派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う   作:名無しの投稿者

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遅くなってすみません!!
有限不実行でホント申し訳ない……。
仕事が立て込んで中々書く時間が確保できませんでした……。


暗殺者と仲間の気持ち

 夜が深くなり二日目も残り僅かになった頃、【楓の木】のメンバーは未だ襲撃に出ているハイドを除いた全員が拠点に集合していた。

 

「ポイントいっぱい! 上位に入ったよサリー!」

「うん、メイプルが大量にオーブを取って来てくれたからね。マイ達もありがと。メイプルと一緒にオーブを取って来てくれたでしょ?」

「はい!」

「えへへ。お役に立ててうれしいです!」

「でもすみません。周辺を手当たり次第探したんですけど、結局【炎帝ノ国】のオーブは見つかりませんでした……」

 

 【炎帝ノ国】を襲撃後、周囲のギルドを潰しながら持ち逃げされたオーブを探索して最終的に他のギルドのオーブを六個入手したのだが、倒した敵の中に【炎帝ノ国】のオーブを所持しているプレイヤーはいなかったのだ。

 

「大丈夫だよ。メイプルが罠の殆どを踏み潰してくれたし、カスミとクロムが倒したシンも合わせると主力のメンバーを全員死亡させてくれたから、立て直すには少し時間がかかるはずだし」

 

 メイプルはミィとマルクスとミザリーとアゲハの四人を撃破し、カスミとクロムが探索中に主力メンバーであるシンを撃破した結果、【炎帝ノ国】は幹部が全員最低一回は死亡している。

 しかもその前段階でマルクスが仕掛けた罠をメイプルがかなりの数発動させて解除しているので、その罠を仕掛け直すのにもかなりの時間が必要になるだろう。

 

「しかも相手がオーブを持って逃げ回ったんなら、なおの事都合がいい」

「そうなの?」

「うん。今頃他のギルドを襲撃して手に入れたオーブを守ってる頃じゃないかな? メイプル達からどのくらい逃げてたのかは知らないけど、その間ポイントは入ってないはずだしね」

 

 オーブは拠点内にある台座に設置していないとポイントが入らないため、全てのオーブを台座から外していた【炎帝ノ国】はその分ポイント数に遅れが生じている。

 現在はサリーが予想した通り、その遅れを取り戻すために遠くのギルドまで襲撃を仕掛けて手に入れたオーブを失わないため守りに徹していた。

 

「しかし、やっぱりあれだな。人数差があるから、攻めるペースは大規模ギルドには敵わない」

「それはしょうがないですよ。でも皆が頑張ってくれたので、当初の予想より順位は高いです。正直この人数でここまでやれるとは思ってませんでしたので」

 

 【楓の木】は所属人数が十人の小規模ギルドなので、数百人のプレイヤーが所属している大規模ギルドと比べると襲撃に出られる人数は圧倒的に劣る。

 それでも【楓の木】がランキングで上位になっているのは、単にオーブを獲得する数が一人当たりで換算すると大規模ギルドよりも圧倒的に多いだけである。

 

「それにしても……ハ、ハイド遅いね。大丈夫なのかな?」

「……呼んだか?」

「わひゅう!!」

 

 後ろから聞こえてきた声にサリーは奇声を発しながら文字通り飛び上がって驚き、【AGI】を全開にしてメイプルの背に飛び込んだ。

 

「およ?」

「……驚かせたか?」

「お、驚くわよ! 帰って来たんなら普通に声を掛けてよ!!」

「……だから普通に声を掛けたんだけど」

「すぐ後ろまでこっそり近付いて声を掛けるのは全然普通じゃないから!!」

(普通に入り口から入って声出したんだけど……)

 

 当然ハイドに皆を驚かすつもりは全くない。きちんと拠点内に入った時点で声を上げているし、その音量も普通にしていれば皆に聞こえただろう。

 ただし運悪く皆で考え事をしながら会話をしていたので、ハイドの声は意識から外れてしまった。そしてそれをいつもの事だとハイドが近付いたタイミングで自分の名前が呼ばれたので、その声に返事をしただけなのだ。誰だって自分の名前が聞こえたら反射的に反応してしまうものである。

 

「……何を怒ってるんだ?」

「べ、別に怒ってないし!」

「でもサリー、顔真っ赤だよ?」

「べべ別赤くないし! メイプルは黙ってて!」

「えぇ……?」

 

 サリーは自分の中に新たに生まれた感情に戸惑い、どうにもハイドと顔を合わせる事が出来ないでいた。想いの発生が突然だったので、まだ自分の中でも感情の整理がついていないのだ。

 そして盾にされた上に顔色を指摘されただけで怒られたメイプルは、親友の様子に戸惑いを隠せない。基本的に誰に対しても気さくな態度を取るサリーが、このように誰かを避けているのはメイプルでも初めて見る。

 

「さ、サリー? 大丈夫? 調子悪いの?」

「……体調は問題ないけど、大丈夫じゃないかも」

「……俺、何かしたか?」

「…………………別に、ハイドは何もしてない……けど」

(いやいや、何もしてないって……明らかに俺の事避けてたよな? 自覚ない内に何かしちゃったか?)

 

 サリーの態度から避けられていると感じたハイドは、真っ先に自分に原因があると確信した。直接的な原因は思い当たらないが、恐らく無自覚の内に何かやらかしてしまったのだろうと。

 その考え自体はあながち間違いではないのだが、何処かズレていた。サリーが好意を寄せる切っ掛けになった行動にしてもそうなのだが、この男は対人経験があまりないので自分に向けられる感情に心底鈍い。

 

「(あああああ!! 違う! 私が言いたいのはそういう事じゃないのに~~!! どうして素直に表現できないのかな私は!! うぅっ……せめていつも通りハイドと話したいのに上手くいかないぃ……)」

 

 ハイドがサリーの態度に思い悩む一方で、サリーもまた内心で頭を抱えていた。急激に芽生えた初めての感情を、彼女自身もコントロールできていないのだ。

 

「ハイドくん、ちょっといいかしら?」

「……はい?」

 

 サリーの態度の理由を察しているイズが、苦笑しながらハイドを呼ぶ。

 急に呼ばれたハイドは首を傾げるが、再びイズが手招きしながら呼び寄せるので大人しく彼女の傍に近付いた。

 

「……あの、何か?」

「サリーちゃんのことよ。出来ればそっとしておいてあげてくれない?」

「……いえ、それは別に構わないんですけど……サリーが俺を避けてる理由は知ってますか? 俺が何かしてしまったなら、謝った方がいいと思うんですけど……」

「う~ん……」

 

 理由は知っている。しかしその感情(想い)は気軽に話していい内容でもない。まして当の本人(ハイド)相手なら尚更である。

 

「……それは私の口からは言えないわ。厳密に言うと、私自身もサリーちゃんから直接聞いたわけじゃなくて、そうじゃないかなって言う憶測なのよ。まぁまず間違いないとは思ってるけどね」

「……そう、ですか」

「でも大丈夫よ。私の予想が正しいなら、ハイドくんは何も悪くないわ。サリーちゃんはちょっと混乱してるだけだから、少しの時間待ってあげて欲しいの」

(明らかに俺が関係してそうなのに原因が分からない今の状況が一番不安なんだが……)

 

 人に気付かれにくいが故に親しくしてくれる人が少ないので、こういった状況で原因を察する能力など持ち合わせていない。

 しかしその原因を知っていそうなイズは口を割りそうにない。ここはもうイズの指示に従う他に選択肢はなかった。

 

「……分かりました。少しの間、様子を見ます」

「うん、よろしい」

「……いえ」

「ゴメンなさいね、言えなくて。じゃあ頑張って」

 

 イズは申し訳なさげにそう謝ると、最後にハイドの二の腕辺りを軽く叩いて防衛の為の準備に戻る。

 その姿を見送っていたハイドだが、ふと自分に向けられる視線を感じた。何気なくその方向に目を向け、ようとしてすぐに顔を別方向へ逸らした。

 

(んんっ!? 何なの!? 避けてるくせに何であんな顔してくるわけ!?)

 

 結論から言うとハイドを見ていたのはサリーだったのだが、その表情が問題だった。思いっきり眉間に皺を寄せ、不機嫌な表情でハイドを睨みつけていたのだ。

 ハイドが横眼で一瞬顔を見ただけで咄嗟に目を逸らしてしまうぐらいなので、恐ろしい表情なのは言うまでもない。心なしか、サリーの背後に怒り狂う虎の幻影まで見える。

 

(スタ〇ド!? 何時の間に〇タンド使いになったんですかねサリーさん!? 意味が分からない! 今度こそ俺何もしてないよね!?)

 

 アバターにそんな機能などないはずなのに、嫌な汗が背中を伝うのを感じる。当然、ハイドにサリーの怒りを買った心当たりなど皆無である。

 

「(私はハイドと上手く話せなくて悩んでるのに、その悩みの元凶はイズさんと楽しそうにお話ですか! 私の気も知らないで……! あぁっ! 何かモヤモヤする!!)」

 

 それは俗に嫉妬と呼ばれる感情である。

 ハイドが原因に心当たりがないのは当たり前だ。サリーが不機嫌なのはハイドがイズと喋っていた、ただそれだけなのだから。加えて言うと、以前ハイドがイズと話した時はサリーは平然としていたので余計に気付けない。

 

「(何でこんなにモヤモヤするんだろう? 前にハイドとイズさんが話してるのを見た時は全然普通だったのに……)」

 

 そして恋心が初めてのサリーは、嫉妬を感じるのも初めてだ。イズとハイドが話すのは初めてではないのに、今日に限ってイライラしたりモヤモヤする。その違いは、サリーにはまだ気付けない。

 

「(ダメだ。モヤモヤする原因を考えても全然分からない。寧ろさっきの光景を思い出して余計イライラしてきた……! あぁもう! このまま考えてても埒が明かない!)」

 

 ヤケクソ気味に覚悟を決めたサリーは、顔を赤くしたまま大股でハイドに近付いた。

 

「ハイド!!」

「は、はい!」

 

 急に大声で呼ばれたハイドは、今までの人生でも最速の反応でサリーの方へ振り向く。

 ハイドを見上げるサリーの顔は耳や首まで真っ赤になっているが、それを指摘する勇気をハイドは持ち合わせていない。

 

「これから来るだろう【集う聖剣】との作戦を考えるよ。一緒に来て」

「……いや、俺は多分いつも通り隠れて【暗殺】するだけだろうし、作戦を考えるならサリーとカナデの二人の方が「いいから! それに攻撃のタイミングとか合図とかも話し合いたいしつべこべ言わずについてきて!」……はい」

 

 それだけ言うとサリーはクルリと方向転換してカナデの方へ歩き出す。ハイドは慌ててその後に続いた。

 

「あらあら、期せずして背中を押しちゃった形になるのかしら?」

「問題ないだろう。言っては何だが、サリーにあの状態でいられると戦闘で支障をきたす。例え荒療治だとしても、普段通りのサリーに戻ってくれてよかった。それにサリーがあの状態では、いつまでたっても進展しそうにないしな」

 

「ん~……それもそうね」

「さ、サリーさんとハイドさんって、そういうご関係だったんですか?」

「今までそんな素振りはなかったので知らなかったです」

 

 今のサリーの態度で彼女の想いを知ったマイとユイが、会話からして事情を知っていそうなイズとカスミに小声で話しかける。彼女達の目は幼くともやはり女性であり、好奇心でキラキラと輝いていた。

 

()()()()そこまで進んでないわ。サリーちゃんはともかく、ハイドくんは感情をあまり表に出さないから分かりにくいけどね」

「私達が把握している範囲では、サリーの一方通行だな」

「「わぁ~!」」

 

 身近にカップルに進展しそうな二人組の話を聞き、ますます双子のテンションが上がっていく。

 

「おい、何の話をしてるんだ?」

「何々~?」

「お話ですか?」

「サリーさんのことですよ!」

「メイプルさんは、お二人のご関係について何か聞いてませんか?」

 

 最初は小声で話していたマイとユイだったが、テンションが上がるにつれて声が段々と大きくなってしまった。

 そしてその楽しそうな声につられて近寄ってきたクロム達に、より正確に言えばメイプルに二人は疑問を投げかける。メイプルとサリーが現実でも友人なのは周知の事実であるため、何か情報を持っていると考えたのだ。

 

「え? サリー? 二人の関係?」

「一体何の話をしてるんだ?」

「「え?」」

 

 ただメイプルはクロム同様、サリーの気持ちに全く気が付いていなかった。普段あれほどサリーと仲が良いメイプルが気付いていなさそうなので、マイもユイも思わず驚きの声を上げた。

 

「メイプルさん、ご存じないんですか?」

「メイプルちゃんが知らないのも無理ないわよ。今日はサリーちゃんに殆どあってないもの」

 

 マイとユイは知らないのだが、サリーが自身の恋心を自覚したのは今朝方の事である。

 なのでサリーが目覚めた時間帯にメイプルと行動を共にしていたマイとユイが知らない様に、メイプルもサリーの気持ちを知らなかったのだ。

 ただハイドと会ったサリーの様子の変化には気付けても、そのが恋愛感情であるという事実には気付けなかったので、そこら辺は鈍いと言わざるを得ない。

 

「クロムは……まぁ気付いていないだろうとは思っていた」

「アナタは鈍過ぎよ」

「いきなり何の話だよ!?」

 

 確かに言及は()()()()()()とは言え、あのサリーの分かりやすい態度を見ても気付けないクロムに容赦のない言葉が襲い掛かる。

 特にほぼ情報がない中で先程の様子を見ただけでマイとユイが察しているので、メイプルの時とは違ってフォローすらない。

 

「全く何なんだよ……」

「いえ、これはクロムさんの方に問題があるかと……」

「ん? カラアゲは分かったのか?」

「はい。サリーさんがあんな風な態度をとるのはちょっと意外でしたけど」

「ふふっ。そうね~」

 

 カラアゲも察しがいい方であるためすぐにサリーを気持ちに気付き、ニコニコと笑いながらサリーとハイドを見つめている。

 

「ふぅ~ん、なるほどね。イズ達がニヤニヤしていたのはそういう訳なんだ」

「な、なにカナデ。言いたい事があるならハッキリ言ってよ」

「言っていいの? サリーとハイドの事なんだけど……」

「……俺が何か?」

「あ~!! ダメダメ! 前言撤回!! やっぱ言わなくていいから!! それより早く話し合い始めるよ!!」

「ふふっ、はいはい。サリーって意外と可愛いんだね」

「カナデ、その話はもうよくないかな……!」

「……?」

 

 なお、クロムと同じく言及させてもらえなかったカナデは、サリーの気持ちにあっさりと気付いていた。

 

     ◇◇◇

 

 そしてしばし時間が経過し、深夜零時近く。遂に彼らが【楓の木】の拠点に足を踏みいれた。

 入って来たのは合計で十五人のプレイヤー達だ。

 

「やっほー、また会ったね。昨日はしてやられたけど、今度はそうはいかないから」

 

 そう言ってフレデリカはひらひらと手を振る。ただし口調は軽く口も笑みを浮かべてはいるが、その目は鋭くサリーを見つめている。もう油断はしないという決意の表れだ。

 

「むむむ……あの青色の装備を着ている人が、先輩に偽情報を掴ませたというサリーさんですか……先輩の仇を取って、無念を晴らさせてもらいますよ!」

「いや、私死んでないし。危なかったのは事実だけど、ギリギリで生き延びたから」

 

 横にいるフレデリカに突っ込みを入れられつつも、エリザベートは気合十分に武器である黒い弓を握る。

 そんな漫才染みたやり取りをする二人を、標的にされているサリーは何とも言えない表情で見つめるばかりだ。

 

「二人とも緊張感がないな、おい。今からやり合うんだぜ?」

 

 そんな二人を窘めるドラグは、大斧を抜いて戦闘態勢を取っている。その隣にいるドレッドも静かに続き、短剣を握る。それに合わせて、【楓の木】の()()も武器を握り戦闘態勢に入った。

 

「メイプル、一度戦ってみたいと思っていたんだ。勝てると判断して……倒しに来たよ」

「私、負けませんから!」

 

 入って来た十五人の先頭に立つ男、ペインがメイプルに向かって爽やかに笑いながら宣戦布告する。対するメイプルも気合では負けていない。

 『NWO』内でプレイヤー最高レベルにして、第一回イベント第一位のペイン率いる【集う聖剣】の襲来である。




これでギルド内のほぼ全員がサリーの想いを把握しました。若干二名ほど気付いていませんが、まぁメイプルの方は時間の問題です。クロムの方は……お察しですが。

次回、ラスボスVS勇者

次回の更新は、多分来月です。
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