派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う 作:名無しの投稿者
あれから約二時間。ハイドはモンスターを見つける度に、見つからないように数分間観察して急所を狙って倒すという行動を繰り返してレベルを3に上げていた。
(今まで遭遇したモンスターは、白兎に狼に芋虫。周囲に他のプレイヤーもモンスターもいないって条件で探してたら以外に時間かかったな。情報によると他にも大ムカデがいるらしいけど……出来れば会いたくないな。急所が分かりにくいし堅そうだし毒攻撃持ちみたいだし。おっと、ヤバい!)
ハイドは煩い羽音が聞こえ始めると、動きを止めて急いで木の陰に隠れる。そっと羽音のする方向を見てみると、そこには大きな蜂が飛んでいた。
(あれがこの辺で一番強力なモンスター、フォレストクインビーか……攻撃手段は強力な毒攻撃や大きな針の突き刺し。その上空から攻撃してくるのが厄介だよな。このままどっか行ってくれればいいけど)
ハイドの願いが通じたのか、フォレストクインビーはハイドの隠れている付近に近寄ることもなく離れていった。特徴的な羽音が聞こえなくなると、ハイドは小さく深呼吸して無意識に入れていた体の力を抜く。
(よかった、気付かれずに済んで。今の俺のレベルじゃまだあれは倒せない。少し奥に来過ぎたか、戻ろう)
さっきのフォレストクインビーに見つからないように、耳を澄ませながら移動して今いる区画から離れる。
(どっかに丁度いいモンスターはいないものか……あと一、二体倒せばレベルが上がると思うんだけどな。お! オオカミ発見!)
ピョンピョンと木から木へ跳び移りながら移動していたハイドは、ようやく念願のモンスターを発見した。
『スキル【跳躍Ⅰ】が【跳躍Ⅱ】に成長しました』
(スキルの成長か。でも正直あんまり変わった感じがしないな、レベルが上がったら一回確認した方がいいか)
ハイドはレベル4になったらステータスポイントの振り分けのついでに取得したスキルの確認をするつもりだったため、ゲームを始めてから未だにステータス及びスキルを確認していない。流石にこの行動が普通でない事には気付いていたが……
『レベルが4に上がりました』
『スキル【
『スキル【寡黙】を取得しました』
その結果、スキルを取得することになるのは予想していなかった。
(……うん? 何かいっぱい来なかったか? まぁとりあえず)
「……ステータス」
ヴォンという音と共に、ハイドの目の前に半透明の青いパネルが浮かび上がった。
ハイド
Lv4
HP 32/32
MP 25/25
【STR 50〈+11〉】
【VIT 0】
【AGI 50〈+5〉】
【DEX 0】
【INT 0】
装備
頭 【空欄】
体 【空欄】
右手 【初心者の短剣】
左手 【空欄】
足 【空欄】
靴 【初心者の魔法靴】
装飾品 【空欄】
【空欄】
【空欄】
スキル
【跳躍Ⅱ】【
【跳躍Ⅱ】
スキル発動時、跳躍力が上がる。
取得条件
一定回数ジャンプすること。
【寡黙】
行動した際、一切の音が出ない。
スキル発動やステータス表示、アイテム使用などを思考で行える。
取得条件
連続合計五時間、大きな音を出さず、また一切喋らず町の外で行動及び戦闘をし続ける。
ログアウト時カウントストップ、ログイン時カウント再スタート。
【
視界内の対象の急所の位置を正確に見破る。対象は複数選択可。
取得条件
三分以上攻撃せずに観察した対象を、急所付近を攻撃して撃破する。それを十回繰り返す。
観察しない、または急所付近から離れた場所を攻撃して撃破するとカウントリセット。
(なるほど。【跳躍】はアクティブスキルだったのか。それじゃ実感なくて当然だな。
【寡黙】は結構便利だな。スキル発動にわざわざ声に出さなくて済むってことは、隠密性が上がるし! このスキル掲示板とかでは見たことないけど、条件緩いしそこそこの人持ってそうだな)
そんな訳はない。ハイドは条件が緩いと思ったが、普通の人は五時間も黙ってゲームをし続けたりしない。パーティメンバーとのコミュニケーションやスキルの発動、ステータスの確認や人によっては戦闘中に気合を入れるために声を出す。普通は狙わないと取得できないスキルなのだ。
(【
確かNWOの運営は取得の難しいスキルだけど、下手すればゲームバランスが壊れるほど強力なスキルを悪ふざけとして実装するので有名な会社だったよな……ってことは【
言うまでもないが、当然【寡黙】も悪ふざけスキルの一つである。
スキルを確認したハイドは当初の予定通りSTRとAGIにステータスポイントを5ずつ振り分け、とりあえずスキルを試してみることにした。
(【寡黙】の効果で思考で発動出来る様になったんだよな。じゃあまずは【跳躍】、っと!?)
スキルを発動させて跳び上がると、今まで以上に高く跳べたことに驚いた。
(マジか……スキルってすげぇな。【寡黙】の効果で誤作動とか起きないよな……?)
ハイドが何度かスキルを発動させて検証してみた結果、発動しようと思ってスキル名を思い浮かべないと発動しないことが分かった。
(無茶苦茶便利だな。思考操作は少しコツがいるけど、慣れてしまえば相手の隙を突ける。要練習だな。最後は【
いい
(さてさて、どうなるのかな。【
スキルを発動させると、ハイドの目に白兎の首に細い赤い線と両目に赤い点が浮かび上がる。
(……え? これが急所? と、とりあえず切ってみるか)
ハイドは今までやってきたようにタイミングを合わせて、白兎の首の赤い線を正確に切るとすぐさま離脱した。
(ダメージは五割……いや、それよりほんのちょっと多いな。掲示板の情報だと
白兎が背を向けたタイミングで、再び攻撃を仕掛けるハイド。しかし同じ様に首を切ったにも関わらず、今回は白兎は二割程HPを残してしまった。ハイドは一瞬首を傾げるが、最初の攻撃と比較してすぐにその原因に気が付いた。
(シビア!? 無茶苦茶シビアだこれ!? 確かにほんのちょっとズレたけど、今ほとんど正確だっただろ!?)
そう、これが誤情報が出回った原因なのだ。首の線の太さは一ミリ。目の点は直径一センチ。狙っても中々正確には攻撃できない上に、僅かでもズレると
(む、難しい。正確に
小さくため息を吐くと、未だ自分を見つけられていない白兎に目掛けて降下して首を正確に切り裂く。今度こそ、白兎はHPを0にして光となり消えていった。
(よし! 今日は終わ
『スキル【隠者】を取得しました』
……ろうと思ってたんだけどな。一応確認だけしておくか)
【隠者】
モンスター又はプレイヤーに目視されている状態だとHP、MP以外の全ステータス30%減少。
モンスター又はプレイヤーに目視されていない状態でHP、MP以外の全ステータス20%上昇。
取得条件
モンスター又はプレイヤーに目視されていない状態で、モンスターを十体連続で撃破する。
その間、モンスター又はプレイヤーに目視されると回数リセット。
(……またピーキーなスキルだこと。普通のプレイヤーならデメリットがきつ過ぎて【廃棄】してるところだぞ)
【廃棄】とはいらないスキルを消す事である。そのスキルを再取得するためには、専用の施設に五十万Gも支払わないといけない。
【隠者】は目視されている状態だとHPとMP以外の全ステータスが30%も減少してしまう。この『目視されている』というのが重要で、これは
(まぁ俺はプレイスタイルと合ってそうだからしないけど)
……こういった普通の人とは明らかに違うプレイをする人間だけである。プレイ初日にして、取得スキルの四分の三が運営の悪ふざけ。まともなプレイじゃまずこうはならないだろう。
ハイドは【隠者】の確認を終えると、そのままログアウトした。
しゃ、喋りました……よね? な、名無し的にはこれは喋ったに入ります! ……ステータスの一言だったけどね!
モンスター毎に設定されており、DEXの数値関係なくその場所を正確に攻撃する事によってダメージ増加。増加率もモンスターによる。よくあるDEX数値による確率ではない。ただしその位置は非常にシビアで、急所は点か線。
点の場所には刺突や魔法、ハンマーなの攻撃の中心点を正確に当てなければならず、少しでもズレればダメで斬撃では入らない設定。点の大きさは直径一センチ。
線の場合は逆に斬撃のみ有効で、その線に完璧に沿って攻撃しなければならない。線の太さは一ミリ。
つまり同じ場所を攻撃しているつもりでも一ミリでもズレれば有効にならないので、そのあまりのシビアさゆえにプレイヤーからは急所認定は他ゲームと同じく確率だと思われている。