今回は前回より少し進んだ時系列だったり…?
まあでもあんまり関係ない()
「ふあああああっ……眠いわねぇ……」
美食殿のギルドハウスではキャルがソファに寝そべり、ファッションの本を見つつあくびをしていた。
ペコリーヌ、オルガはお店の手伝いに、ユウキとコッコロは店に買い出しに行っており、不在である。
そして三日月はというと―――
「……」
テーブルのほうの椅子に座り、分厚そうな本をペラペラめくりつつ見ている。
表紙には「農業のすべて」と書かれてあった。
「………」
(まさかこいつと一緒にお留守番なんてね……)
キャルは本を読むふりをしつつ、三日月のほうを見る。
かなり真剣に本を読んでいるようだ。
(あいつ…戦いも物凄く強いけど、こういう趣味もあるのね……でも、あんまり喋らないから詳しくわかんないのよね……。でも一応陛下に報告しないといけないから何か知っておかないと……戦いに強いってだけじゃ情報不足だし)
キャルは読んでた本を横に置き、ソファから立ち上がり、三日月のほうに近づく。
「…何?」
三日月は本を読みつつも、キャルがこちらに目線を向けてきたことに気づき、彼女に問いかける。
(反応早いわね!?私まだ何も喋りかけてないのに……)
「べ、別に…ミカ、あんたやけに分厚い本を読んでると思って」
「これ?農業の本だよ」
「農業の…あんたペコリーヌみたいにいつかは農業やりたいわけ?手伝いやってたとき、やけに積極的とは思ったけど」
「うん、いつかは農場を作りたいと思って。前からそういうのは考えてたけど、色々とあってできなかったし」
「ふーん……それがあんたの夢なわけ?」
「まあね。道のりは険しそうだけど……読む?」
「わ、あたしは良いわよ。そもそも肉体労働苦手だし」
「なら良いけど」
そうするとミカは再び本の方を読み始める。
(会話が続かないわね……やっぱりこういうの苦手……)
暫く沈黙が続いたが――
「ねえ。キャル」
「にゃ!?」
急にミカに声かけられたことにより、驚くキャル。
「きゅ、急に話しかけんなー!ぶっころすわよ!?」
「…なんかごめん」
「はぁ……」
(ホントこいつのペースはわかんないわね……マイペースって言うのかしら?)
「で、何?」
「いや、キャルにはなんか夢はあるの?」
「夢?」
キャルはそう聞かれると少し考え始める。
(夢なんて……私は陛下に仕えて褒めてもらえるだけでいい。褒められれば……)
「別にないわよ。こうやってゴロゴロできればいいし」
本音は言えるはずもなくとりあえず適当なことを話すキャル。
「ふーん。そっか………」
ミカはそれを聞いた後、再びモクモクと本を読み続ける。
何やらメモもしているようだ。
「本当に熱心ね……」
「ねえ、ここらへんの森とかって開拓していいのかな」
「そんなの…管理協会のあいつに聞かないとわかんないけど、家庭菜園とかそういうのなら良いんじゃないの?つかあんた、開拓なんてできるの?」
「うん。バルバトス使えばいいし」
(ああ、そういえばそんなのあったわね……ミカが持つ装着魔法…って言って良いのかしら?でもあの感じ、間違いなく悪魔よ……しかも結構ヤバイの)
キャルはバルバトスに対して恐れても警戒しても居た。
彼のバルバトスの力が仮に陛下に牙を向けば、いくら陛下と言えどひとたまりもないとキャルは考えていたからだ。
(もっともっと監視しないと……)
キャルはそうやってバレないように色々とミカのことを見ているのだが――
(また見てる……どうしたのかな?)
ミカはその目にとっくのとうに気づいているのは言うまでもない。
次回はちっと特殊な回です。
ただ特殊と言っておきます。