派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う   作:名無しの投稿者

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大変遅くなり申し訳ありません。資格試験勉強とか色々あったんです。

ところで皆さん、『鬼滅の刃』見ました?
私もすっかり嵌っちゃって、この一ヵ月でアニメ見て原作漫画見てこのサイトや他のサイトで面白い二次創作探したりしてましたよ!

……さて、遅くなった言い訳はそこそこにして、本編どうぞ。


暗殺者とゲーム復帰

「久々のログインだぁ~!」

 

 三日振りに『NWO』にログインしたメイプルは、両手を天に掲げながら大声を出す。まるでゲーム禁止を解禁された子供のようだ。

 大声を出して喜びを露わにするメイプルを、何人かのプレイヤーがチラッと見て、誰が出したのかを認識して二度見する。有名人がこんな目立つ真似をすれば当然と言えるだろう。

 

(……はしゃいでるなぁ~)

「あっ! ハイドくん!」

 

 そんなメイプルをハイドが何処か温かい目で見つめていると、ハイドに気付いたメイプルが笑顔で手をブンブンと勢い良く振ってハイドの元へ走って来る。

 

「久しぶり! って言っても毎日教室で会ってるけどね」

「……出来れば、現実(リアル)が分かる発言は止めてほしい」

「あっ! ゴ、ゴメン!」

「……別に、俺は大丈夫(多少噂されるだろうけど、俺は顔隠してるから特定されにくいだろうし)」

 

 寧ろ現実(リアル)が特定されて問題なのは有名人であるメイプルの方であるはずなのだが、当の本人は……

 

「ホント? 良かった~」

 

 などと言いながら安堵の表情だ。

 

(まぁメイプルさん、VRMMOどころかオンラインゲームすらあまりやらないみたいだし、ネットリテラシーに疎い部分があるのはしょうがないのかな……それにしてももう少し気を付けてほしいところだが)

 

 この彼女の迂闊な言動の原因は、メイプルがオンラインゲームになれていないのも理由の一つなのだが、彼女本人に自身が有名人だという自覚がないという部分が大きい。

 自分は一般的なプレイをしていると思っているので、自分の行動や言動に他人が大きく注目する事はないと考えているのだ。

 実際にはその異常な行動(スキル)から、第一回イベントで一位であり現在ゲーム内で最高レベルを誇るプレイヤー『ペイン』と同じかそれ以上に注目されているのだが、本人にその自覚が全く無いのである。

 

「サリーはまだなの?」

「……まだ来て……いや、今来た」

「ゴメン。待たせた?」

 

 メイプルとハイドが話している途中でサリーがログインして、その輪に加わった。

 

「ううん。そんなに待ってないよ。私も今来たとこだし。今日はどうするの?」

「それなんだけどさ、メイプルはこの三日間にあったことどれぐらい知ってるの?」

「え? 全然だよ。ゲームの話は極力耳に入らないようにしてたから」

(うわぉ。徹底してるなぁ……)

 

 メイプルはログインしていなかったこの三日間、ゲームに関する情報を完全にシャットダウンしていた為、今回のアップデートの内容を一切知らなかった。

 

「OK。じゃあ、一つずつ説明していくね」

「お願いします!」

 

 今回のアップデートによって、追加された要素は大きく二つだ。

 一つ目は、『防御力貫通攻撃スキルに対抗するスキル』の追加。今まで防御力貫通攻撃スキルを使われた場合、たとえ盾で防御してもダメージを受けてしまっていた。

 しかしこれからは、この追加されたスキルを使いながら盾で攻撃を防ぐと、防御力貫通攻撃スキルの効果を封じる事が出来るようになるのだ。

 

「じゃあこれからは、防御力貫通攻撃スキルも防げるようになるんだ! やった~!」

(滅茶苦茶嬉しそうだな。VITを上げた理由が理由だし喜ぶのも分かるけどな)

 

 メイプルはゲームの有利不利は一切関係なく、ただただダメージを受けると痛みを感じるのでそれを防ぐために防御力(VIT)に極振りしているのだ。

 普通のゲームだと相当なプレイヤースキルがないとやっていけないのだが、メイプルにとって幸いな事にこのゲームは普通のゲームではなかった。

 取得条件が難しかったりデメリットが大きい代わりに、場合によってはゲームバランスが崩壊する程強力な効果を発揮するスキルが幾つも存在している。

 そのスキル群のお陰で、メイプルは普通の攻撃ではダメージを受けない特殊なプレイヤーとなっていた。

 その防御力が高ければ痛み(ダメージ)を受けないという前提を最初の大型アップデートから崩されていたので、その対策が出来るスキルに大いに喜んでいるのだ。

 

「取得方法とか運営がもう発表してるから、時間が出来たら取りに行こうか」

「うん!!」

 

 そして追加された要素の二つ目は、ギルド設立に必要な『ギルドホーム』の購入が可能になった。

 『ギルドホーム』を購入するには、フィールドの何処かに現れる【光虫】というモンスターを倒す事で確実に手に入る【光虫の証】が必要になる。

 この【光虫】及び【光虫の証】には種類があって、その種類に応じて購入できる『ギルドホーム』のランクが上がる。

 

「そして【光虫】の数は、今の建物の数しかない」

「えぇ!?」

「運営は少しずつ数を増やしていくつもりらしいけどね」

 

 ただしそれは当然、今すぐではない。メイプルは癖を治すためにゲームを休んだ三日間によって、完全に乗り遅れてしまったのだ。

 

「大変! 急いで探しに行かないと!」

「メイプル」

「な、何?」

 

 大慌てですぐにでもフィールドに走っていきそうなメイプルに対して、サリーは冷静にインベントリからあるアイテムを取り出した。

 

「もう探してあるよ。メイプルが欲しがると思ってね」

「本当!?」

(俺も探すの手伝わされたな……一番ランクの低い奴だけど、見つけるの結構苦労した)

 

 最も低いランクとは言え、数に限りがある都合上ギルドを設立したがっているプレイヤーは全力で【光虫】を探す。

 そんなプレイヤー達よりも早く【光虫】を発見しなければならないので、サリーもハイドも必死になってフィールドを駆け回ったのだ。

 余談なのだが、実は少ないながらプレイヤーが余分に取った【光虫の証】を売りに出していた。しかしその値段は非常に高額。

 中々【光虫】が見つからなかったハイドとサリーも情報を調べたのだが、その値段に唖然とした。【ギルドホーム】を購入するためにお金を溜めなければならなかった都合上、その選択を諦めたという経緯があった。

 結局メイプルに見せた【光虫の証】が手に入ったのは、昨日の夜だったりする。結構ギリギリだったのだ。

 

「ただこれは【ギルドホーム】を買う権利を手に入れられるだけで、買うためにはお金も必要なんだ」

「お金……それってどらくらい必要なの?」

「【ギルドホーム】ランク毎に掛かるお金が違って、私達が手に入れられたのは一番低いランクのものだから……五百万ゴールドかな」

「ごっ……!? えぇ!?」

 

 【ギルドホーム】は家なので、当然かなり高額だ。一番高いランクなど、サリー達の持つ最低ランクの物より値段の桁が二つも違う。

 

(一級品のプレイヤーメイドの装備が二つか三つぐらい買える……何か装備が高い感じがするけど、逆に言うと最上位のプレイヤーはそれぐらいの値段ポンと出せたりするんだよなぁ)

 

 全身をプレイヤーメイドの装備で固めるとすると、その合計金額は一千万ゴールドを越えたりする。

 そう考えると、五百万ゴールドは意外と安いのかもしれない。しかし移動速度が遅いメイプルには、通常のフィールドでの狩りはかなり苦労する。

 実際に【白雪】を作ってもらったのもあるが、現在のメイプルの所持金は五万と少ししかなかった。

 

「じゃ、じゃあ今日はお金を稼ぎに行こう! 早く【ギルドホーム】欲しいし」

 

 そうして再びフィールドに向けて走り出そうとしたメイプルだが、それを止めるようにサリーが声を掛ける。

 

「メイプル」

「な、何?」

「既に用意してあるんだぁこれが」

 

 サリーがステータス画面を出して、所持金の欄を指をさす。

 そこには七桁の金額が書かれており、その一番上の数字は五が表示されていた。

 

「す、凄いよ! サリー凄い!」

「ふっふっふ……もっと褒めたまえ~。まぁ、ハイドにも手伝ってもらったんだどね」

「そうなんだ! ハイドくんもありがとう!」

「……いや、大したことはしてない」

「そんな事ないよ。すっごいやり易かったから」

 

 ハイドは基本隠れて【投擲】や【飛撃】で攻撃したり、余裕があれば【暗殺】で即死させるなどしかしていないので、自分はいてもいなくても大して変わらないと考えていた。

 確かに実際に多くのモンスターを倒したのはサリーだが、ハイドの的確な援護攻撃により非常にやり易かったのも事実である。

 

「二人共。お金、今度返すね?」

「う~ん……私の分は別にいいよ? 特に使う予定とかないし」

 

 プレイヤーのお金の使い道は、大部分が装備品関係だ。

 新しい装備を買ったり作ってもらったり手入れを生産職に依頼したりなど、いい装備を整えて維持するにはお金はいくらあっても足らない。

 しかし【破壊不可】が付与されている【ユニークシリーズ】を持っているサリーは、そういった装備品関係の費用が殆ど掛からない。

 なので、他のプレイヤーよりも比較的お金に余裕があるのだ。

 

「どうしてもって言うんなら、何か私に合った装備品とかがいいかな?」

「……分かった! 今度探しておくね!」

「いつでもいいからね」

「うん! ハイドくんにはちゃんと返すからね!」

「……俺も、別にいい。誘われたから一緒に狩りしてただけだし」

 

 ハイドは人見知りがかなり激しいが、別に一人でいたいという訳ではない。

 ただ人見知りで一緒にいる人が中々できない上に一人でいるのが苦ではなかったため、いつも一人で行動していただけだ。

 なので一人のところにサリーから誘いを受けたので、一緒に遊んでいたに過ぎない。

 

「でも、なんか悪いよ……」

「……そんなこと言われてもな」

 

 ハイドも【ユニークシリーズ】愛用者の為、サリーと同じく装備に掛かる費用が殆どない。投擲用の武器が減ったら補充するが、短剣よりも短いナイフは非常に安い。

 そしてハイドのスタイルは相手に見つかる前に攻撃するというスタイルであり、攻撃を受けずに戦闘を終えるのでポーションの類も使わない。

 つまりハイドもお金にはかなり余裕があるのだ。使わないので、この三日間でサリーに渡した金額を返されなくとも懐はかなり温かい。

 しかし、特に欲しい装備品があるという訳でもない。

 

「(困ったなぁ。でもなんもなしじゃメイプルさん納得しないだろうし……あっ、そうだ)……じゃあ、貸し一つという事で」

「貸し?」

「……うん。何か困ったことがあったら助けてほしい」

「……そんな事でいいの?」

「……大丈夫」

「……分かった! じゃあ何かあったら声を掛けて!」

(よかった。メイプルさんが納得してくれて)

 

 ハイドは口当ての下で、ホッと安堵の息を吐く。

 メイプルが中々頑固なのは先程のやり取りで察しがついていたので、問答が長引かずに済んで安心したのだ。

 

「じゃあ次は【ギルドホーム】を探しに行こう!」

「私達のランクは最低ランクだから、町の中心から外れた場所しかないんだよね」

「手に入れてくれただけで十分だよ!」

 

 メイプルは【ギルドホーム】の大きさには一切頓着しなかった。彼女はただ皆で楽しく遊べればそれでいいのである。

 

「……じゃあ、俺はこれで」

 

 どんな【ギルドホーム】を買おうかと話し合っている二人に対して、ハイドは一声かけて立ち去ろうとしたのだが

 

「え? ハイドくんどこか行くの?」

「……ん? いや、狩りにでも行こうかと思って」

「一緒に【ギルドホーム】を選ばないの?」

「……え?」

「え?」

 

 メイプルとハイドは、二人して首を傾げる。

 その会話を聞いていたサリーは、眉を顰めながらこめかみに手を当てた。

 

「ちょっと待って二人共。何か会話がかみ合ってない気がする」

「え? かみ合ってない? 何のこと?」

(俺もそんな気はしてたけど……何がかみ合ってないんだ? って言うか、何でメイプルさんは俺を引き留めたんだ? 二人が新しく【ギルド】作るのに、俺必要ないよな?)

 

 ハイドとメイプルは、本気で分からず二人して首を捻って考える。

 そんな二人の様子を見て、サリーは呆れたように溜息を吐いた。

 

「まずハイドに聞きたいんだけど、何でメイプルが【ギルドホーム】を一緒に選ぶように言った時不思議そうな顔したわけ?」

「……え? だって、俺必要なくないか?」

 

 サリーの質問に、ハイドは深く考えずに即答する。そしてその言葉を即座に否定したのはメイプルだった。

 

「え~! そんなこと言わないで三人で決めようよ! 皆で作る【ギルド】なんだし!」

「……え。まさかその『皆』って俺も入ってるの?」

「え? うん」

 

 不思議そうに聞くハイドに、『何当然のこと言ってるの?』と言わんばかりに平然と頷くメイプル。

 ここまで聞いて、ようやくサリーはかみ合わなかった会話の原因が分かった。

 

「つまりハイドはメイプルが作る【ギルド】入る気が無かったんだ?」

「え~!? 何で!? もうどっかから誘われちゃってた? それとも私達が作る【ギルド】じゃ嫌?」

「……えっと、別にそういう訳じゃないけど……」

 

 ずいっと体を近づけて聞いてくるメイプルに、ハイドは思わずタジタジになる。

 今まで一人で行動する事が多かったハイドは、【ギルド】に入るなど大人数で行動するという選択肢が頭にない。

 しかし、明らかに自分を歓迎してくれている二人の態度は、ハイドにとってはかなり新鮮で戸惑ってしまう。

 

「……本当に、いいのか?」

「もちろんだよ!」

「何遠慮してるのかは知らないけどさ、流石に色々手伝ってくれたのに【ギルド】に入れないとかそんな勝手なこと言わないって」

 

 気が知れている相手なら誰でもWELCOME! な性格のメイプルは、当然と言わんばかりに頷く。

 そして大抵いつもは暴走しがちなメイプルのブレーキ役を務めるサリーも、【光虫の証】の確保からギルド購入資金の確保まで色々手伝ってくれていたハイドに対して『【ギルド】には入らせません』と言うような性格ではなかった。

 寧ろ、ここまで手伝うのだから普通に入るものだと思っていたので、遠慮する素振りを見せたハイドに対して内心驚いていたりする。

 そんな二人の言葉を受けて、ハイドは少し考えた後に頷いた。

 

「(ギルドシステムが追加されるってわかった時は俺には関係ないなとか思ってたけど、まさかこの二人から【ギルド】に誘われるとは思ってなかったな。まぁ二人相手なら話しやすいし、【ギルド】も面白そうだったから丁度良かったけど)……じゃあ、遠慮なく」

「うん! よ~し! 皆で【ギルドホーム】を決めに行こ~!」

「お~!」

「…………ぉ~」

 

 メイプルの掛け声にノリノリで声を上げるサリーと、その二人の視線を受けて小さく続くハイド。

 そして三人は、入手した【光虫の証】でも購入できる【ギルドホーム】を探しに歩き出した。




次回、再会を果たします。
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