派手なのは苦手なので、とりあえず隠れて敵を倒そうと思う   作:名無しの投稿者

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クリスマスイブになりました。皆さん誰かと出かける予定はありますか?
因みに私は仕事です(真顔)。まぁクリスマスイブと言っても平日ですしね、そんなもんでしょ(言い訳)。

今回はちょっと短めです。


暗殺者と祝賀会

 シロップに乗って拠点に帰ってきたハイド達は、手持ちのオーブを全て台座に設置するとそのまま全員で休息に入った。

 【集う聖剣】の襲撃に始まり、徹夜で大暴れしてすぐに大規模戦闘に突っ込んでいったので碌に体を休めていなかったのだ。本来なら何人かを見張りとして残さなければならないのだが、あの大規模戦闘のすぐ後でわざわざ【楓の木】を襲うプレイヤーはいないだろうと考えていた。そして何より、皆もう体が限界だ。

 実際帰還してから一時間が経過しても、誰一人として拠点に入ってきていない。戦闘が高速化し、死亡回数が危険域に入ったプレイヤーが多いので、誰も死地に赴こうとはしなかったのである。

 

「サリー、何見てるの?」

 

 サリーが空中に出していた青いパネルを、メイプルが近付いて横からのぞき込む。

 

「ん? あぁ、えっと……凄い事になってるなぁって」

 

 サリーが見ていたのはランキング表だ。前日に見た時とは違い、大規模ギルドが幾つも壊滅している。メイプルが覗いている間にも、大規模ギルドの表示がまた一つ壊滅を示すものに変わった。

 

「この殲滅速度……【集う聖剣】か【炎帝ノ国】が暴れてるんじゃないかな?」

「そうなの?」

「うん。多分【炎帝ノ国】だね。【炎帝ノ国】はさっきの戦闘でほぼ壊滅状態だし、ライバルを一つでも多く壊滅させて、自分達が壊滅した後で順位が変動する確率を少しでも減らしたいんじゃないかな」

 

 サリーに確認する術はないが、これを行っているのが【炎帝ノ国】という彼女の予想は当たっていた。

 ギルドが壊滅するとそのギルドのオーブは消滅してしまうので、ポイントを増やしたい場合はギルドを壊滅状態まで追い込んではいけない。

 にも拘らず、現在次々とギルドが壊滅状態に陥っている。つまりこれを行っている【炎帝ノ国】は、他のギルドのポイントをこれ以上伸ばせなくするのが目的なのだ。

 ただいくら強力なプレイヤーがいるとは言え、殲滅目的でギルドを襲うのはかなり負担がかかる行為であり、そう長くは続かない。今の【炎帝ノ国】は最早死兵と言っても過言ではなく、【炎帝ノ国】自身が壊滅するまでこの殲滅行為は止まらないだろう。

 

「今残ってるギルドの順位と、この壊滅スピードから考えると……イベント自体は後丸二日残ってるけど、多分もう終わっちゃうんじゃないかな?」

「え? 終わり?」

「うん。今回のイベントでは十位以内は全部同じ報酬みたいだし、残りギルドが十個以内になってその全部のギルドが十位以内だともう戦闘する意味が無くなるでしょ?」

「あ、そっか。それで終わりなんだね」

「そういう事」

 

 実際サリーの言った通りになった。

 【炎帝ノ国】の表示が壊滅に変わる頃には残存ギルド数は六つだけとなり、その全てのギルドが十位以内にランクインしている。

 その後はどのギルドでも戦闘行為が行われず、穏やかに第四回イベントは終了するのだった。

 

     ◇◇◇

 

 イベント終了後、通常フィールドに戻されたハイド達の目の前に青いパネルが出現した。そこには、今回のイベントの結果が表示されている。

 

「今回も三位だ!」

「……そう言えば、メイプルは第一回イベントでも三位だったな(そしてインタビューで噛んでた)」

 

 メイプルの名誉のために、ハイドは最後の一言を内心に留めた。

 そんな話をしている内に、最高ランクの報酬がパネルに表示される。

 ギルドメンバー全員に銀のメダル五枚と木札が一枚、さらにギルドマスターであるメイプルには全ステータスを5%上昇させるギルドホーム設置用のアイテムも送られた。

 

「【通行許可証・伍】……ふむふむ」

 

 報酬の中で唯一使用方法が良く分からない木札をよく見てみると、【通行許可証・伍】の文字とその下に送られたプレイヤーのネームが入っている。どうやら貸し借りは出来ないアイテムのようだ。

 

「次の階層で役に立つアイテムみたいだね。まだ先のことだけど」

 

 次のアップデートで四層が実装されるのは告知されているが、肝心のアップデートの日付はまだプレイヤーには知らされていない。この木札が使われるのはその後だ。

 

「まぁ何はともあれ……お疲れ様、メイプル」

「うん! お疲れ様! サリー!」

 

 サリーとメイプルはお互いに健闘をたたえ合うと、ハイタッチを決める。そして【楓の木】のメンバー全員でギルドホームに帰るのだった。

 

     ◇◇◇

 

 第四回イベントが無事終了した数日後、メイプルの発案でランキングで十位以内に入ったお祝いのパーティをすることになり、その準備を進めていた。

 料理はスキルレベルが最大まで上がっているイズのお手製で、非常に豪華なものが机に並べられている。

 飾りつけも配膳もギルドメンバーも全て揃っているのにも拘らず、メイプルだけがいつまで経っても帰ってこなかった。

 

「何か買って来るって言って飛び出したっきり……私も付いて行った方が良かったかな……」

「……メイプルは、一人の時に何かやらかして帰ってくるしな」

 

 まさか連絡もせずに皆を待たせておいて何かクエストを受けている、というほどメイプルは非常識な性格はしていないが、いくら何でも遅すぎる。

 サリーが会話を切り上げてメイプルを探しに行こうと椅子から腰を上げた直後、勢いよく扉を開けてメイプルが帰って来た。後ろの予想外の人達を連れて。

 

「だっだいま~!」

「うん、おかえりメイプル。で、後ろの人達は?」

 

 メイプルの後ろには、【集う聖剣】の五人と【炎帝ノ国】の五人がいる。

 

「外で偶然会って話してたら、流れでフレンド登録して貰えたからついでに招待したの!」

 

 サリーの疑問にメイプルはにこやかに返答した。つい数日前に負かした相手達なのだが、どうやらメイプルはそんな相手を祝賀会に誘うの事に対して全く戸惑いを感じないらしい。

 まぁこのお祝いはあくまで『イベントで十位以内達成おめでとう』会であり、【集う聖剣】も【炎帝ノ国】も十位以内にランクインしているので問題ないと言えば問題ないのだが。

 

「あらあら。じゃあもっと追加で料理を作った方がいいかしら。メイプルちゃん、出来れば招待を受けてもらった時点で連絡が欲しかったわ」

「あっ! ごめんなさいイズさん!」

「じゃあ私も手伝います。一応【料理】スキル持っていますので。最大レベルではないので、お手伝い程度しかできませんが」

 

 イズが料理を作るために席を立つと、【集う聖剣】のエリザベートが手を上げて手伝いを申し出た。

 彼女は趣味が料理であり、ゲーム内でも度々厨房に立っているため【料理】スキルを持っているのだ。ただし本職(生産職)はないので補正は乗らないし、空いた時間の暇つぶし程度にしか料理をしておらずスキルレベルもⅣなのでイズレベルの料理は出来ない。

 

「それでも十分助かるわ。じゃあお願いしようかしら」

「分かりました」

 

 イズの後を付いて厨房に入っていくエリザベートの姿を見て、フレデリカは意外そうに呟いた。

 

「珍しいね~。エリーがほぼ初対面の人に自分から話しかけるなんてさ」

「そういやそうだな。アイツ、結構人見知りなのに」

「ドラグは未だに避けられてるしね~」

「うるせぇ!」

 

 【集う聖剣】の話に、他の面子は首を傾げる。まぁこの場に居る面々がエリザベートに会ったのは戦闘中であり、戦闘中はエリザベートも人見知りする余裕がなく普通に話せているので感じるのも無理はないだろう。

 

「彼女は人見知りというより男性が苦手なんだよ。現にフレデリカには最初から普通に話せていただろ?」

「あ~そういえばそうだったね。周りに年上しかいなかったから、同世代っぽい私に懐いたものだとばかり思ってたよ~」

 

 ペインの言葉に、フレデリカも納得して頷いた。

 因みにエリザベートもイズ相手に全く緊張していない訳ではなく、フレデリカと話す時とは違い明らに固くなっているが、それは完全に余談である。

 

     ◇◇◇

 

 イズとエリザベートが作った料理が、次々にテーブルに追加されパーティーが始まった。

 ギルドのランクとしては一番低いとはいえ、最大で五十人が所属できるように設定されたギルドホームだ。元々【楓の木】の人数が少ないのも相まって全員が余裕を持って席に着くことが出来る。

 そして各々料理や会話を楽しんでいると、全員が一斉にメッセージを受信した。送り主は運営で、中身は一つの動画だ。

 

「ギルドのモニターで。皆同じ動画みたいだし」

 

 メイプルはそう言うと、ホームに備え付けられたモニターを弄り送られた動画を映し出す。

 それは今回のイベントのハイライトだった。大体全ての映像にこの場に居る者達が映っている。

 

「あ~……これは~……! あの夜の私の失態が~!」

「もうちょっと元気だったらフレデリカもいけてたんだけどね~」

「そんなことないですよ! アナタなんかにフレデリカ先輩は負けませんから!」

 

 一日目の深夜、サリーがピンチだった時の映像が流れ、そこに映っていた二人がそれぞれ感想を零していると、フレデリカの腕に抱き着きながらエリザベートがサリーに反論する。

 

「ね! 先輩!」

「そ、そりゃもちろんよ!(イヤ実際のところあの回避を真正面から相手するのはちょっときついんだけどね……)」

 

 元気よくエリザベートに、フレデリカは内心焦りながら言葉を返す。先輩(フレデリカ)可愛い妹分(エリザベート)にちょっと見栄を張った。

 

「じゃあ後で一回決闘してみる?」

「いいよ~! 今度は絶対当ててやるから!」

 

 もう後に引けなくなった部分もあるが、フレデリカも本質的に負けず嫌いな面があるのでサリーの挑発に勢いよく乗った。

 

「あっ、そういえば、私この後誰かから狙われたんだけど、このギルドのメンバーだよね~? あれって結局誰なの?」

「あ~それは」

「……俺だ」

「ん~? ってわひゃ!?」

 

 フレデリカが声が聞こえた方向に目を向けると、いつの間にか後ろにハイドが立っていた。気配を感じさせずに出現した忍装束の男に、フレデリカとついでに腕にくっついていたエリザベートは飛び上がって驚いた。

 

「なななななな何ですかアナタはぁ!?」

「ハイド……特に初対面の人は驚くから普通に声掛けてよ」

「……普通に声掛けたつもりなんだけど」

 

 もはや恒例と言っていいやり取りを終えると、ハイドは改めてフレデリカに向き直った。

 

「……フレデリカさんを狙ったのは俺だ。仲間がピンチだったしな」

「あ~アンタか~! やられっぱなしってのもしゃくだし、アンタとも後で戦うから覚悟しといてね~!」

「……受けて立つ。負けるつもりは無い」

「それこっちのセリフだから~!」

 

 そんな話をしている内に、翼を生やした天使状態のメイプルが映る。どうやら【炎帝ノ国】を襲った時の映像らしい。

 

「まだ人型なんだな」

「このあと化物になって十匹に増えるんだろ? 知ってるぜ……」

「思い出すだけでツライ……」

 

 ドレッドとドラグとマルクスが遠い目をする。特にマルクスは自慢の罠の数々を問答無用に踏み潰されている分、克服するのにはまだまだ時間がかかりそうだ。

 

「次は勝つさ。負けたままなのは嫌いなんだ。今回でスキルも大体確認できたしね」

「ほんの少し目を離すだけで、毛玉になったり化物になったり武器生やしたりするメイプルに勝てるのか?」

 

 メイプルが皆を唖然とさせるような特殊なスキルを取得するのは、一人で好き勝手に行動した後だ。というか、今のところ好き勝手に行動したら大抵変なスキルを取得して帰ってくる。もはやメイプルが一人で外出というだけで、『また変なスキルを取得して帰ってくるのでは』と皆戦々恐々とする始末だ。

 

「まぁ予想外には慣れる必要があるね。目の前で化物になられた時は、流石に動きが鈍ったよ」

 

 ペインは今回の直接対決で、メイプルは何を仕出かしてくるか本当に分からないプレイヤーだという事を身に染みて思い知らされた。なので現状分かっているスキルから対策していこうと考えたのだ。

 今回は【暴虐】という切り札を隠し持っていたメイプルが勝利したが、次回はどうなるか分からない。ペインがメイプルを倒す実力を持っているのは、間違いのない事実なのだから。

 




やっと第四回イベントが終わった……何か長かった気がするなぁっと思って確認したところ、第四回イベントの始まりを投稿したのは九ヵ月も前でした。そりゃ長く感じますよね。

次回、スキル取得。

次回の更新の前にオリキャラの紹介を先に更新する予定なので、もしかしたら少し更新が遅れるかもです。ただ一応年内に更新予定。
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