派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う   作:名無しの投稿者

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暗殺者と【楓の木】

 【ギルドホーム】を探す為に、ハイド達三人は町の端近くまで歩いてきていた。

 この辺りは中央の広場やNPCの店などが遠く不便なエリアだが、所持している【光虫の証】のランクが最低ランクなので、この辺りの【ギルドホーム】しか購入できないのだ。

 

「もっといいランクの証なら町の中心の大きい【ギルドホーム】も買えたんだけどね」

「手に入れてくれただけでも十分十分! 何から何までやってくれたんだから文句なんて言えないよ! それに私は【ギルドホーム】の大きさなんて気にしないし!」

「フフッ、まぁメイプルならそうかもね」

「うん!」

(寧ろデカい【ギルドホーム】持ったところで、メイプルさんは持て余しそうな気がする。サリーはともかく、メイプルさんに大型ギルドのギルドマスターとか無理そうだ。小型の仲良しギルドのマスターならできると思うけど)

 

 そのサリーも、メイプルと二人で一緒に遊ぶ時間が減るであろう大型ギルドのマスターはやらないだろう。

 そうして三人がしばらく歩いていると、メイプルがとある一つの【ギルドホーム】の前で足を止めた。

 

「ここ……いいかも」

 

 その【ギルドホーム】は、人通りの少ない道の奥の石造りの階段を下りた先にあり、少なく装飾がなされた木の扉がある。

 丁度いい感じに隠れ家的雰囲気を醸し出していて、道中でサリーとハイドが説明した【ギルドホーム】として登録済みである証しの扉に浮かぶ紋章もない。

 

「確かに、メイプルが好きそう」

(俺も静かにひっそりとしたこの感じは好きだな。目立たず派手でないのがなお良い)

「ここでいい?」

「うん、いいんじゃないかな」

「……俺も、気に入った」

 

 メイプルは二人から了承を貰うと、インベントリから取り出した【光虫の証】を扉に押し付けた。

 すると扉から放たれた白い輝きが、路地を埋め尽くす。その光が収まると、扉には淡く光る紋章が浮かんでいた。

 これでこの【ギルドホーム】は、メイプル達のギルドの物となる。

 

「早速入ってみよ!」

「うん! 行こう!」

 

 メイプルとサリーは待ちきれない様子で【ギルドホーム】の中に入っていき、ハイドはその後に続く。

 中は広々としており、木製の家具が中心に置かれている。

 

「結構広いし綺麗だね!」

「これでも【ギルドホーム】の広さとしては最下級なんだけどね。それでもギルドメンバーは五十人まで誘えるよ」

「結構多いけど、そんなに入るかな?」

 

 この【ギルドホーム】は二階もある上に広々としているとは言え、それは現在三人しかこの場にいないからだ。五十人も入ると、手狭になってしまうだろう。

 

「誰か誘ってみる? 急がないと皆他のギルドに行っちゃうよ?」

 

 まだ【ギルド】が設立できるようになってから二日しか経っていないので、【ギルド】を設立したプレイヤー以外はどの【ギルド】にも所属していないプレイヤーは多いだろうが、それも時間の問題だ。

 【ギルド】が設立して安定すれば、有名なプレイヤーの誘い込みが一斉に始まるのは想像に難くない。

 サリーの言葉に少し考えたメイプルは、何かを思いついたように一つ頷いた。

 

「……カスミとカナデを誘ってみようかな!」

「あの二人か~。いいね、早速連絡とってみよっか」

「うん!」

(カナデって確か、洞窟で言ってた二人が会った初心者の男の子だっけ。俺は面識ないけど、メイプルに似た雰囲気って聞いてるし、多分大丈夫……か?)

「サリー! 二人共ギルドに入ってくれるって! 広場で待ち合わせする事にしたよ!」

「良かったね。じゃあ早速行こっか」

「うん! ハイドくん! ハイドくんはカナデにあった事なかったよね? 着いたら紹介するね!」

「…………あ、あぁ。分かった」

 

 人見知りのハイドは、初めて会うプレイヤーに緊張しながら二人に付いて待ち合わせ場所に向かった。

 

     ◇◇◇

 

「二人ともありがとう! 嬉しいな!」

「僕も誘ってくれて嬉しいよ」

「あぁ、すまないな」

 

 メイプル達四人が親しげに言葉を交わす中、ハイドはメイプルとサリーの後ろで今日初めてその顔を見るカナデの様子を窺っていた。

 

(こう言っちゃ失礼だけど、随分女の子っぽい顔の子だな。声からして男の子だろうけど、黙ってたら女の子とあんまり区別つかない。性格はいい子そうだ。聞いてた通り、何となくメイプルに雰囲気が似てる。話しやすそうで良かった)

 

 人見知りであるハイドは、初対面の人に対しては基本的に自分から話しかけに行くことはない。

 更に人に気付かれにくい独特の雰囲気を出しているので、ハイドが相手に慣れるまではその相手と話すことも滅多にない。

 

「あっ、そうだ。ハイドくん! この子がカナデだよ! ゲームがとっても強いの!」

 

 もっとも今回の場合は、その独特の雰囲気を無視してハイドに気付けるメイプルがハイドにカナデを紹介するつもりでいたので、その滅多が起きてしまうのだが。

 

「……? わっ。え、忍者?」

「おぉ! ハイドくんか! 何時からいたんだ?」

「二人共何言ってるの? ハイドくんは最初から私達と一緒に来てたよ?」

「「え?」」

「え?」

 

 首を傾げて不思議そうな子をする三人。

 一方サリーとハイドは、そんな三人の様子を見て『だろうね』とばかりに頷いていた。

 

「まぁ、そうなるよね」

(これが普通の反応だよな。メイプルさんは普通に俺を認識できるから、それが異常な事に全く自覚なんてないだろうけど)

「アンタも苦労するわね。顔を忘れてた私が言える口でもないんだけどさ」

「……気にしてない。あの二人とサリーが普通。メイプルさんは……よく分からない。今まで普通に俺を見つけて話しかけてくる人と会った事ないから」

「……本当にアンタ、苦労してるわね……」

 

 サリーの声に、本気の同情と僅かな呆れの色が混じる。ただその同情も、ハイドにとっては慣れたものだった。

 

(俺の体質を聞いた人は大抵皆同情するんだよなぁ……いやまぁ俺も客観的に考えたら寂し過ぎだろとか思わないでもないけどさ)

 

 ハイドは確かに他人から気付かれにくい体質をしているが、別に全く気付かれないわけではない。

 気付かれた時に雑談として、自分の体質を話す機会は何度かあった。そして話すと、決まって皆同情の眼差しを向けるのだ。

 

「サリー! ハイドくん最初からいたよね!? カスミもカナデも全然分かって無いみたいなんだけど!」

 

 二人の間に流れた微妙な雰囲気は、メイプルの大声によって霧散する事になった。

 

(ナイスタイミングだメイプルさん! 毎回そうだけどこの微妙な雰囲気は気まずいんだよ!)

 

 話す度に向けられる同情は、自身の体質をとっくの昔に受け入れているハイドにとって余計なお世話以外の何物でもない。

 基本的に隠す程の事でもないため聞かれたら答えるのだが、この同情は向けられる度に煩わしい気持ちになっていた。

 そんな雰囲気が早々に霧散したため、ハイドは内心でメイプルに感謝の声を上げた。

 

「何メイプル。まだやってたの?」

「だって二人共全然分かってくれないんだもん! ハイドくん普通に居たよね!?」

「はいはい、居た居た。ずっと後ろをついてきてたはずだよ」

「ほら~!」

 

 メイプルがそれ見た事かと言わんばかりの声を上げるが、そんな風に言われても二人が思い出す訳もない。

 ついでに言ってしまうと、断言したサリーも別にずっと存在を意識していた訳ではなく、何ならカナデにハイドを紹介するまで少しの間存在を忘れていたりもする。

 それでもずっと居たと言ったのは、メイプルが示した方向にハイドが居たからだ。

 わざわざ一度外れてまた合流するなど、非効率的な行いをハイドはしないだろうと判断したからそう言ったにすぎない。

 

「……メイプルさん、落ち着いて。俺は別にいつもの事だから気にしてない。後、出来れば俺の紹介もして欲しい」

「うぅ……! 分かった。ゴメンね。カナデ、この人はハイドくん。前のイベントでカナデと会った後に会って仲良くなったんだ」

「そうなんだ。僕はカナデだ。カナデでいいよ。ハイドさん」

「……これからよろしく、カナデ」

「うん、よろしくね」

 

 そう言ってカナデから差し出された手を、ハイドは一瞬悩んだ後すぐに握った。

 メイプルに似た雰囲気を持つカナデには、慣れるのも早かったようだ。

 

「では私からもよろしく頼むよ、ハイドくん」

「………ぇっ、あっ、えっと……こ、こっちこそ、よろしく。カスミさん」

 

 カナデから差し出された手はすぐ掴めたのに、カスミからの手はすぐに掴めなかったハイド。異性に対し触れるのは抵抗感があるようだ。

 

「じゃあ早速私達のギルドに行こう! 結構いいホーム見つけたんだ!」

「へぇ。どんな所か楽しみだなぁ」

「頼んだぞ、メイプル」

「任せて! ……ってあれ?」

 

 自己紹介も終えて早速歩き出そうとしたところで、見覚えのある鎧がメイプルの視界に入って来た。

 

「クロムさ~ん!」

「ん? おぉ、メイプルじゃないか! イベント振りだな」

「はい! 久しぶりです!」

 

 メイプルが声を上げて呼び止めると、その人物……クロムがメイプルに気付いて駆け寄ってくる。

 

「メイプルはあの後どうだった? 俺達が負けた後に雪山のアレに入ったんだろ?」

「すっごく強かったですよ~! 何とか勝てましたけど」

「そうか、良かったな……(アレに勝てたのか……)

 

 クロムも『メイプルならもしかして……』と予想はしていたが、実際に本人の口から聞いて改めて驚愕する。

 彼自身も実際に戦い、ほんの僅かな時間で敗北したあの化物のようなボスモンスターを倒してしまったメイプルの強さを改めて再確認した。

 

「メイプルは第一回イベントの時から注目されてるし、ギルドとか入り放題なんだろうな。まぁ、条件付けているギルドもいくつかあるが……」

「ギルド……そうだ! クロムさん、もし良かったら私達が作ったギルドに入りませんか? まだ予定が無ければですけど」

 

 第二回イベントでクロムがパーティーを組んでいたのを目撃していていた為、これはメイプルにとってダメ元の勧誘だった。それでも誘ったのは、クロムも一緒のギルドで遊べたら楽しくなると思ったからである。

 

「え? メイプルのギルドにか?」

「はい!」

「えぇっと、俺は構わないけど……サリーちゃんはどうなんだ?」

 

 突然の勧誘に戸惑ったクロムは、この場にいるもう一人の顔見知りに問いかける。

 

「私も別にメイプルがいいなら構いませんよ? もちろん先程メイプルが言った通り、他のギルドに入る予定が無ければですけど……でもクロムさん、イベントの時には確かパーティーを組んでましたよね? その方達と一緒のギルドに入るんじゃないんですか?」

「アイツ等はイベントの時限定の臨時パーティーだ。イベントが終わった段階で俺はパーティーからは離れてるから問題ない。まぁ二人がいいなら、喜んで入れさせてもらおう」

「はい! 歓迎しますよ!」

「よろしくお願いしますね」

「おぉ。よろしく」

 

 こうしてクロムがメンバーに加わる事となった。

 またメイプルがハイドに話しかけた際に、初めてハイドの存在に気付いたクロムが声を上げて驚いてしまったのは、もはやお約束と言っていいだろう。

 

     ◇◇◇

 

 クロム達を【ギルドホーム】へと招いたメイプル達は、ホームの中を一通り案内すると彼らをギルドメンバーとして登録した。

 

「では改めて、ギルドマスターのメイプルです。防御と毒攻撃には自信があります!」

 

 登録後はメイプルのこの一言を皮切りに全員揃っての自己紹介が改めて行われ、それと同時に得意分野の自己申告も同時に行われる。

 最初に自己紹介したメイプルが自分から言ったのもあるが、同じギルドに所属し共に戦う仲間になったので、隠す必要がないのが最大の理由だろう。

 

(サリーは回避、クロムさんは大盾の扱い、カスミさんは近接、カナデは遠距離魔法、そして俺の隠密と奇襲。前衛と後衛のバランスが悪いのが欠点かな)

 

 結果的ではあるが、後衛がカナデ一人に対して前衛が五人というかなりアンバランスなギルドとなってしまった。

 

(メイプルさんの知り合いしか声を掛けてないし、これから誰か後衛が入ってくれるかもしれないけど……今のままだとカナデに負担が掛かり過ぎるな。誰かを勧誘する時は後衛を優先する……ように言っておこう。俺に勧誘して来いとか言われても絶対に無理だしな。)

 

 バランスが悪い今の状況があまりよろしくないのは分かっているが、初対面の人に話しかける勧誘を自分が上手くできる自信がないため、ハイドはこの問題は他の人に助言するだけに止める事にした。

 

「じゃあ次はギルドの名前かな。メイプルが決めていいよ、ギルドマスターなんだし」

「え? いいの?」

 

 サリーの提案にメイプルが他の人を見渡すと、全員が頷いて返した。

 ここにいる全員がメイプルを中心として集まっているため、メイプルがギルドマスターになる事やメイプルがギルド名を決める事に全く異論がないのだ。

 

「えぇっと、じゃあ……」

 

 皆の反応にメイプルはしばし考えると、やがてパネルに名前を打ち込んだ。

 

   【楓の木】

 

 これが後に『人外魔境』や『魔界』と呼ばれ、大規模ギルドと互角以上に渡り合える唯一の小規模ギルドとなるのだが……このギルドの存在が知れ渡るのは、もう少し先の話である。

 




ようやくギルド設立です。
ハイドのギルドメンバーの呼び方には少し迷いましたけど、結果こうなりました。
メイプル      → ハイドくん
サリー       → ハイド
カスミ       → ハイドくん
カナデ       → ハイドさん
クロム       → ハイド

ついでに
イズ        → ハイドくん
マイ&ユイ&カラアゲ→ ハイドさん
になる予定です。
次回、お披露目です。
ちょっと時間が飛びます。
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