派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う   作:名無しの投稿者

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暗殺者と新メンバー

 ダンジョンを突破し、三層に到達した翌日。ハイドは一人黙々と、モンスターを奇襲で仕留めていた。

 

(新しいギルドメンバーが、必要なのは分かる。分かってるんだけど……ちょっと憂鬱だなぁ……)

 

 狩りをしながら、ハイドは億劫そうに溜息を吐く。

 事の発端は、到着した三層のギルドホームの内装を確認している時に運営から届いたメッセージにあった。

 メッセージの内容は次回のイベントの詳細で、内容がギルド対抗の戦闘イベントになるというお知らせだ。

 

(俺達【楓の木】のメンバーは、非戦闘職のイズさんを合わせてもたったの七人。このギルドが小規模ギルドなのを考慮しても、人数が少な過ぎる)

 

 低ランクの【光虫の証】で作られたギルドは小規模に分類されるのだが、それでも最大で五十人まで登録できる。

 しかし【楓の木】はたったの七人しかおらず、イベント当日に一人でも欠員が出ただけで致命的だ。

 他のプレイヤーを【楓の木】に勧誘する話になるのは、もはや必然と言えるだろう。

 実際にクロムが出したその提案をメイプルが受け入れ、現在メイプルとサリーの二人が勧誘の為に別の階層へ足を運んでいる。そしてその勧誘が、ハイドの気を重くしている一番の要因だった。

 

(……どんな人が来るんだろう)

 

 人見知りであるハイドは、知らない人が仲間(ギルドメンバー)として入ってくるのをひどく緊張しているのだ。

 もちろんカナデもクロムもイズも、メイプルに紹介されるまで知らなかったので、実際に会うまでかなり緊張していた。

 ようやく最近になって今いるメンバーに慣れ始めてきたのに、また新たに人が来る事になったのだ。人見知りに緊張するなと言う方が無理である。

 そんな緊張を紛らわすために、ハイドは一人で狩りに出かけていたのだ。

 

(あ、オウルが新しいスキル覚えた。順調にレベルが上がって来てるな。新しいスキルはっと……お、こいつはいいな!)

 

【確率上昇】

視界内にパーティメンバーがいる場合、パーティメンバーの確率で発生するスキル効果の発生率を上昇させる。

上昇値は【INT】×0.01%。

 

(ステータスは【INT】がかなり上がって来てるし、このスキルがあれば【暗殺】の成功確率が上がるぞ!)

 

 【暗殺】は目視されずに急所への攻撃が成功したとしても、50%の確率で失敗してしまう。

 しかしオウルの【確率上昇】があれば、その成功確率はオウルの【INT】の数値によって際限なく上昇する。ハイドと非常に相性がいいスキルである。

 

(よしよし。ちょくちょく狩りを見させてレベルを上げてきた甲斐があったな! 大分いいスキルを覚えてきた。もう少し狩りをするか)

「あれ? もしかして、ハイドさんですか!?」

 

 狩りを再開するために座っていた木の枝から立ち上がったハイドは、自身の名前(ネーム)を呼ぶ声に動きを止めて声がした方向に顔を向ける。

 

「あ、やっぱり! ハイドさんですよね!」

 

 ハイドを呼び止めたのは、紫髪に同色の瞳を持つ少年だ。ハイドに会えたのが余程嬉しいのか、満面の笑みを浮かべている。そして、ハイドはその少年に見覚えがあった。

 

「(この子は第二回イベントで猿に襲われてた子だ。名前は確か)……カラアゲ、だったか」

「はい!」

「……第二回イベント以来だな」

「お久しぶりですね!」

「……変わりは、無いようだな」

 

 ハイドは記憶力が特別優れている訳ではないのだが、カラアゲの事はすぐに思い出せた。

 それはハイドの関わったプレイヤーの数の少なさもあるのだが、一番の理由はカラアゲの変わらなさにある。

 カラアゲはこの階層にいるにしては珍しく、ハイドと初めて会った第二回イベントの時と変わらない初期装備のままだったのだ。

 カラアゲも、ハイドが何を指して変わらないと発言したのかすぐに気が付いた。

 

「あっ、えぇっと、何と言いますか……これだ! っていう装備に巡り合えなくて……」

(何だよその基準。この子、思いっきり感覚派だな。何となく気に入った装備が無かった、って言いたいのは分かるけど)

 

 気に入る気に入らない以前に初期装備はステータスに補正がないので、普通はある程度レベルが上がってきたら何かしらの装備を購入するものだ。

 その様な普通でない行動をとるカラアゲに、ハイドはメイプルに通ずるものを感じた。

 

     ◇◇◇

 

 ハイド達はとりあえず、町の中の喫茶店に移動した。初期装備のカラアゲをレベル上げに同行させるのに気が引けてしまったので、狩りに一旦区切りをつけたのだ。

 

「……一体、どうやってここまで来たんだ」

 

 ハイドが現在居るのは三層であり、到達するためにはダンジョンを二つは踏破しなければならない。

 そしてダンジョンには当然ボスモンスターが居り、それは決して初期装備のプレイヤーが撃破出来るようなモンスターではない。

 

(パーティーは組んだんだろうけど、そのメンバーは初期装備について何も言わなかったのか?)

「えっと、寄生みたいな方法なので言い辛いんですけど……高レベルの方にレアドロップと交換で連れて来てもらいました」

「……レアドロップ?」

「はい。僕は結構落ちるんですけど、他の人は中々手に入らないって掲示板で読んだので、それを交換条件にしたら快く快諾してくれました。道中もボスの相手も、僕は何もしていません……」

 

 非常に申し訳なさげに言うカラアゲだが、依頼を受けたプレイヤーはもちろんそれを込みで承諾している。

 受けたプレイヤー達も、流石に初期装備のプレイヤーに戦闘は期待していなかったのだ。

 

「(明らかにボス戦が大変になるのに依頼を受けたのか……一体何を渡したのか無茶苦茶気になるな。まぁ聞いても分からないかもしれないから別に聞かないけど)……気に病むことはないと思う」

「えっと、そう……ですかね?」

 

 ハイドが頷くと、カラアゲの表情が幾分か楽になった。どうやら結構気にしていたようだ。

 

(そこまで気にするなら装備を身に着けて自分も戦えばいいと思うんだけど……そこら辺は個人の自由だし、特に注意する内容でもないか)

「そういえば、ハイドさんはどこかのギルドに入ったんですか?」

「……ああ。【楓の木】」

「【楓の木】!? って、あの【楓の木】ですか!?」

「……知ってるのか?」

「もちろんです! 第一回イベントで三位だったメイプルさんが作ったギルドですよね! 掲示板で話題になってました」

(まぁ、メイプルさんなら何やったって話題になるか。ギルドの設立は話題になりやすいし、ウチのメンバーは有名人が多いしな)

 

 【楓の木】には、第一回イベントで上位入賞したメイプルとクロムとカスミがいる。そしてイズも生産職のトップとして有名であり、小規模ギルドでありながら優秀な人材の多い【楓の木】は注目の的だった。

 

「あ、あの! 僕も【楓の木】に入れてもらえないでしょうか!」

「……カラアゲが?」

「はい! ハイドさんと同じギルドに入りたいんです! お願いします!!」

(何故そこまで懐かれたのか……大した事はしていないと思うんだけど……)

 

 机に頭が付くのではないかと思うほど大きく頭を下げるカラアゲに、ハイドは少々困惑していた。

 確かに第二回イベントでモンスターから襲われた際に彼を助けているが、それ以降は一切関わりが無かった。たった一度助けられただけにしては、カラアゲはハイドに非常に心を許している。

 

「……俺の一存では決められない。一応ギルドマスターのメイプルに確認を取るけど、多分大丈夫だと思う」

 

 何故それ程に懐かれているのかは気になったが、ハイドとしては多少でも知っている相手がギルドに入るのに異論は無かった。

 

「本当ですか!? お願いします!」

 

 ハイドはメイプルが彼の加入を拒絶はしないだろうと考えていた。そもそも彼女は、何の理由もなく他者を拒否する性格ではない。

 

(カラアゲは普通に話しやすいし、感性もメイプルに似てる。他のメンバーにも受け入れられるだろう……あっ、返事返ってきた。……ふむふむ、なるほど)

 

 メイプルからの返信を読むと、ハイドは少し頷いた。

 

「……加入自体は問題ない。一緒のギルドに入れそうだ」

「そうですか! ありがとうございます!」

「……ただメイプル達も新しいメンバーを一層で見つけていて、その人を三層まで連れてくるみたいだ。他のメンバーとの顔合わせは、それを待つことになる」

「大丈夫です! 今日はもう宿題も終わっているので!」

「……そうか」

 

 とりあえず時間の潰し方に困ったハイドは、飲み物を追加注文してカラアゲの話を聞くことにした。彼自身は話すのがあまり得意ではないので、聞き手に徹する。

 そしてメイプルから三層到着のメッセージを受け取ると、二人はギルドホームへと移動した。

 

     ◇◇◇

 

「この子達が、私が一層でスカウトしたプレイヤーだよ!」

「ま、マイです」

「ユイです」

「「よろしくお願いします!」」

「二人は【STR】極振りなんだ!」

 

 メイプルとサリーが連れてきたのは、顔と身長と武器が完全に一致した二人の少女だった。一目見れば、誰でも双子と判断できるだろう。違うのは髪色だけであり、少し自信なさげ方が黒髪で、はっきりとした方が白髪だ。

 二人は初期装備を身に着けており、腰には両手持ち武器である大槌を装備している。

 

(大槌は武器の中でも一番【STR】の補正が高い。その分巨大すぎて扱いが難しいのが難点だけど)

 

 実際二人が身に着けている大槌も、低身長な二人の1.5倍はある。ステータスの【STR】は高いので問題なく持ち上げられるだろうが、現実にあったら成人男性が複数人がかりで持ち上げないと持ち上がらないと思わせるほど巨大だ。

 

「そして、ハイドくんが連れてきた子がこの子!」

「カラアゲと言います! 精一杯頑張りますのでよろしくお願いします!」

 

 カラアゲは自己紹介をすると、勢い良く頭を下げる。緊張をしているのか、顔が僅かに強張っていた。

 

「カラアゲ? 揚げ物の?」

「はい。僕の好物なんです」

 

 えへへ、とカラアゲは照れ笑いをする。その理由に対するコメントに困ったクロムは、彼を連れてきたハイドに矛先を向けた。

 

「しかし、ハイドが新人連れてくるなんて思わなかったな。一層から連れてきたのか?」

「……いや、カラアゲはこの階層にいたし、初めて会ったのは第二回イベントだ」

「……何で初期装備なんだ?」

 

 クロムの疑問にカラアゲはハイドにしたのと同じ説明をするも、当然クロムの理解は得られなかった。ただしその代わり、彼の装備を作る事になったイズはやる気を漲らせている。

 

「なら私がカラアゲくんが気に入るような装備を作ってあげるわ! どんな装備がいいか、早速話を聞かせてちょうだい!」

 

 張り切ったイズはそう言うや否や、カラアゲを工房の方に引っ張っていった。あまりの出来事に、誰も止められずに硬直している。

 

「あ、あの、大丈夫なんでしょうか?」

「僕の装備も同じようにイズに作ってもらったんだけど、その時は別に乱暴はされなかったから大丈夫だと思うよ? 上げたいステータスとか、どんなデザインがいいとかを聞かれるだけだよ。多分二人の装備もイズが作るんじゃないかな?」

 

 カナデからそう聞いて、ユイとマイは若干不安を覚える。 

 二人は特に人見知りなどしないのだが、先程のようなテンションで迫ってこられると流石に怖くなってしまう。

 

「そんな怖がらなくても大丈夫だって。俺もイズに装備を作ってもらったことあるけど、あんなテンションじゃなかった。と言うか、イズがあんなにテンションを上げたの自体俺は初めて見る。多分、二人には普通に聞くだけなんじゃないか?」

 

 クロムの話を聞き、二人は不安を和らげる。彼の憶測でしかないものの、実際に装備を作ってもらった事のある人の話を聞いて、多少安心したようだ。

 

「二人のレベルはこの階層に来るまでで多少上がったけど、まだまだ足りないよね……メイプルと二人は次は何時ログインできそう?」

「……レベル上げは、カラアゲも同行させてもいいか? アイツも然程レベルが高くない」

 

 カラアゲは他のプレイヤーに依頼を出してこの階層に連れて来てもらっただけであり、まだこの階層の適正レベルに達していない。流石にユイとマイほど低くはないが、【楓の木】で一番レベルが低いカナデより低かった。

 

「大丈夫だよ!」

「それで方法なんだけど……」

 

 サリーはメイプルの耳元で何かを話す。メイプルはその話を聞いて『ふむふむ』と数回小さく首を振り、最後に大きく頷いた。

 

「おっけ~! 任せといてよ!」

「じゃあ準備しておくね」

「うん、分かった」

 

 ユイとマイは二人のやり取りに疑問符を浮かべるも、取り敢えず三人が共にログインできる日の打ち合わせを行う。カラアゲの予定も聞きたかったのだが、それはイズから解放されてからハイドが聞くことになった。

 




カラアゲくんが【楓の木】に参加です。因みに彼も、極振りです。今回ギルドに入ったプレイヤー全員が極振りですね。
次回、スキルの取得方法を教えます。
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