る。

 全身から嫌な汗が噴き出て止まらない。

 

「……誰だ、テメェ……」

 

 ――いた。

 色素が抜け落ちたかのように白い髪、暗く淀んだ赤珊瑚色の瞳に際どく薄い衣装を纏う少女。

 背中からは異形の翼が生え、混沌とする姿はまるで悪魔だ。

 だが、その異様な出で立ちすら霞むモノが一つ……。

 

『久しぶりね、グレン。いえ、この場合は初めましてかしら? ああいや、もっと前にも……まあ、そっちは別にいいわね』

 

 途端、ズキンッという痛みが、俺の頭を襲った。

 少女は薄い笑みを浮かべ、石造に下に座してジッとこちらを見ている。

 

「……何の、話だ……?」

『覚えてなくていいわ。それが正しいの』

 

 俺は咄嗟に後退する。

 そして腰にある拳銃を取り出し、銃口を向けるが……。

 

「は……?」

 

 ――いない。

 何の予兆もなく、忽然と少女は消えていた。

 先程まで石造の下に座していたはずの少女は、幻だったのだろうか。

 

「グレン!」

「セリカ……?」

 

 何故か、セリカが勝手に部屋に入ってきた。

 

「どうしたんだ……ずいぶん時間が掛かっているから心配したぞ?」

「……なあ、お前、索敵結界は張ってるよな?」

「? ああ、それがどうかしたか?」

「なんか……反応あったか?」

 

 俺が震える心を抑え、努めて冷静に問いかける。

 だが、セリカは俺の問いに、否と答えた。

 反応はなかった。この部屋には俺以外に誰もおらず、すべては俺の妄想だった……?

 

(……あいつらを変に心配させるわけにはいかねえか……)

「おい、本当に大丈夫なのかお前?」

「……ああ、でも、ちょっと疲れてるっぽいわ」

「おいおい、しっかりしろよ。生徒に心配かけさせちゃだめだろうが」

 

 ホッと胸を撫で下ろし、安心したように言うセリカに心を痛めるが、何とか割り切る。

 そして、生徒たちを部屋に招き入れ、作業を開始した。

 

 




どんな風にしたか覚えてないから過去の話見て悶絶した。
私ってこんなに文才ないんですね……。
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