派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う 作:名無しの投稿者
因みにメイプル達は原作とほぼ変わらない行動なので書いてません。あれ? 原作主人公の影薄すぎ? 登場頻度がやたら低い気がする……。
あぁそれとハイドも書いてません。襲撃に出ているハイドはやる内容がほぼ変わらないので、あまり書く意味がないのが理由です。
「【一ノ太刀・陽炎】」
「【炎斬】!」
日が昇り、台座に設置したオーブが全て元のギルドに戻ると、
とは言え当然ギルド襲撃をメイプル一人に任せる訳がなく、クロムとカスミとハイドも襲撃に出ている。機動力の低い残りのメンバーは、拠点に居残りだ。
「これで全員か」
「その様だな。オーブを回収して、次のギルドに向かおう」
「この近くに別のギルドは……あるな。南西の方角に小規模ギルドが」
「その方角なら、ハイドやメイプルの襲撃場所とも被らないな。そこに向かおう」
メイプルは一人で大抵のギルドは殲滅可能であるし、ハイドはスキル構成がソロ向きだ。
よって二人は単独行動、余ったクロムとカスミがペアを組んで行動していた。誰がどの方面のギルドを襲うかは事前に打ち合わせをして決めてある。
「しかし、このマップは便利だな。次にどのギルドを襲えばいいか、計画が立てやすい」
「その便利なマップを作ったお陰で、サリーは今も寝込んでいるがな」
既に時間は正午に近付いてきているのだが、未だにサリーは死んだように眠っている。前日のピンチによる負荷は、かなり大きいものだったらしい。
「そうだな。まぁこのマップはほぼ完成しているし、これ以上サリーも無理をやらかさないだろ」
「だといいがな……クロム、この辺りだ」
次に襲う予定であるギルドの拠点が近付いてくると、二人は少しでも見つかるリスクを避けるため木々で身を隠しながら移動する。
「あったぞ。オーブだ」
「人数は……こっから見る限り二十人ちょいってところか。さっきと作戦は同じで行こう。先制攻撃、頼んだぞ」
「任されよう」
クロムの言葉に、カスミは何時でも刀を抜けるように準備しながら答える。
「よし。じゃあ……行くぞ!」
「【一ノ太刀・陽炎】!」
カスミの姿が揺らいで消え、次の瞬間には相手ギルドの拠点の中に姿を現し目の前にいるプレイヤーを切り裂いた。
「なっ!」
「この女どっから……!」
「呆けている場合か。【四ノ太刀・旋風】!」
突然現れるカスミに相手が動揺する中、彼女は冷静に次のスキルを使用する。高速で放たれる四連撃は、動きが鈍い相手を続け様に光に変えていく。その時には既にクロムも姿を現していたのだが、どんどんプレイヤーを屠っていくカスミの方に視線が集中しているため気付かれない。
クロムとカスミでは当然カスミの方が【AGI】が高いので、奇襲を行うとなるとカスミが先行して攻撃を行わなければならない。なのでその直後は二人の間に距離が出来てしまうが、そこはスキルによってカバーできた。
「クソ! 【パワースラッシュ】!」
「【カバームーブ】【カバー】!」
カスミが攻撃を受けそうになれば、クロムが【カバームーブ】により瞬時に移動してきてその攻撃を大盾で受ける。メイプルもよく行う、“【カバームーブ】高速移動法”である。
「なっ!」
「【刺突】! オラオラ!」
クロムの攻撃ではカスミのように一撃で相手を倒す事は出来ないので、何度も攻撃を加えて相手のHPを削り切る。
【カバームーブ】の効果でダメージは二倍となっているものの、【
「囲め! 囲んで畳みかけろ!」
「させん! 【六ノ太刀・焔】!」
敵が二人だけだと悟った相手側が囲んでリンチを仕掛けようとするが、カスミはその包囲から抜け出し炎を纏った斬撃をお見舞いする。
基本的に防衛として残るメンバーは【AGI】が低いプレイヤーが選ばれる傾向にあるため、【AGI】がそこそこ高いカスミであれば容易にその動きを回避できる。
「よっしゃ! 一気に攻撃しろ!」
「クロム!」
「行かせるか!」
「くっ!」
しかし、防衛側と同じく【AGI】が低いクロムはそうはいかない。プレイヤーの動きから逃れられず、あっという間に集団に囲まれ退路を失ってしまう。
カスミが近くまで動こうとしても、先程の【カバームーブ】の動きを見ていた彼らはそれを許さない。
「(避けられねぇ!)でも、俺だってただではやられねぇよ! 【刺突】! 【炎斬】! 【氷剣】!」
次々に魔法や武器がクロムの体に降ってくる。クロムは回避は無理だと判断すると、攻撃を可能な限り大盾で受けながら鉈を振り回して周囲のプレイヤーに攻撃を与える。
盾で受ければダメージをある程度軽減できる上、【吸魂】の効果でHPが回復する。他にも時間経過により【バトルヒーリング】が、攻撃を与えれば【
「しぶとい野郎だ!」
「だがこれで止めだ! 【フリーズスラッシュ】!」
「ぐがっ!」
「クロム!!」
しかし回復ができても受けるダメージ量の方が大きく、遂には氷を纏った大剣の攻撃がクロムの体に直撃する。10%ほどしか残っていなかったクロムのHPはみるみる減っていき、0になる……直前で彼の体から赤黒いガイコツが浮かび上がり、HPは1ミリだけ残して減少が止まった。
致命傷を負っても50%の確率で何度でも生き残れる、【デッド・オア・アライブ】の効果である。
「……はぁ?」
「えっ、なんで?」
「……フハハハハ! 今日の俺は運がいい!! 【カウンター】!」
生き残ったクロムは目の前で呆けているプレイヤーに鉈を叩きつけて倒すと、ついでに何人かを切りつけてHPを回復させながら強引に包囲を突破する。
「全く、死んだかと思ったぞ」
「悪いな。でも生き残ったぜ」
「今のは心配させるなという意味で……もういい。今は言い合いをしている場合ではない」
カスミは刀を構えなおして敵に斬りかかる。先程の現象で浮足立っていた敵は、ほぼ無抵抗で攻撃を受けてその体を光に変えていく。
そこから先は完全にクロム達のペースだ。
【AGI】が低く、かつカスミを庇うように行動していたクロムは敵を全員倒すまで何度か死にかけてしまうも、【デッド・オア・アライブ】と【不屈の守護者】によって無事に生き残った。
「しかしまぁ、やっぱりカスミはいいな」
「……はぁっ!?」
戦闘が終わってポツリと呟いたクロムの言葉に、カスミはボッと一瞬で顔を真っ赤にして固まる。
「ななな何をいい言ってるんなお前は!!?」
「他のメンバーに比べて心臓に優しい。カスミだけだからな、ビックリ箱みたいな驚きがないのは。仲間として一緒に戦いやすい」
カスミの戦いは非常に安定しており、【楓の木】の他のメンバーと違って奇想天外なスキル群を持っている訳でもない。クロムからすれば、組んでいてとても戦いやすい相手だった。
「ふ、ふんっ。そういうクロムも人の事は言えないだろう。メイプル程とは言わないが、今日の戦いは見ていて心臓に悪かった」
皮肉を言うカスミだが、その口元は緩んでいた。意味は(納得こそできるものの)残念なものであったが、彼自身から『一緒に戦いやすい』という言葉が聞けたのは彼女にとって非常に嬉しかったのだ。
「うぐっ! じ、事前にスキルは言ってあっただろ?」
「言われていても心臓に悪い事には変わりない。特にクロムのスキルは発動しない場合もあるしな」
致死ダメージを負って発動する【デッド・オア・アライブ】の発動確率は50%であり、発動しなければ当然そのまま死亡となる。なので一日一度しか使えないが、確実に発動する【不屈の守護者】も使う羽目になったのだ。
そして【デッド・オア・アライブ】も【不屈の守護者】も発動する際は死にかけているので、仲間としては安心して見られるものでもない。
「装備についているスキルの効果という話だったが、また奇妙な装備を見つけてきたものだ。これでクロムも完全に
「そ、それは……そうかもしれないな。遂に俺も
「私としては、クロムには仲間でいて欲しかったがな」
クロムの死ににくさはメイプルとは別方面で高い。自覚はあったものの、ラスボスと同じ括りにされたクロムはガックリと項垂れる。
現在【楓の木】の普通枠はカスミ一人だけだ。少し前までクロムも普通枠だったのだが、【亡者の墓】の【ユニークシリーズ】を取得してから異常枠に入ってしまった。他のメンバーも、メイプルを筆頭に大なり小なり異常な部分を持っている。
「……メイプルに念でも込めて貰うか?」
「……冗談を抜きにして聞くが、それで強くなれると思うか?」
「……五分、ってところじゃないか?」
全く可能性が0と言われない辺り、メイプルに対する認識が滲み出ている。
実際偶然ではあるが、クロムもメイプルからシロップを借りた日に【ユニークシリーズ】を手に入れている。メイプル効果って恐ろしい。
そんな無駄話をしながら二人はオーブを回収し、誰もいなくなった拠点を後にした。
◇◇◇
「んぇ?」
拠点で留守番をしながら【ドーピングシード】を量産していたイズは、突然聞こえてきた奇妙な声に思わず声の出所に顔を向ける。
「……へぇ」
「カナデくん? どうかしたの?」
「ん? ……あぁ。何も問題
「……そう?」
そう言いながら、カナデはいつもの笑みを浮かべる。その様子に、イズは少なくとも緊急性は無いと判断して作業に戻った。
「(思わず変な声出しちゃったよ。それにしても、とんでもないスキル引き当てちゃったなぁ)」
先程カナデは今日の分の【
【死の告知】
MP消費100。
指定した対象を、ランダムで設定された秒数経過後【即死】させる。
指定秒数内にスキル使用者が死亡すれば、スキルは発動失敗となる。
使用可能回数はゲーム内時間で一週間に一回。ボスモンスターには効果がない。
「(指定した対象を確定で【即死】出来るスキルかぁ……しかも内容を読む限り、イズに作ってもらった【即死】無効のアイテムの効果もすり抜けられそう。このアイテム、攻撃を受けた直後にしか効果がないし)」
【死の告知】は言うなれば、相手に【即死】までのカウントダウンを付与するスキルだ。【暗殺】のように直接相手を【即死】するスキルではないので、【即死】を無効にするアイテムの効果も回避できる。
その分クールタイムが他のスキルに比べ異常に長いし、取得条件も例え知っていても取得するのが難しい程高難易度だ。
しかしカナデはこのスキルを【魔導書】にして使うので、そういったデメリットは仕事をしない。
「ふふっ。僕は運がいいなぁ」
カナデはニヤリと笑みを浮かべながらそう呟くと、早速【死の告知】を【魔導書】にするために【魔導書庫】を起動させるのだった。
◇◇◇
「ん……んんぅ」
イベント二日目の正午をとうに過ぎた頃。死んだように眠っていたサリーがようやく目を覚まし、布団からゆっくり体を起こす。
「……ここは」
とは言え十時間程眠っていたので、流石にすぐには頭も回らない。
しかし時間が経つにつれ段々と覚醒していき、それと共に昨夜の記憶も徐々に蘇ってきた。
「……ぁ、あぁ……!」
自分のした行動、とった言動、そして思考。さらに意識が薄れていく最中、ほんの薄っすら記憶の片隅に残っているハイドの言葉と行動……もうサリーの心は限界だった。
「うにゃあああああああぁぁぁぁ~~~~!!!」
一瞬で顔どころか耳や首まで真っ赤になると、頭を抱えて大きな叫び声をあげる。
「サリーちゃん!?」
「ちょっ! 何事!?」
「サリー! 無事か!?」
「大丈夫か!?」
拠点に残っていたイズとカナデ、さらに【炎帝ノ国】のシンと遭遇して刀を破損してしまったため一時帰還していたカスミとクロムもサリーの尋常ではない叫び声を聞きつけ、慌てた様子で彼女の元まで駆けつける。
しかし今のサリーに、四人の存在を認識する余裕は微塵もない。彼女は頭を抱えたままボスンッと枕に倒れこむと、足をジタバタさせながら体を横向きにグルグルと回り始めた。
「うぅ……ううぅぅぅ~~~!(あぁ恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!!)」
そしてしばらくすると、回るのを止めたサリーが今度は枕に頭を押し付けて左右にゴロゴロと布団の中を転がりだす。もうサリーの頭の中は羞恥で大パニックである。
「……えぇっと、何やってんだ?」
「さぁ……?」
「……私にもさっぱりだ」
「僕にも分かんない……」
奇声に加えて奇行に走り始めたサリーの様子に、駆け付けた四人も戸惑いを隠せない。
とりあえず危険な状況で発せられたものではないのは分かったものの、念のため原因は確認しておきたい。しかし当の本人が
「えぇっと、サリーちゃん? 何があったの?」
「私でよければ、話を聞くぞ?」
ここで奇行に走り続けるサリーを眺めていても問題は解決しないので、イズとカスミは意を決してサリーに近付き訳を聞く。
原因によっては異性には話しづらい可能性があるので、クロムとカナデはオーブのある部屋で待機している。
「う……うぅぅ……!」
「……ダメね。完全にこっちの言葉が聞こえてないわ」
「どうしたものか……」
「………んで……こ…を……あぁ……しい……!」
「……ん? 待てイズ。サリーが何か言ってるぞ?」
何時の間には転がるのをやめていたサリーは、枕を抱え込みながらうつ伏せでブツブツと何かを呟いている。二人は彼女が何を呟いているか聞き取るため耳を澄ませた。
「お姫様抱っこされた! しかも思いっきり抱き着いちゃったし! あぁ、恥ずかしいぃ……!」
枕が音を吸収してしまっているため外に漏れる音は酷く小さいものだったが、それでもイズとカスミの耳にはバッチリとその内容が届いた。
二人は顔を見合わせて笑みを浮かべながら頷き合うと、サリーに気付かれない様にそっとその場を後にする。
「おっ、帰って来たか。サリーはどうだった?」
「随分様子がおかしかったけど、原因は何だったの?」
奥から出てきた二人に、追い出された男二人がサリーの様子を尋ねる。先程までのサリーの奇行を目にしているので、心配になるのは当然だ。しかし帰ってきた返答は曖昧なものだった。
「大丈夫よ。何も問題はないわ」
「あぁ、そうだな。問題ない。少しサリーが混乱してしまっていただけだ」
「「少し……?」」
アレはどう見ても『少し混乱してしまった』というだけでは説明がつかないのでは……と二人は思ったが、イズもカスミも何やら原因に察しがついたかのように笑みを浮かべている。
そして二人はそれ以上説明する気はないらしく、イズは破損したカスミの刀の修繕に、カスミはその様子をじっと眺める体制に戻ってしまった。
「いや、結局何だったんだよ……」
「二人だけ分かっても僕たちは心配なんだけど……」
「大丈夫だってば。きっと少しすればいつも通りに戻るわ」
男達の抗議に、イズは手をひらひらと振りながら気にしないように告げる。そう言われても気になってしまうのだが、何を聞いても教えてくれそうにない。結局不完全燃焼のまま、この話題は終わってしまうのだった。
◇◇◇
イズ達の方で終わったとしても、絶賛混乱中のサリーの錯乱状態がすぐに収まるわけでもない。
だが一通り昨夜の自分の行動とされた行為について思い出し暴れ回ると、その疲労感からか若干落ち着きを取り戻す事に成功した。
「うぅ……意味分かんない。何してくれてんのよぉ……!」
眠る直前で目も完全に閉じ切ってはいたが、サリーは覚えていた。
拠点に戻る時のとても優しい声色で言われた労い、皆に説明を終えて倒れそうになった自分を受け止めてくれた腕の感触、その後頭を撫でてくれた手の温もり、その全てをだ。
やられた時は限界ギリギリだったので反応する余裕がなかったが、思い返すとどんどん顔が熱くなってくる。
加えて道中でお姫様抱っこをされた時に感じた意外な逞しさも思い出してしまい、頬の赤みがさらに増していく。
「……でも意外。私って結構チョロかったんだなぁ」
テンプレのようなシチュエーションと、お約束のような感情。まるでありふれた物語のようだだ。
「……まぁ、私はお姫さまって柄じゃないけどね」
サリーとて花の女子高生だ。自身が持つ感情の名前だって知っている。
今の今までまだ自分には縁のないものだと思っていたのだが……どうやらそうでもなかったらしい。
「……はぁ。どんな顔して会えばいいのか分かんなくなるじゃん……バカハイド」
サリーが発狂した時、残りのメンバーは既に襲撃に出ており拠点に居ませんでした。
次回は、襲撃に出ている四人組の話です。
原作主人公の戦闘も書いとかないとね。原作と違ってカラアゲもいるし、ちょっと違う展開になる……予定です。