プリンにしてやるの!!
俺はコッコロとユウキと一緒にコカトリス亭のマスターにお土産を持っていこうとしていた。
ちなみにペコリーヌとミカは市場に買い出しに行き、キャルは留守番をしている。
「喜んでいただけると良いのですが…」
「ネ!」
「ああ、そうだな」
そうしてコカトリス亭の前に来たのだが、珍しく店が閉まっていた。
「休みか?」
「おかしいでございますね…休業日は暫く無いと仰られていたはずなのですが…あ、扉は開いておられますね」
そしてコッコロはその扉を開ける。
「こんにちわ……きゅ!?」
その目線の先には何かをするマスターを止めるイカッチとチャーリーの姿があった。
「どうしちまったんだよマスター!!」
「もっと腹に溜まるもん作ってくれよ!!虫料理とかさ!」
「プリンプリンプリン…」
マスターは何かをボソボソと永遠に繰り返しながら呟いている。
何があったんだ…?
「顔色わるいね」
「おお!3人とも良いところに!あんちゃん達もマスターになんとか言ってくれよ!」
「ずっと寝ないでプリン作ってんだ!このままじゃ倒れちまうよぉぉぉ!」
2人の言う通り、マスターは何かがおかしい。
まるで何かに震えているかのように…。
どこかの教徒に延々と洗剤を売りつけられたような…いや、それ以上のなにかに見える。
「少しお休みになられた方が…」
コッコロがそう言うものの
「うわああああああああ!ううううっ!プリン!プリン!!!止めるな…止めるんじゃねえ…!」
止まるんじゃねえぞ…と言える雰囲気でもない。
一体何があったんだ…?
するとユウキが周りを気にする。
「うー……」
「主さま?」
「どうしたユウキ?」
「なんかいるよ!」
ユウキが上に指を差すが誰も居ない。
「なにもいませんが…?」
「何も居ねえぞ?」
その時、入口の方から誰かが入ってくる。
「あなた、見えるんですね…そこにいるものが」
「あなたは…」
紫髪のショートであり、角がついている。
魔族のようなやつか…?
「この街で占いをしているシノブと言います。噂でマスターが取り憑かれたようにプリンを作っている聞いたので…来てみたのですが」
その通りに後ろではマスターが未だにプリンを作っている。
「思わぬ出会いがありました」
シノブはユウキを見てそう呟いている。
「一体…どういうことなのでしょう…」
「ミヤコさん。この方、もしかしたら私達の救世主になるやもしれません」
「「「ミヤコ…?」」」
「なんだそりゃ…?」
一同が首を傾げると空中から何かが現れた。
「そんなことよりプリンよこすの!!むぅ…!」
だぼだぼの服を着ている少女…が空中で浮かんでいる。
つまりこいつは…。
「こ、これは…」
「こいつは…!」
「「幽霊!?」」
言うまでもなく俺たちは驚いた。
―――――
そしてそのマスターが死にものぐるい?で作ったプリンを食するミヤコという幽霊。
「おいしいのー!」
「プリンは温度が命…プリンは温度が命…」
「虫をデコレートしたプリンを作ったときは呪い殺そうかと思ったけど…毎晩毎晩プリンを作るように囁き続けてせいかいだったの」
囁くというか…呪いとなっちまってるんじゃねえか…?
「駄目ですよミヤコさん。カジュアルな感じで人に取り付いては…」
「はいはいなの」
シノブの注意も聞き流すミヤコ。
「シノブ様…とお呼びしてもよろしいでしょうか?こちらの方は…」
「ちょっとプリンに並々ならぬ執着心がありますが…本物の幽霊です」
「本物か…」
俺はそいつをまじまじと見る。
幽霊つかそういう系はあんま見たことねえんだがな……。
悪霊はあるが。
「むうっ、なんなの?このプリンはミヤコのモノなの。誰にもあげないのーっ」
…幽霊というか駄女神に近いんじゃねえのか?こいつ。
「幽霊とはこんなにも可愛らしい存在だったのですね…」
「その幽霊を感じ取れたユウキさんの力を見込んで…お願いがあるのですが」
「?」
ユウキは人畜無害に返事をする。
「私達、
――――――――――
一方のペコリーヌと三日月は市場を見ていた。
三日月が荷物持ちみたいなものであるが、ペコリーヌが買っている食材等を持っても特に苦は感じない。
相応に鍛えているというのもあるか、だが流石に明弘には負けているが。
「あんまり見たことなかったけど、いっぱい店があるね」
「はい!王都ランドソルは交通の便もあって各方面からの品物が集まりやすいのでこうして巨大な市場になっているんですよ」
「へー」
だが耳を傾けると少し不穏な会話がある。
「また劇場が取り壊されてしまったよ!ユースティアナ様のお触れだと…」
「庶民の娯楽なのになんだかねえ…」
それを見てペコリーヌはどこか悲しそうだ。
「…」
(ふーん…)
そして三日月はヤシをかじっていると…。
「ペコ姉さん、三日月のあんちゃん」
「チャーリーさんにイカッチさん…それにマスターまで!珍しいですね」
いつもの2人が話しかけてきた。
その2人はどうやらマスターを連れて飲んでいるようだ。
「いやぁ、今日は大変だったんですよ。マスターが幽霊に取り憑かれて」
「幽霊?」
「なにそれ」
「でもご心配なく、ユウキのあんちゃんのお陰でお祓いできて」
チャーリーがマスターの肩に手を乗せる。
治っていない気がするが…。
「ユウキ君が?」
「あいつが?」
いつのまにと思う2人。
「なんで、快気祝いで飲んでるってわけですわ。ガハハハ!」
その時。
「ぎええええええ!」
チャーリーの悲鳴?と同時にイカッチの後ろからフライパンで大きくぶん殴られる。
「昼間っからなに飲んだくれてんだい!この兵六玉が!!バカにタダ飯食わせる余裕なんかないよ!!たく、お前より居候のあいつのほうが上手く働いてるっての…」
その後ろには妙齢のバ…おばさんがいた。
「す、すまねえ。ママ」
「ママ!?」
どうやらその人はイカッチの母親のようである。
――――――――――
その後、イカッチは顔にたんこぶができるほど殴られ、店に立たされていた。
チャーリーも巻き添えを食らった。
「あんたがペコリーヌさんと三日月さんかい?バカ息子から話は聞いてるよ。色々助けてもらっているみたいだね。ありがとう」
「え、へへっ…」
「まあ…」
三日月と言えど、イカッチ達の最初のことを話すほど空気が読めていないわけじゃないので言わないようだ。
その時…。
「オラオラどけどけ!5代目流星号のお通りだ!」
そう言いながらピンク色の荷車を人力で引っ張ってくる青年がいた。
「ふぅ…終わったぜ!今日の配達」
「ご苦労さん!うちのバカ息子の代わりにすまないねえ」
「良いってことよ!ちょうどいい運動になるしよ!」
その声…その外見はまさしく鉄華団のノルバ・シノである。
「シノ…?」
「お、三日月じゃねえか!」
シノが三日月のことを認識すると駆け寄る。
「なんだよ、お前もここに来てたんじゃねえか」
「うん、今は居ないけどオルガもいるよ」
「だろうな。お前とオルガはセットだからな!」
「あの…知り合いですか?」
「おう、俺は…って…!」
シノはそのペコリーヌに目を奪われた。
そうシノが生前?より望んでいたでけえおっぱいだからである。
するとシノは三日月を引っ張り、内緒話をするかのように近づいて話し始める。
「なあ、あいつって…」
「ペコリーヌ。俺とオルガが今いるギルドのギルドマスター」
「いや、それも…だがなんであんなでっけえおっぱいなんだよ!」
「知らない」
三日月はユージン等とは違いこういうのには全く乗らない。
「つれねえなぁ三日月」
「だいたいそのでけえおっぱいはあのひともだよね」
ヤスコのことを見る。
ちなみにヤスコはペコリーヌとなにか話しているようだ。
世間話だろうか?
「三日月…若さって知ってるか?」
「でも大きいよね?」
「はあっ…まあいいや。ところで団長は?」
「今は別行動。あとギルドにはコッコロとキャルとユウキがいる」
「へえ、中々のギルドってやつなのか?あんまわかんねえが」
「シノこそ、なんであそこの家にいるの?」
「いやぁ…この世界に来た時に行き倒れちまって…それであのヤスコさんに飯の恩ができたんで…それでな」
だいぶ違和感が拭えないものではあるが、本来タメ口なシノは珍しくヤスコにはさん付けしている。
どうやら相当言われたらしい。
「ふーん、明弘と似た感じだね」
「明弘もいんのか?」
「うん。サレンディア救護院で働いてる」
「へえ……ちなみにそれ以外はいねえのか?」
「まだわからない」
「ま、これだけ団長と三日月が転生してるようならそりゃ俺達も引っ張られるだろうよ」
「…なんかごめん」
オルガ、三日月が転生すると同時に同じく死んだ面々はたまに同一世界に転生していることがある。
それに関しては完全なランダムであり、中には死んでいないはずの面々が現れることもある。
この現象に関しては最初に撃ち殺して復活しているあの世界神にもよくわかっていないものらしい。
「気にすんなって。だいたい地味に天とやらでくすぶってるような俺達なんかじゃねえだろ?そして俺も
来たってことはなんかでけえ山があるに違いねえ!だろ?三日月」
「デカい山…か……ま、わかんないけど、ちょっと怪しいところはある」
言い表せないが三日月はいわばニュータイプのような勘の鋭さを持っている。もちろんよく当たる。
「だろ?その時になったら俺はまた四代目流星号で活躍してやるぜ!」
「助かるよ。シノ」
相変わらずのシノの様子に少し笑みが溢れる三日月であった。
――――――――
その後、ペコリーヌはお手伝いのお礼をもらい、三日月とともにギルドハウスへと帰還するのだが…。
「なにこれ」
その帰った先ではなんと自分の仲間達がプリンにされてしまっていた。
「いやああああ食べないでえええええ!」
「ええ!?皆どうしちゃったんですか!」
「おかえりなさいませ…ペコリーヌ様、三日月様。これには色々とわけが…」
どう考えても一言では説明しきれないもので間違いはない。
そして三日月といえど流石に思考が間に合わない。
「だからなにこれ」
「止まるんじゃねえぞ……」
言うまでもなくオルガもプリンである。
「お邪魔してます…」
「誰なの?プリン食べるの邪魔するならお前もプリンにしちゃうの」
言うまでもなくミヤコの仕業である。
「あなたが皆をプリンに…?」
「こいつらがいつまで経っても美味しいプリンを作らないからの…」
その言動に三日月はどこかデジャヴを覚えた。
「ねえ、あんたって知り合いに駄目な女神とか居るの?」
「女神ィ?そんなことはどうでもいいの!早くプリンをよこすの。じゃないとお前もプリンにするの!」
三日月の問いに答えになってないものを返すミヤコ。
そのため三日月は更に思考が追いつかなくなる。
(だからなんでプリン?)
「ま、待ってください!私が美味しいプリン作りますから、皆をもとに戻してくれませんか?」
「嫌なの。今日は散々待ったの」
ミヤコは自分勝手すぎるのであった。
余計にどこかの狂信者が信仰している神様を思い出す三日月。
そしてペコリーヌは少し汗をかきつつも表向きは自信満々にこう提案する。
「期待してください。食べたこと無い美味しいプリンですから」
「ゴクン…ほ、本当なの?」
「もちろんです」
その夜。
「完成です!」
ミヤコの前に出されたのはいわゆるプリンアラモードであった。
いつものプリンよりは豪勢な代物であり、こころなしか輝いているように見える。
「ほわぁぁぁっ」
「美食殿特製、なめらかプリンです!」
「いただきますなの」
ミヤコはスプーンを使い、プリンを取る。
そのプリンは文字通りなめらかに揺らいだ。
「ほぉぉぉっ…」
「このプリンの滑らかさを出すには湯煎の温度が鍵なのです」
「湯煎の温度でこんなに違いが…」
「さあ、召し上がれ☆」
ミヤコはそのプリンを口へ運んだ。
「はあっ…はむっ…むっ!」
そしてミヤコは文字通り飛び上がる。
「超美味しいプリンなの~!こんな滑らかで~コクがあって~…幸せでほっぺがとろけそうなの~」
文字通り昇天しかけている。
それと同時に3人は元に戻った。
「ようやく…ようやく巡り会えたの…ミヤコのプリン……」
「ついに見つかったのですね…理想のプリンが……これで心置きなく成仏できますね」
シノブは涙ぐみながらも手を合わせている。
それに合わせてキャルとコッコロは手を合わせる。
三日月とユウキはそんな様子をただただ眺めていた。
だがうまい話には必ず裏がある。
「ふぅ…よかった。ヤスコさんからもらったお土産が早速役に立ちましたね」
そのペコリーヌが手に持っていたのは…セミである。
一応補足するとセミは食べることが可能であり、味はナッツに近い。
入れることも一応…可能なのかもしれない。
当然それを見たミヤコは昇天途中で大幅に口から虹色のあれを放出してしまった。
「ごばあっ……ぐっ…」
そしてそのまま地面に落ちた
ある意味退治完了である。
「…お騒がせしました」
シノブがミヤコを文字通り担いでいる。
「「ど、どういたしまして……」」
「では…」
そのままシノブはその場を後にした。
「また遊びに来てくださいね☆」
ある意味波乱な出来事は終わりを告げた。
ただ一つを除いては……。
「…そういえば…オルガ様は…?」
「…オルガ?」
その月夜には何かを指差すような手が浮かび上がったように見える。
そしてこうも言っているようであった。
『だからよ…止まるんじゃねえぞ……』
間に合わせるためにバッサリカットしすぎた気がする…。
どこかで補完するのでゆるして