派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う 作:名無しの投稿者
翌日。ハイドは改めて装備を確認するため、宿屋へ移動しステータスの画面を開いた。
ハイド
Lv36
HP 32/32
MP 25/25
【STR 95〈+75〉】
【VIT 0】
【AGI 95〈+75〉】
【DEX 0】
【INT 0】
ステータスポイント 15
装備
頭 【忍の頭巾】
体 【忍の上衣】
右手 【忍の小刀】
左手 【装備不可】
足 【忍の足袋】
靴 【忍の足袋】
装飾品 【力の指輪】
【速さの指輪】
【空欄】
スキル
【跳躍Ⅶ】【
(あれ? 装備不可?)
通常短剣は片手装備の為、もう片方の手に別の武器を装備できる。その場合二刀流となり一撃の威力が下がってしまうが、単純に手数が上がる。しかしハイドの左手の装備欄は【装備不可】となっており、現状武器が持てなくなっていた。
(理由は十中八九『忍の小刀』だろうけど……どうせなら他の装備も一緒に確認しとくか)
『忍の頭巾』
【STR+20】【AGI+10】【破壊不能】
スキル【暗視】
『忍の上衣』
【STR+10】【AGI+25】【破壊不能】
スキル【影の結界】
『忍の小刀』
【STR+40】【破壊不能】
スキル【暗殺】
『忍の足袋』
【AGI+35】【破壊不能】
(うん、昨日も思ったけどやっぱり強い。上がるステータスは俺のステータスが参考になってるみたいだな。唯一無二の装備って書いてあったし)
よく見てみると『忍の上衣』や『忍の足袋』にはいくつか服に隙間があり、そこに小物が収納できるようになっていた。ハイドはその隙間の全てに投擲用のナイフもしまい込む。これでハイドは暗器のようにナイフを取り出して投擲できるようになった。
(装備に付いてるスキルはっと)
【暗視】
暗い場所でもはっきりと目が見える。視力系状態異常無効化。
【影の結界】
発動者の半径五メートルに、目視不可の結界を張る。
持続時間は三秒。十分後、再使用可。
【暗殺】
次の攻撃で目視されずに正確に急所への攻撃を成功させた際、30%の確率で即死効果を付与。急所がないモンスターの場合、防御力貫通。即死効果に対する即死無効化スキル及びアイテム無効化。
片側の手の装備枠使用不可。急所への攻撃を失敗した時、十分間全ステータス三割減。他スキルによる即死効果の付与は、急所に攻撃する以外の条件では付与できない。
(マジか。俺にピッタリのスキルだな。そして左手の装備欄は【暗殺】のデメリットか。後この小刀は一応短剣の扱いなのか……見た目完全に刀だけど)
【暗殺】の効果で『忍の小刀』を装備している間、装備していない方の手は武器を装備できない。しかし投擲武器は装備する必要がないため、元々片手にしか武器を装備していなかったハイドにはあまりデメリットにならない。
そして『忍の小刀』は装備の分類上は短剣のため、【短剣の心得】が適応される。いくら見た目がちょっと長い短刀、もしくは短い刀でも分類上は短剣なので、【刀の心得】や【短刀の心得】は適応されないのだ。
(基本的にはこの【暗殺】で即死を狙っていくか。【影の結界】で一瞬でも俺を見失えば、【隠形】で消える事が出来る。その状態で【暗殺】をすると三割の確率で即死……これに関しては、運が試されるな。でも“次の攻撃”か……)
頭巾についている口当てのせいで見えないが、ハイドの口角が少し吊り上がった。どうやら何かを思いついたらしい。
(これに関しては後で要検証だな。検証する前に忘れず【ピンポイントアタック】は買っておこう。【暗殺】の条件である急所への攻撃を確実に成功させられる。それと、隠れる必要があるなら【剣ノ舞】は目立って邪魔だな。【廃棄】しておこう)
続けてステータスポイントを振り分けてから【剣ノ舞】を【廃棄】し、ボスを倒した後に取得したスキルの確認を始める。
【地獄耳】
小さい音や壁越しでもよく聞こえるようになる。聴力系状態異常無効化。
取得条件
【暗部の訓練洞窟】の隠し通路を初回侵入で見つけ、そのまま踏破すること。
【空蝉】
一日に一度致死ダメージを無効化する。
一分間【AGI】50%上昇。
取得条件
レベル35到達までノーダメージであること。
(【地獄耳】は中々いいスキルだな。索敵や情報収集に使えそうだ。システム上町の中ではスキルは発動できないけど、イベント専用マップでは使えるし)
因みにハイドがクリアしたダンジョン【暗部の訓練洞窟】では、隠し通路を見つけずそのまま奥地に行った場合でも一応別のボスが出現する。しかし撃破しても【地獄耳】は取得できず、代わりに【集音】が取得できる。【地獄耳】はその【集音】の完全上位互換だ。
(そしてやっぱりあったよノーダメージが取得条件のスキル! 【剣ノ舞】はちょっと俺には合わなかったけど、この【空蝉】は保険に持っておいて損はないな)
ハイドは今まで細心の注意を払ってノーダメージでレベル36まで上げたが、同時にこれからもノーダメージのままでいられるとは思っていなかった。特にデメリットがない【空蝉】は保険に丁度良かったのだ。
(よし! スキル買って少し新しいスキルを練習したら、早速二層へ行ってみますか!)
この後の行動を大雑把に決めると、ハイドは宿屋を後にした。
◇◇◇
そして二日後、ハイドは二層へ進むダンジョンのボス部屋の前にいた。情報を集めるのに半日使い、そして半日休憩をして残り一日はスキルの練習兼検証をしていた。流石に三日連続でへとへとになるのは嫌だったのだ。
(ちょっとスキルの検証に時間がかかったけど、まぁ問題ないか)
検証に時間がかかったのはハイドが思いついた悪だくみが実行できなかったからだが、それは今は置いておこう。
(えぇっと確か、このボスは樹木が変形した大鹿のモンスターで、角にいくつか付いてる林檎を落とさないと本体に攻撃が通らないんだったな)
既に二層が実装されてそこそこ時間が経っているため、ネットで情報を集めれば攻略法は簡単に調べる事は出来た。ハイドはなるべくダメージを受けたくないので、ボスの情報は徹底的に調べていた。
(とりあえず、林檎を【投擲】や【飛撃】で落として、それから【暗殺】を狙っていこう。確率は30%。【隠形】と【影の結界】は十分経つとに使用可能になる。ただ【隠形】には使用回数があるから、出来れば五回……いや、一回回復する分も入れて六回以内で決めれば問題ない。それで【暗殺】が発動できないと、【隠形】の使用回数の回復待ちになるな。一時間毎に一回だから、それまで攻撃を躱し続けないといけなくなる。ステータスが下がっている状態でそれだけの時間逃げ続けるのはまず無理だ)
ハイドのステータスは目視されれば【隠者】の効果で30%減ってしまう。さらに【暗殺】を使って攻撃して急所を外した場合、【暗殺】のデメリットで30%減るので合計60%減ってしまう。【暗殺】は十分しかステータスが減らないが、たった40%のステータスでボス相手に逃げるのは非常に難しい。
(30%……単純な確率で言えば三、四回に一回は発動するから、六回もチャンスがあれば問題ない……はずだ!)
脳内でシミュレーションを終えたハイドは、ボス部屋の扉を開けて中に入った。
中は天井の高い広い部屋で奥行きがあり、一番奥には大樹がそびえたっている。ハイドが中に入って数歩進むと、扉が音を立てて閉まる。
(ボス部屋の扉が閉まるのは、全部のダンジョン共通なんだ。今回もまた時間がかかりそうだから疲れるだろうけど、頑張ろう!)
扉が閉まると同時に、奥に立っていた大樹がメキメキと音を立てて変形していき最終的に大きな鹿になった。そして元が樹木だった鹿の角には、青々とした木の葉が茂りいくつかの赤い林檎が実っていた。
(よし、行くか!)
ハイドが覚悟を決めて、両手に投擲用のナイフを構える。大鹿が吠えると、足元に緑色の魔法陣が現れて輝く。そして巨大な蔓が地面を突き破って現れ、ハイドに向かって襲い掛かる。
(少し早い! けど、まだ対処可能だ!)
ハイドはその蔓を危なげなく避けると、予定通り林檎に向かってナイフと次々と投げる。いくつかは蔓に弾かれてしまったが、やがて全ての林檎が投擲されたナイフによって鹿の角から落とされた。
(こっからが本番だ! 【影の結界】!)
ハイドがスキルを発動させると、ハイドの上衣が一瞬光る。そして次の瞬間、ハイドを中心に半径五メートルの真っ黒な半球状の結界が出来上がった。結界は三秒後に消えてなくなったが、そこにはハイドの姿はない。大鹿はハイドを探すようにキョロキョロと辺りを見渡した。
(よし、後ろを取った!)
しかし【影の結界】が解除された時、既にハイドは【隠形】を使って大鹿の背後に回り込んでいた。装備の上昇値と合わせると目視されてなければAGIが200を超えるので、三秒もあれば大鹿の背後に移動するぐらい余裕でこなせたのだ。
(【
すかさず急所が見えるように【
(仕上げだ! 【ピンポイントアタック】!)
大鹿の顔がハイドの位置の反対に来たのを見計らい、剣を狙った場所に攻撃できる【ピンポイントアタック】を使用する。小刀は狙い通りに大鹿の首の急所の位置に吸い込まれた。
「! ぐおおおぉぉ!!」
(おっとあぶねぇ!)
しかし即死はせず、逆にその攻撃でハイドの位置に気が付いた大鹿の反撃を何とか避ける。
(やっぱ流石に一度じゃ死なないか。そらそうだよな)
自身の運に然程期待していなかったハイドは、30%を外しても特に落ち込んではいなかった。ちょっと面倒だなとは思っていたが。
ハイドの攻撃で大鹿のHPは残り約九割。ボスであってもSTR200超えの急所攻撃はかなり効くようだ。
(【影の結界】と【隠形】の再使用は十分後だし、逃げ隠れしますか!)
HPをギリギリ一割減らしていない大鹿は、攻撃パターンを変えることなく蔓でハイドを狙っている。ハイドはその蔓を躱しながら、物陰を利用して視界から外れながらスキルの再使用の時間まで動き続けた。
◇◇◇
「ぐおおおおおぉぉぉ!!」
大鹿が叫び声を上げながら光となって爆散する。結局ハイドは三度目にようやく即死を発動させ、大鹿を倒した。
(少し面倒だったけど、思ったほど疲れてない。装備を整えたからってのもあるだろうけど、【暗殺】の効果で戦闘が早いお陰だな)
そして部屋の中央に、魔法陣が現れる。これに乗れば二層に進む事ができる。ハイドはその魔法陣を見て、少し辺りを見渡した。
(一人で攻略したから、ユニークシリーズが出ると思ったけど出ないな。別にもういいのあるからいらないけど……つまりユニークシリーズは一人につき一つだけって事かな)
ハイドは結論付けると、魔法陣に乗って二階層へ転移した。
ハイドに【空蝉】を取らせるためだけにここまでノーダメージにしました。保険が欲しかったのです。次回は第二回イベントの準備になります。
今回入れたオリジナル設定です。
壁越しからの音や声について
その音や声が一定以下の場合、壁越しでは音や声は一切聞こえない。ただし特定のスキル(今回の【地獄耳】など)がある場合は別。
スキル【暗殺】について
オリジナル設定という訳ではないんですが、作中では書けなかったのでこっちで書いておきます。
スキル【暗殺】の即死効果でダンジョンボスを単独撃破した場合、ユニークシリーズは取れません。【暗殺】の非公開情報という事にしてください。この設定がないと、ハイドはダンジョンの数だけユニークシリーズが取れちゃうので。ハイドは現在勘違いをしてるだけです。
目視について
説明する機会があるか分からないので、先にこの設定を公開しておきます。
視界内に入っていても、見てるプレイヤーが認識していない限り目視していないという判定になる。
例えば、ハイドが木影に隠れていた場合。他のプレイヤーがハイドの姿を視界内に捉えたとしても、『そこには誰もいない』と他のプレイヤーが認識すれば、ハイドは未だ目視されていないという判定になる。認識については、ゲームのハードがプレイヤーの脳波を読み取って判定する。