「ふあああっ…暇ねえ…」
「……」
他の皆が何かしらの用事で席を外す中、三日月とキャルでギルドハウスでお留守番している。
三日月は本を読み、キャルは本を目隠し代わりにしている。
「はぁっ…飽きないの?それ」
「別に…」
キャルはあいも変わらず農業の本を呼んでいる三日月にやれやれと言った様子だ。
もっとも単純に飽きないのかという疑問だけなので特に憎まれ口はないが。
(戦ってる時もこういう時もずっと静かよね…ペコリーヌみたいに声はそんな出さないし)
ペコリーヌは全て受け止め、更に超強力な攻撃を相手に与える。
三日月は攻撃を全て回避し、敵の隙を突き、確実にダメージを与える。
対局の二人である。
(ペコリーヌはともかく…なんでミカはあんなに強いんかしら…)
ふと疑問に思ったので、少し聞いてみることにした。
「ミカ、なんでそんな強いの?」
「強い?そうかな」
「だって村の時だってゴーレムみたいなシャドウをあんなに相手にしてたし、オルガもだけどなんか慣れてる感じがあるってやつ?」
「あーうん」
すると三日月は本に栞を閉じて置く。
「色々とあったから」
「色々と?」
「うん。まあここに流れてくるまでも色々とあったけど、一番最初に居たあの頃…鉄華団の時が一番色々とあったかな」
「ああ、オルガがたまに鉄華団団長とか言ってるアレって本当にそういうのがあったの?」
オルガが死にかけてるときだったり自己紹介のときに口走ったりというアレである。
「俺とオルガは孤児で、地を這いつくばりながら生きてるような感じだった。やっと場所を手に入れても大人達からは使い捨てのように扱われる。でもそこで仲間と出会ってその大人達に反逆したから」
「反逆って…そこで失敗したらどうなるのか考えなかったの!?」
「まあどっちにしろ、生きるか死ぬか…どっちかだったから」
三日月が平然と言う中、キャルは唖然としている。
まあただの一般人がこのようなことを聞けばなんとも言えなくなるのであろう。
だがキャルはなんとか話を続けた。
「…で、どうだったの?その反逆ってのは」
「…まあ、結果的に言うなら、駄目だった。最後は負けて…皆散り散りになった」
流石に転生した云々は言いにくいので三日月は言い換えた。
「やっぱりね…ろくなことにならなかったでしょ。大人に歯向かうなんて」
「…でも、後悔はしてないよ。俺は…仲間と出会えてよかったし」
「…後悔しないの?」
「うん。でもあの時にオルガに任せっきりだったのは後悔…かな?」
前世においてオルガに任せっきりな面が多かった。
特にビスケットが死んだ後、そして鉄華団が地球へ進出した辺りからはそれは顕著となっていた。
結果、マクギリスとの同盟をそのまま進み、鉄華団の破滅が始まってしまったも同然であろう。
「オルガに?」
「うん。オルガがああなったのは俺の責任でもあるから」
「ああなったって…死んでも生き返るアレのこと?」
「うん」
あっけらかんに言う三日月に対してキャルははぁっとため息をつく。
「だからアイツについていってるわけ?」
「うん。でも、駄目なことは駄目って言わないといけない。たとえ親しい人でも間違ってることがあれば指摘しないといけない…とあれから俺は学んだかな」
「……ふーん」
(親しい人にも指摘ねえ……って陛下がやってることは全部正しいの!なに突っ込もうとしてるのよあたし!!)
「…どうしたの?急に変な顔して」
「な、なんでもないわよ!」
三日月の指摘をキャルは必死に否定するのであった。