派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う   作:名無しの投稿者

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遅くなって申し訳ありません!
仕事が忙しくて、中々書けなくて遅くなってしまいました……。


暗殺者と第二回イベント終了

「後三十分か……」

「……? 三十、分?」

「あぁ、ゴメンゴメン。こっちの話」

(今の時間は十一時半だから、日付が変わるまで残り三十分だけど……それ重要なのか?)

 

 最終防衛ラインであるメイプルの主な攻撃手段が、日付が変わるまで使用不可能。 

 サリーはこの六日目さえ過ぎれば、後を凌ぐのは容易いと考えていた。

 

「……! 足音」

「今日最後の、お客さんかな」

 

 入り口の方から足音が聞こえ、サリーはダガーを構えてハイドは岩陰に身を潜める。それぞれ臨戦態勢を整え、やがてその足音の主が姿を現した。

 

「ん?」

「……ん?」

(あれ……?)

 

 顔を見合わせた侵入者とサリーが声を上げ、隠れているハイドも現れた人物に見覚えがあった。

 

「また、会ったな!」

「何だ、カスミだったんだ」

(第一回イベント六位のカスミだ。サリーさんと知り合いだったのか)

 

 サリーは相手がカスミであることと、その手が刀にかかっていないことを確認すると、ダガーを鞘にしまった。

 一度ダンジョンを一緒協力して探索した仲なので、戦闘の意思がなければ戦うつもりは無かったのだ。

 

「ハイド! 出て来ていいよ! この人戦う気ないみたいだから!」

「ん? 誰かいるのか? うおっ!」

「っ!」

 

 サリーが声を上げると、二人の傍にある岩陰からのそりとハイドが出てくる。

 どこかにいる事が分かっているサリーは悲鳴こそ上げなかったが、気配すら感じていなかったカスミは驚いて刀の柄に手をかける。

 

「わ~!! 待った待った! アイツ味方だから! 敵じゃないから!」

「む? そうなのか?」

 

 サリーは今にも刀を抜きそうなカスミを大慌てで止めると、この事態の元凶になったハイドに険しい顔を向ける。

 

「ハイドも普通に出て来てよ!」

「……普通、だったと思うが」

 

 ハイドにとっては呼ばれたから普通に出てきただけなのだが、他人にとってはそうではない。

 気配も音もなく暗い場所から現れる存在というのは、人間誰しも恐怖の感情を抱くものである。

 

「……サリーも心を許しているようだし、敵ではなさそうだな」

「心を許してるって……まぁ確かに、一応敵じゃないとは思ってるかな」

「ん? サリー? どういう意味だ?」

「いや、別にこっちの話だから!」

 

 最初完全に疑ってかかった罪悪感からか、サリーは言葉を濁す。

 その様子を不思議に思ったカスミが声を掛けると、サリーは慌てて誤魔化して話を逸らした。

 

「そういえばカスミは何でこんなところに来たの? ここはもう攻略されたダンジョンで、メダルはなさそうだけど」

「あぁ、私も金メダル持ちだからな。身を隠そうと思ってな」

「私達と同じ感じだね」

(これ多分、俺も同じに分類されてるよな。まぁオウルのレベル上げも必死になる必要がないし、同じ考え同士で一緒に戦うのも悪くないけど)

 

 ハイドは七日目の行動を決めかねていた部分があったため、特に何か言うでもなくサリーに乗る事にした。

 

「そういえばメイプルはどこにいるんだ? 姿が見えないが……」

「メイプルは奥で引きこもってる」

「会いに行っても大丈夫か?」

「毒の上を歩けないと一瞬で死ぬよ?」

(なるほど。サリーさんを倒しても、【毒無効】ないとメイプルさんのいる場所には進めないのか。そして最後にはメイプルさんが立ちはだかっている……何か俺が行ったダンジョンよりもダンジョンっぽいな。しかも報酬は最低でも金のメダルが一枚。破格過ぎる。難易度はその報酬に見合った困難さだけど)

 

 カスミもハイドと同じ様に奥の状態を察したのか、メイプルの元に行くことはなかった。

 

「まぁ、そのうち出てくると思うよ。私はメイプルにメダルを渡してあるから、ここでメダル狙いのプレイヤーを倒してる感じ」

「なら、私もここにいていいか? 外を歩いていると、やたらと戦闘になってな……」

(前回のイベント上位者達は、イベントの公開映像とかで顔が割れてるからだろうな。ほぼ確実に金メダルを持ってるから、そりゃ狙われるだろうよ)

「別にいいよ。ハイドもそんな感じでここにいるようなもんだろうし」

「そうなのか?」

「……元々、ここで寝てて、うるさくて起きたらサリーさんがいた。後は、成り行きで」

「なるほど。先日見かけなかったのはここで出会ってたからなのか」

「そ。それでここに入って来たプレイヤーを倒すの手伝ってもらってるの」

 

 カスミとサリー達は四日目に出会い、協力してダンジョンを攻略している。

 その時カスミはハイドを見ていなかったので、何時出会ったのかと疑問に思っていたようだ。

 

「まぁそんな訳だから、カスミも誰か来たら斬ってね」

「了解。私も金メダルは持ち帰りたい」

(ダンジョンの難易度がさらに増した……報酬も増したけど、常人がクリアできるレベルじゃないなこれ。モンスターのフリする必要はもうなくなったみたいだけどな)

 

 有名人のカスミが洞窟の防衛に加わったことで、サリーとハイドをモンスターだと勘違いする者はいなくなるだろう。

 ただ加わったのがほぼ確実に金メダルを持つ存在であるカスミなので、イベントの残り時間も少ない現状では金メダルの誘惑により戦闘になるのは明白だった。

 

     ◇◇◇

 

「サリー! レベル上がったよ~!」

 

 侵入者との戦闘も終わって三人が雑談をしていると、奥の方から満面の笑みでメイプルが走って三人の方へ駆け寄ってくる。

 その足元にはメイプルの相棒である亀の『シロップ』と、サリーの相棒で一時的にメイプルに貸し与えられていた狐の『朧』がいる。

 

「ほらほら~! シロップ達も新しいスキルが手に入って……あれ?」

 

 メイプルは広場に入ったところで、ようやく自分が思っていたよりも人数が増えていたことに気が付いた。

 

「カスミ!? 何でいるの!?」

「ん……それはまぁ、メダルを守るためだが……その二匹は何だ?」

 

 モンスターなのに、明らかにメイプルに付き従っている姿にカスミは困惑する。

 しかしその疑問の答えは、投げかけた人とは別の人から返ってきた。

 

「……それは、共闘可能のモンスター。メイプルさんとサリーさんも、【モンスターの卵】を手に入れてたんだ」

「「え?」」

「そんなモンスターがいるのか。初めて見たな」

 

 ハイドの説明にカスミが物珍し気にシロップと朧を見る。

 だがその主であるメイプルとサリーは、ハイドがその存在を知っていることに驚いていた。

 

「ハイドくん、どうしてそのこと知ってるの!?」

「……そのこと?」

「共闘可能のモンスターのこと。私、ハイドに話してなかったよね?」

「……俺にも、相棒がいる」

「「えぇ!?」」

(オウル、『【覚醒】』)

「ホー!」

 

 ハイドは証拠とばかりに指輪から相棒であるオウルを呼び出して見せた。

 出てきたオウルは元気よく鳴き声を上げると、そのままハイドの肩を止まり木代わりにする。

 

「ホ、ホントにいた……」

「ハイドくんもあの鳥みたいなの倒したの!?」

「……鳥?」

 

 ハイドはメイプルが言った意味がよくわからなかった。

 隠し部屋を発見してそこにいたNPCの話を聞いた後オウルの卵を貰ったので、卵を入手するのに何かと戦ったりしなかったからだ。

 

「あれ? 違うの?」

「……あぁ。でもそう言えば、オウルはちょっと特別だって言われた。メイプルさん達はどうやってシロップ達を相棒にしたんだ?」

「えっとね~」

 

     ◇◇◇

 

 それからメイプルとサリーから話を聞いた後、ハイドもオウルの卵の入手方法を話した。

 ハイドとカスミは二人が倒した怪鳥の存在に、メイプルとサリーは自分達が倒した怪鳥のようなボスモンスターを倒さずともハイドがパートナーを入手したことに驚いていた。

 

「……祠に魔法陣……あ、そういえば」

「何? 何か思い当たる事でもあるの?」

「……あぁ。イベント初日に似たようなものを見た。見ただけで入ってはないけど、多分同じ物だと思う」

 

 ハイドは猛烈な危機感を感じたあの魔法陣を思い返した。メイプル達が言う難易度なら、そのぐらいの危機感を感じて当然と言えるだろう。

 

「えぇ!? どこで見たの!?」

「……海。沖の方の小島にある階段を下った先。木の扉があってその奥にあった」

「あ、それ私も見た。メイプル、多分あの巨大イカの魔法陣だよ」

「あそこの事だったんだ!」

「……メイプル達も知ってたのか」

 

 ハイドが海にいたのが初日だったのに対して、メイプル達は五日目に海を訪れていた。

 

「うん! 私とサリーで倒したんだよ!」

「……マジ?」

「マジよ。でもギミックで弱体化させたからかな? 報酬に【モンスターの卵】はなかったけどね」

「あればメイプルとサリーのパートナーは二匹になっていたわけか。それはそれで恐ろしいな」

(確かに。オウルは攻撃は出来ないけど、サポート方面は結構助かってる。俺が取得できないようなスキルで援護する存在ってのは結構助かる。しかもオウルと違ってこの二匹は普通に攻撃できるみたいだし、尚更だな)

 

 実際には報酬に卵はなかったので、パートナー二匹体制と言うのはハイドの妄想でしかない。

 しかし何をしてくるか分からない存在が増えるというだけで、相手にとっては相当脅威なのだ。

 

(今後何かのイベントでパートナーを入手できるようになるかもしれない。プレイヤーと戦う時に、相手がパートナーを呼び出したりしたら気を付けよう)

「それでメイプル、これからどうする? この洞窟から出る?」

 

 ハイドが考え込んでいる間に、三人は次の話題に移っていた。

 時間は既に十二時を過ぎているのでメイプルのスキルの使用回数は戻っており、ここから出ても戦えるようになっている。

 

「う~ん……私はこのまま洞窟の中にいたいかな。もうメダルは集まってるし、誰かに取られたら嫌だし!」

「それはないと思うけど……分かった。ハイドはどうするの?」

「……俺も十分な量を集めてある(正直このままここにいていいなら是非ここにいたい。ここなら襲われても容易く撃退できそうだし、この安全圏を逃す手はない!)」

 

 ハイドの所持メダル数は、金メダルが一枚に銀メダルが十四枚。

 余分に四枚あるが、報酬を二つ貰える計算だ。当初の目標が十枚だったことを考えると、確かに十分と言っても過言ではない。

 

「ならメイプル。入り口を潰してきてくれない?」

「ん、了解!」

 

 メイプルは広場の入り口まで歩いていくと、腰に下げている【新月】を抜いて紫色の巨大な魔法陣を展開する。

 

「【毒竜(ヒドラ)!】

 

 魔法陣から出てきた毒竜(ヒドラ)は、洞窟の出入り口に向かいながら通路をグチャグチャにしていく。

 その途中で二組のパーティーを壊滅させたが、広場にいるメイプル達にはあまり関係のない事だった。

 そしてメイプルはそのまま通路をある程度進むと、【ヴェノムカプセル】で道を塞いで戻ってきた。

 

「これで安全は確保されたね!」

「もうメイプル以外誰もここから出られないけどね~」

「あぁ、そうか。そうだったな……信じてるぞ?」

(まぁ襲われたら襲われたで、全力で抵抗するけどな。襲われないにこしたことない)

 

 カスミの言葉に、メイプルとサリーは顔を見合わせる。そしてメイプルが首を横に振り、サリーはその意図を察した。二人はこのままハイドとカスミを攻撃しない意思を固めたのである。

 

     ◇◇◇

 

「暇だね~」

 

 イベント七日目にして最終日。毒により出入り口が封鎖された広場にて、唐突にメイプルの呟きが響き渡った。

 

「メイプル、いきなりどうしたのだ?」

「カスミは暇じゃないの? 一日中ココでボーっと過ごすの」

「まぁ確かに、退屈ではあるよね……」

(一応出入り口から誰か来ないか警戒はしてるけど、誰一人として来ないから退屈なのも分かる。別に来てほしいと思わないし、俺だったらあんな毒塗れの場所を通りたくはないけどな)

 

 七日目になって既に数時間経過しているのに、何もしていない状況についにメイプルが飽きてしまったようだ。

 出入り口をそのメイプルが毒で隙間なく埋めてしまっているので、来たくとも誰も来れないのだが。

 

「暇だから遊ぶ? いっぱい持ってきてるよ!」

 

 メイプルはインベントリに収納していた遊び道具を次々に取り出す。その様子を見ていたカスミはポツリと呟いた。

 

「……多いな。一体幾つ持ち込んでいるんだ……」

「このイベント用にいっぱい買ったんだよ! 七日間もあるからいっぱい遊べると思って!」

(メイプルさん独特の感覚だ。普通は七日間探索に費やしたりするものなんだろうけど)

 

 ハイドやメイプル達はいくつかの幸運により必要なメダル数を見つけているし、カスミはそもそも銀メダルを探すよりも金メダルを守る方に重点を置いている。

 なのでここにいる全員が最終日に引き籠るという選択が取れている訳だが、この洞窟の外ではメダルを求めて徘徊しているプレイヤーが数多くいる。そんなイベントに多数の娯楽アイテムを持ってきているのはメイプルぐらいだ。

 

「そういえば、カナデ強かったなぁ」

「カナデ? 誰の事だ?」

「……?」

 

 カナデを知らないハイドとカスミに、メイプルが説明する。

 そしてそのついでに、先程簡単にしか説明しなかった巨大イカの戦闘の事も詳しく話した。

 

(俺が見た祠の魔法陣は、確かにその巨大イカで間違いなさそうだな。流石にあんなヤバい感じがするモンスターがゴロゴロいるとは思いたくないし)

 

 ハイドの予想は正しく、運営が今回のイベントにおいて用意した【銀翼(怪鳥)】や【海皇(巨大イカ)】レベルのモンスターはそう多くない。残りは【地竜】他数体となっている。

 因みにそういった規格外のボスモンスターに対しては、どこかに弱体化のギミックが隠されている。弱体化させると【モンスターの卵】が手に入らないが、普通は弱体化させないと勝てないモンスター達だ。

 つまりメイプル達が弱体化させずに【銀翼】に勝ってしまったのは、運営側にとって完全に予想外の結果と言えた。

 

「メイプルはオセロでカナデにパーフェクトやられてたよね。メイプル弱いんじゃない? 私とオセロやる?」

「ムムムっ、言ったな~! 受けて立つよっ!」

「見ているだけと言うのも暇だな。ハイドくん、将棋は出来るか? 出来るなら相手をしてほしいのだが」

「……別に、構いませんけど」

 

 四人しかいない洞窟の中で、賑やかな声が響き渡る。

 因みにメイプルはオセロが強く他の三人を圧倒し、カスミは将棋で他の追随を許さなかった。サリーとハイドは得意なゲームは特になく、可もなく不可もなくといったところだ。

 そんな風に四人がメイプルの持ち込んだ多数のゲームで遊んでいる間、洞窟に侵入者は誰一人として来なかった。毒の壁は、その仕事を存分に果たしたらしい。

 やがて、イベント終了のアナウンスがフィールド全体に流れ始め、五分後に元のフィールドに転移する事が告知された。

 メイプルとサリー以外はイベント開始時にパーティーではなかったので、ここで一旦お別れになる。

 

「そうだ、ハイドくん。何かの縁だし、よかったらフレンド登録しないか?」

「……構いませんよ」

 

 ハイドはカスミから送られたフレンド登録を了承する。

 

(イベントが始まるまで空っぽだったのに、三人もフレンドが増えた。多分普通の人よりは少ないだろうけど、俺にとってはフレンドが出来た事自体驚くべきことだもんな)

 

 普段隠れて行動しているので、ハイドが他人と関わる機会など早々ないのだ。

 ただハイド自身が人見知りの為、その行動を改める気が一切ない。今後もハイドから交流してフレンドになる事はまずないだろう。

 そもそもこの三人のフレンドもハイドから登録を申し出たのはカラアゲのみなのだ。

 

「じゃあ二人共、またね!」

「あぁ、また会おう」

「……機会があったら」

 

 アナウンスから五分が経ち、その場にいる全員が元の場所に転移する。

 そうして、長かった第二回イベントが終了した。




ようやく第二回イベント終了です。最後少し駆け足になってしまった感じはありますが、無事に終えれてよかったです。次回、メダルによりスキルを取得します。
今回出したオリジナル設定です。

【銀翼】クラスのボスモンスターの数と弱体化ギミック
原作では【海皇】の弱体化ギミックしか登場していませんでしたが、同じ様なモンスターが最低でも三体(【銀翼】、【海皇】、【地竜】)いるのに、【銀翼】にはギミックがなくて【海皇】にのみあるのは不自然だと思ったので付け足しました(【地竜】に関してはそもそも運営の会話の中でしか登場していないのでそれについても付け足しました)。つまりメイプル達は【銀翼】の弱体化ギミック見つけられなかったというだけです(原作でも【海皇】の弱体化ギミックのヒントが書かれた本は、他のプレイヤーが見つけたのをPKで横取りしただけですし)。
また【銀翼】クラスのボスモンスターの数については全く書かれていなかったのでそちらもついでに複数いる事にしました(と言っても登場させることはありませんが)。
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