A 最後の追い上げ
姉と妹??
まるで宝石のように輝く空間。この世のものではないように見える。
そこの中心には4人が居た。
「もう随分と動き出しているようだ」
「ああ、懸念された出来事が起きようとしている」
メガネを掛け、赤髪をまとめている女性と謎の仮面をしているマク…モンタークはそう2人に伝えている。
「それって…」
「まあ…時は有限。敵もそうノンビリと待ってはくれないってことだね」
「そのようだ。そこで君たち…シズルとリノに行ってもらいたい」
そしてその内容を説明した後、女性が何かしらのゲートを開き、その2人をどこかへと転送する。
「…頼んだよ」
――――――――
一方の美食殿は朝からペコリーヌがオーバーなことをしたせいでキャルのお気に入りのぬいぐるみがぶっ壊されてしまった。
そして朝食の時間であるのだが。
「いい加減にして!あんたもうちょっと人のパーソナルスペースに気を使いなさい…はむ…」
「ぱはふぉなふ?なんですか?それ、美味しそうですね☆」
「食べもんじゃないわよ!」
「人との距離感…でしょうか?」
コッコロはそれに補足をする。
ユウキはいつもどおりもぐもぐと食べており、オルガと三日月も変わらず普通に食べている。
「…ごめんなさい。気をつけますね」
「ほんとにわかってんの~?それはそうと、アタシの大事なぬいぐるみどうしてくれんの!」
「もげもげ~」
ユウキの言う通り首がもげて、中の綿が出てしまっている。
「あの、もしよろしければわたくしが…」
「直せるの?」
「田舎ではよく針仕事をしていましたので…」
「さすがコッコロちゃん!」
「針仕事まで…すげえよ…コッコロ…」
「もぐ」
どこかで聞いたオルガのを無視する三日月。
「ナイス」
「こういう時のあんたはホント輝いてるわね。コロ助」
「はい」
そんなこんなで話はまとまったようで、キャルと三日月を除いた面々は表へ出ることにした。
「では、行ってまいります」
「いってきまーす!☆」
「いってくるぞぉ…」
「オルガ、また死なないでね」
「わかってる…」
「頼んだわよー」
そして一同が見えなくなった後でキャルと三日月は家へと戻っていく。
「うううっ…さあ、部屋片付けよー…」
「手伝うよ」
「ありがと…ふあああっ…」
大きなあくびをするキャルであった。
――――――――
そしてペコリーヌ、コッコロ、ユウキ、オルガはランドソルの中心の市場へと出向いた。
「まずはぬいぐるみの色に合う生地を探しましょう」
「うん」
「そうだな」
だがその面々の後ろには2人の影がいた…が一同は気づかないのであった。
「素敵なお店があり、ワクワクしてしまいますね…」
「改めて思うが結構大きいじゃねえか…」
そう思うコッコロとオルガであるが、奇妙な出来事にもう遭遇する
「頼んでた靴できてるかい?」
「はいよ。ちょって待っててね」
と靴屋の女将らしき人が奥へ行くも…。
「…そういえば、靴…誰が作ってたんだっけ?あたし作らないのに」
「おいおいどうしたんだよ。もう耄碌しちまったのかい?」
まるで何かが欠けたかのようになっていた。
言い表せない不気味さを感じ取るコッコロ。
オルガも同様だが、似たような出来事を思い出していた。
(こいつは…白鯨の時みてえだな…)
白鯨…それはある世界で敵として交えたモビルアーマー以上の存在の化け物のことである。
ただ図体が大きいだけではなく特殊な霧を放ち、自傷行為に走らせることができる霧やオルガやその周辺の一部には効かなかったがその存在を世界から何も残らずに消し去る能力がある霧を発することもできる。
だがあの世界ならともかくこの世界では少なくとも存在はしていないはずである。
(似たようなことが起こってる…ってことか…いや情報が足りねえな…)
とりあえずオルガは今のことを考えるの止めて、材料探しへ戻ることにした。
――――――――
お目当てのものは見つからず立ち尽くす3人。
「中々見つからないものですね…これだけ広い街ですからどこかにあると思うのですが……」
大きな街であるが故に店は点在しており、見つかりにくいのは当然と言える。ましては中世に近い世界においては。
「あっち…さがしてくる」
「なるほど。皆で手分けして探すほうが効率がいいですね☆」
「んんっ」
ユウキの提案…といえば良いのか。
ここはそれぞれに分かれることになった。
オルガとユウキ、ペコリーヌ、コッコロという形で。
「きじ…きじ…」
「生地だぞぉ…見当たらねえじゃねえか……」
とはいったものの、見つからないものは見つからない。
そう言って誰も居ない店の前を通り過ぎようとしていたが……。
「なんだ?」
その店の奥からなにか落ちるような音がしたと同時にグラスが転がり、それと共にモヤのようなものが漂っていた。
「こいつは!」
「!」
「まてユウキ!」
ユウキは剣を抜き一目散に駆け出す。
その先では男が今にもシャドウに襲われようとしていた。
「はああっ!」
そしてユウキは剣を縦に振るうがそのシャドウはその剣を片手で受け止め、もう片方の手で衝撃波を発した。
それによりユウキは道のほうへと吹き飛ばされてしまった。
「ぐあああっ!」
「ゔあぁぁぁぁっっ!!!」
当然のごとくオルガは巻き添えを食らい、希望の花を発動させてしまう。
だがユウキはオルガよりは耐久があるためなんとか立ち上がろうとする。
「■■■■」
だがシャドウは動く…というよりまるで瞬間移動のごとくユウキに近づき、捕食しようとする。
「…!」
「ぐうっ…!」
なおオルガは動こうにも動けず気絶してしまった。まさに絶体絶命であった。
だがその時……。
「セイクリッド…パニッシュ!!」
薄紫色の髪と白を基調としたまるでドレスのような服を着た少女がそのシャドウを文字通り一刀両断する。
「■■■!」
シャドウは煙をあげるように消滅した。
「やっぱり来てよかった……こんなところにまで現れるなんて…」
「あの…ありが」
「あいたかったよー!弟く~ん!」
「えっ」
「怪我はない?怖くなかった?お腹の調子はどう?昔っから緊張するとお腹痛くなってたもんね。大丈夫?トイレついてってあげようか?」
「…!?」
「ズボン1人でおろせる?ああ、今弟くん記憶をなくしてるんだよね…心配しないで…お姉ちゃんがついてるから」
「おねえ…ちゃん…?」
ユウキは突然のマシンガントークのような何かにただただ圧倒されていた。
「コラコラコラコラコラ!!!!」
そこへ薄い栗毛であり、少し背が低い少女が全速力で駆けつける。
「駄目ですよシズルお姉ちゃん!そっと遠くから見守ってなきゃ!マスターにそう言われてるじゃないですか!」
「だってだって!」
「いいからこっちこっち!」
そのまま背が低い少女が自称ユウキのお姉ちゃんをそのまま押し込むようにどこかへ走り去っていった。
「失礼しましたあああああ!」
「何があってもお姉ちゃんが見守ってるから!見守ってるからあああ!ずっと見守ってるからああああああああ!」
二人の少女がまるで嵐のように通り過ぎていった。
なおその巻き添えを食らっオルガはまた死んでいた。
「だからよ…止まるんじゃねえぞ…」
「誰?」
――――――――
一方、美食殿ギルドハウスではキャルの部屋の後片付けが終わった。
「んんっ…完璧。ありがとねミカ」
「別に…」
「アンタって相変わらず謙虚よね…」
三日月のお陰で予定より早めに片付けられたようだ。
「じゃ、アタシはちょっと用事があるから。留守番よろしく」
「いいよー」
三日月は農業の本を読むことに戻る。
キャルの用事というのは…言うまでもなく陛下への報告のことである。
「……」
三日月はなんとなく察していたが、現状で詮索しても意味はないと判断し、特に行動はしなかった。
そして静かに本を読むのであった。
――――――――
「主さまー、オルガさまー」
「どうですか?生地の方は見つかりましたか?」
「ううん」
「全く手がかりはなしだ」
再び4人は集合する。
だが収穫はゼロ。
「最悪見つからない時は染め物職人さんに弟子入りしちゃいましょうかね」
「ペコリーヌ様ならそれも可能な気がいたしますね。ともあれ、キャル様のためにももう少し探してみましょう」
「そうだな」
「「おー!」」
――――――――
一方、キャルは陛下の玉座へと足を進めていた。
手には陛下のためにと花を持ってきているようだ。
「陛下?」
「こっちに来なさい。キャル」
すると玉座の近くの所に隠し扉のごとく開かれる。
そしてそこへと足を進める。
キャルは当然顔色は良くはない。
その先では陛下がシャドウを周りに集め、そしてある2つのシャドウに仮面を与えていた。
「どう?このペルソナ…美しいでしょう?」
その仮面が与えられた2つのシャドウはうめき声をあげる。
「ヴオオオオッ……!」
「ツミ…ブカキ…キサマァァァァ!!!」
片方は赤く禍々しく輝いた。
そしてもう片方は同じく禍々しくなった後、どこか硬い装甲のようなものをまとい始めた。
ただし他のシャドウより強い黒いモヤでその詳細はよく見えない。
「さあ、おいきなさい……私にさらなる美酒を…」
そしてその二体のシャドウはキャルの横を通りすがる。
それと同時にキャルが持っていた花は枯れてしまった。
おそらくシャドウの能力によるものであろう。
「なにその汚いの…ここは神聖な場所…。捨ててきなさい」
どう考えても陛下が召喚したシャドウによるモノのせいではあるが、それに反論できるはずもなく
キャルはそれを飲み込むしかなかった。
「……はい」
――――――――
「見つかりませんね…」
「全く見つからねえじゃねえか……」
一方、コッコロとユウキとオルガは引き続き生地を探していた。
だがあいも変わらず収穫はなし。
そんな時に店の人が話しかけてくる。
「お嬢ちゃん達!食ってきな!美味いよー!」
同時にぐうううっとユウキのお腹の音が聞こえる。
どうやらお腹が空いたらしい。
「まいどー!」
そして3人はホットドッグを食べる。
「ピリッとする味がお肉とよく合いますね」
「美味い…美味い」
「ぱくぱく…」
だがユウキは赤ちゃんということもあり、口の周りやらをケチャップで汚してしまっている。
「主様。お口の周りが…」
「んんっ…」
口を拭くも服の方も汚してしまっている。
「こっちも…‥シミになってしまいますね。ちょっとハンカチを水で湿らせてまいります」
トテトテとコッコロは噴水のほうへと向かう。
「ちょうど良い所に…」
「……あぶねえ!」
その時、オルガは第六感…というより「矢受けの加護」のスキルのような何かを発動させとっさにコッコロの盾となる。
「ぐうっ!?」
当然のごとく矢がぶっ刺さる。
「オルガさま!?」
「だからよ…止まるんじゃねえぞ…」
そしてその矢に結び付けられていた紙を解くと。
『近い』
この世界の言葉にでこう書かれていた。
しかもかなりの大文字で。
「…?」
そしてコッコロがその後ろを見ると木の陰から見ている少女がいた。
かなり黒いオーラを交えて。
「……」
そしてコッコロはオルガを引っ張り足早にその場を後にしようとするが…。
「あ!ちょっといいですか!!」
回り込まれてしまった。
「あなたお兄ちゃんのなんなんですか!!」
なお一応オルガを打ち殺したにも関わらずそれに触れることはない。
「そこは謝るとこじゃねえか…」
なんとか起き上がるオルガ。
「あの…どちらさま…」
「質問を質問で返さないでください!」
「きゅっ…す、すみません…わたくし、ユウキ様にお仕えしているコッコロと申します」
「お仕え?」
「偉大なるアメス様のお告げにより主様のお世話を…」
「お世話!?恋人とかじゃなくて?」
「どうしたの?リノちゃん」
「大変ですお姉ちゃん!お兄ちゃんに謎の女が!!私達が知らない間に謎の女が!!!!」
「落ち着くんだ…ぞ!」
ゴツン…というものではない衝撃波が発せられるかのごとく現れた「お姉ちゃん」からリノと呼ばれた者へ頭突きのような何かが行われる。
「!」
「やべえじゃねえか…」
コッコロとオルガは驚いている。
「ごめんね。弟くんのこと大切だからつい興奮しちゃって。私はシズル、この子はリノ」
「ドモ」
文字通りリノは目が回っているようであった。
「い、いえ…わたくしはコッコロと申します」
「俺は…仲間のオルガ・イツカだぞぉ…」
「あの…主さまにご兄弟が…」
「そうなの。私達は弟くんの…」
シズルがユウキがいる方向を見た途端。そこにはユウキが影も形もなく消えていた。
「いなーい!?」
コッコロとオルガも確認するも居た場所にはホットドッグを落ちていた。間違いなくユウキが食べていたものだ。
「主さま…」
「こいつは…!」
「まさかシャドウが…!」
「このような街なかに?」
「シャドウだと?前の時は村だったがこんな街の中にもいんのか?」
シャドウ
美食殿が前に撃退した謎の存在である。
「ランドソルには今、ロストと呼ばれている現象が多発しているの…弟くんが心配だわ。手分けして探さないと!」
シズルの言葉もあり、ユウキを探すことになった。
――――――――
「……そういえば、こうしてすることないのって久しぶりかな」
ギルドハウスで1人留守番している三日月は呟く。
今まで何かしら戦ってきた三日月がこうして何も大きなことはせずに暇つぶししているというのはかなり珍しいことであろう。
「みんな遅いな」
そうぼやきつつもヤシをかじるのであった。
――――――――
その後、シズルとリノは再びシャドウと会敵する。
「リノちゃん!」
「外しませんよ!アローレイン!!」
リノの必殺技でシャドウを蹴散らしている。
だがユウキはいなかったようだ。
「ここでもなかった…」
「弟くん…」
ロストという現象は簡単に言えば存在するはずの人物の記録や記憶が消失しているというものである。
そのためユウキの記憶がある現状は少なくともロストには巻き込まれていないと断言していいがランドソルは現在治安が悪い方向へと向かっているためどちらにしろ心配である。
「シズルさま!リノさま!」
コッコロとペコリーヌ、オルガが来たようだ。
「この人は…?」
リノがペコリーヌのことを指して言う。
「同じギルドメンバーのペコリーヌ様です」
「ユウキ君を探してくれてるんですよね。ありがとうございます」
ペコリーヌはお辞儀をする。
続けてシズルが話し出す。
「コッコロちゃん、なにか手がかりは…」
「いえ…」
途中脱線したもののユウキ自体の手がかりはまったくないと言って当然だった。
「仕方ありません。こうなったら捜索願を出しましょう」
「まあそれしかねえな…」
そしてギルド協会においてユウキの捜索願ポスターを貼ることにした。
コッコロがちゃっちゃ書いて貼っている。
「「はぁっ…」」
「手詰まりじゃねえか…」
「あら?」
そんな時に話しかけてきたのはギルド協会のカリンである。
「どうされたんです?」
「実は…主さまが行方知れずに……」
「ああ、アイツの行方がつかめねえ」
「?ユウキさんなら昼間来られましたよ」
「本当でございますか!」
ペコリーヌとコッコロはカリンにスイっと駆け寄る。
オルガも後ろにいる。
その時、ギルド協会の大きなドアが開く。
「あ、おかえりなさい。ユウキさん」
そこには汚れだらけになっていたユウキの姿があった。
「ただいま」
手には虹色の蚕を持っていた。
「はいこれ」
「立派な虹色蚕、これでクエスト完了ですね」
「あの…これは一体…」
「ユウキさんが珍しい生地を探しているとかで良いクエストがないかと相談されまして」
そう言いながらカリンはクエストのその紙に完了を意味する印を押す。
「主さまお一人で…」
「ユウキだけでか?」
「うん」
コッコロとオルガの問いにもサムズアップして答えるユウキである。
その後職人にその蚕を任せ生地を作ってもらう間にそれまでの経緯をユウキは放す。
「ホットドッグ食べてたとき…ずっとさがしてた生地が手にはいりそうだったからクエストうけてみた」
「こんな大変なことを…よくご無事で…」
「ちょっと食べられそうになったよー」
(俺の盾無しで…すげえよ…ユウキは…)
コッコロとオルガは感激しているようだ。
「本当にありがとうございます。ユウキ君」
「…これで、キャルのぬいぐるみも直るかな」
「「…はい!」」
「ああ、そうだな」
その美食殿の4人の様子を眺めているシズルとリノ。
「記憶は失っちゃったけど、誰かのために頑張るところは変わってない…私の大好きな弟くんのままだよ」
シズルはそう呟いた。
それはまるで本当の姉のような物であった。
「シズルさま、リノさま、今日はありが…」
コッコロがそうお礼をしようとしたがいつの間にか二人は姿を消していた。
「…本当に…ありがとうございました」
今はいないその2人に感謝を込めてコッコロは言うのであった。
――――――――
一人静かに帰るキャル。
あのようなことがあった以上無理もない。
ただ彼女にとってはそれが日常だった。
少し前までは…。
(…あのシャドウ…今までと雰囲気が違った…。アタシ、このままでいいのかな…?)
そう思いながら足をすすめるとギルドハウスの前に着く。
「…!」
その顔に手でパンパンと叩き、悟られないように気合を入れ直した後、そのドアに手をかける。
「ただいまー!」
だがその中には誰も居ない。
三日月がいたはずだが、姿が見えない。
「…」
それに関して少し淋しげな表情をするも…。
「あ、キャル帰ってきたんだ」
キャルの後ろから三日月がひょこっと現れる。
「うわっ!ってミカじゃない。びっくりしたわ」
「ごめん。ちょっと森の方で薪切ってたから」
三日月の手には束の薪が抱えられている。
「あっそ………ただいま」
「うん、おかえり」
三日月は特に用事について聞くこともなくキャルを普通に迎えたのであった。
そしてそれと同時に4人も帰還する。
「「ただいまー!」」
「ただいまもどりました」
「帰ったぞぉ…」
その後ろからはユウキ、オルガ、ペコリーヌ、コッコロの4人がいた。
ペコリーヌは修復したキャルのぬいぐるみを掲げていた。
虹のということもあり修復した部分が虹色に輝いている。
「おかえりー」
「遅かったじゃない。今日はどんな寄り道してきたのよ!」
面々を出迎える三日月とキャルであった。
シャドウについてはまだまだ…うん。