派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う   作:名無しの投稿者

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~7/20 追記~

ちょっと感想でうっかりしていたことを言われてしまったので、ちょっと追加しました。


暗殺者と相棒

 一時間経つ度に卵をインベントリに出して入れてを繰り返して三時間、不意に卵にピシッとヒビが入った。ハイドはすぐにそれに気付き、卵を地面に置く。

 

(お、ついに生まれるか! はてさて、どんなモンスターが生まれることやら)

 

 卵のヒビは徐々に広がっていき、中から一匹のモンスターが姿を現した。

 

「ホー!」

(これは梟、だよな?)

 

 卵から生まれてきたのは、黒色の体毛をした梟だ。目は黄色で腹の部分は少し白く、サイズは卵よりも小さい。

 生まれてきた梟がハイドに近付いてきたので、ハイドは恐る恐る梟を撫でてみる。

 

「ホ~♪」

(手触りがいいな。モフモフだ)

 

 梟は嬉しそうに鳴き、その様子にハイドも口角を上げる。

 そうして梟を撫でていると、卵の殻が薄く発光し始めた。光は段々と強くなり、やがて真っ黒な指輪へと変化する。

 ハイドはその指輪を拾って詳細を確認した。

 

【絆の架け橋】

装備している間、一部モンスターとの共闘が可能。

共闘可能モンスターは指輪一つにつき一体。

モンスターは死亡時に指輪内での睡眠状態となり、一日間は呼び出すことが出来ない。

 

(よかった。死んでも消える訳じゃないのか)

 

 装備品枠は余っているため、ハイドは早速指輪を装備した。指輪を装備すると、梟が嬉しそうに擦り寄ってくる。

 

(かわいい。コイツのステータスは見れるのかな?)

 

 ハイドがステータス画面を呼び出すと、自身のステータスの下にもう一つステータスが表示されていた。

 この梟のステータスであると確信して、ハイドはその中身を確認する。

 

ノーネーム

Lv1

HP 10/10

MP 200/200

 

【STR 5】

【VIT 5】

【AGI 100】

【DEX 20】

【INT 100】

 

スキル

【見稽古】

 

(おぉ、結構強い。んでめっちゃ偏ってんな)

 

 ハイドのステータスも相当偏っているため、人の事は言えない。別に何も言ってはいないが。

 

(『ノーネーム』って事は俺が名前を考えないといけないのか。さてどんな名前にしたものか……俺ネーミングセンスいまいちなんだよなぁ……)

 

 ハイドは名前を考えながら梟をじっと見つめる。梟は急にじっと見つめられたので、首を傾げてハイドを見返した。

 

(……凝って変な名前付けてもコイツに悪いし、安直だが『オウル』にしとくか)

 

 唐突に始まったお見合いは、ハイドが考えを纏めて名前の欄を埋めたことで終わった。梟だから『オウル』。確かに自身のプレイヤーネームである『ハイド(隠れる)』並みに安直だった。

 

「ホ~♪」

 

 そんな安直な名前でも、梟改めオウルは嬉しそうに鳴き声を上げる。自身の名前の意味が分かっているのかは不明だが。

 元気のいいオウルを撫でながら、ハイドはオウルのステータスにあったスキルを確認する。

 

【見稽古】

攻撃行動が一切行えない代わりに、共闘相手が視覚内で経験値を取得した場合、その50%の経験値を取得する。

 

(コイツ戦えないのか。なのにこの高いMPと【INT】はどういう訳なんだ……?)

 

 ハイドは高いMPと【INT】から、てっきりオウルの事を魔法を使って攻撃するタイプのモンスターだと思い込んでいたが、その予想は【見稽古】の効果によって覆される。

 このスキルを持っている限りオウルは魔法はもちろん、敵モンスターに向かって体当たりをしてダメージを与える事すらできない。経験値を取得する方法は確立されているが、このままでは本当にただいるだけの存在だ。

 

(……レベルが上がってスキルを覚えれば、コイツの特性が分かるようになるのかな? とりあえずレベル上げをしてみるか。この【VIT】とHPを考えると、被弾=即死だから注意ないとだな)

 

「……オウル。戦闘が始まったら、お前は戦いが見える位置まで離れていろ。他のモンスターから攻撃されないように、気をつけてな」

 

「ホー!」

 

 『分かった!』とばかりに返事をするオウル。ハイドが立って歩きだすと、自主的に飛び上がって肩に止まった。

 

(オウルに見られてる時は【隠者】のデメリットが発動してるみたいだし、一応そこも注意しておくか。いざとなったらオウルに目を閉じてもらえばいいし)

 

 ハイドのスキル【隠者】のデメリットは、敵味方関係なく目視されていることで発動する。オウルに経験値を取得させるためオウルの視界内に入って戦うと、【隠者】のデメリットが発動してしまうのだ。

 だがそれでも【隠者】を【廃棄】しようとしない。【隠形】を使ったりオウルの視界を塞げば、【隠者】のステータス上昇が発動するためだ。姿を消す時間が限られている以上、少しでも早く移動するスキルを【廃棄】する必要がないのだ。

 

(それと指示が本当に伝わったかどうかは、実際に戦闘に入らないと分からないな。ダメそうだったらその都度指示を出すか)

 

 ハイドが再び森を探索していると、草陰から猪のモンスターが飛び出してくる。

 それを見たオウルは、ハイドから離れて近くの木の枝に隠れるように止まり、こちらの様子をじっと見つめる。

 

(おっ、ちゃんと指示分かってんじゃん。結構頭いいなアイツ。これなら安心して狩りが出来る)

 

 猪をサクッと倒すと、オウルは再びハイドの肩に止まる。ハイドがステータスを確認するが、まだオウルのレベルは1のままだった。

 

(あれ? まだレベルが上がってないな。コイツもしかしてレベル上がりにくいのか?)

「ホー?」

 

 じっと見つめてくるハイドに、オウルはきょとんと首を傾げる。その様子に、ハイドは軽く溜息を吐いた。

 

(まぁ考えても仕方ないか。とにかくメダルのありそうな場所探しながらモンスターを狩ってけば、オウルのレベルも上がっていくだろ)

 

 考えても仕方ないと割り切ったハイドは、探索を再開させる。そしてモンスターを数匹倒していると、オウルのレベルが上がった。

 

オウル

Lv2

HP 10/10

MP 250/250

 

【STR 5】

【VIT 5】

【AGI 110】

【DEX 20】

【INT 130】

 

スキル

【見稽古】【念話指示】

 

【念話指示】

共闘相手からの指示を思考で行える。名前の後で指示を出す事で実行する。

念話の伝わりやすさは【INT】依存。

 

(おぉ、ステータスの上がり幅が大きいな。新しいスキルは【念話指示】、つまり喋らなくても指示が出せる訳ね。試してみるか。オウル、『飛び上がって俺の頭の上を旋回』)

「ホー!」

 

 早速オウルの新スキルを試してみると、オウルは勢い良く返事をして羽を羽搏ばたかせて飛び上がり、ハイドの頭の上をクルクルと旋回し始めた。

 

(うん、結構便利だな。そしてこのスキルの指示の伝わりやすさは【INT】依存……【INT】が高い理由はコレか。まだ高いMPの理由は分かんないけど、レベルが上がったらMPを消費するスキルとか覚えたりするんだろうな)

 

 オウルを肩に戻すと、ハイドはステータス画面を見て時間を確認する。山を登ったり卵を温めている内に、時間が経っておりもう数時間もすれば日が暮れてしまう。

 

(……一回だけ夜の探索もしておいた方がいいか。時間帯によって入れるダンジョンがあるかもしれないしな)

 

 ハイドは少しの間悩んで、今までしていなかった夜の時間帯の探索をすることにした。疲れで動きや判断力が悪くなるのが懸念事項だったが、今日は然程疲れていないので探索を実行する事にしたのだ。

 

(問題は暗くなった場合、どれだけ視界が悪くなるかだけど……ん? あっ、そういや俺【暗視】があったな。やっべ、暗くなる前にって急いで森を探索してた昨日の努力は何だったんだ……誰にも見られてないとはいえ、何か恥ずいな……)

 

 尚、昨日攻略したコボルトの洞穴は昼の時間帯のみ侵入できるダンジョンの為、急いで探索したのは全く無意味な行動ではなかったのだが、ハイドにそれを知るすべはない。ただただ意味のない理由で急いでいたのが恥ずかしかった。

 

(……よし! 切り替えよう! とにかく探索して気を紛らわせよう! うん!)

 

 人はそれを現実逃避とも言うが、今のハイドの周りにはそれを指摘する人間はいない。

 現実逃避を終えたハイドは、木の枝を跳び回って探索をする。ついでに見かけたモンスターを奇襲して倒していき、自身とオウルの経験値とするのも忘れない。

 そうしてしばらく探索を続けていると、やがて日が暮れて段々と辺りが暗くなってきた。

 

(逢魔が時って奴か。何か変化があるとすればそろそろだけど……)

 

 ハイドが注意深く辺りを窺っていると、上から翼を羽搏かせる音が聞こえてきた。

 

(鳥か? 鳥のモンスターなんてこの山で見た事ないけど)

 

 そう思ってハイドが視線を上に上げると、丁度音の発生源がハイドの上を通り過ぎるところだった。その存在は確かに鳥のような翼は生えていたが、明らかに姿が人型で山伏装束を着ている。更に顔には嘴があり、腰には刀を下げていた。

 

(アレは確か、烏天狗か。今日の朝から山に入ったけど、あんなモンスター見たことがない。やっぱり時間帯によって出てくるモンスターとかが変わるんだな)

 

 自身の予想が当たったことにハイドが喜んでいる間にも烏天狗達はハイドの頭上を通過しており、その内の何体かは下の方に降りてきている。

 

(ここら辺だけじゃないな。遠くの方にも黒い点が幾つか見える。【遠見】)

 

 スキルの効果で視力を上げると、先程見た烏天狗と同じ姿のモンスター達が山の頂上から飛んで降りてくるのが見えた。

 

(あの烏天狗達の出現元は頂上か。こりゃ頂上に何かありそうだな、行ってみるか!)

 

     ◇◇◇

 

 ハイドが頂上付近までたどり着くと、そこでは複数の烏天狗が徘徊していた。

 また頂上には他の木と比べて倍近い高さの木が立ってしており、その木の上には長い鼻を持ち他の天狗達に比べて明らかに大きな天狗が仁王立ちで飛んでいる。烏天狗の翼が黒色なのに対し、この大きな天狗の翼は白色だ。

 

(アレがボスかな。多分大天狗だろうね。羽団扇もあるし、遠距離攻撃にも注意しないと)

 

 大天狗の手には、十一枚の羽根で出来た羽団扇がある。

 伝承で大天狗は自身の翼か部下に献上させた羽で作った羽団扇を使い、炎や風などを起こしているとされている。

 運営が伝承に基づいて大天狗を製作していた場合、似たような攻撃を使用する事は容易に想像がついた。

 

(相手の数は中々多い。油断せずに行こうか! オウル! 『ここで待機して戦闘を見ていろ!』)

「ホー!」

(【跳躍】! 【クインタプルスラッシュ】!)

 

 オウルが肩から離れるのを確認すると、ハイドは【跳躍】を使って近くにいた烏天狗の傍に降り立ち五連撃のスキルで攻撃した。

 倒された烏天狗の断末魔に他の烏天狗達もハイドの存在に気付き、刀を抜いてハイドに殺到する。

 しかしハイドのレベルは、NWOの中でもトップクラス。対する烏天狗達のステータスは二階層に出てくるモンスターの中の上レベル。数も然程多くはないので、【隠者】の効果でステータスが半分のハイドでも、立ち回りを少し気を付ければ囲まれて倒される事はない。

 因みにボスが見えてるのにさっさとボスを倒しに行かない理由は、オウルのレベル上げの為だったりする。

 

(神経張ってれば倒されないけど、正直疲れるな。それと何でか烏天狗の数があんまり減ってないような気がするんだけど……)

 

 ハイドが戦いながら大天狗がいる木の方を見てみると、丁度新たに三体の烏天狗がこちらに向かって飛び出してくるところだった。

 

(あぁ~、なるほどね。烏天狗の数があんまり多くないから変だとは思ってたけど、補充してくるのかよ。それじゃ減らないわけだ)

 

 ハイドが納得していると、ハイドに殺到していた烏天狗達が一斉にハイドから距離を取る。と同時に嫌な予感がしたハイドが大天狗の方を見上げると、大天狗が羽団扇を振りかぶっているところだった。

 

(アレ絶対何かヤバい! 【影の結界】! 【隠形】! 【超加速】!)

 

 目視不可の結界によって目視されなくなったハイドは、さらに姿を消して一気にボスに向かって走り出す。

 念のため後ろを確認すると、今まで立っていた場所が炎の渦に飲み込まれていた。

 

(あっぶな! 仲間を巻き込んで攻撃するような、非道な奴じゃなくてよかった)

 

 ハイドは大天狗がいる巨大樹の根元まで辿り着くと、【跳躍】を使用してどんどんボスに近付いていく。烏天狗も大天狗も、未だハイドの位置を補足できていない。

 

(【弱点看破(ウィークネス)】【暗殺】。当たれよ確率50%! 【ピンポイントアタック】!)

 

 念には念を入れ一旦小刀を鞘に戻して、【居合切り】も発動させながら大天狗の首を狩る。無事に【暗殺】の効果が発動し、大天狗は光となって消えていった。

 大天狗が倒されると、烏天狗達は慌てたように何処かへ飛び去って行く。残党狩りの必要は無いようだ。

 

(ふぃ~、討伐完了! オウル、『戻っておいで』。さてと、宝箱か何かあると思うんだけど。流石に報酬なしってのはないだろうし)

 

 案の定探してみると、巨大樹の上にはハイドと同じぐらいの高さのお社と鳥居が建っていた。

 

(敵が天狗だったからか? 何か和風な感じだな)

 

 今までダンジョンの報酬は宝箱に入っていたため、初めてのパターンでハイドは少し新鮮に感じる。

 

(さてさて、中身は何かなぁ? お、メダルだ! やった!)

 

 お社の観音扉を開けると、中には三枚のメダルが入っていた。

 それを見たハイドは、予想以上の戦果に思わずガッツポーズをする。

 

(これで目標の十枚まで残り一枚。意外と早く集まったな)

「ホ~♪」

 

 ハイドの反応でハイドが喜んでいると感じたのか、オウルも嬉しそうに鳴き声を上げる。

 

(さてと、まだ日も沈んだばっかりだし、もう少し周りを探索しようかな。夜限定のダンジョンとか、まだまだあるだろうし)

 

 そうしてハイドはオウルを肩に乗せたまま、夜の山に消えていった。




ハイドが順調過ぎるぐらいにメダルを集めているので、ちょっとイベントの時間が余りそうです。何か書けるもの考えとかないと……。
ハイドの場合、どれだけ強いボスでも【暗殺】の効果でサクッと倒せちゃうから、難易度の描写が難しい! 前回のコボルトも今回の天狗も実はそこそこの難易度なんですけどね。
相棒のオウルが孵化して、指示を出すために少し喋っていたハイドはまたすぐに喋らなくなってしまった……。ハイドに喋らせると、何か新鮮な感じがしますね。普段喋らせないのが原因なんですけどね……。
次回、イベント四日目。ハイドが徘徊モンスターって事になります……?


オリジナルモンスター

烏天狗
顔に嘴、体に烏のような黒い翼を持つモンスター。山賊装束を着ており、武器の刀を腰から下げている。
午後六時の日暮れになると、山脈地帯のとある山の山頂に生えている巨大樹から出現し始める。出現と共に巨大樹からその山中に散開していくが、出現場所の山から別の山の方に移動する事はない。
ステータスは二階層に出てくるモンスターの中の上レベルで、巨大樹付近には十匹ぐらいが徘徊している。巨大樹付近をくまなく警戒しており、プレイヤーを見つけると他の烏天狗も殺到してくる。また、倒しても巨大樹からすぐに数が補充される。無限湧き。巨大樹付近の数は一定に保たれる。

大天狗
顔は赤く、高い鼻がある。体に生えている翼は烏天狗とは違い白色。武器は羽団扇。
プレイヤーが現れてからランダムの秒数で羽団扇を使い、炎か風などのいくつかの現象を引き起こす。
羽団扇を使う際は、周囲の烏天狗がプレイヤーから離れる。


本来は大天狗に近付く距離に応じて烏天狗の出現数が増加するが、ハイドは一気に距離を詰めたのでそんな事態にはなりませんでした。
羽団扇の攻撃の威力もかなり高く、まともに受けて耐えられるのはメイプルだけ(逆に言えば、メイプル以外耐えられない。クロムでも無理)。ハイドはステータスを上げて躱してしまいましたが。
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