派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う 作:名無しの投稿者
仕事で土日に休みが無いせいで、書ける時間が無くて……正直十二連勤はキツかった……。
来週も中々休みが取れそうにないので、遅れるかもです。
「あ~! 私も攻めたいなぁ~!」
「仕方ねぇだろ。俺達は足が遅ぇんだから」
所変わって【集う聖剣】の拠点では、金髪でサイドテールのフレデリカが退屈そうに大きめの石に座って足をぶらぶらさせていた。その手には魔法職だとひと目で判断できる、大きな宝石が嵌った木の杖を持っている。
フレデリカの不満にドラグは頭を掻きながら返すが、そう言う彼自身も早く戦闘がしたいと言わんばかりに一九〇センチはある身長に見合った斧を抜いていた。退屈なのは彼も同じなのである。
「フレデリカ先輩が攻撃に行くなら、ぜひ私も連れて行ってください! 絶対お役に立ちますよ!!」
そんな事を言いつつフレデリカの肩からひょっこりと顔を出したのは、緑色の髪に青目の少女『エリザベート』だった。全体的に髪や目の色に合った装備をしているが、手に持つ武器だけは武骨で真っ黒な特に特徴のない大弓に木の矢筒だ。
「エリー大丈夫だよ、冗談だから気にしないでね~。よしよし、エリーはカワイイねぇ~」
「えへへ~」
「お前達は相変わらず仲いいな」
「ぴぅ!」
「おっと」
フレデリカに頭を撫でられてご機嫌になっていたエリザベートだったが、ドラグが苦笑しながら近づくと小さい悲鳴を上げながらフレデリカの陰に隠れてしまった。
「ドラグ~。エリーは男の人苦手なんだからあんまり近付かない様にっていつも言ってるでしょ~?」
「悪かったよ。つかエリザベートもいい加減慣れろよ。今じゃペインやドレッドにはそんな過激に拒否してねぇだろうが」
「……ドラグさんは仕草も口調も乱暴なので苦手です。ペインさんは紳士だし、ドレッドさんは柔らかく話してくれるんである程度マシなだけですよ」
「柔らかく話すってなんだよ」
エリザベートは男性、特に大柄で粗雑な人に対して苦手意識を持っており、ドラグはその特徴に致命的にかみ合ってしまっている。今でこそ大分慣れて普通に会話もできているが、ギルドを設立し幹部になった初期の頃は会話どころかドラグが近付くだけでエリザベートが逃げてしまった程だ。
ただ人見知りでもあるエリザベートは、ドラグ程でもないにしろ男性であるペインやドレッドにも苦手意識を持ってしまっているため、彼女はもっぱらフレデリカと共に行動する事が多い。
幹部の中では唯一自身と同じ女性であるフレデリカに、エリザベートが懐くのは当然と言えるだろう。尤もまるで犬猫の様にじゃれてくるエリザベートに、フレデリカも嬉しくなって大分可愛がったのも要因の一つである。
「敵襲! 敵襲です! こちらに向かって来るプレイヤーを確認しました!」
そんな和やかな雰囲気を出していた三人だったが、ギルドメンバーからの報告を聞いた途端に雰囲気が変わって威圧感を出し始める。
「数は~?」
「およそ六十! こちらの防衛を超える人数です!」
「敵さんも思い切りましたねぇ。やっぱり
「その人数なら、俺らが行った方がいいな。犠牲は減らせって、ペインから口煩く言われてたしな」
「だねぇ~。さっさと潰そう~」
「はい先輩! パパっと終わらせましょう!」
岩に腰掛けていたフレデリカも、そのフレデリカに抱き着いてじゃれついていたエリザベートも切り替えて武器を手に持ちドラグに続く。
「おい。他の連中は下がらせとけ。俺らでやる」
「さ、三人でですか?」
「あぁ。問題ない」
報告者は強者故の慢心かと疑ったが、三人の威圧感に負けて何も言わずに指示に従う。
三人が最前線へ向かうと、見通しのいい平野の奥から六十名程のプレイヤーが真っ直ぐ向かって来ていた。
「多少誤差はあるでしょうけど、敵さんの人数は概ね正確ですね」
「ウチの監視部隊は優秀だねぇ~」
「だな」
「じゃあ、エリー。開始の一発お願いね」
「了解です! 派手に打ち上げちゃいますね!」
エリザベートが空に向けて弓の弦を引くと、本来矢を番える場所に火の矢が出現する。
「やっぱり派手にと言ったら火ですよね! では一発行きま~す! 【ファイヤーアローレイン】!」
弦を放し火の矢を射出すると、火の矢は上空へぐんぐん上がっていき、やがて弾けると無数の火の雨になって進軍中のプレイヤーに降り注いだ。
「た~まや~! って感じですね!」
エリザベートの持つ特殊なスキル【魔弓】は、自身の取得している魔法を矢の代わりに放つことが出来るのだ。矢の代わりに放たれる魔法は、通常の魔法より威力が高く段違いに速い。その上消費MPも普通に魔法を使うより少ないと、有り得ないほど反則的なスキルである。
「エリーってば凄いよねぇ。これ私の【多重炎弾】よりも攻撃範囲広いよねぇ」
フレデリカからの誉め言葉に、エリザベートはMPポーションを使用しながら目を輝かせた。
「ありがとうございます、先輩! でも【レイン】系はMP消費が激し過ぎます。連続して打てません。
反則的な性能を持つ【魔弓】だが、弱点が無い訳ではない。
尤もエリザベートは矢をミリ単位の隙間を通して目標に命中させるほど射的能力が高いので、魔法を打ち出しても何ら問題なく対象に当てられる。
そしてたった今エリザベートが打ち出した、矢を雨の様に降り注がせる【矢の雨】を併用した所謂【レイン】系も命中率の低さという弱点をカバーできるのだが、このスキルはこのスキルでMP消費が非常に激しい。
特にMPポーションが後半戦において枯渇するのが目に見えている今回のイベントにおいては、おいそれと多用出来るスキルではないのだ。
今回は防衛に就いて初めての大人数の相手であることとフレデリカの指示によって使用したが、このスキルを使う事はそう何回もないだろう。
「相手もいきなり火が降ってきて混乱してるみたいだし、効果は絶大だな。今度は俺が行くぜ! 【地割れ】!」
エリザベートの攻撃によって空を警戒するプレイヤー達に対して、ドラグは次なる攻撃を仕掛ける。
ドラグが大斧を地面に振り下ろすと、地面に深さ五十センチほどの亀裂が無数に出現した。空を警戒していた相手は、突然現れた亀裂に即座に対応できず次々に転んでしまう。
しかしそれはこの三人を相手取るのに、致命的な隙である。
「エリーやドラグばっかりにいい格好させないわよ! 【多重炎弾】!」
「【ウォーターアロー】! 【ウィンドアロー】! フレデリカ先輩は奥の方の敵をお願いします! 私では届かないので!」
これも【魔弓】の弱点である。普通に魔法を放ったり矢を打つよりも、射程が明らかに短いのだ。
それを補うために【STR】を伸ばしているのだが、十メートルより奥にはどうしても着弾できず、射程外では魔法が消えてしまったり極端に低い威力になってしまう。
「任せなさい!」
フレデリカもそれは把握しており、彼女が狙うのは常に集団の後方のみだ。
言われるまでもなくそれを実行するのは、前方はエリザベートが確実に当てて倒してくれるという信頼の表れである。
「【重突進】! 【バーンアックス】!!」
そんな魔法が飛び交う中、ドラグは気にする事なく集団の中に突撃していき斧を振るう。
防御を捨てたその戦い方は隙だらけだが、切り裂かれると簡単に倒されてしまう高威力の斧が振り回され中々ドラグの近くに行けない。まさに攻撃は最大の防御である。
「もらった! 【パワースラッシュ】!」
しかし相手は六十人以上の大人数だ。いくら接近が困難とは言え、人数で囲めばそれは容易く突破されてしまう。
だが攻撃を向けられても、ドラグが防御に意識を向ける事はない。そうなると当然それらの攻撃がドラグに降り注ぐのだが……
「【多重障壁】! 【多重水壁】!」
「【バリアアロー】! 【ヒールアロー】!」
フレデリカやエリザベートの防御壁や回復によって攻撃が防がれ回復され、ドラグのHPを削り切らせない。
ドラグが防御行動を一切無視した戦い方をするのは、この二人のサポートを信頼する故である。
「ハハハ! どんどん行くぜェ!! 【グランドランス】!!」
ドラグの大斧が地面に叩きつけられると、それを中心に六本の岩の槍が地面から飛び出してくる。貫かれたプレイヤーは脱出しようともがくが、動きを止めた時点でフレデリカやエリザベートに狙われ魔法により次々とHPが0になって消えていく。
「「「「「【ウォーターウォール】!」」」」」
三人のHPを碌に減らせず人数が半分を下回ったところで、ようやく倒せないと悟ったプレイヤー達は壁を作って逃げ出そうとする。
しかし背を向けたプレイヤー達をこの三人が逃がす訳もなく、最終的には十人弱になったところでようやく遠距離攻撃の射程から離れた。
ドラグは逃げるプレイヤーを追い駆けようとするも、自分よりも足の速い彼らには追い付けないと理解して二人の元に戻った。
「ふぃ~……暴れた暴れた」
「相変わらず人使い荒いよねー! 荒いよねぇー!? いっつも前のめりなんだから!」
「合わせる私達の苦労も分かってくださいよ。私は射程が短いので遠いところに居たら諦めますけど、その分フレデリカ先輩に負担がかかるんですから!」
「悪ぃ悪ぃ。でも役に立ったろ?」
「まーね。ドラグは動きが分かりやすいから支援しやすいしー」
「流石フレデリカ先輩ですよね! あんなに好き勝手動いていたドラグさんに対して、完璧に支援が出来ちゃうんですから! 凄すぎますよ!」
キャー! っとテンションを上げて抱き着いてくるエリザベートの体を、フレデリカは慣れた様子で抱き止める。しかし上機嫌なエリザベートを宥めるように頭を撫でるフレデリカの表情は、どこか複雑そうだった。
「うぅ……前々から思ってたけど、やっぱりエリーって結構あるよねぇ……わ、私だってまだ成長期なんだし、きっと希望はあるわよ、うん……」
「フレデリカ先輩? どうかしたんですか? 眉間に皺が寄ってますよ?」
「へっ!? あぁ、うん! 大丈夫! 別に変なこと考えてないから!」
「変な事……ですか?」
何の事か分からないエリザベートは、腕を組み首を傾げて考える。
そして腕を組んだ事によって、エリザベートの年齢の割に発育のいいとある部位がより強調される。
「うぅ……羨ましい……」
「何だフレデリカ? 前からブツブツ言ってたアレか? 自分よりエリザベートの方がでkぼがっ!?」
「ドラグ! デリカシー!!」
余計な事を口走りかけたドラグの頭に、手に持つ杖を思いっきり叩きつけられた。
それによって耐久値が減ってしまった杖を振り回しながら、フレデリカは顔を真っ赤にして怒りの声を上げる。
「いつもいつもそうだけどさー! もうちょっと考えてから声に出してもいいと思うんだよねー! 今のは許容できないやつだからー!!」
「わ、悪かったって。だからってそんな思いっきりやんなよ。ダメージはねぇけど衝撃は来んだからよ」
杖で叩かれた場所を撫でながら起き上がるドラグは、心なしか抗議の声が弱かった。流石に今のは自分が悪いという自覚があったようだ。
「えぇっと、さっきから何の話を「そ、そんな事よりさー! あの人たちも無謀だよねー! せめて私達以外の所に来ればいいのにさ」
追及されてはたまらないと、フレデリカは強引に話題を変える。
「おー、俺達は少し前まで洞窟にいた。だから見られなかったんだろ」
「つまり、相手さん達の不運だったという訳ですね」
「だな」
「……ほっ」
明らかに強引な話題変更だったが、それ故に触れられて欲しくないと察したエリザベートは話を戻さずそのまま乗ってくる。その様子に、フレデリカは安堵の息を吐いた。
「あ~、やっぱ俺も攻撃してえなぁ」
「あ、私も【楓の木】だっけ? 今度こそは魔法を当ててあげたいんだよね~。決闘の時は上手くやり過ごされちゃったし」
フレデリカは少し前にペインからの指示で、メイプルを尾行していた。
その尾行はサリーによって気付かれてしまったのだが、その際行われた決闘でフレデリカは攻撃を悉く避けられてしまったのを根に持っているのだ。
「今聞いても信じられません。本当に先輩の【多重詠唱】の魔法を全部避け切ったんですか?」
「うん、全部避けられた。あの子が言ってた『攻撃誘導』と『流水』の効果だと思うけどね~」
本来はそのようなスキルなど存在しないのだがフレデリカは見事にサリーの術中に嵌り、ありもしないスキルをペイン達やギルドメンバーに報告して警戒していた。
「【多重炎弾】やら【多重石弾】を全部対処したんだろ? 相当だな、噂通りか」
「大丈夫です! 今度は絶対にフレデリカ先輩が勝ちますって! その時は今回のイベントに備えて情報を隠さなくちゃいけなかったんですけど、今は違いますもん!」
「ありがとね~エリー。あ~あ、ドラグがもうちょっと避けてくれたら楽なんだけどなぁ~」
「それは俺には向いてねぇわ」
「向いてなくとも努力ぐらいはしてくださいよっ」
頬を膨らませながら不満を訴えるエリザベートだったが、その程度でドラグが行動を改めるのであれば苦労はしていない。案の定ドラグは豪快に笑いながら話をはぐらかすのだった。
◇◇◇
「アゲハさん、新たなギルドを発見しました」
「ん、了解。じゃあその場所まで案内してくれる?」
「畏まりました」
一方その頃、【集う聖剣】拠点から大分離れた地点で、第二回イベントにてハイドが目撃した大剣使いのプレイヤー、『アゲハ』がオーブを求めて各地のギルドを引き連れたギルドメンバーと共に襲撃していた。
「こちらになります」
「ありがと、助かるよ。アタシは周囲の情報を探ったりするのは苦手だから」
報告に来た者に、アゲハは申し訳なさげに苦笑する。
少々大雑把な面があるアゲハは、隠れて移動するといった行動に性格的に全く向いていなかった。
なので結果として、索敵や偵察などを同行する他のメンバーに全て任せてしまっていた。しかしギルドメンバーの男は首を横に振って答える。
「いえ、問題ありません。アゲハさんが苦手な部分は、私達がフォローします。そのようにミィ様から仰せつかっていますので」
「あ、あぁ、そう……ミィからね」
大分熱を込めながら返答するメンバーを若干引き気味に見ながら、アゲハはギルドマスターを思い浮かべる。
アゲハの所属している【炎帝ノ国】は、強さに惹かれた者が集まった【集う聖剣】とは違い、たった一人の少女に心酔する者達が集まったギルドだ。
その少女こそ、ギルドマスターのミィである。彼女から直接頼まれたのならば、この気合の入りようも頷ける。そういったプレイヤーが数多く所属しているのだ。
「まぁ、ミィの気遣いは正直助かるよ。んじゃ、そろそろ行こうか」
「畏まりました」
隠れもせずに正面から入っていくアゲハに、残りのメンバーも付き従う。
拠点には十数名のプレイヤーがオーブを守っており、皆アゲハたちの姿を確認すると武器を手に取って警戒を強めた。
「襲撃者だ!」
「後ろの奴らの服……あいつら、【炎帝ノ国】だ!」
「大規模ギルドじゃねえか!」
今までのイベントでは第二回イベントが探索、第三回イベントが特定のモンスターの討伐数という内容だったため、唯一の戦闘系イベントである第一回イベントの順位は非常に重要視されている。
そして【炎帝ノ国】はギルドマスターがその第一回イベントで第四位だったこともあり、同じく何人かの上位ランカーが所属する【集う聖剣】と同様にとても注目されている大規模ギルドだ。
【炎帝ノ国】では幹部以外がギルドマスターであるミィの二つ名の【炎帝】にちなんで統一された赤色の隊服を身に着けているため、他ギルドとの区別が非常につけやすい。
因みにこの装備の統一はメンバーが自主的に行っているものであり、ギルドマスターの意思は入っていない。この情報を後に聞かされ、ギルマスは内心で盛大に頭を抱えたらしい。
「一番前にいるあのデカい女は誰だ!?」
「見た事ねえ奴だ。有名な奴じゃなさそうだし、俺達でもやれるぞ!」
「……ま、言われるとは思ったけどさ」
アゲハの実力を知らない相手が彼女を侮るが、彼女自身はその反応の原因に心当たりがあった。
彼女以外の【炎帝ノ国】の幹部達は、一人を除いて第一回イベントにおいての上位ランカーだ。対してアゲハはリアルの仕事の都合で参加できなかったため、現状では然程有名ではない。
だが、彼女は言われっぱなしで終わるような性格ではなかった。アゲハは顔に獰猛な笑みを浮かべると、背負った武器を抜いて突撃する。
「残念だけど、有名じゃない=弱いって訳じゃないんだよね! アレを使うよ! 皆は後ろから援護!」
「分かりました!」
「【猪突猛進】!」
アゲハが走りながらスキルを発動させると、彼女に赤いオーラが浮かび上がり急に速度が上昇した。
【猪突猛進】は、自身のHP、MP以外のステータスを1.5倍に引き上げるスキルだ。
注視していたとはいえ、突然速度の変わった相手に急に対処などできるはずもない。
「うおらぁ!!」
そのままの勢いでアゲハが1.5メートルも大剣を振るうと、まだ彼女の速度に対応できていない相手は一撃でHPが0になって消えていく。
「何だ!? 急に速くなったぞ!?」
「考えてる暇はないと思うよ!」
驚く敵を再び一撃で粉砕すると、ようやく敵も我に帰ってアゲハに向かって武器を振り上げる。しかし、今の彼女にとってその動作は隙だらけだった。
「はっは! 遅い遅い!」
大剣を大きく振りて回して暴れ回るアゲハの攻撃は、一撃で相手のHPを0にできるほど強力だ。
しかし距離を開けるため離れようとすると、瞬時にアゲハはそれを察知して迫ってくる。かといって、リーチの長い大剣を使用するアゲハに接近戦を仕掛けるのは不可能に近い。
自分の武器が当たる範囲まで近づく前に、アゲハの大剣に斬られてしまうからである。
オーブの防衛のためにこの場に居るプレイヤー達には撤退という選択肢が取れるはずもなく、全員が光となって消えていくのは時間の問題だった。
「いや~暴れた暴れた! そんなに強い奴がいなかったから、殆ど初期の強化で倒せてよかった」
【猪突猛進】は使用時間が十秒経過する毎に、HP、MP以外のステータスを1%づつ上昇する追加効果もあるのだ。
十秒間敵にダメージを与えられないとスキルの効果が切れてしまうので、事前にステータスを上げておくという行為は出来ないが、それを差し引いても時間をかければかけるほど強くなっていくこのスキルは凄まじく強力である。
「よし! さっさとここのオーブ回収して、次のギルド探そっか!」
アゲハが戦っている間、ずっと味方の退路確保と相手の逃げ道の封鎖の為出入り口を占拠していたギルドメンバーに声を掛けると、メンバーの一人が呆れと羨望が混じった顔で声を出す。
「……相変わらずお強いですね。流石は幹部の一人だ。私達では一緒に戦っても足手纏いですね」
「ちょい!? 何でいきなりそんなネガティブなのさ。それに足手纏いって訳じゃないよ。アタシのスキルは発動すると味方にも攻撃通っちゃうし、スキルも使えなくなっちゃうからちょっと距離の離れた相手は対処できない」
どんな強力なスキルにも代償が必要な様に、【猪突猛進】にも相応のデメリットが存在した。
このスキルは発動中、通常なら攻撃が入らないパーティーメンバーにもダメージを与えられるようになる上、他のスキルが使えなくなってしまう。つまり攻撃はスキルを伴わない、通常攻撃しか使えない。
それ故にアゲハの部隊には前衛がアゲハ一人しかおらず、他のメンバーは魔法使いか戦闘には基本参加しない偵察要因のプレイヤーしかいない。周りに味方がいると、アゲハが気になって全力が出せなくなってしまうためだ。
「それに皆がいてくれるから、後ろを気にする必要が無いからアタシも気にせず攻撃できる。適材適所だよ。皆が足手纏いなんて事は一切ない! それはアタシが保証する!」
アゲハは男の肩を勢いよく叩いて励ますと、他のプレイヤーの方に歩いて同じ様に労っていく。
そんなアゲハの様子を見ていた男は若干勢いよく叩かれ過ぎて痛みを発する肩を軽く抑えると、羨望が籠った眼で彼女の方を見つめて呟いた。
「……こんな人だから、この人は皆に慕われていくんだよな」
ミィのカリスマによって集まりギルドとなった【炎帝ノ国】だが、アゲハは他の幹部のプレイヤーが第一回イベント上位ランカーなのもあり、ギルド設立直後は他の者達に少々疎まれ気味だった。
しかし彼女の面倒見のいい姉御肌な性格に触れていく内に、アゲハが他のギルドメンバーにどんどん慕われていった。そして彼女自身の高い実力もあって、ギルド内のアゲハが幹部に相応しくないなどという声は今では完全に無くなったいた。
「よし! じゃあ次のギルド行こう!」
「「「はい!」」」
アゲハの号令にメンバーが一斉に返事をすると、彼女を先頭にその場を後にした。
今回はそれぞれの大規模ギルドの中に入れたオリキャラの話が中心です。
オリキャラの詳細はこちら!
【集う聖剣】エリザベート。
緑色の髪に青目。髪は肩まででゆるふわな感じ。身長は一四〇センチで小柄だが、発育はいい。そのスタイルの良さに、よく抱き着かれているフレデリカはあまり表には出さないが少々嫉妬している。
髪や目の色に合った装備をしている。しかし武器だけは違い、特に特徴のない黒い弓に木の矢筒。
フレデリカと同じく装備の見た目は気を使っているが、そこに武器は含まれていない。武器だけは性能重視。
フレデリカを先輩と慕う少女で、親しい人には『エリー』と呼ばれている。人見知りの気があり、慣れていない人の前だと親しい人の陰に隠れる癖がある。また男の人が苦手で、その中でも特に大柄な人と粗雑な人が苦手。つまりその二つが備わっているドラグは相性最悪。出会って初期の頃は話す事も出来ずに逃げ出していた。
慣れている人の前だと明るく話す。ドラグとは話せているだけ慣れた方である。
特殊なスキルは弓で魔法を打ち出せる【魔弓】。
【魔弓】は消費MPは普通に魔法を使うより少ないし威力が上がる上に、弾速が速い。射程は【STR】に、威力は【INT】にそれぞれ依存する。ただし普通の矢よりも射程は短い。
また打ち出すものが物体矢ではなく非物体魔法の為、当てるのが非常に難しい。しかしエリザベートはプレイヤースキルにより命中率が高い。
後方でなるべく動かず固定砲台に徹する。支援魔法や回復魔法も弓で打ち出す。また上空に矢を打ち雨のように降らせる【矢の雨】で魔法を放ち、多数の敵を攻撃したりも出来る。ただしこの方法はMP消費が激しい上に、パーティメンバーにもダメージが発生するので使い所を見極める必要がある切り札的扱い。
ステータスは【STR】と【INT】に多く振っており、【AGI】や【DEX】にはあまり振っていない。またMPは普通の魔法使いより少ないが、そこはスキルの燃費の良さでカバーしている。
【炎帝ノ国】アゲハ
藍色の髪に黒目。ショートカット。身長は一七五センチ。細身。胸は着痩せしているが結構大きめ。
上は皮の鎧を着ており、ズボンはピッチりとしたパンツスタイルで防御よりも動きやすさを重視している。一.五メートルほどの大剣を持つ。
ボーイッシュで男勝りな女性。サバサバとした性格で誰とでも親しげに話す。女性にしては高い身長を少し気にしている。実は好きな人がいる(誰かは今のところ非公開)。
特殊なスキルは攻撃スキルが使えない代わりにステータスを1.5倍にする【猪突猛進】。
【猪突猛進】はHP、MP以外の全ステータスを1.5倍にして十秒毎に追加で1%ステータスが上昇していくが、スキル発動中は攻撃スキルが使えず、パーティーメンバーにも攻撃が通るようになる。そして十秒間の内に敵にダメージを与えないとスキルの効果が終了する。
戦法はシンとは違い、豪快の一言。先陣を切って相手に向かっていく。一撃の威力は高いが、攻撃動作が大きく小回りが利かないのと素早く動けないのが弱点。サリーが天敵。【猪突猛進】を使い、ステータスを上げていくスタイル。物理特化で、属性攻撃は殆ど取得していない。また超が付くほどノーコンであり、それにより【飛撃】が取得できない。
ステータスは【STR】重視。【INT】やMPにはほとんど振っていない。
この二人はまだ非公開情報があります。
一応第四回イベントの話が終わったらオリキャラの設定(主人公も)を作る予定です。
オリジナルスキルに関しては纏めるかどうかは今のところ未定。要望があったら纏めるか考えます。
次回、ギルド防衛。