派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う 作:名無しの投稿者
次回は今月中に出せたらいいな……。
「【爆炎】!」
突然のミィの登場にメイプル達が驚く中、ミィがユイに向かって先制攻撃を放つ。
「うわっ!」
その攻撃を【身捧ぐ慈愛】の効果で肩代わりしたメイプルはダメージこそ受けなかったが、ノックバックが発生して勢い良く後退する。
そしてメイプルが後退して立ち位置が変わるという事は、メイプルを中心に効果を発揮している【身捧ぐ慈愛】の範囲も変化する。
ミィが放った攻撃は、直接的にユイを吹き飛ばす事は出来なかった。しかし【身捧ぐ慈愛】の範囲に居なければマルクスの罠による地雷原の中を進めないユイは、ミィによってメイプルが吹き飛ばされて範囲から外れてしまったので後退せざるを得ない。
「【爆炎】!」
「【カバームーブ】!」
「くっ! 躱されたか!」
今度は直接メイプルを狙って攻撃したのだが、自分が攻撃されたと分かるや否や即座に【カバームーブ】によってその場から離脱する。
メイプルの足だとまず躱せない速度の攻撃も、瞬時に味方の元へ移動できる【カバームーブ】を使えばその限りではない。
「【炎帝】!」
「おっと」
移動先を確認したミィがすかさず【炎帝】で攻撃する。
メイプルも【悪食】の使用回数を減らさない様に盾を降ろして体で受け止めた。高威力の【炎帝】が直撃しても、メイプルにダメージはない。
「(【炎帝】でも駄目なの!? 直撃したから少しくらいダメージがあると思ったのに……!)なら防御力貫通スキルで」
「ミィ! 今のメイプルに防御力貫通スキルは効きません!」
「何っ!?(じゃあどうしろっての!? いくら私でもメイプルの【VIT】を超える攻撃は出来ないんだけど!?)」
カラアゲの
しかしそもそもメイプルにダメージを与えるために防御力貫通スキルが実装されたと言っても過言ではない訳で、そんなメイプルにダメージを与えられるような高威力の攻撃を使えるのならば誰も苦労はしない。
「メイプルに防御力貫通スキルを無効化するようなバフを与えているのはあの紫のローブの少年だと思われますが、彼が光っている地面の範囲にいる限り攻撃は全てメイプルが肩代わりしてしまうのでダメージを与えられません」
「ならその防御範囲を移動させてやるまでだ。【爆炎】!」
「うわぁ!?」
再び低威力高ノックバックの攻撃が放たれ、メイプルが勢い良く後退していく。
ただミィが防御フィールドの外に出したかったカラアゲは元々後方に控えていたため、メイプルが多少後ろに下がったとしてもその範囲から外れる事はない。
しかし逆にメイプルよりも前に出ていたマイとユイは【身捧ぐ慈愛】の範囲から外れてしまった。
「隙ありだ! 【猪突猛進】!」
範囲防御の外に出てしまったマイとユイを仕留めるため、アゲハはステータスを上げて双子に迫る。
防御力貫通スキルを使わなければメイプルにダメージを与えられないので、それが使えなくなる【猪突猛進】の使用を控えていたのだが、そもそも防御力貫通スキルが通用しなくなるなら使用を戸惑う必要もない。
「「あっ!」」
「もらったぁ!!」
【AGI】の低いマイとユイでは、ステータスが跳ね上がったアゲハの攻撃を回避できない。
「【カバームーブ】!」
「チッ! やっぱり来るかメイプル!」
ノックバックによって後退していても、まだギリギリ【カバームーブ】の効果範囲内に入っていたため大剣が当たる直前にメイプルが体を滑り込ませてくる。
幸い盾を構える時間はなかったので大剣はメイプルの体に弾かれるだけで無事だったが、アゲハは絶好の攻撃のタイミングを逃してしまった。
「【ダブルインパクト】!」
「あっぶな!」
ピンチを回避できたと判断したマイがすかさずスキルを使用して攻撃するが、アゲハも危険を察知してすぐさまミィの隣まで退避する。
「三人共! こっちに来てシロップに乗って!」
自分が【爆炎】によって移動させられてしまうと三人を守り切れないと考えたメイプルは、シロップを【巨大化】して遥か上空へ退避させた。
上空ならば、例え【身捧ぐ慈愛】の効果範囲から外されても即座に危険はないと判断したからである。
「逃がすか! 【爆炎】! 【炎帝】!」
「うひゃぁ!? シロップ、【精霊砲】!」
上空でミィの放った炎と、シロップが放ったビームが激突して爆発を起こす。
しかしそれにより威力は相殺され、シロップはそのままゆっくりとミィの攻撃が届かない範囲まで上昇していった。
「あそこまで上がられると流石に私のスキルでも届かんな」
「ミィでも無理なら諦めるか。メイプルに集中する他ないな」
「でもどうするの? 今のメイプルには防御力貫通スキルが効かないんだよ?」
「メイプルを覆っている緑の膜がその防御力貫通スキルを無効化しているようですし、その効果が切れるまで待ってみますか? 幸いそのバフを使っていると思われる紫ローブの少年は上空に退避したので、スキルを使われる心配もなさそうですし」
ミザリーが提案した方法は確かに有効だが、残念ながら一点だけ問題があった。
現在メイプルを覆っている膜の色は濃い。それはカラアゲが上空に退避する直前に慌ててメイプルだけ
つまり問題とは、メイプル相手に一分もの時間持ちこたえられるのか、という事だ。
「他に案がない以上、ミザリーの言った方法を採用しよう。ミザリー、メイプルにかかっているスキルの効果が切れたらアレを使う。この後の防衛戦力を調整してくれ」
「分かりました」
「ではこれより全身全霊で時間を稼ぐ! 【爆炎】!」
「わわわ! もう!」
ミィ達が話している間に詰めていた距離が、ノックバックによってあっという間に離されてしまいメイプルも思わず苛立ちの声を上げる。
【AGI】が0のメイプルは、他のプレイヤーがすぐに辿り着けるような距離だとしても到達するまで時間がかかってしまう。
せっかく進んだ道のりを、たった一回の攻撃で無にされてしまえば苛立ちの声が漏れてしまうのも無理はない。
「むぅ……まだ【機械神】も【暴虐】も見せちゃダメだし、ちょっとずつ歩くしかないかぁ……」
【暴虐】を使用すればスキルの効果で【AGI】が50となり、【機械神】を自由に使えれば武器を破壊しながら自爆飛行が出来る。どちらもメイプルが普通に移動するより断然速い。
しかしサリーにまだ公にしていないスキルは出来るだけ使用を控えるようにという指示を受けているため、そのどちらの方法も実行できない。
一応いざという時はメイプルの自己判断でそういったスキルの使用許可は下りているものの、進むのに苦労するだけで死亡するレベルの危機ではないためメイプルはその指示を律義に守っていた。
「【爆炎】!」
「また!? あぁっ!?」
しかし何度もノックバックによって後退されられてしまうと、もう使ってしまおうかという考えも頭に浮かんできてしまう。
ノックバックにより移動した先で、マルクスが設置した束縛の罠によって手足を縛られてしまえばなおさらである。
「『武器成長』! ………【刀剣展開】」
メイプルがスキルを唱えると、短刀を持っていた方の腕が金属で覆われていき、最終的に彼女の身長ほどもある剣へと変化した。
実際にありもしないスキル風の単語を叫び、その後スキル名をなるべくボソッと呟いてスキルを発動させる。これもサリーのアドバイスによるものだ。
巨大化した短刀に体重を乗せて蔦の一本を断ち切り、そのまま腕を振り回して残りの蔦も破壊した。
「【爆炎】!」
「【遠隔設置・岩壁】!」
しかしメイプルが進もうとしても、【爆炎】によるノックバックやその先にある束縛の罠、さらに新たにマルクスが設置する岩壁により、歩みは遅々として進まない。
「むぅ、進めない……あれ? あっ! 膜の色が……」
そうこうしている内に、ミィ達にとって待望の時間が訪れた。メイプルを覆っていた膜が、遂にその色を消して効力を失ったのだ。
「今だ! 【火炎牢】!」
「え? 何……? えぇ!?」
ミィがスキルを発動させると、メイプルを中心に炎の壁が出現する。天井は開いているが、壁の高さはかなりのものだ。
試しにメイプルが炎の壁を剣で斬って見るが、すぐに元に戻ってしまい全く効果がない。
「ってうわぁ! ダメージ入ってる!?」
この【火炎牢】に捕らわれた対象は、防御力に関係なく固定ダメージを受けてしまう。ミィがメイプル攻略のために渋々切った、一日一回の切り札である。
現在受けているダメージが固定ダメージだと分かったメイプルは、【捕食者】を戻しポーションを飲んでスキルが終わるのを待つが、いくら待っても中々終わってくれない。
「うーん……どーしよー……」
どのくらい待てば効果が終了するのか分からない中、メイプルはこの【火炎牢】から脱出する方法を考え始めた。
◇◇◇
一方メイプルを【火炎牢】閉じ込めたミィの方は、MPポーションを次々に使用して減少し続けるMPを回復していた。
【火炎牢】の維持上限時間は十分なのだが、その間にMPが尽きてしまえばそれで効果が終了してしまう。
ただし上限の十分まで効果を持続させようとすると、MPポーションを何十本も使用しなくてはならない。非常に燃費が悪いスキルなのだ。
このイベントの性質上、この段階でポーションの大量消費は避けたいところだが、メイプルを相手にするならばやむを得ない。
「さて、どうなる?」
「私としては、このまま倒れて欲しいところなのですが……」
「そうだね。罠も厳しい感じだし……」
「ただ
【火炎牢】の外側で四人がそんな話をしていると、炎の壁から黒い塊が飛び出して【火炎牢】の外側に着地した。
【炎帝ノ国】の四人は、強いが故にメイプルの枷を一つ外す条件を満たしてしまったのだ。
「【全武装展開】」
ミィ達の目の前でメイプルの姿がどんどん変化していく。
明らかに兵器というべき物体を全身に纏うその姿は、強烈な威圧感を放っていた。
「【攻撃開始】!」
「【爆炎】!」
「退避だ!!」
メイプルから次々に放たれるレーザーや銃弾をミィは咄嗟に炎で防御し、アゲハはマルクスとミザリーを小脇に抱えて攻撃が届かない地点まで後退する。
「いや~参った参った。何かあるとは思ってたけどあれは流石に予想外だね。出るゲーム間違えてるよな?」
今までの『NWO』に現代や近未来な兵器は出回っていない。一応三層は機械の町なので、探せばそういったスキルの類が見つかる可能性があると噂されているが、まだそれらしきスキルは見つかっていなかった。
ただ実際メイプルの【機械神】は三層で取得しているので、あながち噂も間違いとは言えない。
「んでどうするよ? あんなん出て来られたら本格的にアタシが出来る事ないよ?」
大剣使いであるアゲハに、レーザーや銃弾の弾幕を切り抜けてメイプルにダメージを与えるなど流石に荷が重すぎる。
それは全員分かっているので、アゲハの弱音ともとれる言葉にも責めずに頷いた。
「それは分かっている。マルクスはどう思う?」
「ムーリー……あんなのムーリー……」
「いくら何でも非常識です……おそらくあれが奥の手だと思うので、見る事が出来ただけで上出来といったところですね」
「仕方ない、今回は負けだ。だがただでは負けない」
ミィはギルドメンバーの一人にメッセージを送ると、三人の顔を見渡した。
「よし、逃げるぞ」
「了解」
「分かりました」
「アゲハはミザリーを頼む。私はマルクスを……ん?」
速く走れない二人をミィとアゲハで分担して抱えて逃げようとしたのだが、その算段を立てている最中に背後からけた違いな爆発音が聞こえてきた。
「何だ!?」
「見~つけたぁ!!」
すると先程まで攻撃が届かない範囲まで離れたはずのメイプルが、剣と化した腕を前にして目と鼻の先まで迫って来ていた。
「な!?」
驚いて動きを止めてしまったミィに、勢いよく迫ってくるメイプルに対応できない。そしてメイプルの剣は、そのままミィの隣にいたミザリーの胸に吸い込まれた。
「あっ……」
「【刀剣展開】」
メイプルの剣から新たな武器が次々に展開され、それらは全てミザリーに刺さっていく。
やがてミィ達が急な展開に思考が追い付いてきた頃には、ミザリーは光に変えられていた。
「ミザリー! くそっ!」
「【爆炎】!」
次の狙いを定めようと動かした剣をアゲハが弾いて、ミィがノックバックでメイプルを吹き飛ばす。
そしてそのままマルクスの手を引いてその場を離れようとするが、メイプルの方が一歩速かった。
「逃がさないよっ」
「どういう挙動してんの!?」
吹き飛ばしたはずのメイプルがあっという間に目の前まで来るのを見て、アゲハは慌てて迫る剣を大剣で逸らす。
ただし剣の軌道は逸らせても、メイプル本人の体勢を崩すまでの対処には間に合わなかった。
「【展開・左手】【攻撃開始】!」
メイプルの左手から巨大な砲身が出現し、すぐ傍にいるアゲハに向かってビームが放射される。
流石のアゲハも非物体であるビームは弾けず、そのまま砲撃に飲み込まれて消えていった。
「【爆炎】!」
「もう当たらないよ!」
再びノックバックで距離を開けようとはなったミィの【爆炎】は、メイプルが当たる直前に消えてしまいそのまま彼方へと消えていく。
「え!? 消えた!?」
「くっ! 何処だ!」
消えたメイプルの行方を探そうと左右を見ても、彼女の姿はない。何処に消えたのかと思考を巡らすミィの耳に、先程ミザリーが倒される直前に聞こえてきた爆発音が聞こえてきた。
その方向は……
「上か……!」
しかし気付くタイミングが遅すぎた。
ミィが上を向いた直後、すぐ隣に大量の機械を抱えたメイプルが物凄い速度で落下してきた。
「あ……」
ミィのすぐ隣……それは即ち、共にその場を離れるために手を引いていたマルクスがいる場所である。
上空から落下したメイプルの剣に胴体を貫かれたマルクスは、ミザリーと同じく手や足に追加の剣が突き刺さり光となって消えていった。
「マルクス! くっ! MPが……!」
ミィは高威力のスキルである【炎帝】を取得しているので、ステータスは【INT】ではなくMPを中心に割り振っている。しかし【炎帝】は高威力に見合って、MP消費が非常に多い。そして彼女はメイプルの様に装備の効果でMP消費を帳消しに出来ないので、彼女のMPは常にカツカツだ。
つまり何が言いたいのかというと、MPポーションも底をついた今のミィは使えて魔法一回分のMPしか残っていなかった。
「……【自壊】!」
もはやミィはメイプルから逃走するのを諦めて、死亡前提で撃退する方向へ舵を切った。素早くメイプルの背中側に回り、その背中に密着する。
「えっ? な、何!?」
大量の機械によって身動きが取り辛いメイプルからは背中にいるミィの姿はよく見えないが、何やら彼女の体を炎が覆っていくのは辛うじて見えた。
ミィの残ったMPでは防御力貫通スキルを使ったとしても、メイプルのHPを削り切れない。しかしその他の
ならば話は簡単である。単純に威力でメイプルにダメージを与えればいい。
ミィには唯一、メイプルの防御力を突破できる可能性を持つスキルがあった。デメリットを考えて今まで使わなかったのだが、今は四の五の言っていられる状況ではない。
「死なば諸共だ! 付き合ってもらうぞ!」
「み、道連れ狙い!?」
そのデメリットとは、スキル使用者であるミィ自身のHP全損である。つまり自爆攻撃だ。
このスキルがミィの取得している中で一番威力が高い。普段の使用するスキルの威力で十分敵を殲滅できる事と、その高いデメリットにより使用経験は殆どないが、これならばメイプルを倒せるとミィは確信していた。
「自爆系の威力なら……大丈夫!」
その絶望的な宣言を聞くまでは。
◇◇◇
凄まじい爆炎が止んだ後、その中心地で残ったメイプルはゆっくり立ち上がった。
「【VIT】値もスキル込みでそろそろ五桁だし、やっぱり大丈夫だった!」
ミィの最大の誤算は、メイプルの防御力を見誤った事だ。
第二回イベント後のメダルスキルの一覧にて、ミィも特定のステータスを一.五倍するスキル群があるのは知っていた。
メイプルがその内【VIT】を上昇させる【フォートレス】を取得したのも、第一回イベントからメイプルが有名だったことから、それ以外にも【VIT】を倍率上昇させるスキルをいくつか取得していると憶測が出来ていた。
そこまでは正解なのだ。ではミィがメイプルの防御力を見誤った原因は何なのか。それは、メイプルが常用している【ユニークシリーズ】である。
メイプルが装備している【ユニークシリーズ】には、他のものと違い【破壊成長】という凶悪な効果が付いている。
この【破壊成長】は装備の耐久値が0になった際にステータスの上昇値を高めて即座に再生するという効果なのだが、今回のイベントに向けてメイプルはひたすら装備品を壊しまくって相当上昇値を高めてきていた。
その結果、ミィですら予想外なほどの【VIT】値となったのだ。因みに【ユニークシリーズ】を装備していないスキルによる倍率上昇のみでメイプルの【VIT】を計算した場合、その数値は桁が一つ下がって1000ぐらいになるのだが、それでも【楓の木】のメンバーを唖然とさせている。
「メイプルさん!」
「だ、大丈夫ですか?」
「上から見ても凄い炎でしたよ!」
周囲に他のプレイヤーがいないのを確認すると、メイプルは武器をしまってシロップを降ろす。
シロップが下りてくると、その上に乗っていたマイとユイとカラアゲがメイプルに心配そうに声を掛けた。
メイプルにより遥か上空に退避されていたので何もできなかったのだが、状況は上からでも確認できたのだ。
「大丈夫大丈夫! 無傷だよ!」
三人の心配する声に、メイプルはシロップに乗り込みながら返事を返す。その元気な姿に三人は揃って安堵の息を吐いた。
「よ、良かったです……」
「流石メイプルさんですね」
「とにかくご無事でよかったです」
三人共メイプルの防御力が高いは身に染みて分かっているのだが、それでも心配になってしまうぐらい先程のミィのスキルは強力に見えたのだ。
「あぁーあ。こんなに罠があるなら降りなきゃよかったなぁ」
「【トラッパー】のマルクスさんのスキルですね。聞いていた以上に色々な罠があってビックリしました」
「そうだね。【機械神】はまだ使う予定なかったんだけど……やられたなぁ」
サリーの立てた作戦では、二日目ではまだ【機械神】を使わない予定だった。使わなくともオーブを奪取できると考えていたからだ。それだけ【炎帝ノ国】が強かったという事である。
「メイプルさん! この辺りですよ、【炎帝ノ国】の拠点」
「あっ! あそこに台座が……あれ?」
シロップの背に乗って【炎帝ノ国】の拠点に辿り付いたメイプル達だったが、肝心のオーブが台座から消えており、他にオーブを守るプレイヤーの姿もなかった。
「えぇ!? 何で!?」
「ど、どういうことですか!?」
「……オーブを持って逃げたんでしょうか?」
これがミィが行った悪足掻きである。
メイプルが【機械神】を使った直後、ミィが彼女を撃破するのを諦めてギルドメンバーにメッセージを送った。
その内容が、オーブを持って全員拠点から避難しろというものだ。そのミィの最後の保険が、メイプルにギルドのオーブを奪われるという最悪の事態を回避したのだ。
「ど、どうしよう!?」
「い、一応ここのオーブは取れたら取るという話でしたけど……」
「でもここまで頑張ったんだから、やっぱりオーブは持って帰りたいよ~!」
ここの戦闘を一番頑張ったのはメイプルであるため、彼女がそう言うと諦めようとは言い辛い。それにマイ達も、決して諦めたい訳ではないのだ。
「えっと……じゃあ一つだけ考えがありますけど」
「ふぇ? 何?」
「丁度この周りにはギルドが沢山あるので、倒しながらここのオーブを持った人を探すのはどうでしょうか?」
時間から言うと、台座からオーブを持ち去ったプレイヤーはまだそう遠くまで離れてはいない。周囲のギルドを襲撃しながら探せば、まだ見つかる可能性があるというのがユイの考えだった。
ついでに倒したギルドのオーブも強奪すれば一石二鳥である。
「……よし! それで行こう!」
かくしてメイプル達は周囲のギルドを強襲しながら【炎帝ノ国】のオーブを探し回ったのだが、相手側の逃げ足の方が速く、その相手の発見には至らなかった。
一通り周囲のギルドを襲撃し終えたメイプルは、その帰りにシロップの上で残念そうに溜息を吐いた。
「結局、【炎帝ノ国】のオーブは見つからなかったね~」
「まぁ、僕達は足が遅いので……」
「でも代わりにオーブがいっぱい手に入りましたよ!」
「これでポイントも大分入ります!」
「う~ん……それもそっか!」
メイプル達が【炎帝ノ国】のオーブを探すついでに襲撃したギルドの数は、合計で六ケ所。その全てでオーブを入手している。襲われたギルドからすればとんだとばっちりである。
「よし! じゃあこのままオーブを無事にギルドに届けよ~!」
「「「おぉ~!」」」
メイプル達が元気よく拳を掲げる中、シロップは視線は受けつつも攻撃は受けずに悠々と上空を浮遊する。
まぁ考えてみれば当然である。既に
藪にラスボスが潜んでいると分かっているのなら、その藪は突かずスルーするのが人として当たり前の判断だ。わざわざ攻撃して刺激する愚か者はいない。
そうしてメイプル達は、ゆったりと談笑しながら大量のオーブを抱えてギルドへと帰還するのだった。
ハイドくん影薄すぎじゃない!? ……ってそれはいつもの事か。
因みに前々話の前書きも書きましたが、ハイドは変わらずのやり方で順調にオーブを盗んでいます。
次回は、勇者(?)襲来です。
二話ぶりに主人公登場!?