派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う   作:名無しの投稿者

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第二章 暗殺者の探索任務
暗殺者と第二回イベント一日目


 光が収まりハイドが目を開けると、そこは砂浜が広がる海辺だった。遠くには一つの小島がある。

 辺りを見渡すと、海の反対側は森が広がり遠くには山も見える。空には重力の影響を受けることなく浮遊する島や、優雅に空を飛ぶ竜もいる。

 

(おぉ~! 絶景だ! 特に空の浮遊島とか竜とかがファンタジー感があっていい!!)

 

 数分間景色を堪能したハイドは、気を取り直してどこを探索するか考える。

 

(森か、海か……)

 

 選択肢は二択。ハイドは自身のステータスを見ながらどちらに行くか考えた。

 

ハイド

Lv44

HP 32/32

MP 25/25

 

【STR 115〈+75〉】

【VIT 0】

【AGI 115〈+75〉】

【DEX 0】

【INT 0】

ステータスポイント 0

 

装備

頭 【忍の頭巾】

体 【忍の上衣】

右手 【忍の小刀】

左手 【装備不可】

足 【忍の足袋】

靴 【忍の足袋】

装飾品 【力の指輪】

    【速さの指輪】

    【空欄】

 

スキル

【跳躍Ⅹ】【弱点看破(ウィークネス)】【寡黙】【隠者】【連撃剣Ⅴ】【連撃強化中】【筋力強化大】【敏捷強化大】【投擲】【短剣の心得Ⅹ】【遠見】【気配察知Ⅸ】【気配遮断Ⅹ】【潜水Ⅹ】【水泳Ⅹ】【体術Ⅱ】【飛撃】【超加速】【隠形】【地獄耳】【空蝉】【ピンポイントアタック】【パワーアタック】【潜伏】【ディフェンスブレイク】【居合切り】

 

 ハイドがこの二週間でレベルを上げた成果だ。それを元にどちらから探索した方が効率が良いかを考える。

 

(そもそも銀メダルがそこら辺の道端にポツンと落ちてるとは考えにくい。このイベントマップだどれだけの広さなのか分からないけど、探索しにくい場所やダンジョンの奥地にある可能性が高い)

 

 そう考えると、改めて海と森のどちらが探索しにくいか考えて、顔を上げた。

 

(よし、先に海の方を探索しよう! 俺の【潜水】と【水泳】はレベルが最大で四十分なら問題なく探索できるけど、逆に言えば四十分間探索したら一回水面に上がって休憩しないといけない。海はずっと探索し続けられる森よりも探索しにくい場所だ)

 

 海は森と違って【潜水】と【水泳】が無ければまともに探索すらできない、地形そのものが探索しにくい場所だ。そんな場所なので広さの面から言ってもメダルがあるはずだとハイドは当たりを付けた。

 早速ハイドは海の方へ足を進める。じゃぶじゃぶと水を掻き分けながら足の着かない地点まで進むと、息を思いっきり吸って水の中に入る。そして目に入ってきた景色に、ハイドは思わず見惚れてしまった。

 

(うぉ~……キレイだ……)

 

 濁りの一切ない透き通った水は、遥か先の場所まではっきりと見渡せる。色とりどりのサンゴやその間を泳ぐ小魚達が、水面から入る日の光を浴びてキラキラ輝く。先程の浮遊島や竜とはまた違った幻想的な空間だった。

 

(これは日本じゃ中々見れない景色だなぁ……このゲームにスクリーンショットが採用されていないのが非常に残念だ……!)

 

 見た景色を記録に残せないため、せめて記憶には残そうとよりじっくりと景色を堪能するハイド。だがこの海に入った当初の目的も忘れてはいない。

 

(小魚達にHPバーは無し。少なくともモンスターの類じゃない。倒せないフィールドギミックなのか、はたまたただの背景用なのか……)

 

 VITが0のハイドにとって、敵かそうじゃないかの判別は死活問題だ。水中では投擲が出来ないため、ハイドは仕方なく小魚に近づく。小魚はハイドの影を見ると、すぐに岩陰に隠れて見えなくなった。

 

(よかった。ただの背景みたいだ。流石にそこまで厳しくはないか)

 

 懸念事項が杞憂となったため、ハイドは海の探索に戻る。

 そして四時間。息継ぎを挟みながら海の中を探索していたハイドは、奇妙なものが視界に移り泳ぎを止めた。

 

(ん? 何であんなに小魚が集まってんだ?)

 

 他の場所では普通に泳いでるだけだった小魚が、ハイドの見てる場所だけ五、六匹ほど集まっている。

 

(あそこに何かあるのか……行ってみるか)

 

 ハイドが小魚が集まっている場所に近づく。先程と違い小魚はハイドの陰に入っても逃げず、その場を動こうとしない。そして、ハイドは小魚が何に集まっているのかを確認した。

 

(お、アレ銀メダルじゃん。ラッキー♪)

 

 銀メダルを取ると、小魚は一斉に散らばる。ハイドは手にした銀メダルをインベントリに入れる。

 

(目標まで残り九枚。浅瀬の方はあんまり数が無さそうだな。あるとしたらもっと深いところか……もしくはずっと気になってるあの島かな)

 

 砂浜から海を見た時に見つけた小島だ。ハイドはメダルを探しながら徐々に近づくように泳いでいた。

 

(意味ありげに一つだけあるから、恐らくダンジョンの入り口に繋がってるはずだ。問題は一人でクリアできるかどうかだけど……とりあえず行ってみようか)

 

 この四時間で大分島まで近づいていたため、まず傍まで行ってみようとハイドは島に向かって泳ぐ。そして一時間程で島に上陸した。

 

(思ってたより小さいな。島にあるのは一本のヤシの木と、意味ありげにある地下への階段か……いや、ここで引いたら来た意味ないな。行ってみよう)

 

 ハイドは階段の前で少し悩むが、すぐに決心して目の前の階段を下りていく。階段を降りると、そこには普通の木製の扉があった。

 

(ダンジョン入っていきなりボスってあり得るのか? ……とりあえず開けてみるか。開けてすぐボス戦開始って事はないだろうし)

 

 今まで入ったダンジョンから、ハイドはボス部屋に入って中に入らないとボスが出て来ないと予想して扉を開ける。部屋の中は綺麗な半円のドームになっており、その中央には古い祠と白く輝く魔法陣があった。

 

(っ!!)

 

 ハイドはその魔法陣を目にした瞬間、すぐに扉を閉めて全速力で地上へ階段を上る。そして地上に戻ると、ヤシの木を支えにしてその場にへたり込んだ。

 

(な、何だあれ……! 今までに感じ事のない程危険な感覚だった……!!)

 

 ハイドが胸に手を当て深呼吸すると、魔法陣を見た瞬間から起きていた激しい動悸がゆっくりと収まっていく。

 

(……ふぅ。アレが何なのかはさておき、あの扉には近づかない様にしよう。多分俺だと瞬殺される。えっと、今の時間は……)

 

 ハイドは自身の感覚に従って発見したボスを諦めると、メニュー画面を出して時間を確認する。後数時間ほどで日が落ちてしまう時間になっていた。

 

(月明りじゃ海の中は探索できないし、夜になったら海の中にもモンスターが出る可能性だってある。今から泳いで戻るのは正直時間が心もとない。丁度この島はモンスターが出そうにない程狭い上に、あんなボス部屋があるって事は他のモンスターが出て来ない可能性が高い。今日はもう少し海を探索したら、この島で夜明けまで過ごそう)

 

 とりあえず今日の方針を決めると、再び海の中に入るハイド。今度は海面近くから見るだけではなく、海底まで潜って岩場の影や珊瑚の隙間も隈なく探し始めた。

 そうしてしばらくメダルを探して泳いでいると、ついに珊瑚の隙間に挟まったメダルを発見した。

 

(よし! この調子で後八枚を……ん?)

 

 見つけたメダルをインベントリに入れて再び捜索のため泳ごうとしたハイドは、ふと目に入った少し遠くの岩場が気になった。

 

(……あそこに何かありそうだな。行ってみよう)

 

 ハイドが気になった岩場に辿り着くと、そこは岩場の壁に隠されるようにぽっかり穴が開いていた。穴の上部には、壁がデコボコなため読みづらいが『ひらめきの洞窟へようこそ』と書かれている。

 

(ダンジョン、にしては少し変な作りだな。大体ひらめきの洞窟ってなんだよ。問題でも出されるのか?)

 

 ハイドはこの洞窟に入るか少し悩む。恐らく中にはメダルか装備品があるだろうが、迂闊に中には入れない。

 

(洞窟の道はすぐにカーブになっていて、入り口から中はよく見えない。一応入り口にモンスターは確認できないけど、絶対いないとも限らないし……いや、怖がってばかりじゃメダルを集められない。一回行ってみよう。負けてもモンスター相手だったらメダルを落とさないし)

 

 結局ハイドは洞窟内に入る決心をした。一旦海面に上がって息継ぎをすると、一直線に洞窟に向かって躊躇なく洞窟の中に入る。

 

(洞窟の中に空気が無かったら、溺死までの制限時間は四十分。戸惑ってる時間はもう無い)

 

 洞窟内は少し薄暗くなっているが、【忍の頭巾】に付与されている【暗視】があるためハイドは視界には不自由しない。一本道を壁を伝って泳ぐと、やがて行き止まりに到着した。行き止まりの壁には文字が書かれており、薄暗い洞窟内でも見やすくするためか少し発光していた。

 

『ようこそ、ひらめきの洞窟へ』

『この洞窟は全ての問題に正解するまで外に出る事は出来ません』

 

 読み終えた直後、洞窟が振動で少し震える。ハイドは振動が起こっても少し周りを見渡しただけで動じなかった。

 

(多分この振動で入り口が閉鎖されたな。問題が何問かはわからないけど、焦らない様にしよう)

 

 振動は数秒で収まると、その直後発光していた文字が消えて別の文字が発光して浮かび上がった。

 

『全ての問題に制限時間はありません。存分に考えて回答してください』

『回答は指定の場所を指でなぞれば答えられます。回答権は一回のみ。不正解の場合は問題が変わります』

 

(適当に答えていつか正解を引き当てるのを避けるためのルールか。って言うか問題に制限時間は無くても、別に制限時間があるだろが!)

 

 【潜水Ⅹ】を持っていたとしても潜れる時間は四十分しかないため、その時間内にこの洞窟を脱出しなければならない。ハイドはこの文字にイラッとしたが、その時にはその文字は消えており問題の文字が発光していた。

 

『第一問』

『木の上に鳥が三羽止まっている。五メートル離れた地点から鉄砲で一羽撃ち落とした場合、木に止まっている鳥の数は何羽になる?』

 

 問題の下には『A』の文字と共にアンダーラインが引いてある。指定の場所とはこの事だろう。ご丁寧に隣には『回答する』と『答えを消す』の二つの文字があり、ボタンのように少し出っ張っていた。

 

(……ひっかけ問題か。簡単だな)

 

 ハイドは『A』の横に指で壁を『0』となぞると、なぞった跡が発光する。そして『回答する』のボタンを押すと、問題の文字が消えて別の文字が現れた。

 

『正解』

『一羽は鉄砲で撃ち落とされ、残り二羽は音に驚いて飛び去ってしまう』

 

 その文字は数秒間で消えると、別の問題の文字が現れる。

 

『第二問』

『ミナちゃんのお父さんには四人の娘がいる』

『夏に生まれた長女は夏子』

『秋に生まれた次女には秋子』

『冬に生まれた三女には冬子』

『では春に生まれた末っ子の四女の名前は?』

 

(次々に問題が出てくるのはうれしいな。時間短縮になる。後『ひらめき』ってこういう意味なのか。この先ひっかけ問題ばっかが出てくるって事なのね。簡単だし好きだからいいけどさ)

 

 そしてハイドは問題に答えると、次の問題に挑んだ。

 

     ◇◇◇

 

『お見事。合計十問正解したので、奥地への扉が開かれます』

 

 問題を解き始めて約三十分後、ハイドが十問目の問題に正解したら次の問題の文字は出て来ずに代わりに壁が横に収納されていき奥へ続く道が現れた。

 

(お~これでクリアか。数問間違って時間が危ないかもって思ってたけど、間に合ってよかった)

 

 開けた道の先へ少し泳ぐとそこは空洞になっており、ハイドは水中から顔を出した。そこからは陸地になっているため、ハイドは水から上がると先へ歩みを進める。

 

(流石にクイズだけでダンジョンクリアな訳ないよな? だとするとこの先にボスがいるのか……)

 

 しかしハイドの考えは杞憂だったようで、奥には台座の上に置かれた宝箱しかなかった。ハイドが警戒しながら宝箱を開けると、その中には一枚のメダルと水色の大槌が置かれていた。

 

(メダルは一枚か……まぁクイズに答えただけだしな。メダルを貰えただけありがたい)

 

 ハイドはメダルをインベントリに入れると、今度は残った大槌に目を向けた。

 

(そしてこのダンジョンで何故大槌が入手できるのか……意味わからん。一応性能も確認してみるか)

 

『ウォーターハンマー』

【STR+15】【水属性攻撃】

 

【水属性攻撃】

任意で物理攻撃をダメージ半減の水属性攻撃に変更する。

 

(……大槌の標準が分かんないから強いのかどうかわからん。とりあえず俺は装備できないからインベントリに入れとくか)

 

 大槌もインベントリに入れると宝箱は消失し、地面に二つの魔法陣が出てきた。どちらがどこに行くのかの説明はない。

 

(……まぁ悩んだって結局分かんないか。転移先の警戒だけして適当に選ぼう)

 

 ハイドは指を二つの魔法陣の方へ向けて数回振ると、指が指した方の魔法陣に乗って光となり消えていった。

 景色が変わると、ハイドは武器を抜いて警戒する。そこはハイドが夜を過ごそうとしてた小島だった。

 

(ここならモンスターは出なさそうだし、運がよかったな)

 

 因みにあの二つの魔法陣は片方が転移時初期地点で、もう片方が最後に乗っていた陸地となっている。なのでハイドが最後に乗っていた小島に転移されたのだ。

 

(おぉ、夕焼けが綺麗だ……!)

 

 時間は丁度夕方で、水平線に太陽がゆっくりと沈んでいっている。ハイドはその光景にしばし見惚れていた。そして太陽が完全に沈むと、月明りが辺りを薄く照らした。

 

(もうすぐ夜か。ならもう探索は出来なそうだな……このまま今日は寝るか。おぉ! 綺麗な星空だ!)

 

 ハイドが島に寝転がると、空には大きな月と満天の星空が輝いていた。

 

(今日の成果はメダルも三枚か。目標の十枚まで残り七枚。今日は戦闘はなかったけど、明日以降は絶対あるだろうな。今日みたいに戦闘なしでメダルを見つけられる方が少ないはずだ)

 

 ハイドは運良く戦闘なしで三枚もメダルを発見したが、そんな楽して残り七枚集められるとは思っていなかった。むしろ今日がとても運がいいのはハイド自身自覚している。

 

(明日は森側の探索に行こうかな。メダルがあるダンジョンを見つけられるといいけど……)

 

 夜空を見ながら明日の予定を立てていると、段々と眠気に襲われてきたハイドはゆっくりと瞳を閉じた。

 

(眠くなってきた……おっと、忘れてた。【潜伏】……)

 

 念のため、寝る前に姿を消すスキルを発動させるとハイドは眠りに落ちていった。

 こうしてハイドにとっての初イベント初日は終わった。




主人公、イベントなのに戦闘をしなかった……。次回はちゃんと戦闘させますので。次回はイベント二日目、及び三日目です。

オリジナルダンジョン【ひらめきの洞窟】
第二回イベント専用マップで、海の中にあるダンジョン。
中に入り奥地まで進むと、入り口が閉じで侵入者がダンジョンをクリアするか溺死するまで開かない。
合計十問正解すればダンジョンクリア。メダル一枚と【水属性攻撃】が付いた武器が一つ手に入る(武器の種類は完全にランダム)。
問題は全てひっかけ問題。回答権は各問題一回のみで、不正解の場合他の問題に切り替わる。
因みに第二問目の答えは『ミナ』。『()()()()()()()()()()』なのに、上三人が夏子、秋子、冬子でミナがいないため残った娘は『ミナ』となる。
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