早急に二期くださいサイゲームス。
円盤なら買うから…!
そして今回はあの男も……?
「バイト?」
次の日、再びペコリーヌに会った俺達だが、バイトをすると言い出していた。
「はい。実はお金が尽きてしまって…それでマスターにそれを話したら『うちの裏メニューの良さがわかるなんて、見どころあるぜ』と言って、私をバイトとして雇ってくれることになったんですよ♪」
「そいつは構わんが……」
確かに配膳とか似合いそうだよな……流石につまみ食いとかはしねえだろうし。
その代わりに賄いの飯の量が多くなりそうだがよ。
「そ、そうでございますか…」
だがコッコロもあまり元気がねえし、この感じじゃ本当にギルドを立ち上げることできるのか?
やっぱり俺が主になって立ち上げるしかねえか。名前はもちろん鉄華だ…。
「だから駄目だよオルガ」
「ミカ、お前……」
だからなんで俺の心読めるんだよ……。
それとも俺ってそんなにわかりやすいのか…?
―――――――――
「いらっしゃいませ~☆」
そしてペコリーヌがバイトしている様子を眺めながら俺達は飯を食っている。
ペコリーヌがいるからか結構繁盛している。
あのこそ泥二人も元気に酒やらを飲んでいる。
「はぁ……ギルド結成までの道のりは遠いですね…」
コッコロの言う通り、確かに道のりが厳しくなった。
キャルはあんな感じだし、ペコリーヌも忙しそうだし。
ここからどうするか……。
そんな時に入り口のドアが開き、ある三人が入ってくる。
「ちょっと、ミソギちゃん。押さないで…」
「うわあっ、こういうお店初めてはいっちゃった」
「静かに。他のお客さんに迷惑だよ!」
アトラなんかよりも小さい女の子3人だった。
「おや?可愛いお客さんですね!いらっしゃいませ~!」
「「「こ、こっ、こんにちわ!!」」」
礼儀正しいじゃねえか……どうやらうさ耳の子をミミ。そいつを押していたのがミソギ。あとから来たエルフの子はキョウカと言うらしい。
しかしああいう三人はあいつが好きそうな……。
「あれは……天使達だ」
そうそうこんな感じに言って…え?
「どうしましたか?オルガ様」
「いや……なんでもねえぞ?コッコロ」
面倒なやつの声が聞こえたが多分気のせいだろう。
いたとしてもあんなアグニカバエルロリコンバカには絶対に関わりたくねえ……。
まあ助けられたこともあったけどよ………あれはない。
―――――――――
その頃、キャルは店の前で何故か行ったり来たりを繰り返したりしている。
それは陛下からペコリーヌと呼ばれる「彼女」の暗殺任務を取りやめ、監視任務をせよと命令が下ったからだ。
そしてそのためにギルドに入るということを考えたキャルであった。
「そうよ。アタシの道はあのお方が示してくれる。あのお方のためにも私は……」
そしてやっと踏み込む勇気が出たので、店のドアを開けると――
「はーい」
「あー…」
なぜだかミミに虫料理を食わせようとしているペコリーヌの姿があった。
「まてい!」
「キャルちゃん?」
キャルはすかさずそれをペコリーヌから高速で奪い取った。
「ガキンチョに何食わせようとしてんのよ!!それに何その格好は?」
「似合います?ウエイトレスですよ~」
「ウエイトレス…?バイトしてんの?」
キャルが首を傾げているとその後ろで申請書を持ってコッコロとついでにオルガがそわそわしていた。
「ソワソワ…」
「止まる…止まるんじゃ……」
「ってそこ!申請書こっちに向けて二人でソワソワすんな!」
「すみませんでした」
キャルのツッコミ2連打がここに炸裂した。
一方のミカはそんなことをせずにただただ飯を食っていたが、キャルが来た事自体には気づき、彼女にこう問いかける。
「どうしたの?俺達に用?」
「用……」
(そうよ。アタシ、ギルドの話をしにきたんだったんだわ)
ここで本来の目的を思い出すキャルである。
それだけ最初見た光景にかなり驚いていたらしい。
そしてキャルは手を後ろに組み、一見普通と装うようにし、話を切り出す。
「あ、あのね。実はちょっと話というか気が……」
そんな時、ドンッと音が店に鳴り響く。
どうやら店のドアがこじ開けられたらしい。一同がその方を見ると、やけにふとっちょで赤っ鼻の丸坊主の男が店に押し入ってきたのだ。
「ここかぁ?まずい虫料理出してるって店てのは……!」
「てめえ!マスターの料理にケチ付けるってのは!」
イカッチが腕まくりして喧嘩に乗ろうとするも、相手の一撃でKOしてしまった。
(こいつは……!)
「は?お前何しやがる!状況わかってんのか?」
オルガもそいつの前に出ようとするが……案の定こちらもドガッと一発殴られ「希望の花」が発動した。
「だからよ…止まるんじゃねえぞ……」
「アニキ!オルガのあんちゃん!」
その騒動により、賑わいがあった店はシーンっと静まり返る。
そしてそのふとっちょの男はズカズカと入っていき、コッコロが落とした申請書に気づかずそのまま踏みつけていった
「……!」
「……」
三日月とキャルはそれに気づき、そして三日月は特に警戒態勢に入った。
「おい、客に水も出さねえのか!この店は」
態度悪くテーブルに座り、嫌そうに水を催促する。
リトルリリカルの3人は震え、それを守ろうとペコリーヌは前へ出る。
「うちの店が何だって?」
当然あんなことを言われ、黙っては居られずにマスターが前に出てくる。
いかにも強そうであるが……。
「まずいかどうかはその舌で確かめて…ぐおっ!?」
グキッ!とそのマスターの腕が折られる。
意外とあっけなく落ちてしまった。
「おっと悪い。手が滑った」
そうは言っているがマスターはここで調理を担当している唯一の人であり、その腕が折れてしまえば調理はできない。
確信犯であった。
(こいつは……確かミカは片手の握力だけでハッシュの腕を折りかけたが……つまり……)
確実にヤバイ。オルガはそう確信していた。
そんな中、マスターに駆け寄るペコリーヌ。
「お腹が空いててイライラしてるんですか…?」
やはり彼女として看過できないものであり、その声はいつもの明るい雰囲気ではなく、少し低くなっていた。
「なんだ姉ちゃん。そこに転がってるジジイの代わりに飯作るってのか?まずかったらこの店畳んでもらうぜ!なあぁぁ?」
「……どんな人でも等しくご飯を食べることができる国…これがそのランドソルです」
ペコリーヌはマスターが落としたフライパンを拾いながらもこう話し、そしてフライパンを振り上げ、つきつけるかのようにこう宣言する。
「オーダー入ります!」
―――――――――
オルガ達がマスターの骨折を応急処置している間に、ペコリーヌは手際よく通常の三倍のように飯を作り、いつの間にか出来上がっていた。
「ふん、待たせやがって…こう見えて俺は美食家だからな?半端なものじゃ納得しねえぜ!」
「……」
「さあ、どれからいただくとしよう……」
「待って」
キャルちゃんはある果実を持って、飯を食おうとする男へ近づく。
「キャルちゃん?」
「まだこの料理は完成してないわ」
その果実とはキャルが陛下への報告後に王宮近くで見つけたものと同じものであり、それを食べた際にキャルが虫料理に合いそうと考えたものであった。
「この果実から落とされる恵みの一滴で…あんたは天使の歌声を聞くことになるよ」
「モビルアーマー…人を狩る天使たち」
「あ?」
なおオルガは再びどこかで聞いたことがある声を聞いたが、特に考えずに無視をする。
厄介事に巻き込まれたくないので当然であった。
そしてその果実から落ちたその一滴により、その虫料理は虹色に輝き出す。
「かあっ!?こいつぅ…あ!?」
男はそれにつられその虫料理にがっついた。
それと同時に――
「ぶ、ぶおおおおおおおおっ!?」
ふっとばされたような感覚、そしてそのまま男はすべての料理を我を忘れたかのように食い漁る。
そして本当に天使たちが舞い降りたかのような幻覚に陥った。
「う、うまあああああああああい!」
これでユウキとコッコロは安心した表情を浮かべる。
だが――
「ぐっ…!」
その幻覚を払い除け、男は虫料理を地面に叩きつける。
「まずい飯出す店は何ぞぶっ潰して…あ?」
その男の前に無言で三日月が立ちふさがる。
「ミカ、流石にそいつはミカでも…!」
「………」
「あ?なんだこのチビ、お前から潰されたいのかぁ?ならその願い通りにしてやらぁ!」
そして男は拳を一気に三日月に向け、殴ろうとする。
だが――
「……なっ!?」
「……何?」
三日月はその拳を少し横に避け、腕のところで受け止める。
なお言うまでもなく現在の三日月は左右双方使えるが、それでも片手だけで受け止めたのである。
「こ、この……!?」
「………」
三日月は無言のままだが、目は既に怒りの目であった。ペコリーヌという仲間が作った料理を男が無残に扱ったためか、彼を敵と完全に認識しているのだ。
「……!」
そして男には三日月のその気迫に冷や汗をかき始めていた。
三日月は転生前の戦場での戦い。そして転生後の数々の世界での戦い。それらを経験してきたいわば悪魔をも超越した「何か」である。
それを敵に回した時点で彼は完全に詰んでいたのだ。
「く、くそっ!」
それをなんとか振り払い、一歩下がったが、今度は後ろを掴まれる。
「ひっ!?」
「食べ物を粗末に扱う悪い子には……お仕置きです!」
ペコリーヌのその装備が光り、男は軽々しく投げ飛ばされ、店の外へ追い出された。
「ぎゃああああああっ!?」
「……めっ!ですよ」
「やったぜペコ姉さん!三日月のあんちゃん!!」
もちろんそれを見ていた客たちから歓声が上がった。
「…よかった」
三日月もいつもの優しそうな目に戻っていた。
そんな三日月に心配したオルガが駆け寄る。
「大丈夫か?ミカ。あいつ力結構なもんだったのに」
「うん。昭弘とかより全然弱かったから大丈夫。ハッシュよりは強かったけど」
「そ、そうなのか…?」
(すごすぎるぞ…ミカ……)
オルガはミカを改めてすごいと認識すると同時に自分の弱さを悔いていたのであった。
(守るのが俺の仕事なのによ……)
―――――――――
「あ、ありました主様」
その後、俺達は店の修繕作業をし、それが落ち着いたんで、そこで改めて申請書を書くことにしたんだが……その申請書はコッコロより先にキャルが拾い上げた。
「ん?」
「キャルちゃん?」
「しょうがないわね……アンタたちだけじゃ頼りないから、アタシも入ってあげる。か・ん・しゃ……しなさいよね?」
「ほ、本当か!?」
「あはあっ!ありがとうキャルちゃん!!」
ペコリーヌはキャルに抱きついた。
「んんむっ、こらああああ!抱きつくなー!」
やっとか……やっとギルドを結成できるのか……。
なんとなく長い道のりだったな。
「オルガ、これでまだ終わりじゃないからね?」
「ああ、わかってる…」
―――――――――
「さあ!いよいよ始動ですよ!私達の目的はこの世界のありとあらゆる料理や食材を追求、探求し、その名も『美食殿』!」
カリンから案内されたギルドハウスに到着するなり、ペコリーヌはこう高らかに宣言する。
「さあ、始めましょう!ここから!!」
――――――――――
ランドソル某所にはあるギルドの拠点が存在する。
その名は商業ギルド「モンターク商会」
このギルド自体は名前こそ違っていたが古くからあり、堅実な経営で安定していたが、その分、知名度自体はとても低いものであった。だがギルドマスターが「モンターク」に交代し、ギルド名を「モンターク商会」に改名した途端、急速に成長し、現在ではアストルムの商業ギルドとしては五本指に入るほどである。
そしてその拠点では、「仮面の男」とその側近が何かを話していたようであった。
「准将、趣味に口を出すつもりはございませんが、不審な行動を取られますと下手すればギルド活動に支障が」
「心配いらんよ。私は不審な者ではないからな」
「そういう問題では……」
仮面の男は「モンターク」いや、いつものマクギリス・ファリドである。
オルガが転生すると高確率で彼も同じ世界で転生してくるのだ。
なおその側近は「石動・カミーチェ」
前世においてもマクギリスの副官であり、この世界においてはギルドマスターとなったマクギリスの副官を務めている。
「…ところで石動、独自調査の結果は?」
「…やはり「ユースティアナ」の情報は追いきれませんでした。王宮騎士団の情報までは入手できたのですが」
「ふむ……「彼女」が治世しているというのはわかるが、どうにもしっくりこない点は多々ある。我々が今まで訪れた異世界と比べても……」
「どうにも怪しいと私は考えます。掴みきれない気味の悪さが」
「ああ、そして「影」の件もある。詳細の情報収集を急ぐべきだろう」
「はい……それと准将。先程の外出で鉄華団のあの二人とは…」
石動はそう質問するが、マクギリスは首を横に振った。
「いや、彼らの近くにはいれたが、騒動で接触は出来なかった。まあ、オルガ団長には意図的に避けられていたというのもあるがね……私は前世の件もあって嫌われているのでな」
「当然です。不審者を相手にするほど鉄華団は暇ではないのでしょう」
なお石動は前世とは違い、マクギリスにはたまに辛辣な態度を取る。
アグニカバエルロリコンバカな態度には流石にうんざりしているようだ。
「……ところで石動、フォレスティエとの件はどうだ?」
「はっ、数週間後に――」
その後、二人は本来の仕事である商会の活動に戻っていった。
なおマクギリスは終始その仮面を外さなかったという…一応商会にいるかいないかでオンオフしている――というマクギリスの談であった。
裏方やってるアグニカ仮面は輝く定期