派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う 作:名無しの投稿者
最近仕事が忙しくなり休みが不規則になったり、休みの日に激しい頭痛に襲われて碌にかけなかったり(ただの片頭痛なので翌日には治りましたが)……後は面白い小説見つけて読んだりとかですかね。
以後はなるべく早めに更新できるようにします!
では本編です。
イベント四日目。すでに日が高くなってきている中、寝起きのハイドは洞窟の中でボーっと体を起こした状態で座り込んでいた。
結局あの後、夜中探し回ったのにもかかわらず、メダルは一枚も見つからなかったのだ。そして夜明け近くになりハイドはこの洞窟で眠りにつき、今になって起きだしたのである。
(……よし。目が覚めてきた。まぁ今までが順調過ぎたんだよな。一応後三日でメダルと一枚見つければいいだけだし、何とかなるだろ。昨日も戦果がなかったわけでもないし)
夜の時間帯に出てきたモンスターは強力で経験値が多いモンスターが多く、倒していく内にオウルのレベルが上がって新たなスキルを四つも覚えていた。
【休眠】
指輪の中で眠り、HP、MPを回復させる。休眠中はダメージを受けない。
【覚醒】
休眠状態を解除し、指輪から出てくる。
【発見】
気配や姿を隠すスキルを無効化して、モンスター及びプレイヤーを発見する。
【透視】
視界内の障害物の一つを透かして見る事が出来る。発動中、MPを毎秒1消費する。
(【休眠】と【覚醒】は、多分テイムモンスター共通のスキルだな。オウル固有のスキルはそれ以外か。どれも有用なスキルだけど、特に【透視】が最高だ。このスキルがあればオウルの一番大きな問題が解決する)
ハイドが【暗殺】を発動するためには、モンスターやプレイヤーに目視されていない必要がある。その為、経験値を得るために視覚内にハイドがいる必要があるオウルの【見稽古】と相性が悪かったのだ。
しかし、この【透視】があれば話は変わる。このスキルは、
(予想通り、
そう。ハイドはオウルに目を閉じさせて、瞼を【透視】を使う様に指示を出したのだ。
そしてその状態でモンスターを倒した時、オウルに経験値が入ることも昨夜の内に確認している。
(しかも瞼越しに見て直視してないおかげか、【隠者】の効果でステータスが上がってた。つまり目視されていないという判定だったわけだ。多分スキルの条件が違うのが原因だろうけど、好都合だな)
【隠者】や【暗殺】や【隠形】のスキル発動条件は『目視されていない事』なのに対し、オウルの【見稽古】は『視覚内で共闘相手が経験値を取得した場合』が条件だ。
普通ならこの二つに違いはないと考えるし、実際に
【隠者】などのスキルに記載されている『目視』とは、物越しなどではなく(ガラスなど透明なものは例外)直接目で見る事だ。
それに対し【見稽古】の方にある『視覚内』は、例え物越しで直接見えなくてもスキルなどで透かして見る事が出来れば『視覚内』に適応される。
つまり
(【発見】があれば、【隠形】で姿を隠してても俺を見つけられる。【暗殺】を使う時はオウルに経験値が入らなかったけど、これからは全部入るようになるな)
【発見】は
ただこのスキルは発見するだけで発見した物を知らせるスキルではないので、発見しても目で追うだけだ。
本来なら全く意味のないスキルだが、姿を隠すスキルを多用するハイドにだけは意味がある。
ハイドは狙える時はほぼ毎回【暗殺】を使って即死を狙っている。その際姿を隠していないとそれが実行できないため、実行すると【見稽古】の効果が発動せず経験値が手に入らない。
しかしこの【発見】のスキルによって問題は解決した。【透過】で瞼越しに見る景色でも【発見】が発動しているらしく、【暗殺】の効果で倒した分のモンスターの経験値もオウルに入っていた。この発見も昨夜の戦闘で確認したものだ。
(このスキルは多分、俺が姿を隠すスキルをよく使ってるからオウルが覚えたんだろうな。オウルの卵渡してくれた女の人も、『出来る事は変わる』って言ってたし。まぁこれは考えても仕方ない事か)
ハイドはそう考えを纏めると、立ち上がり洞窟の外に出る。昨晩の戦果を確認する内に、既に時間は正午を越えてしまっていた。
(寝るのが遅かったとはいえ、結局半日をほぼ寝て過ごしてしてしまった。こっから探索頑張んないとな!)
ハイドは真上まで上がった太陽を眺め気合を入れなおすと、そのまま木々伝いに山を移動していった。
◇◇◇
探索を開始してから五時間後。
ハイドは日が沈みかける中、木の枝に座りながら幹に背を預けて少し休憩を取っていた。
(な、ない……! あちこち探し回ったのに、なんでダンジョンやボスらしき奴が一体もいないんだよ……!)
山を下りて山脈地帯を抜け、草原や今いる森を手あたり次第探していたのだが、見つかるのはモンスターばかりで目当てのメダルは一枚も発見できていなかった。
(正直確かに今までが順調過ぎるってのは何度か思ったし、イベントの日数が半分を過ぎてるからもう攻略されてるダンジョンだって結構あるとは思う。思うけど……五時間探して特殊なモンスターも場所も一か所もないのは予想外だぞ!?)
一応モンスターを多数倒しているので、ハイドもオウルもレベルが上がっている。
その結果オウルが新たにスキルを覚えたりしているので戦果が全くない訳ではないが、残り一枚で目標達成という今の段階がハイドに若干の焦りを与えていた。
(待て待て、落ち着け落ち着け。今が四日目の日暮れだから、まだイベントは三日ある。焦る時じゃない。焦って集中力を乱して、プレイヤーに倒されてメダル全損したらそれこそ最悪だ)
ハイドは自身の焦りを自覚し、深呼吸をして気を落ち着かせる。そして落ち着いたおかげか、僅かに声が耳に入ってきた。
(ん? これは、声か? ……よく聞こえないな。【地獄耳】。これではっきり聞こえる……こっちの方か)
スキルの効果で聴力を強化して声がはっきり聞こえるようになると、その方向に向かって移動を始めた。
移動している間も、声の方に意識を集中させる。気付かれたと感じたら即座に逃げるためだ。
「順調にメダルが集まってきましたね」
「あぁ。だがこの量で満足せず、もっと集めるとしよう」
「ホント、
「当然だ。私達は第一回イベントの報酬で貰った金のメダルがあるが、都合で参加できなかったアゲハにはそれがない。出来れば十枚は集めて、各員で報酬を一つは受け取りたい」
「アタシとしては嬉しいけど、アレはアタシが参加出来なかったのが悪いんだし、やっぱ全員で山分けにしないか?」
「もう決まった事だ」
「それに参加できなかったのは仕事の都合でしょ? それは仕方ないと思うよ」
やがて相手が見える位置に来ると、ハイドは動きを止めて木の枝からそっと相手の姿を見る。
(うっわ。会話に聞き覚えのある名前が出てたからもしかしてとは思ってたけど、やっぱ【炎帝】のミィか。他には【崩剣】のシンに【トラッパー】マルクス。そして【聖女】ミザリーと……後一人は知らない奴だな。話からして前回イベントで不参加だったのか)
そこにいたのは『炎帝』の異名で知られるミィを筆頭に、第一回イベントの上位ランカー達だった。
唯一ハイドが知らない藍色の髪にショートカットの背の高い女性(アゲハと言うらしい)は、皮の鎧を着用しており背には大剣を背負っている。
(アレは見るからにパワーファイターで、小回りはきかなそうだ。さて、誰を狙うか……)
この時点で、ハイドはこの集団を襲う気満々だった。
今まで見つけたプレイヤーは、例え襲ったとしても確実にメダルを持っているとは限らなかったので無理に襲わなかった。
しかし今回の場合は話が違う。ハイドが知らない藍色の髪の女性を除いた全員が、前回イベントで十位以内である
つまりメダルを一人に固めている場合を除き、ほぼ確実に金のメダルを一人一つは所持している。
(何も全員倒す必要はない。誰か一人倒して、そいつが持ってたメダルを拾って逃げて隠れとけばいい。隠れるのは得意分野だし、襲うその瞬間まで気付かれなければ俺の勝ちだ)
ミィ達は、ハイドに気付かずに移動を続けている。先頭がミィで、次はアゲハという女性。その後ろにミザリーとマルクスが続き、シンが一番後ろという隊列だ。
(
安直に前衛を前にして後衛を後ろにするというものではなく、出来る限り後衛を真ん中にして守るという事を大切にした陣形だ。
今現在ハイドは後ろから追いかけている、なのでこの現状でこの陣形ではハイドが狙う相手は必然的に決まってくる。
(狙うは最後尾のシンだな。もう少し近づいて、油断したら一気にやるか)
ハイドは狙う相手を決めると、気付かれないように静かに、だが少しずつ確実に距離を詰めていく。そしてある程度近づいた時、ハイドは大胆な作戦を思いついた。
(……ちょっと賭けに出るか。【隠形】【
スキルで姿を隠したハイドは、木から降りてシンの真後ろに移動する。
ハイドの思いついた作戦とは、【隠形】で姿を隠して至近距離まで近づき、油断した一瞬の隙を突いて攻撃するというものだった。
真後ろに接近されても、スキルの効果で姿が見えなくなっているのでシン達が気付く様子もない。
ハイドは【隠形】の限界時間に気を付けながら、シンの隙を窺う。
「段々と暗くなってきたな」
「もう夜の時間みたいだね。今日の休む場所探す?」
「……そうだな。夜通し探しても効率が悪い。マルクスの言う通り今日の捜索は区切りにして、モンスターの出ない安全地帯を探すとしよう」
「そうですね。まだイベントも三日あります。メダルもそれなりにありますし、焦る事はないでしょう」
ミィが今日のメダルの捜索の中断に同意すると、若干張りつめていた空気が緩み
(今だ! 【暗殺】! 【ピンポイントアタック】!)
その隙を見逃さないハイドが、シンの首の急所目掛けて攻撃を放った。
「ぐぁっ!?」
「何だっ!」
シンは声を上げてゆっくりと倒れる。そのシンの声に、ミィ達が驚いて振り返った。
「シンっ!」
「……油断、大敵(【影の結界】!)」
地面に倒れたシンのHPが0になり光となって消える前に、ハイドはスキルを発動させて不可視の結界を作る。
そしてシンが
「い、いない!?」
「な、何今の!?」
「シンもいないぞ! まさか、アイツに倒されたのか!?」
「落ち着け!」
「ミ、ミィ……」
慌てふためいていた残りの面々だったが、ミィの叱責により落ち着きを取り戻していく。
「慌てるのも分かるが、辺りを警戒しろ。アレは時間帯によって出てくる徘徊型のモンスターだと思うが、まだ近くに潜んでいる可能性がある」
ミィの言葉により、全員がはっとした表情になり辺りを見渡した。
(うん。近くに潜んでるのは正解だな。ただ俺はモンスターじゃないんだけどね)
ハイドはすぐ近くの木の枝に乗って【潜伏】を使用して姿を隠し、ミィ達の様子を眺めていた。
本来ならすぐに離れた方がいいのだが、まだ【隠形】の使用が出来なかったのでやむを得ず近くに身を隠すほかなかったのだ。
「いない……のでしょうか」
「でもミィ。何でモンスターだと思ったの? プレイヤーかもしれないよ?」
マルクスが警戒しながらミィに問う。ミィも警戒態勢を崩さずに質問に答えた。
「もちろんその可能性は捨てきれないが、私が考えるにあまり高くないと思う。奴が最後に使ったスキルによって、一時的に周りが見えなくなった。しかし奴はスキル名を言っていたか?」
「聞こえ、なかったね。少なくとも僕には」
「私にも聞こえなかった。プレイヤーはスキル名を声に出して言わないとスキルを発動できないが、モンスターはその限りではない」
「なるほど。納得しました」
(いや、俺は声に出さなくてもスキル発動出来るんだけどな)
ミィの憶測の理由は間違ってはいない。ハイド以外のプレイヤーは【寡黙】の存在を知らないので、そう憶測するしかないのだ。
事実、ミィの話を聞き、一緒にいたパーティメンバーは納得した顔で頷いていた。
一方襲撃者であるハイドは、予想外の理由で目論見が上手くいった事に喜んでいた。
(モンスターだと勘違いされる事を願って、定型文みたいなのを言ってみたけど……それとは違う理由で勘違いされるとは思わなかったな。まぁ、結果オーライだけど。【寡黙】は広まってないみたいだな)
「……来ない、ようだな」
「奇襲に成功したら、すぐに離れて別のパーティを襲うモンスターだったのかもね」
ミィ達は数分間
「姿が見えなくとも、警戒を怠ってはいけません。私達はあのモンスターが奇襲をしてくるまで全く気が付かなかったんですから」
「そうだな。とりあえず休憩場所を探してシンと連絡を取るぞ」
「よし、急ごう!」
ミィ達は、足早にその場から去っていく。ハイドはその様子を見てさらに【地獄耳】でミィ達が離れていく音を確認すると、無意識に止めていた息を吐きながら木の幹のもたれかかった。
(あ~緊張した~! 見つかんなくてよかった~!)
ハイドは一応見つからないだろうという自信があったが、初めてのPKに相当緊張したようだ。
そのまま脱力して一通り緊張を解すと、ハイドもその場を離れるために立ち上がった。
(今日は疲れたし、夜の探索は止めにしてもう休もう。どっか近くに休めそうな場所があればいいんだけど……)
ハイドは最後に溜息を吐くと、休めそうな場所を探して移動を開始した。
そして丁度いい洞穴を発見すると、すぐに横になって眠りにつく。そうして、ハイドのイベント四日目は終わった。
ハイドが初PKです。メダルの確認は次回行います。次回、オリキャラ出します。
一応、今回出したオリジナル設定です。
『目視』と『視覚内』の違いについて
『目視』は物越しなどではなく(ガラスなど透明なものは例外)、直接目で見る事。
『視覚内』は例え物越しで直接見えなくても、スキルなどで透かして見る事が出来れば『視覚内』に適応される。
尚【透過】の本来の使い道は、岩陰などにテイムモンスターを隠して隠れた岩を透過して戦闘を見る事なので、瞼を透過させるのは運営も予想外の使い道となります。ただこの使い方は普通の人には何のメリットもない上に戦闘に時間制限が付くだけなので、運営としてもスキルの調整する気はありません。