派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う   作:名無しの投稿者

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イベント……終わりませんでした! すみません!


暗殺者と洞窟防衛

(えぇ~。この状況で俺達二人を残すかね。メイプルの事だから、多分何も考えてないんだろうけど、出来ればここにいて欲しかった……)

 

 完全にハイドを疑ってかかったサリーに、元々人と交流するのがあまり得意ではないハイド。

 サリーがいつもの調子だったらそうでもなかったのだが、罪悪感からか会話を上手く切り出せず、二人の間には気まずい沈黙が流れていた。

 

「……さっきは、その……悪かったわ」

「……サリーさん?」

 

 その沈黙を破ったのは、サリーだった。ハイドに対して顔を向けずに謝罪する。しかしハイドは、その謝罪の意味が分からず首を傾げた。

 

「だから、さっき! その、何かメイプルの反応からして本当にクラスメイトみたいだし。見憶えないとか言っちゃって悪かったなと思ってさ」

 

「……別に、大丈夫。いつもの事だし、気にしないで」

 

 実際ハイドにとって、他人に覚えてもらえないのはいつもの事だった。

 流石にここまで怪しまれたのは初めてだったが、状況が状況の為仕方ないと割り切っている。

 しかしやってしまった側であるサリーが、そんな風に割り切れるはずもなかった。

 

「私が気になるの!」

「……でも、正直まだ俺のこと、思い出せてないでしょ?」

「……確かに思い出せてないけど」

 

 メイプルに『隣の席の影山くん』と言われ、サリーは確かに隣の席に影山というクラスメイトがいる事は思い出していた。

 ただ何度思い返しても、その影山の顔がサリーの記憶から出て来なかったのだ。

 

「……一応、教室で話す。誰にも聞かれない方がいいし、二人は朝早くから学校来てるみたいだから、朝話す」

「分かった。とりあえずイベント終わるまでは共闘しましょ。一応言っとくけど、私メダル持ってないからね。全部メイプルに渡してある」

「……なるほど。一番安全だ」

「私もそう思う」

(メイプルにダメージを与えるには、防御力貫通攻撃を使うしかない。それも攻撃を当てる前に盾に当たってしまえば盾に食われるおまけ付き。掲示板でも書いてあったけど、マジでラスボスだな)

 

 ハイドは先日のメンテナンスでメイプルの大盾がプレイヤーを食らう原因となっているスキルである【悪食】に回数制限が付いていることも、今日の分の【悪食】を使い切っていることも知らない。

 なので実際は今のメイプルは物量で押しつぶせば意外と倒せるのだが、事情を知らないハイドにとって第一回イベントでノーダメージで2000人以上倒したメイプルはまさに鉄壁の城塞だった。

 

「でも【毒無効】持ってる奴が来たらメイプルでも駄目だから、ここに来るプレイヤーを倒すのが私の役目って訳」

「……メイプルさんの攻撃手段、盾以外だと毒だからな。イベントの映像見て【毒無効】取った奴も多いだろうし」

 

 尚ハイドは取っていない。正確には取れなかった。

 【毒無効】の前段階である【毒耐性】を取得するためには、状態異常の【毒】を受けなければならない。

 未だノーダメージでゲームをしているハイドにとって、耐性の為にダメージを受けるのはもったいない気がしたのだ。まだノーダメージが条件のスキルがある可能性があるので、それを狙っていたりもする。

 そんな風に雑談をしていると、入り口の方からガヤガヤと音が響いてきた。ここをダンジョンと勘違いしたプレイヤー達が、メダルを求めて入ってきたのだ。

 

「……雑談は終わり、みたいだな」

「そうね。まずは私達の仕事しないとね」

「……じゃあ、俺は隠れて、隙見て攻撃する」

「了解。じゃあ私はモンスター装うから」

「……了解(【潜伏】)」

 

 サリーの目が入り口付近に向いていたので、ハイドはしゃがんでからスキルで姿を隠す。

 

「じゃあよろ……って、どこ行ったの?」

(悪い。もう隠れちゃってる)

「何かのスキル……いや、スキル名は言ってなかったはず……」

「おい! 何か広い場所に出たぞ!」

「いや、考えるのは後にしよう」

 

 入ってきたプレイヤーの声が近くなったので、サリーは一旦疑問を頭の隅に置いて広間の中央に移動し戦う準備をする。そして準備が終わると同時にプレイヤー達が入ってきた。

 

「おい待て! 誰かいる!」

 

 先頭に立った斧を持った男の静止で、パーティー全員が足を止める。

 入ってきたプレイヤーの数は五人。武器は斧、長剣、メイス、杖、弓だ。更に片手剣とメイスを持つプレイヤーは、もう片方の手に盾を装備している。

 

(前衛三、後衛二のパーティー。盾役(タンク)は盾を持った二人が担当する感じか。オーソドックスでバランスの取れたパーティだけど、魔法専門の杖を武器にする者が一人だけか。まぁそこは一人に負担がかかり過ぎないように、他のプレイヤーも魔法を使って補助をするんだろうな)

 

「このダンジョンに何か用?」

「プレイヤー……? いや、モンスターか?」

 

 判断の着かなかった斧使いがサリーに声を掛けるが、サリーがその声に答える事はない。

 実はこのNWOには、プレイヤーかモンスターかを判断する術が無いのだ。双方共にHPバーが見えて、名称は見えない。

 なのでサリーがこのようにダンジョンのような場所で定型文のような言葉を出せば、モンスターと判断されてもおかしくないのだ。

 

「戦う?」

「……モンスターみたいだな。いくぞ!」

「「「「おう(えぇ)!」」」」

 

 実際入って来たプレイヤー達は、サリーをモンスターと判断して襲い掛かる。

 

「楽しい勝負になるといいね」

 

 サリーの周りから青い光を纏う魚達が現れ、さらにサリーのモンスター感が増す。

 

「うおらぁぁっ!」

 

 まず斧使いの男が、サリーの前で振りかぶった武器意を叩きつける。

 しかしサリーにそんな見え見えの攻撃は当たらない。その攻撃を紙一重で避けると、すぐさま反撃に移る。

 

「【ダブルスラッシュ】!」

 

 サリーの両手に持った短剣の四連撃によって、相手のHPバーが幾ばくか減少する。

 

(今のマジか! 確かに分かりやすい攻撃だったけど、それをすれすれで躱すなんて普通は出来ねぇだろ!? 何かのスキル……いや、見た感じ完全なプレイヤースキルだな。嘘だろおい)

 

 ハイドがサリーの技術(プレイヤースキル)に感心している間も、サリーは相手の攻撃を全て紙一重で避けて反撃してを繰り返していた。

 

(サリーさんは攻撃を全て紙一重で避けて、短剣の二刀流で手数を増やすスタイル。魔法は補助で使ってるみたいだな。しかし一体どんな視界してんだか……)

 

 サリーは正面の攻撃はもちろん、横からの攻撃も真後ろからの攻撃も全て紙一重で躱している。

 それはまるで、攻撃の方がサリーを避けていると錯覚する程だ。

 

(おっと。そろそろ俺も準備しないとサリーさんに怒られるな。【隠形】)

 

 先程とは違う姿を隠すスキルを発動させてハイドは動き始める。

 そしてサリーがメイス使いのプレイヤーのHPを0にした瞬間、一番後方にいた杖使いに襲い掛かった。

 

(【暗殺】【弱点看破(ウィークネス)】【ピンポイントアタック】)

「キャァッ!!」

「何だ!?」

 

 杖使いの悲鳴により、全員の動きが止まり視線が一斉にハイドに集まる。

 

「(俺もサリーさんに乗っとくか)……油断、大敵」

 

 サリーに続いて、ハイドも定型文のように話す。

 突然現れたハイドに全員が驚く中、その可能性を予想していたサリーだけは復活が早かった。

 

「【トリプルスラッシュ】!」

 

 すぐさま目の前にいた斧使いを仕留めると、今度はメイツ使いに向かって動く。

 ハイドの方も、ナイフによる投擲や【飛撃】を使い弓使いのHPを削っていく。

 

「何だコイツ!? どっから湧いて出た!?」

「一人倒されたから出てきたのか!? クソっ! 当たらねぇ! 頼む! 手伝ってくれ!」

「こっちも大変なんだよ! 斬撃が飛ぶとか何のスキル使ってんだ!?」

 

 全ての攻撃を避けるサリーと、最初以降一切喋らず次々スキルを発動させるハイド。

 タイプは違うが、どちらも厄介な敵であることには変わりがなく、プレイヤー達は一矢報いる事もなくそのまま倒されていった。

 

「お疲れ」

「……お疲れ、さま。多い人数、任せてゴメン」

「あ~それは大丈夫。私も戦いたかったし」

 

 サリーは出来るだけプレイヤーとの戦闘を避けたいメイプルやハイドと比べ、どちらかと言うと好戦的な方である。なので多目の人数と戦えたこと自体には、特に不満はなかった。

 

「ただ、ちょっと気になったことがあるんだけど」

(気になったこと? 今のプレイヤー達に何か変わったとこでもあったか?)

 

 先程のプレイヤー達は珍しいスキルを使用したわけでもなく、何処にでもいる一般プレイヤーと変わらなかった。

 サリーの気になったことが分からず首を傾げるハイドだったが、肝心のサリーが溜息を吐きながら首を振った。

 

「……いや、やっぱやめとく。スキルの詮索も追及はマナー違反だし」

「……? そう、か(あのプレイヤー達、そんな気になるスキル使ってたっけ?)」

 

 どちらかと言えば高いステータスよりも、レアスキルを持っていた方が強くなりやすいNWOでは、詳しいスキル内容や取得条件の詮索などはマナー違反とされている。

 結局サリーの疑問が分からなかったハイドだったが、取り敢えずそれ以上は追及しなかった。

 

「(スキル名と言わずにスキルを発動させてた。スキルは小声じゃ発動しないし、何かのレアスキルなのかな?)」

 

 サリーが気になっていたのは相手プレイヤーのスキルではなくハイドのスキルだったのだが、先程の戦闘を思い返すハイドはそのことに全く気が付かなかった。

 




意外と長引いて、イベント終わりませんでした。
次回、今度こそイベントが終わります。
一応オリジナル設定(になるのかなこれ?)です。

【毒耐性】について
原作では【毒耐性中】の取得方法は書いてありましたが、【毒耐性小】の取得方法は書いていませんでした。
一応メイプルは、フォレストクインビーの毒液を浴びて取得していますので、『毒を浴びる』という取得条件もあるのでしょう。
ただ一つだけ作者には疑問がありまして……実はサリーが原作一巻のユニークシリーズ取得前の段階で、【毒耐性小】を取得しているんですよ。
サリーが作中ずっと(少なくともレベル35まで)ダメージを受けていないのは【空蝉】を取得していることから明らかです。
なのに何らかの方法で【毒耐性小】を取得しているので、恐らく取得するのにダメージを受けない方法があるのだとは思うのですが……ただ少なくとも、【VIT】が0のサリーがノーダメージで取得する方法があるのは確実です。
それが作中に明記されておらず作者もさっぱり思いつかないので、あるとしてもハイドは現時点で思いついていないという事にします。
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