派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う 作:名無しの投稿者
イベント開始までのほんのちょっとした付け足しみたいなもんですね。
―――追記―――
少し【
「この階層は色々あって面白いなぁ~」
第四回イベントを一週間後に控えたある日、暇を持て余したカラアゲは三層の町中をふらふらと歩き回っていた。
「今日は皆それぞれ忙しそうで、誰もいなかったしね」
ギルドメンバーは既にフィールドに出たりそもそもログインしていなかったりしたので、ログインした際にホームにいたのはカラアゲのみだったのだ。
カラアゲはステータスと取得スキルの特性上、一人でフィールドに出てレベル上げするのに向いていない。今日の様に運悪く誰も一緒にフィールドに出れないとなると、レベル上げにも満足に行えないのだ。
なのでこんなイベント目前の大事な日に、暇を持て余す事態になってしまった。尤も当の本人は、この機会にあまり見て回れていなかった三層を巡ってみようと観光気分で全く焦っていない。
「ん~! 甘~い!」
そんな訳でカラアゲは先程購入した飴を舐めながら、普段あまり入らない裏路地を中心に歩き回っていた。
「おいおいおい! どうすんだよ!」
「……ん? 何か騒がしい? 見に行ってみよ」
突然聞こえてきた声の方向に歩いて行ってみると、そこには工房らしき建物があった。中を覗いてみると、大きな炉の周りを数名の男達が困惑の表情を浮かべている。
「どうしたんだろ? あの~、何かあったんですか?」
カラアゲは男達が何故困っているのか気になり、一番近くにいる男に話しかけに行く。相手は大柄で屈強な男なのだが、彼は意外と物怖じしないタイプなのだ。
「あぁ、いやな? 魔力炉の魔力が尽きちまったんだよ。これじゃあ仕事にならねぇぞ。どうしたもんか……」
男の話を聞くと、カラアゲの目の前に青いパネルが現れた。
クエスト【魔力炉の補充】
どうやら男はクエスト発生に関わるNPCだったようだ。カラアゲが内容を読んでみると、枯渇した魔力炉に
「これは僕向きのクエストだよね! それに、困ってる人はほっとけないもん!」
カラアゲはクエストの内容を読んで意気込むと、そのままの勢いで『YES』をタップした。
「おぉ! おめぇが魔力を補充してくれんのか! 助かるぜ!」
カラアゲがクエストを受けると、男は途端に嬉しそうな顔をしてカラアゲを魔力炉の前まで連れていく。
魔力炉は天井までの高さが五メートルはある大部屋に置かれており、直径が三メートルはある円柱型だ。
そしてカラアゲはその魔力炉に取り付けられている、タッチパネルのようなものの前まで案内された。
「このパネルに手を置くと、魔力炉に魔力が補充される。一基補充してもまだ魔力に余裕があるなら、次々補充してくれ。報酬は出来高払いだ」
「……え? 魔力炉の補充って一基だけじゃないんですか?」
「おうよ。魔力がすっからかんなのはここにある魔力炉全部だ」
カラアゲが男の言葉を聞いて周囲を見渡すと、この大部屋には今彼の目の前にあるものと同じ魔力炉が全部で十基もある。その全てが魔力枯渇状態であるようだ。
「分かりました! 出来る限り頑張ります!」
状況を把握すると、カラアゲはパネルの上に手を置く。するとカラアゲの目の前に青いゲージが出現し、そのゲージが減っていくと同時に自分の体の中から何かが吸い出される感覚を覚えた。
「このゲージって今の僕のMPなのかな? って事はこれがMPを吸い出されてる感覚? 魔法使ってる時はそんな感じ全然なかったんだけど?」
実はこの感覚は、このクエスト限定で発生するものなのだ。本来ならパネルに手を置いてMPを消費するだけなのだが、運営がそれだけでは味気ないと用意した疑似感覚だ。特に意味もないのに無駄に演出に拘る運営である。
そうして立っていると、やがて魔力炉が大きな音を立て始めた。
「おぉ! すげえな! もう一基完全補充されたぜ! 魔力に余裕があるなら他のも頼むぜ!」
「分かりました! 消費量が全部同じなら、全部に補充が出来そうです!」
ステータスを確認すると、今の魔力補充で消費されたMPは500だ。
メイプルによるダンジョン周回レベルアップやイズ特製の装備によって、現在のカラアゲのMPは5000を超えている。よって全ての魔力炉の補充が出来ると確信したのだ。
「そりゃ頼もしいな! んじゃ、頼んだぜ!」
「任せてください!」
◇◇◇
「これで全部っと」
「助かったぜ! こいつはほんのお礼だ。受け取ってくれ」
魔力炉十基の魔力を完全に補充したカラアゲに差し出されたのは、スキルを習得するための巻物だった。
受け取ったカラアゲが早速巻物を開くと、書かれていた文字が光り輝いてスキルが取得される。
『スキル【
【
魔法を使用する際、通常より多くのMPを消費することで、使用する魔法の効果を増加させる。
消費MPは任意で設定可。増加する割合は消費MPによって上昇する。
「凄い! 僕にピッタリのスキルだ! MPもかなり余ってたし、これでもっと皆の役に立てる!」
カラアゲは基本的に、【
【
しかしこのスキルで、余ったMPを消費してより効果の高い支援が行えるようになった。ただしこのスキルを使用すると消費MPが段違いに高くなるので、使用は状況を見る必要があるだろう。
「あ、そうだ。サリーさんやカナデくんにこのスキルの事を話さないと」
イベントの作戦を立てるのは主にサリーとカナデのため、新たなスキルを取得した場合は出来る限り報告するように言われているのだ。尤も当然ながら、秘密にしたいスキルは報告する必要はない。
「きっとお二人なら、このスキルのもっと上手い使い方を教えてくれますよね!」
まぁメイプルと考え方が似ているカラアゲに、スキルを隠すという選択肢は全くない。このスキルも、詳細まで余すところなく伝えるのだった。
◇◇◇
「「やああぁぁ!!」」
所変わって二層の人気のない山奥。
そこではユイとマイが来たる第四回イベントに向けて、連携を上達させるために二人で戦っていた。
「「【ダブルスタンプ】!!」」
【侵略者】と【
縦横無尽に暴れ回った二人は、辺りのモンスターを粗方狩りつくしたのを確認すると、一旦休憩するため両手に構えた大槌を下げた。
「結構いい感じになって来たね、お姉ちゃん!」
「うん。ハイドさんから貰ったこのハンマーもすっごく使いやすい!」
マイの言葉に、二人は装備した大槌に目を向ける。
左手に装備した大槌は生産職であるイズに製作してもらった大槌だが、右手に装備しているのはギルドホームでハイドに会った際に渡された大槌だった。
『ウォーターハンマー』
【STR+15】【水属性攻撃】
【水属性攻撃】
任意で物理攻撃をダメージ半減の水属性攻撃に変更する。
『ファイヤハンマー』
【STR+15】【火属性攻撃】
【火属性攻撃】
任意で物理攻撃をダメージ半減の火属性攻撃に変更する。
因みにユイが『ウォーターハンマー』で、マイが『ファイヤハンマー』を装備している。
この二つの大槌は属性攻撃のスキルを取得できない二人に、ハイドが第二回イベントで入手してインベントリの肥やしになっていた丁度いい大槌を渡したものだ。
しかしこの大槌に付与されているスキルが、大槌を渡したハイドですら予想していなかった結果を出していた。
「属性攻撃にすると、ハンマーから火とか水とか出てきたから驚いたよね」
「出てきた火や水に当たってもダメージがあったから、モンスターも倒しやすくなったしね」
この二つのハンマーはスキルを使用して物理攻撃を属性攻撃に変更すると、攻撃時にその属性のエフェクトがハンマーから出てくるのだ。そしてそのエフェクトにも当たり判定があり、当たるとダメージが発生する。
本来ならダメージを半減してしまうため、属性の弱点を突かない限り大したダメージにならないので追加された要素だった。しかし膨大な【STR】値を持つユイとマイは、例えダメージが半減しても問題なくモンスターを粉砕できる。そのためこの予期せぬ追加効果は、ただただ即死範囲の拡大にしかならなかった。
よって、性能的にはイズが作製してくれて大槌の方が格段に高いのだが、攻撃範囲の拡大目的でこのハンマーを使っているのだ。
「あっ、またモンスター出てきたよ!」
「よ~し! ユイ、頑張ろう!」
「うん、お姉ちゃん!」
再び現れ始めたモンスターを見て、ユイとマイは武器を構えなおす。そうして二人はイベント開始の一週間後に向けて、連携上達のためモンスター相手に訓練を続けるのだった。
◇◇◇
そして一週間後の第四回イベント当日。
【楓の木】のメンバーは、ギルドホームの大部屋に集まってイベント開始を待っていた。
イベント開始まで各々の方法で強くなっていったメンバーは、コンディションもばっちりである。
「目指すは上位で!」
「「「「「「「「「異議なし!」」」」」」」」」
今回のイベントで特別報酬が貰えるのは上位十位以内なので、メイプルの宣言にメンバー全員が気合を入れて答える。
そしていよいよイベント開始の時間となり、運営からの開始のアナウンスが鳴り終わると十人全員が光に包まれてバトルフィールドへと転移していった。
第二回イベントでハイドが取得した大槌に、ちょっと特殊な効果を持たせました。
ただし本編にも書いたように性能的にはイズ作の大槌の方が圧倒的に上なので、ユイとマイは状況に合わせて大槌をインベントリから出して使い分けるという方法を取っています。
今回発生したオリジナルクエストです。
クエスト【魔力炉の補充】
クエスト発生条件:町の裏路地のとある建物の中に入る。
クエスト内容:NPCの依頼を受け、魔力が枯渇している魔力炉に
クエスト報酬:スキル【
次回、第四回イベント初日です。